2023/11/30
11/30 店日誌
11月30日、木曜日。日誌に書くことが浮かばないときは、昨年、一昨年の同日に何を書いていたかを振り返る。2022年は前日に開催した「レコード寄席」に参加して得た感慨を綴っていて、2021年は移動や遠征で忙しかったようで予定の少ない12月を前に安堵していた。正直に言って、一昨年のことは記憶にないのだが、今より数多く映画館に足を運んでいたようだ。いったい何を観ていたんだろうか。
今年は、12月8日(金)から始まる矢吹純個展「水性ペンのブルース」の会場〈DAYS 386〉の片隅に小さく出店予定。その翌週15日(金)16日(土)17日(日)は「仕立て屋のサーカス・長崎公演」に参加するため、店は休み。それ以外は現状、特別な予定なし。
一昨日、昨日で入荷多数! 古本はどんどん値をつけて店に出している。新刊、新譜の紹介も大体済んだ。気になるものがあれば、ぜひ足を運んでほしい。
今日明日は15時開店! オンライン・ストア〈平凡〉もいい感じになってます。
2023/11/29
『Emily’s Illness/Home Before Dark』(7inch)
アメリカのフォーク・ミュージシャン、ウディ・ガスリーの娘で、SSWのアーロ・ガスリーの妹、また、著名なイディッシュ語詩人アリーザ・グリーンブラットの孫であるノラ・ガスリーが、1967年、17歳で発表した唯一の、そして宝物のようなシングル。
11/29 店日誌
11月29日、水曜日。昨日は荷物がたくさん届いた。京都の書店〈誠光社〉に注文していた書籍と、大阪のレーベル〈Em Records〉のレコードが同時に到着。その直後には大阪に住む知人が送ってくれた古本も。キャパオーバーで、泡を食ったような状態になるも、落ち着いて一つ一つ封を解く。作業が落ち着いて友人とビールを飲んでいた19時過ぎ、馴染みのIさんが雑誌を中心に本を売りに来る。
びゅうびゅうの風とどんよりした空、不穏な空気が立ち込めると、店はぱったり静かになる。車や自転車が多く通り過ぎるも、自分だけが街の動きから取り残されたような状態だ。でも、そんな時こそ店にいる実感が高まる。いつも以上にゆっくり時間が流れていく。
だんだん冬っぽい空気になってきたのかな。日中はまだ、暖かいけど。
『和田夏十の言葉』
「もともと人間なんて不自由のかたまりで、だから自由というのは心の中とか、そういうことなのであって、キセル乗車したとか、だれかと寝られたから自由だとか、そーんなことと自由とは何の関係もないんだ、っていうんですよ。」(和田夏十)
2023/11/28
『水中庭園』(LP)
「平和なアジア」の心象風景を「水中庭園」という言葉に託して海洋アジアの音の交流イメージを展開した、あまりにもピュアな琉球電子サロンミュージック。
『Calla』(LP)
『Calla(カーラ)』は、彼女の幼少期からのごく個人的な体験と記憶のかけらを、音に、作曲に、歌に、編曲に、細かく丁寧に転写していくことでひとつの世界を「結晶」のように出現させる。
11/28 店日誌
11月28日、火曜日。今年の夏は(も?)暑すぎた。時間がどろーんと溶けるようで、感覚がおかしくなったのか、暑さがおさまった途端にスルスルと時が流れていく。明々後日からは12月。そう言われても実感がない。でも、決まっている予定に向けて準備をしなくちゃ間に合わない。そろそろギアを入れ替えて、少しずつでも動き出そう。しかしまあ、なんだなあ。そんな歌が頭を流れる。
忘年会というフレーズがチラつきはじめたが、この言葉のリアリティの無さたるや、確かである。会社などの組織的な行事であれば、必要かもしれないが、個人である自分にとっては……どうにも乗り切れない。酒を飲むために期日を決めて、態勢を整えるってのがいちじるしく苦手なのだ(これは個人的性質の問題です)。
今日も店には入荷あり。オンライン・ストア〈平凡〉にも動きあり。
2023/11/27
『ADM #003』(TAPE)
国内外のポップス&クラブヒッツを"芭樂"風味に強化し、越南鼓と呼ばれるベトナム産ダンスミュージック"ビナハウス"からタイの"サイヨー"、コリアンバウンス、TikTokヒットまで、種々雑多なADMをBPM170オーバーで高速&華麗に早繋ぎするスタイルは圧巻。
