2021/12/31

金井タオルが2021年を振り返る

植田さんから「2021年の振り返り企画、書いてみませんか?」とメールをもらって「いいですね。ぜひぜひ。書くなら『つくづく』ネタ以外がいいですよね?」と自ら言ってみたものの、今年を振り返ってみれば、ほぼ『つくづく』に繋がってしまう。というか、それ以外になにをしていたのか、ほとんど覚えていない。『つくづく』とは、ぼくは個人で出している雑誌のタイトルで『BRUTUS』版元ドットコムで説明文を書いたので、ご興味あればそちらを。


で、2021年の振り返り。寄せては返す波のように、ふざけた号を出しては引き、出しては引きを繰り返していたら、12月31日になっていた。大方の人がそうであるように、世間の波に翻弄されながら、どうにかこうにか大晦日という岸にたどり着いた感じ。

今年も沢山の本を買い、そのまま積み上げている。先日、ピープル ブックストアで通販したこだま和文のレコードは、聴く前から行方不明。カバンのなかには劇場で渡される大量のチラシが入りっぱなし。それを整理しながら、「ああ、そうだ。『アナザーラウンド』はよかったなぁ」ということを思い出した。勧められなかったら観ない類の映画で、しかし冒頭からラストのカットまで、役者からなにからすべてが最高で、だからこそ事あるごとにひとに勧めている。

マッツ演じる冴えない高校教師とその同僚3人は、ノルウェー人哲学者の理論を証明するため、仕事中にある一定量の酒を飲み、常に酔った状態を保つというとんでもない実験に取り組む。すると、これまで惰性でやり過ごしていた授業も活気に満ち、生徒たちとの関係性も良好になっていく。同僚たちもゆっくりと確実に人生が良い方向に向かっていくのだが、実験が進むにつれだんだんと制御不能になり…。(オフィシャルサイトより)


つまり「友だちと互助会」がテーマで「自由研究」の話でもあり、「なんだか『つくづく』みたいじゃないか」と、やはり自分の雑誌に繋げてしまう。そんな思考状態ゆえに沈思黙考は程遠く、思いついたアイデアを片っ端から発表しないと気が済まない。でも、それではいけない。積読は積読でしかなく、やはり本は読まないとはじまらない。思いつきは思いつきでしかなく、練り上げたアイデアには敵わない。そんな当たり前のことに気がついた年だった。だから2022年は“ヴォリュームに気をつけ”ながら、“まとも”な雑誌をつくろうと思っている。

12/31 店日誌

12月31日、金曜日。昨日、取り置きの本を買いに来てくれた高校生、カンパニー社の新刊を毎度手にしてくれるお客さん、お二人の顔を見られて、言葉を交わせただけで店を開けていて良かった。こういう時でしか来られない人もいる。静かではあれ、自分は年の瀬に店にいるのが好きなのだ。

今日は13時から18時まで開けています。

2021/12/30

natunatunaが2021年を振り返る

2021年が終わろうとしている。

2020年の大晦日、わたしはひどい腹痛で救急車を呼んだ。入院にはいたらず、タクシーで帰宅してそのままアパートで年を越した。

あれから一年、振り返ろうと思ったが頭が思うようにはたらかない。とにかくあっという間。毎日記録したインスタのパレット日記読みながら振り返る。

○○○

2021.1.1
一度立ち止まれて本当によかった。

2021.2.3
PEOPLEに黒猫からの手紙と季刊黒猫とりにいったら、立ち寄ったわかたろうのわかばさんが豆くれて豆まきした。
色々落ち込むことも多いけど、みんなでまめまいたら、なんだかとても元気出た。
恵方巻は食べずにソイヤのごはんを食べた、大豆だしね。
身近にある好きな店に救われる。

2021.2.11
思い通りにいくことばかりではないけど、そういうもんだなとおもう、むしろ思い通りにしか日々が進まないとしたらそれはそれでつまらないとかいうと思う。コツは予想をしすぎないこと、答え合わせに夢中にならないこと、ワクワクドキドキできるこころを持ち合わせておくこと。

2021.3.14
毎日絵のことを考えてる。すっかり忘れることが幸せかもしれないし、いつだってこうして考えていることこそ幸せなのかもしれない。どちらだろうと、たとえ一日のうちの一瞬だろうと、わたしはそこに逃げ込んで絵のことを考えている。

