2024/05/16
5/16 店日誌
5月16日、木曜日。開けたままのドアの前に立っていたのは、最長常連のオガワくん。去年まで火曜の夕方に現れるMr.チューズデイとして知られていたのだが、当店の定休日変更にともなって店にくる回数がぐんと減った。それが、水曜に現れるとは。一週間のペースが変わって、しばらくどうしてた? と言葉を交わす。それほどの変化もなく相変わらずのままなのだが、それはそれで安心した。車の調子がわるいらしいけど。
正月に観た『PERFECT DAYS』の話題をお客さんから振られることが未だにあって困っている。好きでしょ? という空気で話されるから余計に辛い。あの映画に関しては語り尽くした感があるので、思い出したくもないのが正直なところ。好きな映画のことだったらいつまでも話していたいと思うのだけど、よりによって……。
ジャマイカ音楽、おもにレゲエ関連の中古CDがいくつか入荷。レコードやカセットもいいけど、CDもいい。うちの店にくるお客さんたちはみんな普通に買っていく。今、あえてCDがいいなんていう言説にはまったく乗れないし、そんなことを言いたがる人には近づきたくない。
今日明日は15時開店。明後日18日(土)はちょっとだけ早く閉める予定です。
2024/05/15
5/15 店日誌
5月15日、水曜日。インスタグラムを通して知り合った方がいとなむ渋谷のアフリカ料理店〈エル・バルバドス〉に行ってきた。代々木上原駅で地下鉄を降車、人ごみを避けながら近づいていくと目的地の前のは長蛇の列。それも外国人観光客ばかり。こりゃ参った。そういうお店なのか……とションボリしてあきらめかけるも、気を取り直してテナントに入っていくと、これは違う。隣接するカツ丼屋らしき店の行列だ。裏手に出ると人はいない、なんならしずかで味のある一画なのだった(それも〈trefle〉のまん前だった)。
開店時間を待って入店、こんちわーっと入っていくと「どうも! いらっしゃい!」と店主ダイスケさんが迎えてくれる。ランチとビールを注文しながら実はボク……と挨拶すると「あーそうですか!」とまた大きくハッキリした声で対応してくれ、色々と話してくれる。小さな店だけどエネルギーがつまってる。流れる音楽もリズム豊かでカッコいい。ペロッと食べて、話をしてから店を出た。
渋谷って街に馴染みの気分がなくなってから、はや数年。それでも意識して道を選んで、店と人に相対すればいい気分にもなれる。訳知り顔で街を語るのはやめた方がいいなと反省。ああした一画、個性のある店々が少しでもながく残ってほしい。
今日も書籍、音源に入荷あり! オンライン・ストア〈平凡〉にもご注目を!
2024/05/13
5/13 雑記
しずかな時間を乗りこなしてこそ、各人の場所に力がつくのでは……と書いた昨日は本当にしずかで時間を持て余した。お陰で溜まった本の査定を終えて、暇にまかせて本も読めた。わるいことばかりじゃない。でも、いいこととも言い切れない。
選別より買取が主な仕事になっていると書いた途端に買取が増えた。もちろん、このブログが理由でないのはわかっているが、最近は本の質、量ともに桁がちがう。これまでに得た知識、勘を最大限につかって立ち向かっている。気になるものを調べてみると、とてつもない値段が付いていたり、その逆もたまにある。しかし、検索で得られる情報だけで値付けしていると、心身ともに弱ってくる。いま、大事なのは、バランスの取り方だ。
好き放題に書いていると、大小問わず、何かしらの反応を受けざるを得ない。そんなつもりじゃなかったのになーと思うこともある。でも、書く。続ける。そうしないと意味がない。
2024/05/12
5/12 店日誌
5月12日、日曜日。朝イチで予約していた〈Bespoke〉に向かう道中、中央公園と駅前の広場にカラフルなタープや簡易テントが蝟集している状態が目に入る。またマーケットか! 年がら年じゅうよくやるなーっとごちながら迂回して、賑わいを避けて走る。わあっと人が行き交う催事だけで商売が成り立つとしたら、店の意味って何だろう。しずかな時間を乗りこなしてこそ、各人の場所に力がつく気がするのだが。
数年に一度、とつぜんやってくる女性がいる。毎度、良書がビチビチにつまった段ボールを数箱たずさえて現れる。文学、山岳、民俗学、映画、写真、音楽と本のジャンルを書き始めるとキリがない。昨日も精一杯の値付けをして、すべてを買い取った。
