2026/01/25

1/25 店日誌


外国人著者による日本論から始まり、民俗学的な本、聞き書きの手法で書かれた本へと進み、最後はなぜか爆弾犯の本へ。音楽に例えるならば、民謡からフォークソングを経てアナーコ・パンクに着地という具合か。ちなみに、途中から左の方へ旋回しているのは、10月に映画館で観た、レオナルド・ディカプリオが急進的左翼を演じた映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』の影響ですね。

1月25日、日曜日。青野利光が2025年を振り返る。ご存じ、『スペクテイター』編集長。事務所は当店から車で5分、家から歩いて10分ちょっと、まごうことなきご近所さん。最新号ができたときはもちろん、バックナンバーの注文にも直納品してくれる。誰よりも早く仕上げてくれた原稿もいい按配、飄々としつつ自虐と毒のまざった語り口がなんともいい味。「なんともはや、ユルユルで場当たり的なチョイス」と表する読書MIXを作ってくれたのも嬉しかったなァ。

個人の行動が可視化され、管理が加速する現代において、定住を拒む「漂泊」という生き方は、いかなる意味を放つのか。日本の歴史と民俗を辿り、現代人が失った精神の根源を掘り下げる、あらたな旅への案内。

スペクテイター55号の特集は「にっぽんの漂泊民」。前号「パンクの正体」特集への反応もようやくハッキリとしてきたのだけど……いく人かの読者いわく「さっぱりしない」「どうも違和感があった」「ウーン、これはこれでありなのかねェ」という感じ。そうっすよねえ! それでいい! なんてやり取りをしたのは、きのうのこと。

誰もが同じように楽しめて、喜べるものなんてあるわけがない。ポピュラーなものにだって賛否両論、いろんな声が届くはず。雑誌や音源、小さなイベントだって同じこと。できるだけ他者の意見に耳を傾けて、自分なりに咀嚼できればいい。

今日も通常営業! 本の買取り、在庫確認などのお問い合わせはお気軽に。

2026/01/24

1/24 店日誌


朝、白い天井。ついさっきまで、どこかにいたような感じがすると思った。まだ胸がどきどきしていて、ぼうっとしていたら、夢の内容を思い出した。悲しい夢は本当のことよりも息が長いと思う。振り返って残っているものはしみじみとあまく、戻っていくわけでも止まったわけでもなく、永遠になったふるさとなんだろう。あたらしいふるさと。

1月24日、土曜日。森本友が2025年を振り返る。わりに前から知ってはいるのだけど、なにを考えてるのかよくわからず、しばらく不思議な人(死んだ言葉をつかえば「不思議ちゃん」ってやつ)だなーっと思っていた森本さん。近年ちょっとずつ輪郭が見えてきたような気がしてきて、やり取りしやすくなったかな〜いや、いまだによくわからん! なんて感じでぐらつきながらも楽しく付き合えるようになった。彼女はいま、当店での「ふるさと」フェアに参加している。個展じゃなくて販売促進のための催事だったはずなのだが。

PEOPLE BOOKSTOREで個展開催中の森本友さんのアナザーサイドの展示がが本日より焙煎所で始まっています。詳細は後ほど。(*)

いつのまにか、近所の〈千年一日珈琲焙煎所〉で展示がはじまっていた。個展じゃない催しが勝手に派生した「アナザーサイドの展示」。なんのこっちゃい。でも、それが全然嫌じゃないし、いい感じに盛り上がってくれたらいいなーと思う。

きのう届いた『Spectator』55号の特集は「にっぽんの漂泊民」。まず、丸尾末広による表紙画がビシッと目に入る。肝心の内容は、過去の名特集(「禅」「わび・さび」「日本のヒッピー・ムーヴメント」)を引き継ぐものになっていて、手ごたえあり。

今日もいろいろ入荷予定あり! オンライン・ストア〈平凡〉もどうぞよろしく。

2026/01/23

1/23 店日誌

『シビル・ウォー』『サブスタンス』『愛はステロイド』『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』と、残忍もしくは陰気で自意識こじらせたようなやつ、他人への共感能力に決定的な欠如のあるやつが出てくる映画ばっかり観てたように思います。

1月23日、金曜日。キングジョーが2025年を振り返る。いやあ、ジョーさんが参加してくれたのは嬉しかった! 映画を数多く観てる人はそれなりにいるけど、こんな風に言語化して、印象を伝えてくれる人は多くない。どれだけの数を観て、がんばって劇場に通ったかって話じゃなくて、個人的な興味を熱源にしながら静かに映画を観続ける。そんな人がまわりにもちょっとだけいて、彼・彼女の話を聞くのが好きなのだ。

