【アルバ・マリア・バレンシア/Alba María Valencia】
「太平洋の真珠」として知られるトゥマコ市の周縁部にあるチャグイー川ラ・シレーナ集落に生まれ、この地域の伝統的な葬礼歌とアルーヨの伝承を受け継いでいる歌い手。その伝承を両親から学び、65年以上にわたって歌い継いできている。その声をもって、自らの属する民の物語を語ることで、地域の記憶を守っている。コロンビアの「南部太平洋地域歌い手ネットワーク」に加盟している音楽集団「カントーラス・デ・イエルバブエナ」の共同創設者。
12月31日、日曜日。昨日は出入りの多い1日だった。開店してすぐ一件の買取依頼。近所の方が数年ぶりに本を持ってきてくれ、世間話をしつつ査定、支払。友人のお土産というお菓子をいただく。入れ替わるように近隣に住む同世代のお客さんが、しっかり本を選んで買っていく。その直前には、馴染みの商店(某コンビニ、L)のオーナーにもご挨拶。もう10年も同じ場所にいるからか、道で会えば挨拶をする人が増えていく。
その後も、常連Iさんが買取依頼の本を持ってきてくれ、しっかり査定。払った分以上の本(大物!)を買ってくれて、ぐるりとお金が循環する。こうしてうちの店は成り立ってるんだなーとしみじみ感じる。自転車の整備をお願いしているヨシオさん、名古屋での個展を終えたばかりのナツナさんも来る。夕方前からビールを飲む。
18時過ぎに来たソニックさんに店を任せて、大坪さんの車に同乗して、開店したばかりの〈生存書房〉に顔を出す。うーん、硬い(固い・堅い)! 本を買う技術はそれなりに身につけているつもりだけれど、なかなか手が出ない。選べない。どうにか2冊を抜き取って会計。爆買いするつもりもあったのだが、仕方ない。これからの本棚の変化が楽しみ。
店に戻ってソニックさん、ニッタとあらためて乾杯。だらだら話して閉店。それぞれ散り散りに帰っていく。また来年。よいお年を。友人たち、今年もありがとう。
今日は13時から18時までの短縮営業。新年は4日(木)から営業します。
12月30日、土曜日。午前中、時間があったのでつくば市吾妻のオアシス〈ブックセンター・キャンパス〉まで自転車を走らせる。吾妻に隣接する天久保1丁目には今年、いくつか店ができた。ブックカフェ、写真スタジオ、などなど。そのどれもに今のところ縁はない。店同士で無理に知り合う必要もないと思っているので、自転車でシャーっと通り過ぎるくらいがちょうどいい。それぞれが自立して、街と相対していければいい。
入店してすぐ積まれた本の最上部に、植草甚一『ぼくは散歩と雑学がすき』を見つけて、つい買ってしまう。中野翠『会いたかった人、曲者天国』も見つける。その他、小林信彦を何冊か。キャンパスでは今「年賀状展 ~詩人・作家・画家・政治家など」を開催中。個人的には田中小実昌、虫明亜呂無が見つけられて嬉しかった。
オンライン・ストア〈平凡〉にも動きがあるので、ご注目を!
2023年も今日をいれてあと3日。もうさっさと年が明けたらいいのに……ここ数日、焦らされているのは俺だけか。まあ、放っておいても日は過ぎて、来週になれば2024年の1月1日がやってくる。慌てずじっくり本でも読んで、過ごそうじゃないか。ビールでものみながら、好みの本を2冊か3冊。少しずつでも言葉を拾っていけたらいい。
来年から当店の定休日が変わります。これまでの月曜から火曜に休みを変えて、気分一新! 行けなかった展覧会や定休日が被っていた飲食店、書店なんかに行けるのが今から楽しみ。水曜から金曜までが15時開店、20時閉店。土曜日曜、月曜が13時開店(土曜は20時まで、日曜月曜は19時まで)。
今年は残すところ3日! 来年からは火曜定休で、どうぞよろしく!
12月29日、金曜日。さあ、ここまできた。幾人かに聞いて、察知したところによると、おおかたの人が今日まで仕事をして正月休みに入るらしい。まあ今日くらいは、業務、周囲との関係性に圧迫されずに定時で帰りたい。そのあとはパッと飲みにいくのもいいし、ひとりしずかに好きな時間に身を浸すのもいい。嫌な人につかまって、イヤイヤ居酒屋に行くのなんて、最悪だよな。とか勝手に書いているけど、実際はどんな感じなんだろうか。
うちの店は相変わらず、しずか。特別なことはせず、起こさずを心がけていると、のっぺりと時間が流れていく。積み上がった本に値を付け、棚に並べることをやるほかない。
今日明日は通常営業。明後日、31日(日)は13時から18時までの短縮営業。
12月28日、木曜日。年末にさしかかったこの幾日、どうも収まりが悪いなーとは思っても、無駄に過ごすのは勿体ない。ならば、しずかに本を読むべき。いやいや、俺の仕事は本の整理と値付けである。昨日は溜まった本に粛々と値をつけていった。そんな日に来るにはたまたま迷い込んだような人ばかり。店にまったくピンとこず、ぐるりと回って出ていく人。新刊書店だと思い込んで、新聞の切り抜きを持ってくるおばさん(嫌じゃない)。ニヤついたカップル(相手にせず放っておく以外ない)。
なんてことない平日が、何も起きずに終わっていくのも幸せと言えるだろう。そうしょっちゅう出来事に巻き込まれていては、身が持たない。明日は29日、明後日は30日、明々後日は31日。ぶつぶつとつぶやくように、過ごしている。
本の買取依頼、在庫確認など、お問い合わせはお気軽に。
12月27日、水曜日。明日が28日、明後日が29日、明々後日が30日。ただ、日が進んでいくだけで意味が増していくこの時期、正直に言って得意でない。どうにも寄るべない。特別なことなどせずに、ただ普通に過ごせればいい。できるだけ平静に、催事などに巻き込まれずにこの年末もやり過ごしたい。
気がつけば、矢吹純個展「水性ペンのブルース」は本日最終日。年の瀬の葉山、〈DAYS 386〉周辺は静かで心地よく過ごせそう。海を見に行きがてら、出かけてみるのもいいと思います。