2021.4.21
気づくと鳥を描いてしまってる、
多分そういう時なんだろな。
この一年、鳥に救われたな。

2021.5.3
一寸先は光
次の個展に向けてのタイトル考えている

2021.6.4
わたしどうなりたいのか
それ考えるときりがないけど
自分のことを驚かせるような絵を描きつづけたい。何かになりたいわけでもないんだ。わたしのまま。

2021.7.19
もやもや考える。
何かが絶対おかしいとおもうわ。

ざまあみろということば
この世で一番きらいなことばかもしれない。一生使いたくない。

2021.9.18
言わなくていいことばっかり

熱でてる間
ぼんやりネットみながら
この先には何もないなと思う

わかった気でいるだけで
何一つ手に入れることない

世の中の「ゆるせない」がとてもこわい

正しさを
決めるのはだれだ

2021.10.7
こんな夜中に底なし(※The ピーズの曲)聴いちゃったもんだから、一日の終わりに今日一の気分。昔から大好きだったけど、いま痛いほどわかる。とんでもねえなあ。ここ最近の漠然と落ち込んでいた気持ちのおかげでさらに倍しみる。そうだそうだ、荒療治だけど、こうしてまた動き出せるんだった。いい眺めだぜ。

2021.10.25
月曜日は休みにしたんだけど
結局仕事を少し進めた
でも、今日は休みだから、と思うととても気持ちが楽だよ。

寝る前にまた少しだけデカルコマニー
久しぶりにわたしの投稿を見た人は何事かと思うかもだけど
自分を楽しむための実験をしていた。

毎日同じ画材でずっと描いていると
どうしても、前に描いたものや、てぐせが出てしまう。
その事は悪いことではないけど、
自分に飽きてしまうんじゃないかと、不安で。
誰よりも一番長く自分と付き合わなければならないから
出来るだけ自分に興味持ち続ける努力しなきゃと思う。
きっと、良くなる。

○○○

絵を描いてばかりの一年だった。とにかく毎日毎日描き続けた。個展を何本かやって自分が今描きたいものは大抵描いてしまった気になり、途方にくれる。倦怠期みたいなもんかいな。そんな時、たまたまデカルコマニーで遊びながら作った1枚に久しぶりにドキッとして、涙が出るほど嬉しかったのだ。そこから、#なつな実験中と題して、色々実験をはじめる。

てなわけで今年の後半は実験の年、来年はそこからまた作品にしていく。まだまだ続くよ。

Today’s YouTube #409


 

12/30 店日誌

12月30日、木曜日。昨日が年内最後の営業日だった〈古着屋 may〉。挨拶がてらちょいっと覗きにいってみると、けっこうお客さんが入ってる。数ヶ月前から目をつけていたマイケル・ジャクソンのTシャツを買い、ささっと挨拶を済ませて店を出た。年明けは5日(水)から営業とのこと。

もう、ここまで来たら今日が何曜日か、関係ない。当店は明日まで開けています。

トニー李が2021年を振り返る

ZENDA MI ZENDA ZENDAMANYouTube番組

YOUTH OF ROOTSJamaica EPTree Of Fruits Records

ASOUND『Feel ItTree Of Fruits Records

④戌井昭人『ぴんぞろ』(講談社文庫)

MERIDIAN BROTHERSCumbia de la Igualdad/Cumbia del Relicario(オクラ印)

 

オリパラ&緊急事態宣言による自粛期間だった2021夏、遅ればせながら大ハマりしは、弱冠21レゲエDeejayZENDAMAN単身ジャマイカ移り住み、現地のビッグアーティストルードボーイ、ラスタマン、エロお姉そして年齢職業不詳のストリートワイズたち出会いながら師匠仲間とともにラガに邁進する姿記録したYouTube番組で、何よりZENDAMANレゲエに対する真っ直ぐな気持ち(とキラキラした瞳)に心が浄化され同時に、うした若者の煌めきに素直に感応している自分(の変化)も新鮮だった。

 