『ADM #002』(TAPE)
マンチェスターの「ハシエンダ」やベルリンの「トレゾア」と並列して語っても遜色ないほどの最狂(凶)クラブが、かつて数年間だけ台湾・桃園に存在した。その名は「獅子王」。中華圏ダンスミュージック文化に魅せられたRICH & BUSYが、歴史を知る現地の重要人物やDJ、クラブとの交流を重ねながら台湾ディスコ史の足跡を辿った渾身の初ミックスが完成。
11/27 雑記
浅草が野口氏を呼んでいるのである。それに応えるように氏は町に出かけていく。そして町歩きを楽しみ過ぎるほど楽しむ。山歩きの好きな老人が単独行を楽しむように、野口氏は町を楽しんでいる。その遊び心、余裕がこの本を懐かしく、悲しい本であると同時に、楽しい本にもしてくれている。野口氏は東京が単に好きなのではなく、東京を歩くのが好きなのだ。それを「歩行の快楽」と名付けたらいいだろうか。(川本三郎「解説」)
今、読むべきものを読めた気がする。野口冨士男『私のなかの東京 わが文学散策』は実にいい本だ。やさしい言葉で書かれているわけじゃなく、全てを咀嚼できたとも思わない。でも、「あなた自身のなかの東京を大切になさるようにお祈りして終りの言葉としたい」という呼びかけが自然と心に響いた。会ったこともない、著者の声が聞こえるようだった。
巻末の川本三郎による解説も本編を支えて、補足する絶妙さがある。上記した部分にある「歩行の快楽」はちょうど先週、自分が感じたものに近いものだと思っている。歩行は文化である。そう言い切ってしまいたい。
2023/11/26
11/26 店日誌
11月26日、日曜日。つくばマラソン開催日。去年のこの日、数見亮平くんが自身の手がける架空のミュージアム・ショップ〈ENTERTAINMENT〉の出張販売に来て、宿泊先を見つけるのに苦労していたのを覚えている。営業中は懸念していたほどの影響なく、けっこうお客さんが来てくれた……はず、だけど今年はどうだろうか。まあ、心配してもどうにもならない。やれることをやるだけだ。
日が暮れてから、来客が集中する時間があったものの、日中はずっと暇だった昨日。開店準備中に来た親子連れ、その後に続いた若い男女、しばらく無言のまま、ドアを開け閉めする音だけが響いていた。あれが続くと虚しくなる。
届きたての新刊、マメイケダ『味がある。』(増補改訂復刻版)マメイケダ『味がある。』(増補改訂復刻版)をひらいて元気になった。小さく厚くもない本なのだけど、確かな力が宿っている。ぜひ、じかに手にしてほしい。
ミルトン・ナシメントを聴きながら営業中。お暇があればご来店を。
2023/11/25
『味がある。』(増補改訂復刻版)
ごはんを前にした時のよろこびと、食べることそのものの衝動をダイナミックに伝える筆致。
11/25 店日誌
11月25日、土曜日。本や音源、なんらかの作品が発表されるときに添えられる取扱店一覧が受け入れがたい(はっきり言えば、大嫌いだ)。ああいうものがあるから、スマートフォンに先導されたスタンプラリーが助長され、店側のポジション取りが誘発される。意思を持って仕入れたならば各店、各人が勝手に告知すればいいだけだ。あの一覧に地図づくりに似た政治性を感じるのは俺だけか。
古本に入荷多数。坪内祐三、殿山泰司、泉麻人、中野翠、久住昌之、荒川洋治などなど渋好みの本がたくさん。その他、CDやLP、7インチ(ちょっとだけ)の中古盤にも入荷あり。
今日と明日は通常営業。気分はFuckin’ in the bushes(at WEMBLEY STUDIUM)。
2023/11/24
河合浩個展「Plus Belle Qu’une Poubelle」
11/24 店日誌
11月24日、金曜日。オンライン・ストア〈平凡〉内で読書日記を付けている。いちおう日記だから毎日のつもりでいるのだけれど、時々の状況によってはなにも書けない日もある(まとめて数日分さかのぼって書くこともある)。その日記が、最近面白くなってきた。本と本との思わぬ関連を見つけて高揚する。想像以上の内容に驚かされて、言葉を失うときもある。
