2024/09/16

9/16 店日誌

9月16日、月曜日。訳あって家から店まで歩いてきた。そりゃ暑い! だけど風がびゅーっと吹いていて、気持ちがいい。筑波大学に入っていつもとは違う道を通ってみると、建物のあいだを風が抜ける。こんなベンチがあったのか、とか、いつもの壁も違って見えるなーとぼんやり考えながら足を運ぶ。途中でゆうちょ銀行のATMに寄って、40分くらいで到着。扇風機をつけて、段ボールを広げて横になる。10分ちょっと寝てだいぶスッキリ。どうにか今日も店をやれそうだ。

つけっぱなしのラジオで、1974年特集の番組がはじまる。昨日の日誌で50年前かーと思っていたところなので不思議な気分。スペクテイターが最新号で特集したのは1976年、坪内祐三が転換の年と規定したのは1972年。その頃の日本には、どんな空気が流れていたのだろう。

忘れかけていたけど、今日も祝日。三連休の最終日。店にくるまでの道中で小さな子供と散歩をしている女性とすれ違って、こんにちわーと声をかけあう。街の雰囲気もなんとなくのんびりだ。

今日も通常営業。本の買取、査定に関することなど、お問い合わせはお気軽に。

2024/09/15

9/15 店日誌

現実に下町というものはあり、下町風俗というものも断片的には残っているが、そこはうす汚れ、みみっちい打算に支配されている場所であり、コラージュ的幻想による〈下町〉とは似ても似つかぬことを人は知るべきである。(小林信彦)(*1)

9月15日、日曜日。小林信彦『東京のドン・キホーテ』を読み出してすぐ、言葉を失う。鋭すぎる。冒頭の「黒豹昭和十一年」「私の見たメーデー事件」「ヨコハマ・グラフィティ」「消滅した町のこと」「小説に現れた東京弁」の5つに著者の都市感が凝縮されている。昼飲み、せんべろ、角打ち……なんて言葉が消費されまくっている現代にあって、〈下町〉は〈テーマパーク〉とほぼ同義だと言っていい(ちょっと前に歩いた野毛でそう感じた。週末の昼間だからしかたないかもしれないけど)。

下町は──といっても私の生まれた町のことだが、一九四五年三月十日をもって地上から亡くなったのである。いうまでもなく、東京大空襲による。(*2)

地方の人は地方に帰ってくれた方がありがたい。文化人も地方に帰って、おのおのの故郷に〈文化〉のタネをまくとよろしい。(*2)

こんな風に書かれてしまったら、郊外出身の自分には何も言えない。でも、まさしくその通り。一応の故郷めいた土地で〈文化〉のタネをまくようなつもりで、日々店を開けているわけである。上記の文章がものされたのは1974年。って、おいおい50年前だよ! 半世紀前にこんなこと書いてたのか……。

とりあえず今日も『東京のドン・キホーテ』を読みながら、店にいる。自転車のパンクなどあり、夜のイベントにどうやって、いつ行くかは未定なのだけれど、18時までは確実に開けていいるので、お暇ならばご来店を。

本の買取、査定のご依頼は常時大歓迎。些細なことでもお問い合わせはお気軽に。

(*1)「小説に現れた東京弁」 (*2)「消滅した町のこと」

2024/09/14

9/14 店日誌

9月14日、土曜日。アーサー・ライマンが好きだ。家で『Call of the Midnight Sun』のレコードを聴き、店にいる今はサブスクリプションで同じアルバムを流している。この人のことあんまり知らないなーっと気づいて調べてみると「アーサー・ハント・ライマンはハワイのジャズ・ヴィブラフォンおよびマリンバ奏者でした」(Wikipedia)とある。なるほど、ハワイの人なのか。だから暑い日に聴くと気持ちいいのかもしれない。ダラーっとして彼のつくった音楽に身を任せていると、とても楽だ。

今日から世間は三連休。まったく暑くてどうしようもないけれど、みんなどこかに出かけるのだろうか。人気のラーメン屋に並ぶ人たちは、どうやって猛烈な湿度をしのぐのだろうか。ちっこい扇風機みたいのじゃ、涼しさは得られないだろう。店が行列用に空調服でも配ったりもするのかな。ご苦労さまと言うほかない。