水戸方面からくるイワキさん夫婦と音楽や書店、本の話をするのがとても楽しい。今いちばんカッコいいと思うバンド、ゆらゆら帝国について熱弁してしまった。いつか酒でも飲めたらいいのだけど。
明日、明後日(13日、14日)は連休。今日は通常営業です。
2024/05/11
5/11 店日誌
5月11日、土曜日。朝、店にきてポットマンこと隣の店長と戯れたのち、歩いてスーパーに向かう。田んぼに水がはいって気持ちがいい。通り道の公園に差し掛かると、かすかに音楽が聴こえてくる。ん、ストーンズだっけ? とか思いながら歩を進めると、オアシスだ。ドント・ルック・バック・イン・アンガーを若者がギター一本で熱唱している。ちょうどサビにぶつかって、so sally can waitのところで自分も両手をあげる。彼の顔は確認できなかったが、声に力が増した気がした。
いったん店にもどって、自転車に乗り換えて〈ブックセンターキャンパス〉に。さわやかな並木道を走りぬけて店に到着。目当ての本に数冊を加えて買ってきた。きっと今日はいい日になるぞ。
土曜日曜は11時開店! お暇があれば、ご来店ください。
2024/05/10
5/10 店日誌
5月10日、金曜日。某所から届いた買取の本、二箱を開けると写真、美術、漫画を中心にした濃いものが入っている。漫画誌『ガロ』に掲載された作品群のぶっとい存在感、おもわず目を背けたくなる強さがある。その他、数ヶ月前に買い取ったまま積んでしまっていた『日経回廊』10号揃いなどを掘り出して、インスタグラムで紹介した(写真は8号)。95~96年頃の『Switch』も見どころが多く状態がいい。
連休にはいって停滞していた、オンライン・ストア〈平凡〉に手を入れている。要注目は、入荷したてのDJサモハンキンポー『Imaginary Island』、円盤のレコブック増刊『日本のポータブル・レコード・プレイヤー展 図録』など。気が向いたときに覗いてほしい。
今日は15時、明日明後日は13時開店。週明け13日(月)と14日(火)は連休です。
2024/05/09
『Imaginary Island』(CD)
新旧の電子音響作品やアシッドダブ、スピリチュアル/
5/9 店日誌
5月9日、木曜日。開店後すぐに現れたのは、巷をにぎわずワイズ・ガイズ(Wise Guys)。ここ2週間ほどの顛末とその間にめばえた感情などを聞く。細かいことは書かないが、考え方と動き方の変わり目なのは間違いない。小さくともやれることをやればいい。自分に言えるのはそれだけなので、大半の時間は彼らの話に耳を向けていた。今後、どうやって交われるのかを時間をかけて探っていきたい。
その後、来店はゼロ。雨だし寒いし気持ちは上がらないから閉めちゃおうかなーってときに〈古着屋may〉の細矢さんが現れてホッとした。山形のお土産をいただく。
ふと思う。お客さんが欲しい本、話題の本を扱う気にならない自分は幼稚なのではないか。書店としての機能を果たすのなら、私情は混じえず本と金銭を交換すればいいだけだ。実際、それをやれている店もある。うーん。でも、そうなってくると、オレがやっている意味とは……(と、ここではじめに戻る)。
今日も書籍と音源に入荷あり。ご都合が合えば、ご来店を。
2024/05/08
『日本のポータブル・レコード・プレイヤー展 図録』
日本音楽史を裏で支えた独自の文化、ポータブル・レコード・
5/8 店日誌
5月8日、水曜日。今日は、評論家・坪内祐三の生まれた日。なぜ覚えているかというと、日付にちなんで五八(吾八かも)命名されかけたという逸話があるから。坪内五八だったら物書きにはならず別の人生を歩んでいたかもしれない。それだけ、名前には力がある。店名ではシリシリ器、バンド名ではゆらゆら帝国。最近出会ったネーミングで見事だなあと思ったのはこの二つ(と言うか、前者は後者の影響を受けているのか……と、いま察した)。
ゴールデンウィークなんて関係ねえ! って調子でやってたつもりでも、それなりにエネルギーを使っていたようで昨日は21時前に寝てしまって、6時頃まで目が覚めなかった。たっぷり眠れて元気いっぱい。と言いたいが、どんよりした空と重たい空気に、ややげんなり。まあ、無理せずやるべ。
今週もいくつか本の買取がある予定。遠方からの買取、査定を希望する方はまずメールでお問い合わせください。おおよその数を把握した上で、着払いで受け付けます。