具体的に書く。11月19日付けの、村岡俊也『穏やかなゴースト 画家・中園孔二を追って』と21日付けの澁澤龍彦『私の戦後追想』。なんとなく気になって読んだ前者、種村季弘の本に導かれるように手にした後者に共通して登場するのは、秘田余四郎という人物だ。それまで全く知らなかった人が、異なる順路で一箇所に集まることは雑読以外ではあり得ない。なるほど、本の話は果てしがない。
ブログを読んで、あの日の日誌に共感した。ああ書いていたけど、自分はそうじゃないと思う。など感想をメールしてくれる人がいる。とても嬉しい。
今日も通常営業。明日明後日は13時から開けています(つくばマラソン……嫌だなァ)。
2023/11/23
11/23 店日誌
11月23日、木曜日。飛び石ではなく、投げ石のように出現する祝日には毎度戸惑う。自分の生活はなんにも変わらないのに、街の雰囲気が弛緩している。時間によっては車も少ない。ラジオ番組も特別編成になっている。こうした休日の空気に馴染めなくなったのはいつからだろう。自分の店を始めてからか。いや、その前もずっとバイト生活だったから、カレンダー通りの休みはほとんど無かった。
先週末も当店は展示、催事なし。いつも通りに開けていると、当たり前のように人が来て、それぞれに本を選んで買っていく。100円の本をたくさん選ぶ人がいれば、しっかり値を付けた本を買う人もいた。古本屋はこれでいいのだ。
今日も通常営業。在庫確認、通信販売などのお問い合わせはお気軽に。
2023/11/22
11/22 店日誌
11月22日、水曜日。高速バスが筑波大学に着いたのが16時前、そこから家まで歩いて30分弱。夕日が街をやわらかいオレンジ色に染める。つくばの裏手には高い建物は皆無。視野も広い。ああ、いい時間に帰ってきた。そんな思いに浸っていたら、友人から電話が入る。「お店に行きたいという人が来ていますよ〜」と聞き、足を早めて帰宅。シャワーを浴びて、すぐ家を出る。自転車を走らせるとシャッター前に人がいる。
お待たせしました! 挨拶をしてすぐ店を開いて、話しながら棚を見てもらう。その方いわく「独立系書店が大好きで、あちこちの店を回っている」。各地の有名店を回っているとのことで、うちの店もその圏内に含まれていると伝えてくれる。……だが、数十分後の会計で、なんとなく抱えていた予感が的中し、はぁ〜と力が抜けた。
昨夜のレコード寄席は予想をはるかに超える大盛況! 嬉しい驚きを通り越して、迎える側は軽いパニックだ。音量や駐車場、開演中の出入りなどに気をつかっていて、本編は存分には楽しめず。それでも、田口さんの話、レコードの音に耳傾けられたので、じゅうぶん幸せ。
今日からまた、通常営業! オンライン・ストア〈平凡〉にもご注目を。
『店の名はイズコ』
レコ
2023/11/21
2023/11/19
11/19 店日誌
11月19日、日曜日。特別な用事のない週末。村岡俊也『穏やかなゴースト 画家・中園孔二を追って』を手に取ると止まらなくなり、吸い込まれるように読んでしまう。他にも時間をかけて眺めたい画集、写真集がある。しっかり耳を傾けたい音源もたくさん。でも、集中できるものは、そう多くない。断片を拾い集めて、印象めいたものを言葉に置き換える。それを上手く伝えられればいいのだけど。
今日はいい天気。公園でのんびりするには寒いけど、散歩するにはちょうどいい。やや薄着くらいの格好で外に出て、20分も歩けばじわりと暖まる。空気が澄んでいて、遠くの山がきれいに見える。
今日は13時から19時までの営業予定。明日、明後日は連休です。
2023/11/18
11/18 店日誌
11月18日、土曜日。一昨日届いた、ファン・モガ『生まれつきの時間』の動きがいい。オンライン・ストア〈平凡〉では、『生まれつきの時間』と『森と雨』、『JAGUAR』あたりを組み合わせて買う人がいる。奇しくも同時期に刊行された「つくづく・ポケットライブラリ」と一緒だったり、好評続く『クソパン』なんかを合わせる人もいる。各人のチョイスに「お〜!」なんて喜びながら梱包している。
古本も日々入荷あり。店前(外)に置いている均一価格の本にも追加、入替があるので、覗いてみてほしい。じわじわと売れ続けている新刊、鶴崎いづみ『私のアルバイト放浪記』と川崎智子『整体対話読本 お金の話』も補充済み。
今日明日は13時開店! お暇があればご来店を!