坪内祐三の日記を読み終え、次は西村賢太を読んでいくつもりなのだが、すぐには気分がかえられない。先週、図書館で借りてきた小林信彦『日本橋で生まれて』読み出すと、これがまあ! スルスルと読めて、コクもある。自分にとって、理想的な書物といっていい。

今日明日、明後日は13時開店。明日は18時までの短縮営業です。

2024/09/13

9/13 店日誌

9月13日、金曜日。今週にはいって、店が静かだ。その分、というわけじゃないとは思うのだが、オンライン・ストア〈平凡〉に動きがある。顔を知らないままの常連さんに気にかけてもらって、本を買われる。購入にいたらずとも、ちょこちょこと平凡を覗きに来る人が何人かいると思うだけで、少し気持ちが軽くなる。つくばにある実店舗では出会えない人がいて、動かない本もある。便利さだけでなく、確かに助けられている。みなさん、いつもありがとうございます。

いま読んでいる『昼夜日記』で坪内祐三の日記は7冊目。明らかに怒りっぽくなっていて、記憶を飛ばすことが多くなっている。亡くなった後で読んでもハラハラするのに、これをリアルタイムで追いかけていたら……。好き嫌いがここまでハッキリしている人とは今、なかなか出会えない。だから、自分は本を読むのか。どうなのか。

暇があるとインターネット(主にSNS)を見てしまって、重い気分になってしまう。そんな声をたまに耳にする。そんなときこそ、読書じゃないか。現実とは異なる時間に逃げこむのも大事だ。ほっとけば、キツい話ばかりが聞こえてくるわけだし。技術というと大袈裟だけど習慣さえ身につけば、本は読める。いい加減でもいいのだから。

9月25日(水)発売! Wool&The Pants『Not Fun in the Summertime』を当店でも販売します。待ちに待ったセカンド・アルバムは自主レーベルからのリリースで全9曲。いつかまた、つくばでも彼らのライブを開催したいなー。

今日は15時、明日明後日と明々後日は13時開店。ああ、またも三連休なのか。

2024/09/12

9/12 店日誌

ウガンダのタイコの合奏。エンテンガと呼ばれるタイコのサイズの違うもの15個のアンサンブルなっており、2オクターヴにわたるペンタトニック・スケールに正確に調律されている。タイコはバチで叩き、皮だけでなく胴も打つ。

9月12日、木曜日。朝なんとなく針を落としたのは、中村とうよう・監修『アフリカの音楽のルーツを訪ねて〈2〉アフリカ伝統音楽の楽器と合唱』。B面8曲目の“キュマ”がはじまると外の鳥の鳴き声が激しくなる。曲が変わって静かになったような気がしたので、繰り返して聴いてみると、特別なにも起きない。レコードの音に鳥が反応したのかも、という見立てはまちがいだったが、最初に鳴らしたときの状況はなかなかのものだった。

鳥たちにとってその囀りが完全無欠であることと等価な、人類にとって完全無欠な合唱の姿をここに見る。(山城祥二)

ライナーノーツをひっくり返すと、芸能山城組の組頭・山城祥二の檄文も載っている。「人類に似たもう人類でない生きものたちが、人類の歌に似たそうでない音列を、策謀の限りを尽くして血まなこでつむぎ競っているこの地獄に、あえて長居は無用というものだ」と締められるテキストの意味をつかめた気がしない。

入荷後すぐに完売したCHIYORI・YAMAAN・MARIAPEPINOS『OMEDETOU PARABIÉN EP』は今日、再入荷する予定。今週末15日(日)開催のリリースパーティーはきっと、つくば周辺ではこれまでになかった趣の催しになる。どんな状況が生まれるのかは足を運ばなければ、わからない。

