この会では永井さんが大好きだった音楽の側にぐっと引き寄せ、
巷の様々な音楽の場でも近年あまり聴くことのないあれやこれやを 交えて
レイド・バック 永井さんに倣い、お話をさせていただく予定です。
まず一点、大事なことを書いておきます。ぼく、植田浩平は生前の永井宏さんに会ったことはありません。だから当然、永井さんのワークショップには参加していないし、永井さんと喫茶もしていない。〈サンライト・ギャラリー〉に流れていた空気も知りません。
ただ、永井さんにつよく影響を受けているのは間違いない。たぶん最初に知ったのは『relax』のフリーペーパー。大学生だった自分は、そこに載っていた『a hundred poems』がすごく気になった。本、そのものというか、書物からにじみ出ている空気に触れてみたいと思った(その紹介文を書いていたのは、たぶん岡本仁さん)。好きなこと、もの、ひとは存在していたけれど、素敵なものに出会って芽生える感情や感触、温度をどう生活に落とし込んでいいかわからなかった時期。何か、その為のヒントがあるような気がして、中目黒の〈cow books〉まで買いに行ったのをよく覚えている。
そこからは割と夢中で、永井さんの著作をむざぼり読んだ。『モンフィーユ』なんかも好きだった。あの本に流れている空気、どこか呑気な暮らしかたに憧れた。ジョナサン・リッチマンという名前はそこではじめて認識したし、ビーサンでペタペタ歩いて暮らしたいなあ、なんて思って真似をした。雑誌『relax』に漂う気分の発信源はここなのかもなあ、と考えていた。
当時よく耳にしたのは、ジャック・ジョンソン。彼の登場は自分にとっては大きいものだった(「ユルくて、いいんだよ」とオススメしてくれた先輩は、今思い起こすとどこかストーンドな雰囲気だった)。サブライムやベン・ハーパーに混ざってフィッシュを聴いたり、「Buffalo Records」のスタンリー・スミスからライアン・アダムスに流れてダン・ヒックスやボビー・チャールズに浸ってみたり。レイドバックした音楽の楽しみ方をジャック・ジョンソンが教えてくれた。スカとロックステディ、レゲエの違いも分からずに、ジャマイカの音楽にも触れはじめた頃。
今、自分の店でやっていること。ほぼ丸腰で無防備なまま、店にいること。お客さんにも極力リラックスして楽しんでほしいなあ、なんて思っていること。その根源は、この時期につちかった感覚が大きいのかもしれない。脈絡なく書きながら、気がつきはじめた。
ここからぐっと時間を飛ばして、インディペンデント・レーベル「windbell」を運営する富田和樹さんとのことを書かないといけない。そう、この文章は12月15日(日)に開催するトークイベント「マーキュリーシティからの便り」の告知をするべく書きはじめたのだ。前置きが長くなってしまったので、この続きはまた改めて。だから、ここからが本番です。どうして今回、永井宏さんに関する催しを行うことになったのか、話していきます。
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