2023/11/17
「出張円盤 レコード寄席−ビートルズ英国盤を聴く編−」
画:河合浩
“ビートルズほどあらゆる国であらゆる時代にレコードが出続けたアーティストはいないと思います。同じアルバムでも、国ごとに時代ごとに音は驚くほどに変わります。それを聞き比べることで、レコードとは何か、盤のこと、オーディオのことも分かります。そして何より、ビートルズ・メンバー、スタッフたちが作った最初の英国盤はあまりにその他のレコードと音が違うのが聞きどころ。海を越え、時代を越えてさまざまな解釈をされ、ビートルズは牙を抜かれ、オリジナルとは似つかないものになってしまったのです。”
日時:
11/17 店日誌
小沢昭一:仲間のやっている仕事から刺激を得て、それを自分の中でバーッとエネルギーに変えていくという、そういう感じでしたね。とくに、批評眼は鋭い人でしたね。
小林信彦:見巧者(みごうしゃ)ですね。それに、人の話をとてもよく聞く人でした。
(対談「渥美清と僕たち 小沢昭一/小林信彦」)
11月17日、金曜日。小林信彦が渥美清を指していう、“見巧者”という言葉につよく惹かれる。この場合は芝居、映画の場が中心になるわけだけど、いま、自分たちはもっともっと見る眼を養わなければいけないだろう。一足飛びに作り手(売り手)になろうとせずに、よく見る。たくさんのものに触れる。考える。なぜ、これが良くて、こっちはそうでもないのか。時間をかけて思いを巡らせる。そうするうちに、自分が好きなものがだんだん判ってくる。
ずっとずっと、しつこく考えても消えない違和感。これを解消しようせず、曖昧なままでも、抱えながら生きていく。当然、負荷はかかるが、ながく考えるための絶好のネタでもある。俺は今後もやさしく滑らかな見識には辿り着けそうもない。
今日は15時、明日明後日は13時開店。週明け20(月)と21日(火)は連休です。
2023/11/16
『生まれつきの時間』
それは脱落ではなかった。退行した、遅れているばかりと思っていた子供たちは、誰よりも自分らしい独特のスピードで人生を生きているのだった。
11/16 店日誌
長生きも繁昌しているし、交通事故も繁昌だし、旅行も繁昌、海も繁昌、山も繁昌、弱いものいじめも繁昌、色事も繁昌(…)、宗教も繁昌、右も繁昌、左も繁昌、こうなると家にすっこんでおるより仕方がない。繁昌しとらんのは家の中だけだ。(「竹林に藁屋あり」)
11月16日、木曜日。週はじめに新刊書店で買ってきた富士正晴/荻原魚雷(編)『不参加ぐらし』に夢中である。手に取ってすぐ上記した短文にぶつかって、ワオ富士正晴、サイコー! とぐいぐい読んでいる。身近で置き換えれば、筑波山の繁昌っぷりがすごい。この時期、駅から山に向かうバスはギュウギュウ、すし詰め。山頂付近も商売用のスポットが増えているらしい。そんな状況を見聞きするほど、行きたくなくなる。
絵や写真の題材に、山を選ぶ人が増えている。文句を付ける立場でないのは分かっているが、ちょっと多過ぎじゃないだろうか。あちこちで山、山、山。コーヒーと本との相性もいい。なんなら音楽的ですらある。こう考えると、山はすごいな。実際、山の本は魅力的だ。独特の静けさがあって、詩的でもあり、哲学を語れなくもない。うーん、すごい。
話をもどして、不参加ぐらし。現代にあってこの表題がはらむ意味を考えると、面白い。誰でも参加、誰でも焼き菓子、珈琲焙煎、誰でも本屋(俺もだ)。なんでもかんでも参加するのが良しとする風潮を素直に受容できない自分は意地が悪いのか。
今日も書籍に入荷あり! お暇があれば、ご来店を。
※ちなみに、この本『不参加ぐらし』は当店では売っていません。近隣にある新刊書店でお求めを。中公文庫の新刊コーナーを見れば、置いてあるのがみつかるはず。
2023/11/15
ピープルブックストア日報 2023年8月10日〜31日
天久保一丁目の印刷工房〈えんすい舎〉謹製、「ピープルブックストア日報」(8/10〜31)が出来ました! ブログに書いている日誌を基にして全体をデザイン、レイアウト。毎号、味のあるイラストまで担当してくれているのは坂尾裕幸くん(今号はロゴ多め? ……理由は謎ですw)。
内容を詰めすぎて読みづらくなってしまった前号の反省を踏まえて、今号は要素は少なく、だいぶスッキリ。だいぶ読みやすくなったと思います。
店頭購入はもちろん、メール通販、オンライン・ストア〈平凡〉ご利用の方にもお付けします!