明々後日まではどの日も通常営業。のんびり、本を見にきてください。
12月26日、火曜日。体調不良の兆しを感じたのが、ちょうど先週。丸一週間かけてようやく普通に動けるようになった気がする。朝パチリと目が覚めて、コーヒーが飲めてパンも食べられる。30~40分歩いても息がきれない。昼ごろにはお腹も減る。暇さえあれば本も読める。どれもこれも特別なことではないけれど、暮らしには欠かせないと気がつかされた。一つ一つの要素を拾い集めるように組み合わせて、ようやく自分の1日が戻ってきた。
今日から金曜までは15時から20時まで、土曜は13時から20時まで。大晦日の日曜は、13時から18時まで。年内の営業予定は以上の通り。年始は1月4日(木)から営業開始。
オンライン・ストア〈平凡〉に入荷あり。店内には日々、何かしらの動きあり。
12月24日、日曜日。今、自分が回復傾向にあるのは間違いない。7~8時間の睡眠でパチリと目が覚める。身体のダルさはほとんどない。残っているのは咳と鼻水。久々に会う友人たちには心配されるが、さほど辛いわけでもない。スポーツ飲料、ヨーグルト、甘い菓子パンなんかで、わずかな食欲は満たされる。そろそろ、しっかりしたものを食べたい気持ちが湧きつつも、あんまり味の濃いものは食べたくない。気まぐれにカップうどんを啜ってみても、うーん、いまいち(どん兵衛、もちっと美味かった気がするんだよなァ)。
次にコーヒー、続いてビール。どちらも美味くない。前者はただひたすらに苦く、後者はシュワシュワした味気なさしか感じない。これには驚きを通り越して落胆させられた。あんなにも好んで飲んでいたものが、とにかく不味い。まずはコーヒーを美味しく飲めるように戻したい。ビールはその次でいい。
こんな風に書くと心配されるが、火曜〜木曜の3日間比べれば、だいぶ良くなっているのは間違いない。静かに過ごす以外の選択肢なし。現場からは以上です。
今日は13時から19時までの営業。特別なことは皆無、いつも通りにやってます。
12月23日、土曜日。体力が戻ってきて、これまでのように眠れなくなった。それも当然。火曜から木曜までの3日間で約45時間は寝ていたわけだから。体力と時間を持て余して、ようやく本を読みたくなる。レコードも聴きたくなる。健康であれば勝手に読んで、聴いていたものと距離があいて少々不安にもなったけど、欲求は戻ってくるものだと知って安心した。次はコーヒー、続いてビールだろうか(正直、今はポカリがいちばん美味い)。
おそるおそる開けてみた昨日は、思いがけず多くの方が足を運んでくれて嬉しかった。入荷したてのDJ HOLIDAY『OUR DAY WILL COME』を求める人が複数いて、早くも在庫わずか。関連作のETERNAL STRIFE『FOOD CALLS』は残り1枚。
今日は13時から19時頃まで開けてみようと思います。お暇があれば、お出かけを。
12月22日、金曜日。ようやく朝が来た。昨日まではずーーーっと布団の中にいて、今が何時かなんて二の次だったが、今日は違った。6時のアラームに目を覚まされると、動かなきゃと身体の奥が反応している。皿を洗っているうちにラジオ体操が始まって、それが済んだらコーヒーを淹れる準備だな……とボンヤリと考えている。結局またすぐ寝てしまって、次に起きたら7時半。外はしっかり明るい。動き出さねば! と気合を入れて身体を起こした。
正直、昨夜が今回の風邪のピークだった。発汗、頭痛がおさまらず、混乱した夢の中にいた。とっ散らかっているのだが細部にリアリティを感じさせることもあり、妙な感覚のまま時間が過ぎていった(なぜか、竹内まりやの曲がずっと流れていて、すごく嫌だった)。嵐を越えると、みるみる穏やかになっていき、朝が来た。
3日振りの便通、空腹感。どちらも淡いものだけど、この数日は感触の欠片もなかったから、やはり嬉しい。まだ咳は出ているし身体は重たい。油断できない状態ではあれ、どうにか山は乗り越えた。
とりあえず今日は19時くらいまでは開けてみるつもり。お暇があればご来店を。
12月21日、木曜日。昨日もよく寝た。トイレに行くか、喉が乾いて台所に行く以外はずーーーっと布団の中にいた。15時から翌朝8時まで。一昨日と違うのはよく汗をかいたこと。そのせいか、目が覚めたら身体が軽くなったような感覚あり。食欲はまったく戻らず。でも、そろそろお腹がぐーっとなりそうな気がする。もちろん酒も飲んでいない。まだ、しばらくは欲さないだろう。
……と、ここまで読んでくれた方なら察してくれたかもしれませんが、今日も休みます。明日以降、どうにか通常通りに営業できたらいいのだけど。無理はせず、ゆっくり治します。
オンライン・ストア〈平凡〉でのご購入分は、少し時間がかかることもありますが、確実に発送しています。店を動かせない間、平凡を使ってくれる方々には感謝感謝。本当にありがとうございます。
12月20日、水曜日。やはり長崎・波佐見からの帰路で相当に疲れたようで、昨日は15時にとりあえず開けてみたが、すぐに横になりたくなってしまった。そんな時に限って新刊や新譜が届き、お客さんもけっこう来てくれる。参ったな……なんて思いながら座っていて、夕方に来た馴染みの大学院生(研究生?)のUさんに「声が(かすれていて)、シブいですね」「帰りは気をつけてください」と言われ、決心した。今日はもう閉める。家に帰って横になる。そう決めてからの帰り道の寒さといったら、キツいどころじゃなくガクブルだった。
18時には布団に入り、飲み物をのんだりする以外はずっと横になっていた。12時間以上。まだ、身体はダルいけど熱はない。どうにか動いて仕事に向かう。ただ、店は今日も早く閉める可能性あり。週末までには体調を整えたい。
