2025/04/02

4/2 店日誌

4月2日、水曜日。朝はザーザー降り、だんだん弱くなって止むかと思うとまた降ってくる。この時期にしては寒いし、身体は重たい。心も固まる。一日中居間でレコードをとっかえひっかえしながら本を読んでいたい。とかなんとか言ってもそんな状態にはすぐ飽きて、外に出て、歩くかして気分をかえたくなるのも分かってる。とにかく、じれったい天候。動きづらい空模様。週末には暖かくなるようだから、もう数日の辛抱なのだが。ああ、もうちょいどうにからんかなあ。

私はただ、私自身として、生きたいだけだ。(改行)私は風景の中で安息し得ない人間である。私はただ人間を愛す。私の愛するものを愛す。徹頭徹尾、愛す。そして、私自身を発見しなければならないように、私の愛するものを発見しなければならないので、私は堕ちつづけ、そして、私は書きつづけるであろう。(坂口安吾)

一昨日の晩から読み出した、坂口安吾『堕落論・日本文化私論 他二十二篇』が面白い。高名な表題作より、その他の話に惹かれている。上記したのは「デカダン文学論」の末尾。「青春論」「戯作者文学論」「教祖の文学」は力強く、芯から真っ当な論だと感じる。

来週4月8日(火)には、土浦市〈がばんクリエイティブルーム〉にて当店企画のトークイベントを開催! ゲストは松本哉と二木信、参加費1000円。17時から19時まで。気が向いたら、遊びにきてほしい。

今日明日、明後日は15時開店。お暇があればご来店を。

2025/04/01

4/1 雑記

朝、小雨のなか自転車で店まで走る。そこからつくば駅まで歩いていってバスに乗る。土浦駅西口で下車してすぐ足を向けた〈土浦市民ギャラリー〉では、「え かく また あした マンガ作家山本美希展」を開催中。おりよく展示会場には自分だけ。遠くで聞こえる音楽につられるように順路に沿って文字を追う。傍らには大きめの原画が展示されていて、解説とあわせて見ていく構成。なぜ、この線か。どうやって、言葉を用いるのか。そもそも、どうして、絵を描くのか。それらの問いへの応答は明確で、論理的。抽象的な装飾、雰囲気でごまかさない姿勢に感服する。

ほとんど予定を決めずにきて、こんな展示が見られるとは。なかなかいい滑りだし。

すぐ近くの〈土浦古書倶楽部〉にはいり、膨大な量の古本が並ぶ棚をじっくり見る。けっこう安い。自分の値付けを反省しつつ、負けずに本の背を追う。手に取りページを繰ってみる。気になる箇所があれば、できるだけ買う。何冊か手にしたところで「あ!」と声が出る。青山真治『宝ヶ池の沈まぬ亀 Ⅱ』があった。その後も時間をかけて棚から棚へ、目を移す。全部で5冊、会計時のレジ対応にも人間味があって、じわりと嬉しい。

気がつけば11時半、途中で買ったパンを食べつつ、目的地〈がばんクリエイティブルーム〉を目指して歩く。思いのほか距離があるなーと感じたころに到着。「2週間/nishukan」の2日目、いるのはシイギとマスヤマ、ラジカセでブラーが流れてる……。なんとも言えない気持ちを抱えつつ、上階を覗かせてもらい、トークイベントのおおよそのイメージをかためたのち、はす向かいにある〈城藤茶店〉でコーヒーを1杯。サッと飲んで退店すると、12時ちょいすぎ。もう帰ろう。バスに乗り、つくば駅に着いたのは13時頃。

店に向かって歩く途中で、知人のいとなむ店々に顔を出し、それぞれで長話。いい話を聞かせてもらう。なかなかキツい世相ではあるのだが、こうして人に会っていければ、希望が持てる。小さな範囲で構わない。自分たちにできること、やるべきことに注力できればいい。そのための状況づくりを続けていく。