そんなZENDAMANチャンネルともにジャマイカで武者修行る仲間として紹介されたのがKON RYUだ。音楽プロデューサーである結成したレゲエバンドYOUTH OF ROOTSのボーカルギターとして活躍するKON RYUZENDAMAN同世代の若き才能で、バンドのメロウサイドの楽曲まとめた②で甘い歌声にうっとり。余談だが、横浜の金沢区に引っ越した友人から近所を散歩中にKON RYUパパスタジオ(拳POWA STUDIO見つけたLINEあり来年は海と山に囲まれたジャマイカにいちばん近い?ヘヴン=金沢区を散策したい。

 

YOUTH OF ROOTSの存在を知った同じ頃、旭川の友達から教えてもらったバンドASOUND「ボーカルのARIWAの母親がZELDAのメンバーで、ドラムがOKIさんの息子で……」という情報量の多さ一瞬圧倒されたが、ライブ映像を見て一発でファンに。しかもYOUTH OF ROOTSともがっちり繋がっていて、レゲエ界隈での新世代の台頭を実感させられた先月PEOPLE BOOKSTORE植田さん葉山で矢吹くんの個展誘ってもらった際、逗子の古着屋ECHOESに寄り道して残り1枚だった③を購入CD限定で収録されているThe Cool Notesの「My Tune」のカヴァーがとにかく最高だった

 

ZENDAMANをきっかけに磁力が帯びてそろそろ誰かとZENDA MI ZENDAの話で盛り上がりたいネット検索をすると2020年に同じように同番組にハマっていた人物を発見。何とそれが大好きな作家・戌井昭人だったのは嬉しい驚きだった。今夏読んだの解説で、エッセイストの石田千が「とろんとかけがえのないひまの匂いは、戌井さんの『すっぽん心中』や『俳優・亀岡拓次』にも共通している凪の美学」、戌井氏の小説に感じていた魅力を見事に言語化してくれていて痺れました。余談だが、本作に三ノ輪老舗天麩羅屋「土手の伊勢屋」が登場する。今年、新人デザイナーのショーゾくんPEOPLE縁で出会った友人)レーベル「OFFICE Flaneurの栞を作っもらったのだが、そ打ち合わせをしたの伊勢屋で天丼を食べた日だったことを思い出した。

 

その栞をインスタにアップし、「デザインのご用命は@shozoidetaまでとポストした数十分後オクラ印を主宰するヒデさんから「7インチのデザインをしてくれる人を探してるから紹介してほしい」とのDMが。が、コロンビアの変態エレクトロ・クンビア・バンドのとなって届けられたときは嬉しかった。ショーゾーくんは処女作ながら大胆にも、元のアルバムジャケットのイラストから少女たちを消し、空っぽの部屋にするというマジックを披露“東京からトロピカルミュージックを世界に発信するレーベルオクラ印の作品にジャケットデザインを含め、今年も楽しませてもら余談はもうない。


トニー李

編集者。EL CINNAMONSのメンバー。同名の雑誌をこれまでに4冊発行。現在冬眠中。

2021/12/29

JUN YABUKIが2021年を振り返る

2021年を振り返るというお題をいただいたわけであるが、手がかりがなくてはあまりにもあやふやなので、自分のiPhoneのアルバムの写真を振り返ってみた。

2020年の終わりから、年を跨いで〈PEOPLE BOOKSTORE〉で展示をした。髪の毛もちょっと長くみえる。というより現在の自分を見ているようだ、髪の長さが同じだ。口髭を生やしている。3月あたりから、作品集のタイトルなどを考えはじめているようだ。そうだったっけ?3月の終わりころはだいぶ髪が長いが、4月の初めの週に髪を切ってる。マスクをして花見をしている。作品集が段々と形になっていく。

5月か、もしくは6月初めに作品集刊行に合わせて展示をしようという運びになる。7月より〈千年一日珈琲焙煎所・Cafe〉で展示。作品集発売は7月6日からだったようだ。7月初め、設営に訪れたつくばは暑かった。植田さんはアロハシャツを着ている、そうだ、ハマったって言ってたっけ。7月いっぱいは展示、そしてプールのアルバイトもしていた。夏の写真は胸が少し苦しくなるのはわたしだけではあるまい。展示最終日、片付けが終わり、O氏と玉突きをしている。ああ、ちょっと苦しいな。8月はたしかあまり陽がささなかったのか?鬱屈していたような気がする。