今日明日、明後日は15時開店。来週13日(月)と14日(火)は連休です。
2024/05/07
5/7 雑記
先週末に見つけた、ゆらゆら帝国『美しい』はシングル盤。表題曲と「なんとなく夢を」、「なさけない&はずかしい」、「船」の4曲が入って22分32秒。これくらいのヴォリュームがちょうどいい。歌詞を読みながらじっくり聴く、なんとなく流してみる、楽器の鳴り方に耳を傾ける。少なくとも3種類の聴き方があって、それぞれにそれなりの労力がいる。
“純粋なクソがいい おしゃれなクソにジェラシー クソに魂込めた リボンを結んでみた 同じか? みんな同じか?” (「美しい」)
「美しい」のなかでコケにされている感情、生き方をかつての自分は肯定できた。今もなお、否定はしきれない。それでも、この曲の持つ厚みを感知できるようになっただけ、マシだと思いたい。作者になんの関係ない話なのだが。
2024/05/06
5/6 店日誌
“貧しいってお金がないってことじゃない。彼は自分がどういう人かわからなくて、何をやったらいいかわからなくて、いつも指示を待っているような状態。(…)彼は探すものすら持っていない。それがわたしにとっての貧しいってことなの。なにをどうしていいかわからない、向かっていく対象を持っていないことを貧しいって解釈してる。”–北村道子(「探すものすら持っていないことの貧しさ」)
5月6日、月曜日。北村道子『衣装術』を読んで、ビリビリ痺れた。北村さんの言葉が身体に響く。インタビュー(対話)をモノローグ(独白)の形式に置き換えて収録したのがばっちりハマってる。いわゆる名言集ではなく、詩集のようなイメージを含んでいるから、やすやすとは消費させない。単語の意味以上の深みがあって、読み手の思考をうながす作用がある。凄い、という言葉だけで片付けちゃいけない内容だと思う。
なにをやったらいいかわからない。いつも指示待ち。それを貧しさだとするなら、いまの社会はなんとも貧しい! 食うには困らず、捨てるほどの服を持っていても、どこか空疎。実体のある言葉をもたず、右から左に流していくだけ。と、嘆いてるだけじゃダメだよな。面白い本とか映画はたくさんあるし、魅力的な人もいるのだから。
本を買って、その後すぐに本を売りにくる。そんなやり取りをしながら言葉をかわした若い人。しずかに本を選ぶ人。時間をかけて店内を物色する人。出入りは多くなくても、印象に残るお客さんが何人かいた。
今日の営業は13時から19時まで。本の買取に関することなど、お問い合わせはお気軽に。
2024/05/05
5/5 店日誌
5月5日、日曜日。いやあ長かった! 気まぐれに営業時間を伸ばしてみたら、途中で息が切れてしまった。連休中とあってか遠方からきてくれる人がいる。近所の人もふらっと顔を出す。とあるバンドのドキュメンタリーを撮った監督もくる(たくさん音楽の話ができて楽しかった!)。ああ、嬉しい。だけど疲れる。たまらず、夕方過ぎにコンビニでビールを買って帰ってくると、ちょうど良く新田が登場。あとはもう流れのまま……。
オンライン・ストア〈平凡〉の常連Kさんが日吉からきてくれた。話をしたら、同い年。鹿児島市から遊びにきた方も何度か平凡を使ったと話してくれる。言葉にすればたんなる通販。でも、こうしてやり取りができると意味がちがう。
当店から徒歩3分、天久保の休憩所〈古着屋may〉は今日まで連休中。隣のカフェでは遠藤良個展「HEAVEN!」、近所の焙煎所でも焼き物の展示を開催中。あちらこちらで催しあり。
今日は11時から19時までの営業。お暇があれば、ご来店を。
2024/05/04
『PONPOKOYAMA』(CD-R)
『Dream Sequencer』(CD-R)
5/4 店日誌
5月4日、土曜日。旧ツイッターでの竹田ダニエル氏の発信をみていて、思い出したのが『Spectator』52号。アメリカの大学内での学生の意思表示、大学当局もとい警察の弾圧の激しさ。自分が掴めているのは全体のほんの一端。わからないことが多い。ツイートを凝視しても、クリアに頭に入ってこない。それでも、いま何が起きているのかを、もう少しだけでも知りたい。くだんの52号の特集は文化戦争。いま、世界で、アメリカで、この国で起きている事象をひもとくためのヒントがあるはず。