オンライン・ストア〈平凡〉に動きあり! 文化戦争がテーマの『Spectator』52号が出足好調。初回入荷分にはステッカーも付くので、お早めのご購入を。
とかなんとか色々書いてきましたが、今日は大事をとって休みます。
12月19日、火曜日。まる3日ぶりに店に来て、ポストを覗くと河野友花さんがつくる折込冊子『respelatrol』が入っている。嬉しい。ぐいぐい読めるのに、じわじわと漢方薬のように効いてくる言葉、感慨のつまった今いちばん魅力的な定期刊行物である。感じることを投げ出さず、自分なりに思考して、世界と向き合い続ける河野さんの姿勢に勇気をもらう。ひとまず、じっくり読もうと思う。
とりあえずシャッターを開けて、誰でも入れるようにはなっている。だけれど、店主は疲労困憊。椅子に座っていられるうちは開けておくつもり。もしかすると、早仕舞いすることもあり得ます。
気がつけば、12月も3週目。現在地が見えなくなりつつあるのは、俺だけか。
12月18日。いつもより遅く起床。布団のなかでウダウダしたのちシャワーを浴びて、どうにか動きだす。共有スペースの暖房をつけておいて、この日はここで前夜の売上確認。二日間の公演でしっかり買ってもらえているのを数字でも実感。波佐見、長崎に留まらない九州に住む人たちの好奇心、未知の本や音源への欲求に応えることができて良かった。音楽をかけながら荷造りをしていると、2階に泊まるアルハちゃん、隣の部屋のガクトくんもやってくる。他愛ない話で盛り上がるうち、あっという間に10時過ぎ。もう行かなくちゃ! と3人で車に乗って、波佐見講堂に向かう(運転:ガクト、助手:アルハ、後部:ウエダ)。
会場ではすでに片付けの真っ最中。自分もすぐに送ってもらう2箱の準備を整えて、スタッフのホウセンジくんとパイプ椅子を倉庫に移して、スズキタカユキさんの大量の布が入った段ボールに封をしていく。このとき一緒に作業したのが京都でレコード店を営むジジさん(と友人のタケシさん)。10年以上前にムックのオカダさんと一緒に会って以来、久しぶりの再会。相変わらずの飄々としていて、観察眼、言葉選びの的確さに感心する(ま、話がメチャ面白いってことです)。
皮肉にもこの日だけ、天気がいい。遅れてきた大穂さんが流しているスカがぴったりハマる。いい音楽は気分を良くする。作業の効率も大事だけれど、軽やかな気持ちでことに向かうってのが大事なんだとつよく感じる。副団長こと制作のテッシー、地元のヨウスケさん、音響ヤスさんなどとやり取りして、タイムアップ。ケンタさんの車に乗せてもらってバス停に向かう。名残惜しいが、行かねばならない。しみじみ、お世話になりましたと伝えて、手を振り合う。こうして大事な場所が増えていく。バス停の先客の女性が席を譲ってくれ、お礼を伝えると「古本屋さんですか?」と聞かれて「え?」と応えると、熊本からサーカス公演を観にきたと話してくれる。最後の最後まで波佐見はやさしい。
乗車後すぐ熟睡。あっという間に福岡空港・国際線に到着。国内線に向かうバスに乗るべく歩いていると太もも、ふくらはぎを中心に足が重い。ここにきて金谷神社への往復で蓄積していたダメージを痛感する。重い荷物を抱えて、どうにか国内線までたどり着く。すこし待ってから搭乗手続き、荷物の預け入れ、保安検査と順々に済ませて、また待機。指定座席に着席後、16時半前に離陸。若い人たちはよく喋るなーとか思ってるうち眠っていた。
18時半前に成田空港に到着。乗るべく電車が迫っているが、荷物をなかなか受け取れない。京成線の乗換案内、切符の売り方が煩雑で時間がかかる。やむなく一本見送って、19時25分発に乗車。行きと同じ順路で乗り換えて、つくば駅に着いたのが20時51分。最後の階段を登りきり、地上に出ると、着いてしまった……と声が出た。
開場の15時半まで時間に余裕がある。せっかくだから、モンネルギ・モックにランチを食べにいく(前日、制作スタッフのヨウスケさんがカレーが美味いと教えてくれていた)。にぎわう店のカウンター席に案内され、カレーとビールを注文する。本を読みつつ、厨房内のやり取りを眺めたり、声を聞いたり。顔なじみなったスタッフさんたちが声をかけてくれ、軽く話す。めちゃくちゃに忙しいなか、各自の仕事を的確にこなしている。ちょっとした言葉にも棘がないから安心できる。ムックはマジでいい店だ。
さて、落ち着いたところで開場時間。雪が舞うなか、お客さんたちが集まりはじめる。それでもなお、最終的なリハーサルが続いていて、この日も15分以上押して受付開始。渡辺くんとミラーボール作動作業の確認をして、自分は店に。ビールをやりつつ屋台に陣取る。こんちはーと挨拶をして、お客さんと様子を観察し合う。いきなり目当ての本見つけて買う人もいる。しばらく吟味して、そのまま立ち去る人もいる。まあ、こちとらゆっくりやっている。また、戻ってきてくださいね〜なんて気分で座っている。
鹿児島の友人、中村くんと泰尊くん家族が来て、やあやあ言って乾杯する。その間もけっこうな数の人が興味を持って店にくる。それらの方とやり取りしたり、小用を済ませたりするうち、一部が開演。メンバーたちもいいテンション。大穂さんが変な楽器(ブブセラ?)を使ったり、トランペット奏者が混ざったり、波佐見高校のメンバーを迎えたり。滞りなく進んでいく。この日のメンバー紹介はやや長く感じたが、ダレすぎずに休憩に。この時間にも、多くの人が店に来る。賑やかに対応するまま二部開演。無事にミラーボールが回っているのを確認して一安心。バッチリハマる演出もあり、会場の集中力が途切れない。途中に挟んだスズキタカユキさんの能のパート、大穂さんの朗読もいい効果。会場の反応も悪くない。最後まで多くの聴衆を引き込むパフォーマンスに大きな拍手、口笛が向けられる。