11/15 店日誌
11月15日、水曜日。蔵書票のコレクション展を見にいったついでに本を数冊選んで、値段を聞く。合計〜円と教えてもらって、そのまま買う。ふと思い立って、このお店はいつからですか? と聞くと、万博の前かな。ここにあった新刊本屋のあとを引き継いで、名前もそのまま、什器もそのままなんですよ。そう聞いて「え〜」と驚く。つくば以前の東京での変遷も話してくれて、また驚いた。昨日の〈ブックセンター・キャンパス〉での話である。
開発が進む一方のつくば市。古い建物は壊されて、現実味のない家、マンションなんかが増えていく。他所から持ってきたアイデアだけで作られた店、催事が目に入ると虚しくなる。金が動けばそれでいいのか。そう突っ込んでみても「それでいい」と応えられたら、俺はどう返すのだろう。
店にものが増えて、あたふたとSNSを使って告知をする。気分をうまく反映できればいいのだけど、それもなかなか難しい。じたばた。むがむが。言葉にならない煩悶をかかえる日々。
今日明日、明後日は15時開店。来週21日(火)は休みます。
2023/11/14
『JAGUAR』(ZINE+CD)
11/14 店日誌
11月14日、火曜日。午前中に時間があったので吾妻の〈ブックセンター・キャンパス〉に行き、開催中の蔵書票コレクション展を見る。Wikipediaによれば蔵書票とは「本の見返し部分に貼って、その本の持ち主を明らかにするための小紙片」。小さくもしっかりデザインされた紙片はそれぞれに魅力的。だけれど、見るほどに不思議な風習だ。贅沢と言えば、それまでなのだけど。
車を走らせて、小野崎のとんかつ屋〈かつ善〉で昼食。カツが揚がるのを待ちながら古本のページをめくる。出されたお茶は暖かく、つき出しの漬物も美味しい。次は夜に来て、酒を飲みたい。
今日も書籍、音源に入荷あり! オンライン・ストア〈平凡〉にもご注目を。
2023/11/13
「Non Permanent Maker Blues」
“暑くて長い夏の日は何も告げずに 清々しい秋へと変わっていた黄金の日々は歓喜とともに 長い影を連れてきてそうしてある朝目覚めると、手紙も残さず行ってしまったいいえ、それは消えてしまったわけじゃない日は昇れば沈むのが世の摂理 絶え間ない浮き沈みの中にペンよ、我を導き給え” −矢吹 純
11/13 雑記
一昨日、昨日の週末はどこにも行かずに店にいた。文学フリマやフェス、マーケット、蚤の市(後半3つに違いはあるのか?)など、あいかわらず催事は盛りだくさん。天気も良くない。これは人が来ないよなーと思いながらも店を開けると、まあ半分正解という感じ。静かな時間が長かった土曜にくらべ、日曜は中盤にかけて客足が増す。
はじめての人。久しぶりに顔を出した常連さん。たまたま通った家族連れ、若いカップルに混ざって、なんとなく気になっていた歌い手も来てくれた。スルリと音をたてずに出ていく人。ガラリと大きな音を出して入ってくる人。鹿児島の中村くんが電話をくれたのも嬉しかったな。
定時を過ぎても閉めずにいた日曜日、最後の最後に来たのは奈良県〈mole music〉店主のミツキさん御一行。賑やかながらもするどく棚を見て、ズバズバといい本を選んで、買っていくミツキさんに刺激を受ける。円盤(現:黒猫)の田口さんに似た姿勢を感じた。あんな風に店と接してくれれば信頼しないわけにはいかないよね。連れてきてくれたチャエン&ショーゴ夫妻、ありがとう。おつかれさま。
2023/11/12
11/12 店日誌
11月12日、日曜日。今朝いつものラジオ番組を聴いていたら、「今日のゲストは美術作家・永井宏さんの門下生、小栗誠史さんです」と紹介されてオッとなる。小栗さんは、鎌倉で〈古書ウサギノフクシュウ〉を営んでいた知人。端正な雰囲気の店に行くたび「かなわんな〜」と悔しさも感じていたから、閉めると聞いたときはさびしかった。
自分が店を始めたばかりの頃、遊びにきた小栗さんは骨折していた。原因はスキー? スノーボード? だったか、まったく違うことだったかもしれないけど、片手をつった姿が印象的で、今も目に焼き付いている。