納品にきた青野さんと話したのはビヨンセの最新作でのウィリー・ネルソン起用のポイント(これを見てほしい)、次号の特集に関すること、完成間近の単行本の価格設定など。身近にいて、話ができるのが頼もしい。
ジェリー・ガルシア・アコースティックバンドのライブ盤に針を落とすと、乾いた空気にぴったり。買ったのは数年前。当時から気に入って聴いていたけど、今朝がいちばんよく響いた。ピーター・バラカンさんのラジオをすっ飛ばしてしまった。
今日明日は11時開店。本の買取、在庫の確認などのお問い合わせはお気軽に。
2024/05/03
『みちくさ』11
5/3 店日誌
“30歳以上になったら、世界で初めてをやんなきゃいけないと僕は思う。仕事人として、特に編集、クリエイティヴ、プロデュース、なんでもいいけど、この世にないものをつくるために僕らはいるわけだから。(…)この世にあるものは、既にあるんだから、もういいじゃない。”−秋山道男(「編集は編み集める発明」)
5月3日、金曜日。買取りの箱にまざっていた、菅付雅信・編著『東京の編集』をむさぼり読んだ。前に読んだのはいつだろう。あてがないほど間を空けて再読したのが良かったと思う。ちょうど今、周囲の催事や出来事に新鮮味がないなーと感じていたところにピタッとはまった。読んですぐ真似をする、とか、先達の手法を踏襲するためじゃなくて編集に向ける心意気と姿勢に刺激を受けた。
“僕がよかったのは「編集」という職業に就職して、編集者になったんじゃなくて、気がついたら編集者になってたってこと。”−後藤繁雄(「編集者というワクをつねに壊しながら生きていく」)
先週の月曜に受けた取材のテーマは、就職しないで生きるには。そのときも話したのだけど、就職しないんじゃなくて、就職できない。そっちの方が論点としては大きいし重要だよな。上記の後藤さんの発言とは異なる話ではあるけれど。
あたらしいアイデアを探すのは楽しい。でも、既にあって、誰からも見向きされていないものの価値を見出すのも面白い。どちらにもエネルギーが必要だけれど、それをサボっていては前に進めない。
今日も通常営業。本の買取に関することなど、お問い合わせはお気軽に。
2024/05/02
5/2 店日誌
5月2日、木曜日。昨年から新刊の取り扱いを減らしたのは、まず古本の買い取りが増えたこと。つぎに、ちいさな書店向けの本の刊行がめちゃくちゃ多いこと。それは例えば、個人の日記だったり、世を憂う問題提起の本だったりする。別にそれらの本がわるいわけではないし、いい本があるのも知っているつもりだ。でも、そうした本を積極的にあつかう人たちの顔はどこか似通ってくる気がする。わるいことではないのだが、どうも気持ちがスッキリしない。
珈琲や発酵食品(ビールやワインなども含む)を題材にした出版物も、自分が店をはじめた頃から活発になり、いまや定番。切り口を変えたり、文学的に語ってみたり、いろんな形で再生産されている。えてして自分は、そういうものには興味が持てない。
現在の当店は、古本屋。新刊の選別、仕入を主にして意思表示、自己表現する独立系書店ではない。時事的な書籍は多くないが、時代を越える内容をもつ本はある。いまは、選別よりも買取が主な仕事になっているのだ。
今日明日は通常営業。土曜と日曜は11時から営業します。
2024/05/01
5/1 店日誌
5月1日、水曜日。去年のいつだかに買って気に入って聴いているレコードがある。アーティストはザ・ブルース・バスターズ。彼らはジャマイカのヴォーカル・デュオで、砂浜みたいなところで笑い転げている変なジャケットのわりに内容がいい。筆記体でグジュグジュッと描かれたタイトルを気にしていなかったのを今朝、凝視してみるとフィリップ&ロイドと読めた。なるほどフィリップ・ジェームスとロイド・キャンベルの二人組なのだ。
だから、なに? そう言われたら何も言い返せないのだが、直近の発見がこれである。A面1曲目の“Baby,I’m Sorry”を目玉にする人も多いようだけど、オレはB面の“You’re the Best Thing That Ever Happened to Me”が気に入ってる。“I Shot the Sheriff”で聴こえるチロチロした鍵盤の音もいい。
先週につづいて、雨の水曜。これから人はくるのだろうか。そもそも、いまも連休の真っ只中なのか。いまいち、そんな空気が感じられないのだが。
今日明日、明後日は15時開店。週末は11時から開けてみようかな。