8月の終わりか9月の初めに、10月に郡山市〈SMALL TOWN TALK〉
で展示をしようということになる。巡回展。19日の写真、光が美しい。ちょっと苦しい、ハハハ。あぁ、スクロールするごとに夏が終わってゆく。20日には夕方、父がスウェットを着ている。なかなか、夏が終わるようで終わらない。10月12日は、母のアップルパイを食べたようだ。秋だ。また口髭を生やしはじめている。『POPEYE』に作品集が掲載される。

10月の初めにはもう次の葉山での展示の話は決まっていたんだろうか。定かではないが11月2日に葉山での展示カードが手元に届いてるので多分そういうことだったのだろう。11月14日から神奈川県三浦郡葉山町、〈Days386〉で展示。期間は2週間。あっという間だったが、葉山に魅了されている様子が写真から見て取れる。胸が痛い。口髭が我が人生最長の時。よくもまあ。11月中頃に佐野アウトレットでリーバイスのジーンズを買う。勤労感謝の日に、全ての労働者を祝って白ワインを飲んだようだ、乾杯。29日、サヨウナラ葉山。

12月に入ると口髭がなくなっている。友人Mと盛岡を経由して弘前に2泊3日の旅にでた。当然ながらこの頃の記憶はまだ鮮明である。レコード、本、買ったな。バブアーのオイルも買った。知らない街を早朝、独り歩いた。標識を頼りに。弘前で紅玉を10個買う。帰宅して5日後、バブアーにオイルを塗布する。まぁ悪くない。20日に30歳になる。誕生日ケーキの蝋燭をげっぷで消そうと試みている、酔っている。11月から12月にかけて、月の写真が多い。寒さのせいか、よく撮れている。27日に今年最後の那須へ。朝から気温が0℃を下回る。那須は雪が積もっていた。SHOZOでコーヒー。メカスの友人日記が棚にあったので、めくる。天気のせいかいつもより客足は少なく、カップルがほとんどだった。いい時間だったような気がする。帰り道、ビートルズのアビイ・ロードを聴く。ビートルズの曲を聴くということは難しいことだったんだ。

そしていま、こうして打ち込んでいる指先が悴み始めている。書き残したこと、忘れたことの方が多い。外では消防団員の叩く拍子木の音が鳴っている。他は何も聞こえない。思い出そうとすれば思い出せることも多い。忘れてしまった方が楽になることも多い。23時を回る。先のことは全くわからない。肝に銘じなければならない。写真に撮っておこう。ポール・オースターの『トゥルー・ストーリー』には驚いた。片岡義男の『ロンサム・カウボーイ』も読んだ12月。

TACT SATOが2021年を振り返る

こんにちは、TACT SATOです。イラストとかデザインをしつつ、最近は、暇なときに安価なビデオとかレコードとかを買いに行ったりするのが好きです。植田さんが書籍と音源で、今年を振り返る記事を書いていたので、ぼくは、今年買ったり見直したビデオ(DVD等も含みます)の中で良かったものを挙げつつ、今年を振り返れればなと思っております。

THE THIRTEENTH FLOOR

ヒューマン・ハイウェイ

バカルーバンザイの8次元ギャラクシー

クローン・オブ・エイダ

マックスヘッドルーム

デモンシード

銀河ヒッチハイクガイドBBCバージョン

○個人的にコロナの影響で家に籠る事が多く、家の雑誌やビデオを見直す機会が増え、それらに再び影響を受け、奥さんとレコードを買い始めた去年、その流れで、今年は70年後期から80年代前期の荒いけど映像のデザインにガッツを感じたSF映画に癒されておりました。画面の端々に蛍光色が差し色として入っていたり、ガジェットのディテールのチャーミングさ、それに相反したシニカルな内容に、勝手にニューウェーブのようなものを感じて、影響を受けておりました。(それと、初期のガビガビのCG映像も見所の一つだと思っております。)