終演後も店に来て、いろいろな話を聞かせてくれる人が多かった。規模に関わらず、充実した公演であれば、お客さんはなかなか帰らない。その法則を久々に実感した。……と、休む間もなく会場は片付けモードに。自分も本を箱にどんどんしまっていく。鹿児島の友人たちも作業に加わり、一気に会場がバラされる。この後は打上げだー! を合言葉に勢いよく片付けて、あっという間に、ほぼ完了。残りは明日に。打上げのために、みんなでムックにぞろぞろ歩いて向かう。
贅沢な食事、生ビール、大穂さんの切実なお喋りに引き込まれるうち、あっという間に24時半すぎ。じゃあ、そろそろ帰りますか! を何度か繰り返したのち、車に乗って宿に向かう。歯を磨いて着替えを済まして、すぐに就寝。
12月17日。朝、外をみると粉雪が舞っている。部屋の灯油が切れてかなり寒い。布団に入ったまま日誌を書いて、前夜の売上を確認する。意を決してシャワーを浴びると、いやあサッパリ。勢いのまま帰路の福岡空港までのバスを予約して、支払いと散歩のために外に出る。空気が冷たい。長崎の波佐見で冬の到来を感じるとは、まったく予期していなかった。
朝食をとって宿を出て、10時に会場着。本の配置を入れ替えると、自分にやるべきことはなし。とりあえず郵便局まで歩いてみようと思い立つ。10分ほどで着き、作業を済ませる。さて、どうしようか……考えつつ、往路とはちがう道に入ってみると金谷神社の大きな鳥居が目に入る。せっかくだから行ってみようかと歩き出すと、神社まで2.5キロとの案内板。けっこう遠い。行くか行かぬか、どうしようかと迷うが、エイヤッと歩き出す。そこからが長かった! 歩いても歩いても、目的地は見えてこない。静かな田舎道。たまに車が通るくらいで人はまったく歩いていない。さあ、そろそろ! と期待が出てきたところで、あと1.5キロの案内板。がーん! まだまだかよ……と落胆しつつ足を進めると人がいる。何かの収穫をしていた女性に、あとどれくらいですか? と聞くと、嫌な顔もせずにあと15分くらいで着くからがんばって! と応えてくれる。
ここまできたら引き返せない。粉雪が舞うなか歩いていく。坂の勾配がきつくなり、息が切れる。汗がにじむ。いったい俺は何をしてるんだ……あ! 境内の看板だ! やっと着いた。最後の階段を上がりきると、ちょうどよい大きさの社がある。高台からの眺めがいい。遠くの山に陽がさして、緑の色が光っている。きれいだな。仕立て屋のサーカス公演の成功と家内安全などの願掛けをして、金谷神社を後にする。帰路は下り坂をズンズン歩く。途中、途中の見覚えのある風景が愛おしい、不安がないから心も軽い。あっという間に街に戻る。約1時間半の冒険だった。
波佐見講堂に戻って、しばし休憩。ストーブに当たりつつぼーっとする。スタッフのみんな、照明担当の渡辺くん、音響調整のヤスさんと話す。地元波佐見の制作担当、ケンタさんが「さっき歩いてたね」と声をかけてくれ、金谷神社までの往復を伝える。「え〜!」と驚かれ、逆の方面も面白いから、なんなら連れていこうかと言う。いやいやと遠慮していたが、やっぱり行ってみますか! となり、車に乗る。ぐーんと裏道を走って棚田が広がる風景、窯元が蝟集する集落などを案内してくれ、マルヒロという会社がいとなむ〈HIROPPA〉というエリアに到着。いきなりの垢抜けた雰囲気に驚く。でも、不思議と嫌味がない。こんな場所をつくりたい人、かかわりたい人、たくさんいるだろうな。
ケンタさんはあちこちに知り合いがいて、慕われている。車内で話してくれることも面白い。誘ってもらわなければ、波佐見の魅力を感じないままだった。街には人がいて、店があり、家もある。距離感も違って面白い。うーん、いいところに来られたなあ。
12月16日。宿泊先は一軒家。いくつか部屋があるなかで自分が選んだのは和室、敷布団で目が覚める。シャワーを浴びて着替えたのち、散歩、朝食。部屋に戻ってゆっくり過ごす。10時前、同じ宿になった3人で車に乗って会場へ。雨が降ってくる。簡単な全体ミーティングに参加して出店準備を整える。昼過ぎにある程度の形ができたところで、隣接する〈モンネルギ・ムック〉でコーヒーを飲む。雰囲気がいい。端々まで気の利いた店のしつらえ、スタッフ、お客さんたちがつくる賑やかで温かな空間。少しだけ、ゆっくりする。
お隣の店の方、少しだけ知ってる方などに挨拶などするうち、16時になる。15分ほど押して開場。ムックのブースで買ったビールを飲みつつ、当店も営業開始。店舗共通の骨組と布張りの屋根で屋台のような気分が出る。座って、お客さんの相手をするだけで、まず楽しい。その上、はっきりと反応がいい。店前に出しているベンチの上の古本、平台の新刊、隣のおいた音源など反応があるものはさまざまだけれど、総じて食いつきがいい。こちらからつよくアプローチせずとも自由に、好きに本を選んでいく。
賑やかな空気のまま、一部開演。公演が始まって、すぐ〈波佐見講堂〉の形状の特殊さに気がつく。縦長だから横は短く、少し動けばかなりの至近距離でステージが見られる。反面、縦位置にいると、パフォーマンスの生々しさが感じづらい。位置を変えつつ、観る。スズキタカユキさんの屋根布の造形がきれいに収まり、ゲスト出演の波佐見高校の先生、生徒の演奏ともマッチする。曽我大穂さんの演奏、演出も的確。短くまとめた出演者紹介を経て休憩に入る。ここでも、けっこうな数の来客がありあっという間に時間が過ぎて、二部開演。
……ここが、正直に言って、かなりダレる。照明の不具合があり、渡辺敬之くんが走り回るも復調せず、全体がまとまらないままバラバラだ。どうにか最低限のラインを保って終演までたどり着いたところで火災報知器が反応するアクシデント。大事にはならなかったが、なんとも言えない微妙な終わり方。それでも、その後も買い物をする人、飲み食いする人などが残って会場は暖かかった。簡単に、とは言い切れないけっこう豪勢な初日打上げを終え、宿に戻る。歯を磨いてすぐに就寝。