ちょっと前に復刻刊行された永井宏『夏みかんの午後』の巻末エッセイ「永井さんは文化の入り口」を書いているのが、小栗さん。永井宏さんを知らない人にも伝わるように綴られた親切な解説で、この本の重心になっている。店にはあと1冊だけ在庫あり。
今日は13時から19時までの営業。あわててストーブを出しました。
2023/11/11
『SORRY FOR MY LATE』
11/11 店日誌
11月11日、土曜日。雨が降ってぐっと寒くなった。朝晩は肌着とズボン下、ライトダウンを身につけないと心許ない(週頭にはカエルが鳴いていたのになァ)。こないだ店に居合わせた友人の一人はスキーウェア、一人は短パンにサンダル。前者の手元には缶ビール、後者はコーヒー。今、こう書くと妙だけれど、そのときは不自然とも思わなかった。季節感はひとそれぞれ。
オンライン・ストア〈平凡〉の動きがはげしくなった。先頭を引っ張るのは、金井タオルが手がける「つくづく」関連作品たち。その後に続くのは古本、小さな雑誌、音源だ。急に走り出したようで戸惑いもあるが、やはり嬉しい。引き続き、どうぞよろしく。
棚に出しきれていない古本も多い。ぱぱっと値付けして出せるものがあれば、ウーンと考えたまま放置してしまうものもある。手にした本に値段が書いてなかったら、気軽に問い合わせてほしい。
今日明日は13時開店! お隣のカフェでは「桑原哲夫展」を開催中。
2023/11/10
11/10 店日誌(A面)
11月10日、金曜日。ようやく、先週末の3連休からのモードから抜け出せた。本は読めない、レコードも聴けない。ビールばっかり飲んでいるうち日が過ぎていった。本当にようやく、本に目を落とし、レコードから流れる音に耳を傾けられた。ちょうどよく雨。外の空気もなんとなく静かだ。こんな日はむやみにはしゃがず、大きく動かず、声は小さく過ごしたい。ああ、正直言って疲れたよ。
今日も書籍に入荷あり。オンライン・ストア〈平凡〉にも動きあり。
11/10 店日誌(B面)
11月10日、金曜日。ハァ〜〜〜ムカつく! 家具屋なんだか店舗プロデュース業? ローカル・フェスのオーガナイザー? どんな会社なのか細かいことは知らねえけど、こんなにも礼儀に欠けるメールが送られてきたのは初めてだ。あの人の本を待ってる人は多いだろうし、売れるのだろうが、俺はぜってえ扱わない。こんなやり方で広げられると思っているなら、マジで理解に苦しむ。
こんな風に書きたくないけど、記録として、このまま残しておく。なんの話か直に聞いてくれれば答える。でも、むやみに不評を広げるのも嫌なんだよなァ。まったく、いいことなにもないじゃないか!
今日も書籍に入荷あり。オンライン・ストア〈平凡〉にも動きあり。
2023/11/09
『つくづく』vol.31(特集=名刺)
拭えないといえば、この文章を印刷したものは名刺特集のオマケにしようと、昨日決めた。予定は未定。未確認印刷物体。印刷が終わるまで、自分でも何をどうするのかいつもわからない。未知なる者の意思に導かれている、のではなく、ただの行き当たりばったり。(「2023年10月18日」)
『つくづく』vol.31(特集=名刺)が届きました。
雑誌『つくづく』最新号、金井タオル『やっぱり雑談が好き』と小沼理『みんなもっと日記を書いて売ったらいいのに』と同時に刊行された、問題の1冊(1枚? 1部?)。つくづく発行人の金井タオルの名刺がわりの手ぬぐいと紙片9枚からなる「校了するまで日記」が入った物体。実際、手ぬぐいにはどーん大きく名前が入っています。金井タオル以外、誰のものでもない名刺でもある手ぬぐい。
販売価格は1100円。オンライン・ストア〈平凡〉でも売ってみます。
11/9 店日誌
11月9日、木曜日。数日悶々と考えて、幾晩か酒を飲みつつ話をして、今朝になって急にスッキリした。集まりたい人たちはそのままでいい。心配なんておこがましいし、自分にそんな余裕もない。関わり方を変えればいいのだ。盛り上がりの渦から、距離を置くのもいいじゃないか。人は人。自分は自分。その認識を微調整しながら日々を重ねていく。やれることは多くないのだ。
昨日紹介した、金井タオルの「つくづく」三部作への反応多数! そのほか店内の古本、中古音源を目当てに来てくれる人も多くて嬉しいかぎり。毎日何かしらの入荷があるので、お暇があればご来店を。