○そして、それら映画と並走するように、音楽は、銀座倶楽部テクノポップ特集号(去年の春頃にドミューンのフローリアンシュナイダー追悼番組で紹介されてポチって放置していた)を教典として持ち歩き、夫婦でテクノポップのレコードを休日には買い漁る日々を送っておりました。ステレオでレコードを聞きつつ、簡素だけどビカッとしたジャケットデザインを、ソファーにゴロッとしながら眺めるのが至福のときでした。

○また、サブスクとは無縁の我が家(ほんとはめっちゃ興味あります)が住まう団地にはケーブルテレビがかろうじて入っているため、そこでたまに放送される森田芳光の映画にもビビビと来ておりました。特に、ときめきに死すは、全体に漂う80年代のシンセ感と延々に終わらないまったり感が溜まらず、その雰囲気を追い求め、アンビエント的なレコードも買うようになりました。今現在は、安価なヒーリング系のCDや、ウィンダムヒルの録音物を集めるようになりました。今のところ来年も継続予定かと思います。

○最後に、来年は、ネオノミコンの影響から、ラブクラフトとアランムーアを再考したりする時間(ビデオと小説を集めること)と、レジデンツ本を読みつつ目玉集団のことを追っかける時間(レコードとグッズを買うこと)に暇な時間を充てたいと思っております。

○ちなみに今年見たベスト映画は、ミュータント・フリークスでした!ぶっちぎりで最高でした。

○ということで、みなさま酔いお年を。

12/29 店日誌

12月29日、水曜日。日が進む速度が遅くなっていく。じわりじわりと少しづつ、年越しに向かって進んでいく。ようやく29日までたどり着いた。今日あたりから、街ゆく人が増えた気がする。ひとり店にいると、社会を定点観測をしているような気になることがある。

引き続き、通販等のお問い合わせはお気軽に。

2021/12/28

12/28 店日誌

12月28日、火曜日。もういくつ寝ると、お正月。大晦日、元旦に向けてのカウントダウンがすすむなかで、今ぐらいがいちばん寄る方がない。まだ平日。働いている人もいる。街の空気もいつも通り。たぶん、明後日あたりから急に年末感が増すのだろう。

今日、明日は15時開店、20時閉店。のんびり開けてます。

2021/12/27

2021年を振り返る(書籍編)



○2021年に当店に届いた新刊、自主制作の書籍で印象にのこった5冊。

○上記以外では、離婚アンソロジー『心がなければ幸いだ』には恐れ入った。作り手、書き手の顔の見えなさが興味深い。素朴なお話がつまった『聞かせてください、あなたの仕事』も好印象。二木信さんが紹介してくれた『ヒップホップ・アナムネーシス』を通して“コンシャス”なる言葉の意味、用法を再考できたのは新鮮な出来事だった。

○雑誌では『inch magazine』vol.1と『ランバーロール』04。小さくとも熱のある編集がされた前者に触れて、『フライデー・ブラック』と『ムーンライト』に出会えた。後者は古山フウさん、山本美希さんの作品に驚かされた。全体的に重みのある作品ばかりでいまだに咀嚼できた気がしない(安永知澄「価値ある魚」にもドスンとくらった)。

○その他、金井タオルによる『つくづく』の動きからも目が離せなかった。最新号であるvol.22の形態はステッカー。来年早々にも、次なる号が控えているようなので、楽しみにしてほしい(現在、番外編冊子の在庫あり)。

○カンパニー社が刊行する書籍群にも、毎度驚かされた。『AA 五十年後のアルバート・アイラー』、『ソ連メロディヤ・ジャズ盤の宇宙』、『東欧ジャズ・レコード旅のしおり』。いわゆるマーケティング的なそろばん感情では発行できないものばかり。年末にすべり込んだ『魂の形式 コレット・マニー論』も強力だ。

○『IN/SECTS』vol.14所収のインタビューを読んで興味をもった、尾道〈古本屋 弍拾dB〉の店主・藤井基二さんが書いた『頁をめくる音で息をする』。題名、装画、内容がひびきあっている。店主の詩ごころがつまった本。サイン入りのもの、数冊在庫あり。

○忘れちゃいけないのは、知人が定期的に発行する冊子『respelatrol』。日記形式の折りたたみ、ペラ一枚。簡素なつくりであっても力のある内容でしっかりと読ませてくれる。届くたびに一気に読んでしまった。

2021年を振り返る(音源編)