12月15日。いつもより少し早く起きて、朝食。飛行機に持ち込むリュックサックの重さを計り準備OK。自転車に乗って店に行く。空港で出発前に預ける荷物の準備を整え、重量確認。余裕で範囲内だが手に持つとずっしりと重い。手持ちの本などを読んで時間を合わせていざ出発! シャッターを閉めて歩き出したところで〈千年一日珈琲焙煎所〉の大坪さんと行きあい、少し話して「では!」と別れる。数分歩いた停留所に着いた途端にバスが来る。ラッキー。たぶん定刻より遅れていたのだろう。
つくば駅から南流山、東松戸と成田空港まで乗り換えていく。最後の電車はスーツケースだらけ。車両の7割ほどが外国人観光客。目的地の空港第一ターミナルに着くと、人は多いのだが妙に静か。チェックインまで、ベンチに座って本を読む(ここで、加藤典洋『大きな字で書くこと/僕の一〇〇〇と一つの夜』を読み終える)。
並んで、預けて、歩いて、搭乗手続きを済ませていく。別の本に読み替えて、定刻を20分ほど過ぎて飛行機の席に着き、雨中の離陸。飛びだち直後の轟音にビビりしばらく目を閉じる。少し経って窓の外を見ると、雲の上。一面もこもこの平野が広がり、空は青い。陽の光がまぶしい。この年になって書くことでもない気がするが、空を飛ぶってやっぱり凄い。機内の雰囲気が落ち着くまでの間だけ、現実感が薄くなるような気がする。
2時間弱で福岡空港に到着。天気はくもり、気温は23度とアナウンスされる。預けていた荷物を受け取り、まずはビール。ホッとする。メールを返信するなどゆっくりしたのち長崎行きの高速バスに乗って、波佐見に向かう。約1時間半後に着いた停留所に迎えに来てくれたヨウスケさんの軽トラに乗り、〈波佐見講堂〉に着いたのは19時ちょい過ぎ。約12時間の移動は、さすがに疲れる。
メンバー、スタッフのみんなと声を交わして、弁当を食べる。すぐ近くだと教えてもらった〈モンネルギ・ムック〉に挨拶に行き、ビールを一杯。会場に戻って送ってあった本、二箱を開けて出店ブースに並べるなどして、22時ごろに作業終了。宿に着いてすぐ就寝。
12月14日、木曜日。オンライン・ストア〈平凡〉内の読書日記にも書いたのだけど、いましろたかし『未来人サイジョー』全3巻の衝撃が大きい。2020年から1970年へタイムスリップした主人公・サイジョーの台詞、感慨にいちいちうなずく。ああ、昭和は今より生きやすかったのか。現代令和の社会も捨てたもんじゃないはず……なんて感じで揺らされながら読んでいった。
さりげない町の描写一つ一つにも仕掛けがあり、物語を支える強度を生む。脇役から名のない人物の造形まで手抜きがなく、時代の雰囲気を伝えてくれる。読み終えた読者それぞれに、きみはどう生きるのかと問いかける凄みがある。
明後日までは暖かく、日曜月曜あたりから寒くなるらしい。こんな風にぬるい気温の12月は過去のあったか、どうか。なかなか大変な時代である。
今日は通常営業、明日15日(金)から17日(日)までは長崎出張。18日(月)は定休日。
恋愛関係における「やり直そう」は禁句であることは分かるけれど、レスリーに言われたら絶対無理だ。レスリーと何の関係も築いていない私だが、断ることができるか想像して一人で悶絶した。(「ブエノスアイレス」)
12月13日、水曜日。ガラッとドアを開けて……と、このくだりはもう止めて、書いていく。先週末、店に届いたのは浦和〈MICHELLE〉のコーヒー豆。夏に開催していた矢吹純の展示に足を運んでくれた小沼さんが営んでいるコーヒー・ロースタリー。新調した豆袋のイラストを矢吹くんが担当したのが縁で、わざわざ送ってくれたのだ。丁寧な手紙も添えられていて、デザインの発想源になったレコードのこと、それとの出会いなどが書かれている。
読み出してすぐにそのレコード、『THE REAL BAHAMAS』ってやつを俺も持っているぞ……とレコード棚を漁ってみると、あった! 数年前に〈パライソレコード〉で買ったノンサッチ盤。しばらく聴いていなかったけど、きっかけがあると違って響くから面白い。やはり、ピンときたものは買っておかなきゃ。その思いを強くした(実際、めちゃいいレコードです。これは)。
今日も「仕立て屋のサーカス・長崎公演」の準備がつづく。朝イチで郵便局から二箱発送。明日朝にも、もう一箱送るつもりでいる。出発は明後日。その日にむけて逆算していると陽が経つのが早く感じる。
今日、明日は通常営業! お暇があればご来店を!
12月12日、火曜日。ガラッとドアを開けて、入ってきたのは〈千年一日珈琲焙煎所〉の大坪さん。「さだむさんの写真展に行くけど、どうかな?」と呼びかけれて、一瞬惑うも、じゃあ行きます! と応えて車に乗る。助手席には初対面の写真家・濱田祐史さん、後部座席には友人の磯山くん。ぶーんと走り出し、10分ほどで会場〈gallery neo〉に到着。休廊日にも関わらず、斉藤さだむさんがひとりで待っていてくれた。
そこから、濱田さんとさだむさんの会話に惹きつけられ、卓上の貴重な資料群に目を奪われ、あっという間に時間が過ぎた。久しぶりの感覚。自分の予想を超えるスケール、バランスで交わされる言葉、発想に触れて、驚きのまま口をつぐんだ。ただ、耳を傾けて、目を走らせる以外出来なかった。緊張よりも興奮の多い数十分。
今週は14日(木)までは通常営業。15日(金)から17日(日)まで「仕立て屋のサーカス・長崎公演」に参加するため休業、18日(月)は定休日。19日(火)から営業再開だけど、その頃にはぐっと年の瀬の気配が高まっているのだろうか。
今日も店には入荷あり! オンライン・ストア〈平凡〉にもご注目を!