今日明日は15時、土曜日曜は13時開店! 引き続き、よろしくどうぞ。
2023/11/08
『つくづく』2023年11月号
『つくづく』2023年11月号が届きました。
2冊のポケットライブラリと同時に刊行された、本体(?)の雑誌『つくづく』の最新号! 各号50部限定と手にした人も少ないであろう『月刊つくづく』の判型、仕様を踏襲しながらもページ数は倍増。記事一つ一つの読み応えも増しているから、読んでいくのに時間がかかる。小さいフォントに薄めの印字と老眼泣かせと言えるかもしれないけれど、どうにか読んでみてほしい。
創刊号から続く安定の連載「プロボケの“不定期”雑談」(年吉聡太・宮田文久・金井タオル)がまず面白い! その後の「旅先の積読日記」「贋作『つくづく』 編集長・金井タオル日記(抜粋)」など、見所たくさん。ゆっくりお楽しみください。
販売価格は1100円(税込)。オンライン・ストア〈平凡〉でも販売します。
『みんなもっと日記を書いて売ったらいいのに』
日記は書き手が主、できごとや感じたことが従のように思えるけれど、私にとってはできごとが主、書き手が従なのだと思う。その関係の中で、従者の自分があれこれ試行錯誤しながら書いている。(「できごとが主で、書き手が従」)
小沼理『みんなもっと日記を書いて売ったらいいのに』が届きました。
先に紹介した『やっぱり雑談が好き』と同じポケットライブラリから、もう1冊! 雑誌『月刊つくづく』からnote版「月刊つくづく」と書き継がれた同名連載を書籍化したもの。小沼さんの書く文章はじつに簡要、一回ごとの長さもちょうど良いので、はずむように読んでいける。回ごとに、さらりと重要なことが書かれているので、何度か戻って読み返すとジワリと沁みてくると思います。
連載記事に加えて「日記にまつわる3人との対談」も収録。参加者は飯田エリカ、僕のマリ、星野文月(以上、登場順)。小さいけれど中身のつまった、いい本です。
販売価格は1320円(税込)。オンライン・ストア〈平凡〉でも販売します。
『やっぱり雑談が好き』
コスパや意味を求める現代人にはとても意味のない、意味のないものを求める好事家諸氏にはとても有意義な、そんな雑談の本。
金井タオル『やっぱり雑談が好き』が届きました。
フリー(過ぎる)編集者・金井タオルが2022年12月〜2023年5月の半年間だけ刊行していた雑誌『月刊つくづく』(売価100円! 50部限定!)での連載「今月の雑談」と関連記事に新録2つを加えた細長い冊子。単行本や文庫本、ペーパーバックでもないポケットライブラリ。まずはこの判型に矢吹純の絵を使っているだけで、大拍手! ほかにない大きさ、気軽に読みやすい紙質で手にするだけでちょびっと嬉しい。
雑談相手は宮田文久、荻原魚雷、タカクマ&ツルモトマイ、太田靖久、千葉美穂、佐藤拓人、植田浩平(以上、掲載順)。宮田さんや魚雷さん、太田さんとの話が面白いのはもちろんだけど、専門学校時代の同級生タカ・ツルとの雑談のフリーキーな展開には驚かされた! 千葉さんや拓人くん、ワタクシ植田も好きなように話しています。
販売価格は1100円(税込)。同時刊行の2冊と名刺手ぬぐいも入荷しています。
『骨になる』
ふいに風や光に包まれたとき、からだじゅうが沸き立つ。自分の輪郭が限りなく溶け「我」から離れていく。写真にも映らないこの「感じ」が、山口洋佑の絵には満ちている。
山口洋佑『骨になる』が届きました。
愛知県名古屋市の書店〈ON READING〉の出版レーベル「ELVIS PRESS」から刊行された、画家/イラストレーターの山口洋佑の初作品集(ZINE等は除く)。2011年の「メルへニズム〜夢想の記述展〜」から本作への描きおろし「骨になる」まで、45点を収録。ページを開くごとに広がる世界の奥行き、作品のもつ美しい色彩を存分にお楽しみ頂けます。
販売価格は4840円(税込)。初回入荷分はすべてサイン入り。
11/8 店日誌