○2021年に当店に届いた音源、印象にのこった5枚。

○「発売前に予約で完売!」みたいな流れには乗り切れず、地味であっても確かな意思を感じさせてくれるもの、一体誰なの? といったものに驚かされたし共感した。情報が少ない謎音源を再生するときのドキドキ感。これが店で、音楽を扱う醍醐味だ。

○今年出会った三つのレーベル。「オクラ印」「Saturday Lab」「SLIDE MOTION」のリリースは個人的かつ自由、謎をふくんだ要素も多くてワクワクさせられた。「これ、誰が聴くんだろう?」という音源を店に並べて、多からずとも反応があるとやはり嬉しい。お客さんと一緒になって遊んでいるとでも言うべきか(これが、年々むずかしくなっているのだけど)。

イサヤー・ウッダの3rd『DAWN』、その後に続いた7インチレコード付きフリーペーパーの配布には驚かされた。ローファイ・シティ・ポップ、ドリーミング・ファンクといった隠れ蓑では誤魔化せない特異な個性。引き続き注目したい。

○つくば駅から徒歩15分弱(当店からは20分強)の好立地に、〈Good Near Records〉が開店したのも見逃せない。盛り場〈Club OctBaSS/Bar DISCOS〉の並び、北大通に面したレコード屋。中古音源を主に縁のある音楽家による自主制作音源、Tシャツなどのグッズがあり、ビールものめる。来年には録音、練習ができるスタジオを開設予定。

○その店で買った、CHIYORI × YAMAAN『Mystic High』はすごくフレッシュ! 新鮮な作品だった。2021年、進行形のポップ・ミュージックであり、作り込まれたサウンドが耳に楽しい。夫婦による「家庭内自主制作」だからこそ生まれたもの。付属のZINEにも愛があふれていた。すばらしく創造的。

○昨日、12月26日に〈千年一日珈琲焙煎所〉で購入した、いろんなためいき『ちよそら』には驚かされた。全40曲の2枚組。ここに収められた作品、すべてを把握できる日は来るのだろうか(たぶん、来ないだろうな)。

『黒ダイヤ人別帳』(コロムビア編)

小さな町のバーやスナックからカラオケ教室、さらには行政や宗教団体まで、それぞれの事情で作られた自主制作歌謡盤を業者別番号順で無差別に向き合った音盤人別帳。

円盤のレコブック『黒ダイヤ人別帳(コロムビア編)』が届きました。
キングレコード編から約一年、今年も黒ダイヤシリーズが登場。これまで誰も手をつけなかった自主制作歌謡盤を番号順にかたっぱしから聴いて、レビューしていくレコブック界の獣道! それぞれの盤が製作された当時の社会状況、会社の思惑までをも浮上させる唯一無二の仕事です。

販売価格は1100円(税込)。レコブックのバックナンバー各種も在庫しています。

『dee’s magazine』vol.4

フリーペーパー『dee’s magazine』vol.4が届きました。
千葉美穂さんが個人的に編む雑誌、第四号の特集テーマは「マイ新聞」。封を解いて、現物を手にして驚いた。今号はタブロイド判。11ページにわたる誌面に大小の記事、35人が寄稿したマイ新聞が散りばめられていて、びっちり。ぎゅうぎゅう。ただ、これまで以上に楽しげな雰囲気が伝わってくるような気がする。ドアは開けたまま、出入り自由! って感じがするからだろうか。

今日から配布開始。入手ご希望の方はお声がけください。

12/27 店日誌

12月27日、月曜日。いよいよ曜日感覚がくるってきた。年の瀬だからか、今日もまだ週末が続いているような気がしてしまう。お隣〈千年一日珈琲焙煎所・カフェ〉の年内営業は明日、28日(火)まで。29日(水)、30日(木)あたりで仕事納めになる人も多いのかな。

今日は13時から19時まで開けています。ご都合に合わせてご来店ください。

2021/12/26

12/26 店日誌

12月26日、日曜日。例年、当店はクリスマスという行事には無縁である(気の利いた包装ができるわけがないので、余計に)。なのだが今年、昨日は多くの人が来てくれた。若い人たちが一人一人、自分なりにピンとくるものを見つけて、買っていく。すぐに決める人がいれば、時間をかけて数冊を選ぶ人もいる。