ガラッとドアを開けるまでもなく、店前に車を停めて降りてきたのは埼玉在住の友人で、大工の永山ソウくん一家。挨拶のまもなく買取依頼の本を3箱おろして、すぐに車を移動してもらう。やあやあと言葉を交わして査定開始、途中途中で話をしながら本を見ていくと、いましろたかしの新作、粒ぞろいの写真集や画集などが交ざっていて見応えがある。しっかり値を付けて金額の確認、すぐに了承。そのまま支払う。
渡したばかりのお金で、本や音源、手ぬぐいなどをたくさん買ってくれて大感謝(マジでありがとう!)。やり取りの最中に来てくれた、『轟音』の牧田さんも交えてわいわいお喋り。その間にも馴染みのご家族、初見のお客さんも数組来店してくれ、てんやわんや。会計と精算を済ませてホッとひと息ついたところに数見亮平くんが登場。つい最近の訃報に触れて、話し込む。
みんなが帰ったあと、夕方以降にもちらほらとご来店。買う人、買わない人、通り過ぎた人などを見送って18時過ぎに閉店。たまにある、短距離走みたいな1日だった。
昭和前期に建てられた美しい木造洋館で、どこか遠い国の果てまで漂うような音楽、揺れる布、映り込む光と影、喧騒と静寂。演劇なのか、ダンスなのか、サーカスなのか… 。音と布と光が即興で繰り広げる幻想的な物語舞台を、是非お楽しみくださいませ。
昨年以来の長崎・波佐見町でのサーカス公演! 会場は昭和前期に建てられた洋館〈波佐見町講堂〉。日程は12月16日(土)・17日(日)の二日間。金沢公演と同じくゲストはなし。曽我大穂とスズキタカユキの二者を核にした演目を披露予定。遠く、遠く、旅をして、夜の砂漠のような風景を見せるような……。こればかりは言葉にしても、伝えられない。ご来場の上、体感してほしいです。
公演前から開かれるマーケットは、当店が参加してきたなかでは過去最大規模。九州各地から集まる飲食店、物販店舗が並ぶようなので、公演と合わせてお楽しみに。その他の詳細は「仕立て屋のサーカス」公式HPか各種SNSでご確認を。
会期前日からの3日間(12/15~17)、つくばの店舗は休業します。19日(火)から営業再開。
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仕立て屋のサーカス 波佐見公演
日程:2023年12/16(土)、12/17(日)
会場:波佐見町講堂 ( 旧波佐見町立中央小学校講堂兼公会堂 )
住所:長崎県東彼杵郡波佐見町井石郷2200
【 BUY TICKET 】
前売 一般 ¥3,600 / 学生 ¥2,000
当日 一般 ¥4,600 / 学生 ¥2,000
* 乳幼児 〜18才 … 無料 ( 要予約 )
https://t.livepocket.jp/t/2023_hasami
【 日時 】
12/16(土) …
開場:16時 / 開演:18時
12/17(日) …
開場:15時半 / 開演:17時半
( 公演時間は120分 ( 途中休憩有り ) を予定していますが、前後することがございます。予めご了承くださいませ。)
問合せ :
circo.sastre@gmail.com まで、メールにてお問合せください。
_______________________________
[ 注意事項 ]
・幼児・未就学児童・小学生以下のチケットご購入は、安全対策のため大人1名様につき1名までのご予約にご協力ください。
・ご入場後は、お子様から大人の方が離れないように、ご一緒にお過ごしください。
・会場は土足禁止となっております。スリッパに履き替えてからのご入場になります。また、会場は冷える可能性がございますので、室内履きや防寒アイテムのご持参をオススメしています。
・撮影録音 ok … 演出効果の妨げや、他のお客様の観覧の妨げになる行為へは、お声がけや一時ご退場をいただくことがございます。予めご了承ください。
・チケットご購入後のキャンセル不可 / 座席指定なし / 並び順入場 / 着席 ( 開演後ご来場時スタンディングの可能性有 ) / 各種チケット限定枚数販売 / 年齢チケット対象外の購入不可
協力:
monné legui mooks
仕立て屋のサーカス波佐見公演実行委員会
THINNING
Photo by Ryo Mitamura
絵画集『夜の木』(12刷)が届きました。
当店で販売をはじめて10年目。インドでつくられる絵画集『夜の木』の日本語版、12冊目の表紙画に選ばれたのは「闇夜に光る木」。月光に照らされたのか、みずからの発光なのか、青みをおびた木の姿が神秘的な場面です。ビニールの封を解けば、あふれ出すインクの香り。他のどれにも似ていない黒、夜の表情。それぞれの木がもつ物語をゆっくり味わってほしい。
販売価格は3960円(税込)。オンライン・ストア〈平凡〉でも販売します。
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12月10日、日曜日。ガラッとドアを開けて入ってきたのは……誰だったのだろうか。昨日は店番太郎くんが店にいたので、誰が来たのかは分からない(一部、知っていますが)。そんなに客数は多くなかったと聞いているけど、問題ない。ドアを開けられる環境、状況をつくっておいてくれたのがありがたい。たまには臨時で休むことがあっても、基本的な営業日と時間は守っておきたい。それが、店の土台になるわけだから。
葉山〈DAYS 386〉で始まった、矢吹純個展「水性ペンのブルース」の片隅に当店もちいさく出店中。新刊とZINEを中心に、古本と中古レコード、トートバッグを置いています。展示はもちろん、デイズ周辺に流れる空気も楽しんでくれたら嬉しいです。
今日も通常営業。15日(金)16日(土)17日(日)は長崎出張のため、店は休みます。