あと大きかったのは、10年近く集めてたタイのレコードでミックスCDを作ったこと。アジア音楽と文化を“タムブン”の精神で伝えるメディア”てんぱりてんぷる”やタイ音楽DJのKO MEGさんによる活動を見て「おれもなんかしたい」と思い立ったことがきっかけでした。

昨年、当店でもたくさんの方が反応してくれた『THE GODFATHER OF THAILAND』。3部作構想だったとは完売してから知ったのだけど、ということは、たぶん今年も何かしらがリリースされるわけだ。そうなりゃ当然仕入れるし、ジョーさんを招いてなにかできたらいいなーとも考える。

午前中、理髪店〈Bespoke〉に行ってきたため、開店が遅くなりました。ちなみに、来週27日(火)・28日(水)は連休です。それ以外の日は通常営業。

てなわけで、今日よろしくお願いします! 新刊の入荷予定あり〜!

2026/01/22

1/22 店日誌


驚いたり悩んだり、違和感、徒労感とか。でもそれも結局のところ、突き詰めれば自分自身のもんだい。このままどんどん自分のあれこれを切り捨てていって、私の中の空洞がもっと広がれば、芸術のちょうどいい容れ物になれるかな。

1月22日、木曜日。河野友花が2025年を振り返る。河野さんのテキストが読みたいからこの「振り返る」シリーズを続けてるといって過言じゃない。だって、こんなこと書ける人、オレは他に知らないんだもの。感情を込めつつ、抑制の効いた言葉選びがされていて、スーッと身体に入ってくる。本、映画、音楽のリストを見るだけでもじゅうぶんに楽しめる。今年は息子の泰然くんも参加してくれたのも嬉しかったなあ! 河野さん、来年以降もよろしくお願いします。

ピープルでは、わたしのつくる雑誌の即売会をやらせてもらい、やはりピープルまわりの愉快な仲間たちが開催するイベントにも呼んでもらいました。そのほか、様々なイベントで商品について喋りまくりました。当たり前なんですが、ちゃんと説明すると売れるんですね。

つづいて、金井タオルが2025年を振り返る。受け取ったときに、この短さ! 淡白さ! 最高だなーと感じたのをよく覚えてる。泣いたり泣かせたり、心震わせなくていい。こういう人がいてくれないと、20人に頼んでる意味がない。テキスト・ウィズアウト・ソウル。ぱっと見、魂のこもってない文章だけど、金井さんって人がここにいる。

この時代、何かしらの危機感を抱かずにいるほうが難しい。ニュースに耳を傾ければ嫌なことばかり。SNSは余計な動画を延々と垂れ流す。だけど、危機感が高まり過ぎてエモーショナルになっていくのも危険だと思う。やたらにソウルフルな言説にも要注意。できるかぎり平静を保って、穏やかに暮らしていきたい(にしても、また選挙なんだもんなァ……)。

今日は通常営業! 明日23日(金)は13時〜19時の短縮営業です。

2026/01/21

1/21 店日誌


古本屋しかない時代だった。新本屋には売ろうにも商品がないのだ。戦争で版元が潰滅したので、新刊書が出ないのである。その空白を古本屋が一手に引き受けた。(種村季弘)

1月21日、水曜日。種村季弘『書国探検記』の冒頭に置かれた「シークレット・ラビリンス」は戦後まもなくの書店状況から語り出され、実感的な古本屋讃歌へと展開していく。種村氏いわく───「古本屋の書棚の蔭では何が起こるかわからない。能率的な本探しのための配置はない、とばかりも言い切れないが、整理しようにも整理のつかない本がある。すぐお隣に並んでいても、時代が二ケタ三ケタとんでいるのが珍しくない」。こんなお客さんがいるならば、とっ散らかった古本屋も悪くないと思えてくる。

ひとりの人間が長年買い集めてきた本を買い取ることは、その人の人生と向き合うことでもある。同年代の人生に向き合うことは、自分の人生とも照らし合わせることになる。

代々木上原駅のすぐそばにある古書店〈ロス・パペロテス〉店主、野崎雅彦が2025年が振り返る。 渋谷で用事があるときは大抵代々木上原駅で下車、20分ほどかけてちんたら歩いていくのがちょうど良い。必然的に野崎さんのお店に顔を出すことが増えて、去年はたくさんお話を聞かせてもらった(何冊かの探求書との出会いもあった……!)。数少ない同業の先輩。聞きたいことはいくらでもある。

今週は23日(金)のみ13時開店、その他の日は通常通りの営業予定。古本はもちろん、新刊書や新譜にも動きが多くなりそうなので、ご注目を。オンライン・ストア〈平凡〉やインスタグラムとも連動して紹介していきます。