今日も書籍、音源に入荷あり。お暇であれば、ご来店を。

2024/09/11

9/11 店日誌

9月11日、水曜日。目が覚めて5時5分。庭の草刈りはせず、本を読む。途中ですこしうたた寝をして気がつくと5時50分過ぎ。ラジオの気象情報を聞きながら、雑務を済ましてラジオ体操。暑い日がつづくけど身体の調子は悪くない。なんとなく目に入って針を落としたレコードは、KELLY HARRELL & The Virginia String Band『ST』(Self TitleってよりNo Titleっぽい)。今年4月に開催されていた展示の会場〈Coffee Ontario〉で矢吹くんから買ったもので、中身(1920年代のカントリー・ミュージック)もいいが、外見もいい。簡素だけれど工夫があって、地味ではない。

いま、読んでいるのは坪内祐三『続 酒中日記』。最新刊『日記から 50人、50のその時』を読み返したのをきっかけに同著者の日記シリーズの再読はじめたのは今月頭。6冊目まできて2011年3月11日(金)の記述にぶつかる。1998年からはじまる日記を追いかけるのは、なかなか大変だけれど、得るものも大きい。本の中では赤瀬川原平、松山俊太郎、小沢信男、中川六平なんて方々が存命で、その振舞いに触れられるのも貴重だ。

昨日の雑記に書いたM野さんからの買取を含め、古本の入荷多数。文庫と雑誌が中心だけれど、比較的安価で状態のいいものが多い。どんどん店に並べていくので、お暇があればご来店を。

今日明日、明後日は15時開店。オンライン・ストア〈平凡〉にもご注目を。

2024/09/10

9/10 雑記

店の前に赤い車が停まる。あ、これはと思うと同時にM野さんが買い取りの本を持って顔を出す。買い物かごいっぱいの雑誌と漫画、文庫本がたんまり入った紙袋がふたつ。食関連のポパイ、ブルータスをはじめとして、ジャズ、私小説や日記を特集した文芸誌にまざってあいみょん特集のギンザ、平野太呂さんが編集する『off the hook』などもある。うーん、シブい! と喜びながら査定をして、金額を伝えるとまよわず快諾。すぐに支払う。

趣味嗜好ってのは年齢に左右されるけど、瑞々しい感性は意識すれば保てるのかも。健全なミーハー感覚も大事だと感じる。大事なのは、渋みと軽みのバランスなのかな。M野さん、いつもありがとうございます。

(本といっしょに売ってくれたのは2枚のCD。ア・トライブ・コールド・クエストとナイトメアズ・オン・ワックス。ジャズとダブが好きだと話すM野さんとは波長が合うのも当然か……と納得させられた。)

2024/09/09

9/9 店日誌

9月9日、月曜日。お湯をたらして21秒。いーち、にー、さーんとゆっくり数える。にじゅういちで一拍置いて、お湯を注いでいく。豊田道倫「永遠の21秒」(都築響一・編『Neverland Diner』所収)を読んでから、コーヒーを淹れるときに意識して豆を蒸らすようになった。かつて学芸大学駅ちかくにあった喫茶店のマスターがこだわった秒数で、紙フィルターではなくネルを使うのが望ましいと話していたらしい。その店、もといマスターを描写した短文の味わいは深煎りコーヒーのようだった。豊田道倫さんの文章はとてもいい。

夜になって集った若者たち。水戸、市原、つくばの数人と軽く酒を飲んで、天久保を歩いた。牛久出身のやつはやたらに声がでかい。突然歌い出したり、近距離で電話をかけてきたり、とにかくエネルギーが有り余っている。ものすごい吸引力の台風野郎なのである。

朝、空気が乾いていると感じて店まで歩いてみる。先月までの灼熱状態ではないといえ、30分も歩くと汗がボタボタ落ちてくる。重たい荷物を持ってどうにか郵便局にたどり着き、発送をたのむと想定外の送料になる。ガーンと落ち込みはしないが、軽率なミスを目の当たりにして、言葉を失う。送料設定はむずかしい。

今日も通常営業。在庫確認、通信販売などのお問い合わせはお気軽に。

2024/09/08

9/8 店日誌

取り上げたものがどう論評されてるとかね、どう批判されてる、どう誉められてるとか、どんなふうに評価されてるとか、そういうことを読もうとすると、当てが外れるかもしれない。何をどう楽しんだか。それだけってのは変だけど、それがいちばん大きいですね。(片岡義男)