11月8日、水曜日。「楽しい、楽しい!楽しもう!」と言って集うことをやめない人たちを見ていると心配になる。どう考えても一定の調子で遊び続けられるわけがないし、毎度楽しいわけもない。その場に関わる個々人がその人のなりの楽しみを見出せていれば良いのだが、それもなかなか難しい。「楽しいことをやろう!」と宣い人を集めた催しがあっという間に破綻したのもつよく記憶に残っている(10年ほど前だけど)。
百歩譲って若ければ、いい。若くたってほんとはダメだけど、当事者が痛い目にあって学べることがあるなら、十分に意味がある。楽しさなんて脆いもので、実感してもあっという間に消えていく。尊い感情だとは思うけど、それだけを頼っていては、先が見えない。じゃあ、どうすればいい? と問われても、すぐには答えを返せないのだが。
数日前から複雑な感情が渦巻いている。どう言葉にするべきか思案しても、なかなか上手く着地できない。一体どうしたものか……と考え続ける以外ないのだろうか。
昨日今日で新刊の入荷多数! これから一つずつ紹介していきます。
2023/11/07
11/7 店日誌
11月7日、火曜日。おもいっきり眠っていて、目が覚めたら外は暴風。生温かい空気。昨夜はカエルがよく鳴いていた。この時期っぽくない気候につられて冬眠を終えてしまったのか、同時に何匹もがゲロゲロ、ガーガーと鳴いていた。たまに起きてもすぐに意識が遠くなり、寝てしまう。でも、カエルの鳴き声を聴いたのは確かな記憶。季節感が失われていく。
先週末からの三連休から一気にワープした感のある週明け。11月3日、4日あたりから7日にびゅんと飛ばされてしまった。時間の流れには逆らえない。どんな風に過ごせるか、どうやって時間を使えるか、考えても仕方ないのだが……(遊びすぎには要注意)。
引き続き、本の入荷多数。100円~300円の均一価格コーナーにもどんどん追加しているので、ご注目を。中古レコード箱を気にする人が増えてきた、ここ最近。本といっしょに買ってくれるの、けっこう嬉しい。
今週は通常通りに営業予定。オンライン・ストア〈平凡〉も稼働中。
2023/11/06
2023/11/05
11/5 店日誌
11月5日、日曜日。懲りずに学園祭の真っ只中を通り抜ける。数時間遅くなったからか、人の数が全然違う! ちょっとしたテーマパークを思わせる人の波。自転車を降りて全体のペースに合わせてゆっくり歩く。ワッフルを売る学生の声が涸れていた。産婦人科の方が出展案内をしている。家族連れや高校生くらいの若い人たちのグループも目に付く。ちょっとだけ祭りの気配が感じられた。
今日も書籍、音源入荷あり。オンライン・ストア〈平凡〉にも動きあり。連休中は出入りが多く、本の動き方もいつもと違う。日ごとに棚の表情が変わっていく。
13時から17時までの短縮営業! お暇があれば、ご来店を!
2023/11/04
『HOMES』
サヌキナオヤ『HOMES』が届きました。
〈stacks bookstore〉での同名個展にあわせて制作されたタブロイド型のZINE。チャック付きビニールバッグを開けて、折り畳まれた紙を広げるたびに見える街角が変わる。道をいく人、屋内で仕事をする人、空を飛ぶ鳥、散歩をする犬、山から降りてきた鹿……等々の暮らしの一コマを言葉を用いずにスケッチ。イラストを見ながら想像することで、描かれた街を読み込んでいく。
秀逸な発想と卓抜な画力とで構成されていて、見るほどに感心してしまう。裏面の下部にあるテキスト見つけると、より楽しめると思います。
販売価格は1300円(税込)。オンライン・ストア〈平凡〉でも販売します。
『Shut the Door There’s Nothing Left』
KTYL『Shut the Door There’s Nothing Left』が届きました。
東京都渋谷区〈stacks bookstore〉での個展にあわせて制作された作品集。リングノート形式で、手がけたフライヤーやマーチャンダイズのデザイン案、スケッチなどを収録しています。意匠はさまざま、キュートでポップなものがあれば、モノクロの差し迫った雰囲気のももある。どことなく諸星大二郎を彷彿とさせるタッチもあり、ストリート感だけではない魅力あり。
販売価格は2300円(税込)。初版は200部限定。