2025/03/31

3/31 店日誌

3月31日、月曜日。昨夜、店を閉めてから向かったのは天久保1丁目〈Good Near Records〉。またかよ! と思うが、前回来訪時にみたレゲエ~ロックステディの7インチ群がどうにも気になり、自転車を走らせた。到着するとJAVAさんが試聴中。チワッと挨拶をしてお目当てのジャマイカ棚のレコードをみていく。アルトン・エリス、ピーター・トッシュ、シュガー・マイノット、ドン・ドラムンドなど気になる盤を選んで試聴開始。オオ〜っと唸るものがあればウームと首を捻るものもあり。裏面に「DUB」「VERSION」とだけプリントされたレーベル面がカッコいい。

ちょっとだけ悩んで、3枚購入。お手頃価格ですげー嬉しい。サブスクリプションやユーチューブでいくらでも(訂正:いくらでもじゃない)聴けるし、効率が良いわけじゃないのも分かってる。でも、オレはこうやって音楽に出会いたいのだ。

ちらっと〈wear crab〉にも顔を出し、店主アキくんの近況を聞いてるうち、ホシくん、カナちゃんも現れる。今日からはじまる「2週間/nishukan」、4月20日(日)の「PEOPLE’S PARK」の話など。昨日はツジ&タロウ(つくばネットワーク)ともしっかり話せた。若者たちと少しずつ連動できてきた感あり。

今日も通常営業。オンライン・ストア〈平凡〉にもご注目を。

2025/03/30

3/30 店日誌

3月30日、日曜日。昨夜、店を早仕舞いして向かったのは浅草〈Pure’s〉、Exotico De Lagoのライブを観るためだ。はじめて訪ねた前回は迷いに迷って、交番で2度確認してようやくたどり着いたピュアーズなのだが、またしても迷う。西浅草2丁目。ここらへんのはずなのに、なかなか見つけられない。うーむ。浅草の路地は複雑。ちょうどコンビニから出てきたギタリストを見つけて、そっと付いていき到着! 道は合っていたのに、ひとつ角を折れていなかった。

狭い店に7人編成のバンドが陣取るとどうなるのかなーと思っていたが、ばっちりハマる。バンドのガレージ感とギュッとした状況とが相まったアンダーグラウンド・パーティー。あの雰囲気で、ひび割れたロック・ステディを生演奏されりゃあ文句なし。カッコいいな〜と唸るのみ。……だったのが、中盤に現れた酔客集団に空気を乱され、集中しきれず。

*

「ここは古本屋さんですか?」と聞かれて「ハァ」と応えたのちに反省する。たしかに分かりづらいのだ。何屋でもいいから好きに見ていけばいいじゃんとは思うが、説明好きな人には伝えづらいんだよなあ。でも、店にそんな質問するのって野暮だよなあ(ニコニコ顔で何も買わない人ばかりだし)。もどかしいぜ、3月。

今日明日は13時開店、19時閉店。つくばの桜は4分咲きかな。

2025/03/29

3/29 店日誌

3月29日、土曜日。昨夜、店を閉めてから向かったのは天久保1丁目〈Good Near Records〉。イベントで借りたものを返すついでに覗いていくか、という感じでレコードを見始めると、いやあ、なかなか。気になる盤が何枚も見つかる。値付けもちょうどいい。トーキング・ヘッズ、カエターノ・ヴェローゾを試聴。前者にも気を引かれたが、後者の奥深さは、なんと表現するべきか。ヘッドフォンを耳にあてながら「こりゃすげえ……」と何度か口をついた。

グッド・ニアー・レコーズは、昨年11月で開店して丸3年。初期の姿からは想像できなかった充実ぶり。自分が最近買ったのはトータス、ボブ・ディラン、カエターノ・ヴェローゾ。3周年記念セール時にはジャッキー・ミットゥー。他にも、ジャマイカ音楽のレコードに目をつけているものがある。