9月8日、日曜日。坪内祐三『書中日記』を読んでいてアッと思う。高平哲郎のラジオ番組をもとにして編まれた『植草さんについて知っていることを話そう』を読んだ気でいたけれど、巻末の座談会以外は未読だったかも。店にあったのは売ってしまった……が、あそこにはあるはず。ピンときて車を走らせると、やっぱりある! 新治にある小さな図書館(正式名は〈土浦市立図書館 新治地区分館〉)は静かで、きれいな時間が流れていた。本の量もちょうどいい。いい本が、普通にある感じで好ましい。

残されたものを見ていくと、彼の楽しんだ手作業が見えてきて、なかなか面白いですよ。まずとにかく、買って家へ持って帰って、部屋で自分の机の前に座って、そこでやおらひとつずつ手に取って、楽しむわけですよ。

いざ読み出すと、これが面白い。植草甚一という稀代の趣味人をメディアにして、関係者が語っていく。あれには困った、味覚はどうなのか、おしゃれだった、なんて話が主なのだけど、上に引いた片岡義男「植草さんの集大成を作ろうよ」がずば抜けて本質的。植草さんの実像を、敬意と共にまっすぐに表現する(彼は批評家ではない、というあたりが鋭い)。

開店前に天久保一丁目〈gallery Y〉で開催中のsasakure.個展「この夜の隅で」をのぞいてきた。ダイレクトメールやウェブでの画像より実物がよかった(日記のようなメモ帳も見応えあり)。会期は今日19時までとのこと。

今日明日は13時開店。オンライン・ストア〈平凡〉もどうぞよろしく。

2024/09/07

9/7 店日誌

9月7日、土曜日。先日行ったばかりの〈S〉に行き、とろろせいろの大盛りを頼む。すり下ろした自然薯のねばりを何と表現するべきか。固形ではないのだが、大きな塊のまま堂々とねばねばしている(コンビニやスーパーで売ってるとろろそばとはまったく別物だ)。どうやって食べるべきかを逡巡しながら、一口含んでそばを啜ってみたり、つゆにちょっとだけ落としてみたりと試してみたが、正解は得られなかった。まあ、とにかく美味かった。

10人ほどのランナーの集団があちこちで目に入る。蛍光色の服に身を包んで、サングラス、キャップ姿の人たち。今日はものすげーーーーー暑いのに、みんなよく走るよなあ。すごいなあ。でも、なんで今日に限ってあちこちで集まってるんだろうか。

イイジマさんは開店初期からの常連さん。昨日は遅めに時間に来てくれて、GUDTINGS『SWEETER THAN YOUR LOVER』CHIYORI・YAMAAN・MARIAPEPINOSOMEDETOU PARABIÉN EP、オクラ印の7インチ2枚をあわせて買っていく。しみじみとありがたい。

今日明日、明後日は13時開店! 本の買取は常時大歓迎、お問い合わせもお気軽に。

2024/09/06

9/6 店日誌

9月6日、金曜日。目が覚めると5時8分。15分過ぎから草刈りを始めて30分ちょい。NHKラジオ第一でニュースがはじまる頃に洗い物などを済ませて、本を読み出すと眠くなる。ラジオ体操のテーマ曲で目が覚めて、身体を動かす。ジミー・クリフ主演映画『ハーダー・ゼイ・カム』のサントラ盤に針を落とすと、B面。スリッカーズとデスモンド・デッカーの素朴な歌声に心がなごむ。レゲエ、ジャマイカ音楽が好きだなあ……と感じいる。

トゥーツ&メイタルズの「プレッシャー・ドロップ」が流れだすと、思い出すのはミッシェル・ガン・エレファント。もうずっと前、お台場に音楽番組の収録を観にいったとき、アンコール(ラストの曲だったかも)で演奏されたのは「ジェニー」。途中でチバユウスケがプレッシャー・ドロップを歌っていて、クラッシュ〜ミッシェル〜メイタルズの線が浮かび上がった。やはりあの人の存在は大きい。