12月8日、金曜日。ガラッとドアを開けて入ってきたのは、ひとりの男性。ニットキャップにマスク、大きなリュックを背負っている。ムム、どこか怪しいゾ……と警戒するも、すぐに気がつく。隣町土浦で〈生存書房〉を営むFさんだ。そりゃあ自分で店をやろうって人だから変わっている。でも、どこか可愛げもある人で、話すのが楽しくもある。営業は基本的には土曜・日曜・月曜の週3日。営業情報をご確認の上、都合が合えば出かけてみてほしい(今日はお休みらしいです!)。
今日、わたくし植田は葉山に出張。店は店番太郎くんが低速運行中(のはず)。店内やや灯油くさいですが、どうか気にせず、ゆっくりしていってください。出来るだけ少人数で、大きなカバンは背負わずに。居合わせた人それぞれが気持ちよく過ごせるよう、ご協力願います。
今日は13時から19時までの営業。明日は通常営業です。
12月8日、金曜日。ガラッとドアを開けて入ってきたのは、ふたりの女性。最近の傾向として期待できない組み合わせなのだが、入店後の動きが少しちがう。ほとんど迷わずに写真集のコーナーに足を向けて棚を吟味。そののち「(封を解いて)見ていいですか」と差し出したのは、けっこう分厚いロバート・メイプルソープの展示図録だ。そこでピンと来て、会計時に声をかけると、やっぱり! 写真好きの妹さんとそのお姉さん。頻繁でなくても、こうして来てくれるのが店の滋養になる。しみじみ、ありがたい。
チチ松村/中島らも『らもチチ わたしの半生(中年篇)』を手に取って、すぐに読み切る。このお二人のやり取りはヌル〜い湯加減。一度ハマるとクセになる。後半に登場するゴンザレス三上の話に触れて、ゴンチチの特殊さを思い知る。
今日も通常営業。明日、9日(土)は13時から19時までの営業。店番太郎くんが開けてくれます。
12月7日、木曜日。ガラッとドアを開けて入ってきた男性は髭に眼鏡、すぐに「あっ!」と声が出た。1983というバンドのリーダーでベーシスト、いくつかのバンド/アーティストのサポートをする新間さんが突然現れた。なんでも来年初頭(1/27)に1983の解散ライブを開催するらしく、その告知物を持ってわざわざ店に来てくれた。ひとまずこれでとビールを渡して話を聞く。たまたま居合わせたヨシオさんとも会話がはずみ、楽しかった。店にいると、何が起こるか分からない。
客足が多くなくても、しっかりと棚を見て、数冊の本を選ぶ人がいる。そうしたお客さんと、当たり前のやり取り(本とお金を交換して、お礼を伝える)ができるだけで、満たされるものがある。多くの人に注目される必要はない。できるだけ長く、こうしたやり取りを続けていきたい。
意図的に世の中のルールや体制に反抗するのではなく、自分の生活圏内で勝手をやって、それぞれの人が自分に嘘をつかず、正直に生きていけば、絶対に良い世の中になると本気で思っているんです。(松本哉)
オンライン・メデイアに上がっていた、素人の乱・松本哉さんへのインタビュー「夕方から始まるフリマという名の“温厚で緩やかなデモ”」が充実の内容。過剰に煽ったり、飾り立てられた言葉は皆無で快かった。
今日も店頭には動きあり。オンライン・ストア〈平凡〉にもご注目を。
泡のように浮かび上がる煌びやかな電子音、空間に滲むような淡い情感のメロディが宅録風情の歪み果てた音像に包まれた珠玉のラフ・スケッチ集。
12月6日、水曜日。ガラッとドアを開けて入ってきた男性は丁寧な物腰、一目見て、この方なら大丈夫と安心して放っておく。自分は入荷した本の値付け、届き立ての音源の紹介文を書くなどの作業をする(……でも、俺はこの人の顔を知っている。たぶん、あの人なんじゃないだろうか)。いざ会計となり、選んだ4冊を見て「これは」となって声をかける。少しずつ話を詰めていって、やっぱり! 同世代の信頼する書き手、橋本倫史さんだった。
ちくま文庫版『ドライブイン探訪』のあとがきのシブさ、『東京の古本屋』の味わい深さ、向井秀徳さんとのエピソード(「誠意を見せろ」)の話などが止まらない。ハイテンションの店主を嫌がらず、しっかり相手をしてくれた橋本さんに感謝、感謝。
昨日も新刊、新譜に入荷あり。溜めてしまった古本も値付けをして、店に出している。日々、何かしらの動きがあるので、気軽に足を運んでほしい。
今日明日、明後日は15時開店。9日(土)には久々に店番太郎くんが登場します。
『なnD(なんど)』10号が届きました。
昨年10月から1年ちょっとぶりの最新号。判型は変わらずの文庫サイズで厚みはやや増し、版画家の正一さんが手がけた装画も相まってこれまでになく渋みのある存在感。近代ナリコ、迫川尚子、三品輝起のぶっといレギュラー執筆陣のコラムにはじまり、時系列に並べられたインタビュー(グラスパーゆきこさんが登場!)、合間に挟まれる独白のようなコラム、鼎談などを編み込んだ誌面はしっかり読めるのに、軽やかな手応え。さまざまな文化、視点が混ざり合った約160ページ。
販売価格は1100円(税込)。オンライン・ストア〈平凡〉でも販売します。
徒党ぎらいで(わたしは、殆ど、パーティーというものにさえ出ないのです)、しかも、お金がないと、孤高といえば、きこえがいいが、実は〈孤低〉──しかも、まったくちがった生き方をしていて、自分で気がついていないのではないか、といった不安さえ生じてくる。(「中里介山について知っている二、三の事柄」)
12月5日、火曜日。小林信彦『東京のロビンソン・クルーソー』で上記の一節にぶつかって、ニヤリとした。この後に続く部分が重要なので引いておく。「もう、こうなったら、このやり方でやってゆくより仕方がない。ボールがこっち側にくればよし。向こう側にいっても、なんとか、やってみますか」。ふむ。俺もそれでいいんじゃないかな。おこがましくも、勇気づけられた気分。
こうして店をはじめる前に、小さなイベントを開催するのに一所懸命だったときに肝に銘じたのは「(特定の)コミュニティに媚を売らない」「日々の接待(めいた行い)を集客のあてにしない」の2点だった。ズルいことはしたくないのだ。ま、強がりと言われれば、それまでだけれど。
