これはすごい。思わず一気に読んでしまった。
円盤のレコブック最新作『日本とタンゴ』。震災直前に運命的に邂逅したタンゴレコードからはじまる円盤店主・田口史人による、レコード探訪記であり日本におけるタンゴ文化の追跡記録。
「わたしのレコード話の身上は、レコードそのものと体験をもとに考え、想像を巡らす」と本に記しておりますが、要すれば対象にまつわるレコード一つ一つに針を落とし、丁寧に聴いていくということ。湧き上がる瞬間のジャッジを採用せず、レコードまるごと味わいきる。さらに、その周縁にある盤にも耳を傾けることで見えてくる当時の状況、社会情勢をも織り込みながらすすめていく発掘作業。これは、簡単なことじゃありません。
完全手製のレコブックはじめ、円盤のあらゆる制作物に通底するこの姿勢、田口さんのしおれない探究心には本当に驚かされます。見た目は地味で洒落っ気も欠けるのかもしれない。でも、ここには凡百のクリエイターをひれ伏させる迫力があるんです。
販売価格は864円(税込)。タンゴに馴染みがなくても、楽しめます。
※付け足し:「高度成長期の日本の、こと娯楽に関しての変化は容赦なく、数年前の流行すらまったく過去のものになってしまい、そして変化する方向は間違いなく、簡単で、便利で、その対象も低年齢化していったのです」って、これ現代にもそのまま当てはまることだよね。