所有している『ハーダー・ゼイ・カム』のレコードには〈MOJO MUSIC〉のラベル(5.5ドル)が貼ってある。ボストン滞在時によく出かけたフェンウェイ・パークに行く前に買ったような気がするのだが、どうだったか。2005年だったはず。

 CHIYORI・YAMAAN・MARIAPEPINOS『OMEDETOU PARABIÉN EP昨日が発売日。隣町に住むチヨリ×ヤマーン夫妻とサンティアゴ在住のマリアの共演盤は洗練されていて、ちょっとおかしい。聴くたびに面白いなーと思わせる。15日(日)のリリースパーティーも、すごく楽しみ。

今後しばらくは通常営業。オンライン・ストア〈平凡〉にもご注目を。

2024/09/05

9/5 店日誌

9月5日、木曜日。夕方前に突然あらわれたのは雑誌『つくづく』編集人の金井タオル。わ、なんで! とか驚いてると〈シリシリ器〉の新田もビールを持ってくる。わわ! なんで、なんで! と驚くこともなく、そのまま3人で飲みはじめる。店前に椅子を出すと風がきもちいい。虫の鳴き声がサラウンドのように響く。甲本ヒロトの下半身とロックンロールの関係性について意見を交わしながら、ぐびぐび飲む。ほろよいで〈わかたろう〉に流れて、わーわー話していたら、いつの間にか金井さんが路上でつぶれている……。

電話でつくば駅前のホテルを予約、タクシーを読んで金井さんを送り出し、さあ俺も帰るかってときに自転車のパンクに気がつく。あーーーー、今かよ! あーーーー、嫌だよ! と嘆いても歩くしかない。自転車を押して、たまに乗車して30分強。帰宅したころにはヘトヘトだった(その後、わかばさんからのメールで〈わかたろう〉での無銭飲食が発覚する)。

ブログを読んでるよ! とか、あの人も読んでるらしいよ、なんて声をよく聞くようになった。ありがたい、嬉しい。え! まじすか! と絶句することもある(SNSでの反応を気にするより楽なのだけど)。今後ともお付き合いよろしくお願いします。

今日明日は15時開店! なんだかんだあるけど、元気にやってます。

2024/09/04

9/4 店日誌

9月4日、水曜日。ぱちりと目が覚めると5時半ちょっと前。そこから30分庭の草をきってシャワーを浴びる。パラリンピックのニュースなどを聴きながら、雑事を済ますと6時半。ラジオ体操を終えて、レコードに針を落とす。アルトン・エリス『シングス・ロック・アンド・ソウル』。アルトンの歌声とバッキングの演奏とのバランスが良くて何度聴いても瑞々しい。このレコードを買って、手放さなかった若い自分を褒めたい。実家に放置したままだったのを見つけたのは3、4年前。

SNSで見かけた、川勝徳重『痩せ我慢の説』を探して書店をハシゴするも見当たらず、店員さんに聞くも扱いなし。そのまま店内を回遊していると、河村祐介・監修『DUB入門 ルーツからニューウェイブ、テクノ、ベース・ミュージックへ』を見つける。カルチャー・ベースを自称する店はクオカードが使えたので、迷わずに購入。常設の中古レコードはそうじて値段が高くて、閉口する(1枚だけ、めっけもんあり)。

たしかにダブはトリップ・サウンドだ。しかしそこにはかならずスペースがある。(…)ダブには空間がある。……そうだな、その空間に飛び込みさえすれば誰だって自分を忘れることができるんだ。(アンドリュー・ウェザオール)

『DUB入門』を手にしてまず目を通したのは、野田努によるアンドリュー・ウェザオールへのインタビュー。上記の箇所につよく共感する。ウェザオールが話す「スペース」、「空間」はマイルス・デイヴィスの音楽にも通づるものがある。マイルスがもしダブと遭遇していたら……と考えるだけでゾクゾクするぞ。