とか何とか書いているうち、2人の友人からメール。チバユウスケが亡くなったことを知る。言葉はなんにも浮かばず、空を見上げた。アールアイピーだの言ってもどうにもならない。自分のやれることをやるだけだ。
今日も店には入荷あり。お暇があれば、ご来店を。
お目当ては小林信彦、リチャード・ブローティガン、辻征夫。買うのは3冊。それを念じて東京に向かう。つくばエクスプレスを秋葉原で降りて、お茶の水まで歩いて行くまでにさっそく文庫本を10冊以上買ってしまう。喫茶店〈穂高〉で一息ついて、今日の目的を再確認。ディスクユニオンには行かなくていいのだが、一応見ておくか……なんて感じで覗いてみると数十分後には買うはずのなかったレコード、CD、本の会計をしていた。
そこからは寄り道せずに、目的のお店にたどり着く。が、そこは支店で、もう一つの店に目当ての本はあるらしい。5分ほど歩いて着いた本店の圧倒的な品揃え、値付けの鷹揚さに愕然として落ち着かない。あちこちに読みたい本があって、大体どれもが買える値段。結局目当ては買わず、見つけてドキリとした本を何冊か購入。
地下鉄に乗り、渋谷で下車。人混み乗り越えてたどり着いた〈中村書店〉でも本を買う。そのまますぐに、地下鉄に乗り、北千住でつくばエクスプレスに乗り換えて帰ってきた。慌しくも収穫の多い一日(散財とは言いたくない)。こんなことばっかり何年も繰り返している気がするが、大丈夫なのか。俺は。
12月3日、日曜日。今日も晴天。あたたかな陽気につられて、馴染みの蕎麦屋を訪ねると入り口脇に「新蕎麦」の文字。これを待っていた。迷わずにせいろの大盛りを注文、さわやかな風味を感じながらひと息にたぐる。食後に蕎麦湯をのんで大満足(蕎麦の実の味を感じた……)。お店に通いはじめて5〜6年か、毎年の大晦日にお邪魔するのも恒例になっている。ながく付き合える店があって幸せだ。
定時前に開けていたらダニエルさんが顔を出す。入荷後すぐに反応してくれた、DJ陳碩『ADM #003』とNORA GUTHRIE『Emily’s Illness/Home Before Dark』を買っていく。加えて古本も一冊。今日はいい日になりそうだ。
オンライン・ストア〈平凡〉に入荷あり! ご来店、ご利用はお気軽に。
12月2日、土曜日。年末が近いとはいえ日中はまだまだ暖かい。陽の光を受けながら、芝生に寝転ぶとポカポカと身体が暖まる。空は真っ青。広い公園に人はすくなく、とても静か。聞こえてくるのは遠くで鳴くカラスの声、枯葉が風に転がる音、たまに通る自転車の走行音。目を開けて、身体を起こすと遠くを走る車が見える。さあ、そろそろ店に行こうかと歩き出すと幾分か心が軽くなっている気がした。
その前、昨晩の空き缶(すげー量だった……)を捨てに行きつつ、買い物を済ませた。2番目に寄ったリユース店での会計後、レジ前に財布を置きっぱなしにしてしまったが、すぐ後のお客さんが声をかけてくれてことなきを得た。ビートルズのレコードを手にした男性、なにか心通ずるものを感じた。
今日明日は通常営業。散歩のついでにでも、お立ち寄りください。
12月2日、土曜日。しばらく顔を見てなかった友人が店に来て、ビールを渡される。開けるまもなくもう一人、そのうちにまた一人、話し込むうちもう一人別の知人が来る。ゆゆしき事態をひたすらに聞き、考える。その間にどんどんビールが消えていく。突如現れた、年末の渦に呑み込まれたような一日。できればもう少し静かに過ごしたい。
今日も書籍、音源に入荷あり。お暇があれば、ご来店あれ。
11月30日、木曜日。日誌に書くことが浮かばないときは、昨年、一昨年の同日に何を書いていたかを振り返る。2022年は前日に開催した「レコード寄席」に参加して得た感慨を綴っていて、2021年は移動や遠征で忙しかったようで予定の少ない12月を前に安堵していた。正直に言って、一昨年のことは記憶にないのだが、今より数多く映画館に足を運んでいたようだ。いったい何を観ていたんだろうか。
今年は、12月8日(金)から始まる矢吹純個展「水性ペンのブルース」の会場〈DAYS 386〉の片隅に小さく出店予定。その翌週15日(金)16日(土)17日(日)は「仕立て屋のサーカス・長崎公演」に参加するため、店は休み。それ以外は現状、特別な予定なし。
一昨日、昨日で入荷多数! 古本はどんどん値をつけて店に出している。新刊、新譜の紹介も大体済んだ。気になるものがあれば、ぜひ足を運んでほしい。
今日明日は15時開店! オンライン・ストア〈平凡〉もいい感じになってます。
アメリカのフォーク・ミュージシャン、ウディ・ガスリーの娘で、SSWのアーロ・ガスリーの妹、また、著名なイディッシュ語詩人アリーザ・グリーンブラットの孫であるノラ・ガスリーが、1967年、17歳で発表した唯一の、そして宝物のようなシングル。
11月29日、水曜日。昨日は荷物がたくさん届いた。京都の書店〈誠光社〉に注文していた書籍と、大阪のレーベル〈Em Records〉のレコードが同時に到着。その直後には大阪に住む知人が送ってくれた古本も。キャパオーバーで、泡を食ったような状態になるも、落ち着いて一つ一つ封を解く。作業が落ち着いて友人とビールを飲んでいた19時過ぎ、馴染みのIさんが雑誌を中心に本を売りに来る。
びゅうびゅうの風とどんよりした空、不穏な空気が立ち込めると、店はぱったり静かになる。車や自転車が多く通り過ぎるも、自分だけが街の動きから取り残されたような状態だ。でも、そんな時こそ店にいる実感が高まる。いつも以上にゆっくり時間が流れていく。
だんだん冬っぽい空気になってきたのかな。日中はまだ、暖かいけど。
「もともと人間なんて不自由のかたまりで、だから自由というのは心の中とか、そういうことなのであって、キセル乗車したとか、だれかと寝られたから自由だとか、そーんなことと自由とは何の関係もないんだ、っていうんですよ。」(和田夏十)
「平和なアジア」の心象風景を「水中庭園」という言葉に託して海洋アジアの音の交流イメージを展開した、あまりにもピュアな琉球電子サロンミュージック。