本や音源を選んで、買う。見た目や中身、何らかの手がかりをきっかけにして、人がものを選ぶ。その過程に立ち会えるのは、けっこう楽しい。決め手に欠けてか、何も買わずに帰っていくのも仕方ない。

これからが年末。年の瀬の雰囲気が日に日に増していく、この感じ。好きだなァ。

2021/12/25

『つくづく』

自由研究者の実験誌『つくづく』創刊号が再入荷しました。
ブログの過去記事をさかのぼると、当号の初入荷は2019年11月。そこから2年、つくづくの快進撃&迷走は追随する他者が見当たらない、独自のフォーム。急激なスピードで走ったかと思ったら、急なブレーキを踏んでみたり。コースを外れているようで、本線の先頭集団を意識するように走ってみたり。とにかく、編集者・金井タオルの個性があふれまくっている稀有な媒体、それが「つくづく」。

インディーズ雑誌『つくづく』は編集者・金井悟(現・タオル)という一人の男のさまざまが詰まった謎すぎる雑誌だ。(略)でもどこか一つでも引っかかったのなら、それはあなたと金井悟との共通項だ。–高石智一(『自家中毒』所収「雑誌のように生きたい」より」

今回の入荷で嬉しいのが創刊号(vol.1)の増刊号として刊行された『自家中毒』付きのヴァージョンが届いたこと。これが、売り上げが伸びない雑誌のPR、自作自演のための雑誌……として片付けてしまうにはもったいない! 充実の内容です(ただし、入荷は一部のみ。vol.1とのセット売り)。

上記号のほか、タオルブック番外編的冊子もございます。それぞれの価格は店頭でご確認ください。

12/25 店日誌

12月25日、土曜日。今朝のラジオはゴンチチのクリスマス特番。ゴンザレス三上・チチ松村両氏のお喋りは内容に関わらず、ただ話してくれているだけで身体の力が抜けていく。反面、選曲の角度には驚かされることが多い。やわらかく、するどい、耳の立て方。演奏への反応。お二人と一緒になって聴いていると、やっぱり音楽っていいもんだなあとしみじみと感じる。

朝に雨が降って、空気がきれいになったような。今日ものんびり開けてます。

2021/12/24

『Vibram YELLOW MAP』vol.2

『Vibram YELLOW MAP』vol.2が届きました。
登山靴、ワークブーツ、スニーカーなど様々な靴のソールを作る「ヴィブラム社」をガイドするフリーペーパー。前号に続いて同社が開発したカラルマート・ソールの歴史、解説に加えて国分寺〈リクチュール〉店主・廣瀬瞬へのインタビュー、ホンマタカシのテキストと写真を収録しています。日英バイリンガル仕様。

今日から店頭で配布しています。ご自由にお持ち帰りください。

12/24 店日誌

12月24日、金曜日。大晦日まであと一週間。寺尾紗穂『天使日記』中村隆之『魂の形式 コレット・マニー論』はじめ雑誌『Spectator』49号数見亮平『MAGAZINE』などの新刊・自主制作の冊子はじめ中古音源(今回は主にレコード)にも入荷が多い。この時期、毎年こうだったかな……と記憶をたどってみても、判然としない。

今、店はけっこう賑やか。ピカピカ、キラキラした華やかな状態とは言えないけれど、よく見ていくと面白いものがけっこうあるはず。外に出している均一価格の古本にも、日々、追加・入替があるのでお見逃しなく。

今日、明日、明後日も通常営業。お暇があれば、お運びください。

2021/12/23

『MAGAZINE』



Ryohei Kazumi『MAGAZINE』が届きました。
昨年3月に入荷した『no title』以来、久しぶりに届いた作品集。無尽のコラージュ、細かなエディットの効果がこれまで以上に強烈にひびきます。何より数見くんの作品のエッジ、エグ味が増していて、よろこばしい。何度見ても、全て見切れた気がしない、無限の広がりを持つ冊子。

販売価格は2400円(税込)。既発の作品集『For you』も在庫しています。

Today’s YouTube #408


 