今日明日、明後日は15時開店。些細なことでもお問い合わせはお気軽に。

2024/09/03

9/3 雑記

庭の草を切っているとポツリ、ポツリと雨が降ってくる。気にせずそのまま没頭していたのだけど、数分後にはザーッとくる。キリのいいところで引き上げシャワーを浴びて、レコードに針を落とす。カールトン・アンド・ザ・シューズ『ディス・ハート・オブ・マイン』。2022年の再発盤。このレコードと出会ったのは新宿のディスク・ユニオン。なんとなく店内を回遊していて、帰りがけに壁にズラッと貼られているのを見つけて驚いた。なんと再発とは! オーバーヒートからだし、値段もわりあい良心的。いったん宿に帰って、出直して購入(残っててよかった……)。

メロウなレゲエ、屈指の名盤。その惹句に偽りなしの内容なのだけど、実はいまだにしっかり受け止められた気がしない。「ギブ・ミー・リトル・モア」の存在感ゆえか全体の輪郭が見えづらい。間違いなくいいアルバムなのだけど、妙な体感。聴いているうちに曲が溶けだして全体ににゅる〜として消えていくようで、なかなかしっかり掴ませてくれない。だからレゲエは面白いと言っていいのか、どうなのか。

雨降りだけど、ひとつだけ出かけたいところがある。今日行かないと、次に行けるかわからない。

2024/09/02

9/2 店日誌

9月2日、月曜日。店をはじめてから10年以上の習慣になっていたことを見直し、とある場所に行かなくなった。まる2ヶ月は経っただろうか、大した期間ではないのだが、自分にとっては大きなことだ。日々の行動に制限をかけてみて初めて見えるものがある、なーんて大袈裟な発見は全くない。ただ、やめてみた。それだけの話。でも、そろそろ行ってみようかなあと思わないわけでもない(読んで心配する人もいるかもしれないけど、マジで些細な話です)。

家から店まで徒歩でだいたい40分。そりゃもちろん暑いのだけれど、台風の余波なのか、風がびゅーっと吹いていて気持ちがいい。空は青く、雲はでっかい。夏だなーと感じながら歩いていると、脳内でザ・ハイロウズ「ハスキー(欲望という名の戦車)」が再生される。ロマンチックな理由で〜なんてそらんじながら機嫌よく歩いてきた。

開店前に近所の蕎麦屋〈S〉行く。長いこと贔屓にしている店なのだけど、タイミングが合わず、この夏はほとんど来られなかった。せいろの大盛りが来るまでの10分ちょい、静かな店内で本を読んでいて心がじーんと暖められる。蕎麦にも大満足。会計を済ませて「また来ます」と声をかけて店を出た。

今日も通常営業! オンライン・ストア〈平凡〉もよろしくどうぞ!

2024/09/01

9/1 店日誌

9月1日、日曜日。午前中、近所のスーパーに向かって歩いていると、道端でポットマンこと土田くんとすれ違う。数日前にもゴミを捨てているところで行きあった。近所に住んでいるからなあ……と結論づけようと思ったが、ちがう、なぜか土田くんとは路上でしょっちゅう遭遇してきた。彼がまだ大学生だった頃、ガールフレンドらしき女性と歩いているところに何度かすれ違っている(照れくさくてオレが爆笑したこともあった)。数年前には原付が壊れて止まっているところにも居合わせた。縁があるということか。

坪内祐三『日記から 50人の50の「その時」』再読したからか、『三茶日記』にはじまる日記ものを読みたくなる。著者自身がつける註の気取りに引っ掛かり、しばらく読めなかったのだが、今なら読める。佐久間文子『ツボちゃんの話 夫・坪内祐三』を副読本にすると書かれた出来事に厚みが出ると気づいたのも大きい。

JUN YABUKI『STANDING STILL AND WLKING JUST WAITING』(タイトル長いし、サイズがデカい……)を手に取る人がけっこう多い。過去に作品集を出したわけだし、展示も繰り返し開催したからか矢吹くんファンがいるのも驚かないが、やっぱり嬉しい。

と、まあこんな感じでいつも通りに開けてます。お暇ならばご来店を。