そう言えば! ペンペンドンピーのライブに店でCDを買い、興味を持った若い人が来てくれた。店で静かに本を選ぶ学生さん、はじめて来て、ゆっくり棚をみていく人もいる。名前も知らない人たちに支えられている。

今日は早仕舞いの可能性あり。18時半までは、開けているつもりです。

2025/03/28

3/28 店日誌

3月28日、金曜日。めっきり暇であると書いたとおり、きのうも開店から数時間は誰もこない。またこんな感じか……しょんぼり気味の空気を換えてくれたのは、樋口達也さん。現れてすぐ、挨拶も終えないうちに目の利いた本を手に取り、購入してくれる。その後は映画『名もなき者』、ポール・サイモン、ジェームス・テイラーのことなどを話し込む。聞かせてくれる逸話がどれも興味深く、斜めの視線から生まれる批評、感想の言葉選びも刺激的。安直な表現を避けながら本質を突く、樋口さんはシブい人だ。

樋口達也さんの個展「RAiN」の会期は4月16日(水)から27日(水)まで(火曜定休)。会場は吉祥寺にある書店兼ギャラリー〈一日〉とのこと。展示DMが〈千年一日珈琲焙煎所〉にあるらしいので数部わけてもらって、店でも配りたい。

混沌も混沌
人が大勢いるであろう日、誰もいないような日
どんな日でも奇跡のような時間があることを、
わたし達は知っているのかも

今日も「2週間/nishukan」の宣言文から一部紹介。「どんな日でも奇跡のような時間があることを、わたし達は知っているのかも」ってラインは詩的で、催事の本質を表していると思う。明確なスケジュールを組まず、場、状況をつくるだけで放り投げる。その上で何が起こるかを観察する。それが〈シリシリ器〉店主の美学なのだろう。

他者、客、知人、身内を操る力を身につけようとせず、引きつけつつも混乱させる。その姿勢はよく言えば誠実。わるく言えば不可解。利益、集客などの数字にこだわらずに動ける時期を大事にしてほしい。

今日も通常営業。明日29日(土)は18時までの短縮営業になるかも。

2025/03/27

3/27 店日誌

3月27日、木曜日。最近はめっきり暇である。今月序盤は放っておいても人がきて、それぞれに本や音源などを買ってくれたのだが、中盤以降は泣かず飛ばず。買取希望や探索本の問い合わせ、告知物の持ち込みなんかに対応しているうちに日が暮れる。ここのところ、催事準備に力を入れすぎていたからかな〜と反省しても始まらない。とりあえず開けて、来客を待つだけ。そう念じて、本の値付けをしたり、場所を替えてみたりする。

昨日も開店以降、静かなまま日が暮れていく。まあ仕方ない。買いたての伊藤彰彦『完全版・最後の角川春樹』を読んでいると、ガラッとドアが開く。立っているのは常連Iさん。穏やかに笑いながら、本を選んで、買っていく。塞ぎかけた気持ちに陽がさした。しみじみ、ありがたい。

日々、わたし達を取り巻く整頓されルールでがんじがらめになっている環境から、2週間 / nishukanは遥か遠く離れた場所にあります。立ち止まってみたり走り出してみたり、ジャンプしてみたり逆立ちしてみたり、みんなとわけがわからなくなっていきたい。

引き続き、「2週間/nishukan」の宣言文から一部を紹介。若いから、勢いがあるからってのも彼らと付き合う理由だけれど、なにより鋭さに惹かれるのだ。自分とは異なる角度で世界を見ていて、何かしらをつかんでる。その様を見ているのが面白いし、興奮させられる。

ある程度の型ができた人と交流するのもつまらないわけじゃないし、嫌でもない。人真似をして調子に乗ってる奴らを相手にするよりずっとマシだし、刺激もある。だけれど今は、未完成で不定形のエネルギーにこそ魅力を感じる。

今日も通常営業! 日々、古本には入荷あり。音源にもちょこちょこ動きあり。