12/23 店日誌

12月23日、木曜日。当店近所の憩いの場〈古着屋may〉は年内、12月29日(水)までの営業とのこと。当店や〈千年一日焙煎所・カフェ〉での展示に足を運んでくれるなら、ぶらぶらと歩いてみてほしい。歩くには少し距離があるけれど、同じ天久保の〈gallery Y〉では写真展「物質//世界」を開催中(26日(日)まで)。

年内はのんびり、やすまず、開けています。

2021/12/22

『Spectator』49号

自然をどうみるか。それは結局みられるべき自然の側の問題ではなく、私たちの側の問題にある。–高木仁三郎(『いま自然をどうみるか 増補新版』)

『Spectator』49号が届きました。
土のがっこうパソコンとヒッピーに続く特集は「自然って何だろうか」。エコロジー発祥の地・アメリカの自然観、宗教観をひもとく「まんが 人は自然をどうみてきたか?」に始まり、問題提起の章「『地球の論点』とエコモダニズム」から「三人に聞く 私たちの自然観(内山節・坂田昌子・能勢伊勢雄)」へとつなぐ3章構成。

暮らしのそばにあるものを改めて見直し、存在の意味を再検証する。明確に数値化できること、哲学的な観点をはらむもの。どれをも軽視せず、時間をかけて触れていき、考える。ただし、明確な答えは求めない。ここ数号の編集姿勢が結実した深みのある内容になっています。

販売価格は1100円(税込)。バックナンバーも常備しています。

12/22 店日誌

12月22日、水曜日。冬至。これから昼が長くなると思うと明るい気持ちになる。そう、朝のラジオで話していた。自分も同じだ。この時期、店にいると午後はあっという間に夕方になり、またたく間に夜になる。数十秒でも意識的に外に出るようにしないと、時間の経過を体感しづらい。

昨日、18時半頃に見えた月は大きかった。黄色くてまんまる。道ゆく人に「ほら、見て!」と声をかけたくなるような存在感。コンビニからの帰り道、ほんの数分だけ心も大きくなった気がした。

新刊の入荷多数! 通販等のお問い合わせはお気軽に!

『天使日記』

まっさらな心で自然に向き合い、人と向き合うこと。現代を生きる私たちがそれを忘れ、何かに流されるように生きているのだとしたら、立ち止まりたいと思う。

寺尾紗穂『天使日記』が届きました。
2018年の『彗星の孤独』以来となるエッセイ集は、その間にでウェブメディアや映画パンフレット、言論誌、地方新聞などに寄稿したテキストをまとめたもの。幅広く多様な生に寄り添い、死に触れた上で生まれた言葉の数々をおさめた全3章、長短はそれぞれ。手ごたえがあります。

販売価格は2420円(税込)。 入荷分はすべてサイン入り。特典冊子付き。

2021/12/21

『魂の形式 コレット・マニー論』

ジャンルの限定なしに、20世紀最大の歌手、あるいはやや控え目に言っても、20世紀最大の歌手たちの内の一人、と呼ぶのが相応しいと確信する。–大里俊晴

中村隆之『魂の形式 コレット・マニー論』が届きました。
刊行のたび書店やレコード店などで話題になるカンパニー社の新刊はフランスの女性歌手、コレット・マニーの研究書。「コレット・マニーとは誰か。誰であったのか」という書き出しから1960年代のデビュー、政治的な目覚めとそれに連動する音楽活動、フリージャズやシャンソンとの邂逅……と、1926年から1992年までのマニーの生涯と追走します。

この紹介文を書いている今、現時点での自分はコレット・マニーの音楽、歌唱を1秒たりとも聴いていないことを白状した上で書きます。つい数時間前に手にした本書、すごく重要なものだと感じています。

販売価格は2420円(税込)。同社の既刊もいくつか在庫しています。

長谷川友里 写真展「物質//世界」

考え事を進めるために,森の中は最適な場所の一つだ.物質と物質の境界を踏みしめる.物質からなる自分自身をも確かめ直すように,固まった思考をほどきながら,水辺へ向けて足を進めた.しばらく静かに進んでみると,どれかであってどれでもない眺めが現れた.

長谷川友里 写真展「物質//世界」
日時 2021年12月19日(日)–26日(日) 11:00–19:00
会場 gallery Y(茨城県つくば市天久保1-8-6グリーン天久保201)