店内暖かくして営業中。本の買取、在庫確認などのお問い合わせはお気軽に。

2026/01/20

1/20 雑記

滋賀県彦根市〈山の湯〉に向けて古本を一箱発送したのち、久しぶりで〈かつ善〉へ。口開けで入店すると、最後まで他の来店はなく、テレビの音を聴きながらゆっくり食した。市内のとんかつ屋ではここがいちばんちょうど良い。

そのあと、夕方前に買い物に出た以外はほとんどコタツの中にいた。種村季弘『人生居候日記』はダシの味が染みこんだ煮物みたいな本。「不景気でも、不景気でなくても、しみじみ不景気に飲みたがる人がいる。そういう人が、小出しに、かつ濃密にしみじみと、片隅のお店を猫みたいに膝にのせて撫でている」と閉じられる「片隅の飲み屋」がとてもいい。ああ、飲み屋に行きてェなあ。

2026/01/19

1/19 店日誌


1月19日、月曜日。知人があげていた写真をみて、老けてるな〜洒落てないな〜とちょっとショックを受ける。まあ、実際42歳で若くないし、日頃からオシャレしてるわけじゃないし、酔ってたわけだし……言い訳めいたことを頭の中で転がしてみても、それなりに落ち込む。自分は確実に年をとったのだ。知り合いの美容師さんに「そのままでいいんじゃないか〜」と言われたのは嬉しかったが(別件だけど)、うーん。やはりこのままじゃダメだよなぁ。

筑波大学のなかを歩くのが楽しい。武道場あたりからズーン、ドシーンと音が聞こえる。相撲場では機械音。別のところではチア? かなにかのダンスの音楽。サッカーボールを壁にあてたり、ラグビーボールをパスしていたり。ジロジロと見ないように注意しつつ、あちこち観察しながら歩いてきた。

今日は通常営業! オンライン・ストア〈平凡〉もよろしくどうぞ〜。

2026/01/18

1/18 店日誌


またはじめて、手製本をした。ミュージシャンにたないけんさんの「いかだで銀河」という作品。彼の詩の中にみつけた一文「ちいさな景色にならないか」という言葉にとても救われた一年。実際はその詩はわたしが思う意味合いとは少し違うかもなのだけど、そうさせてくれる自由さがある。抜き出しておまじないのような気持ちでポッケにいれてる。

1月18日、日曜日。natunatunaが2025年を振り返る。つくば市に住む絵描きのナツナさん、ひょんなことで知り合い、やり取りがはじまってから20年。まさか、こんなに長く関係が続くとは……と書いて、違うんだよなー。そんな簡単な言葉ではまとめちゃいけない。ただの仲良しじゃないし、モヤモヤを抱えたこともある。それなりに歳を重ねるとエモーション&ソウルだけでは先に進めないときもある。それでも! どうにか、なんとか、できるだけ率直なやり取りを重ねて、今もこうして関係がつくれてる。

そんなナツナさんに誘ってもらって「安藤明子 と にたないけん」に出店するため、今日は16時までの短縮営業。会場はつくば市東光台〈キッチン ソイヤ〉。ソイヤは開店から20年とのことで、なんともまあ、ここにも書くべきことが沢山あるのだ。周年ナントカってのは好みじゃないのだけど、何かやれたらいいな〜と考えている。

(ライヴのイベントに本って必要なのか? みんな読みたい? そんな疑問を消しきれないまま、いくつか出店しているけど、ハッキリしてるのは手を抜くと反応もヌル〜くなるってこと。なのでしっかり真面目にやります。隣で〈つるばみコーヒー〉店主がコーヒーを淹れてくれるので、暖かくなると思います。)

というわけで、開店! オンライン・ストア〈平凡〉もよろしくどうぞ!

2026/01/17

1/17 店日誌


1月17日、土曜日。EXOTICO DE LAGO、LAKEの中核メンバーであり、曽我部恵一ランデヴーバンド等のギタリストでもある長久保寛之のソロ名義=EXODELIC『ROCK ‘EXCODELIC’ STEADY』が再入荷! 音のこもったロックステディ~エキゾチックなインストゥルメンタルに、不穏なビートが被さってくる……。息を飲んで耳を向けていると、異国調のギターリフが裏打ちを刻みはじめて、遠くで女性ヴォーカルも聴こえ出す。独自の揺らぎかたをするカセットテープは、2025年を象徴する作品のひとつ。

画像解像度とは、画像を構成する点の密度を表す数値で、自分がCDサイズのデザインを納品するときがだいたい400dpi(通常)なんですが、ごくたまにロックコーナーをゴソゴソ漁っていると、それを大きく逸脱しているであろう解像度おそらく72dpi(ネットにあげる画像くらいの解像度)くらいのジャケに出くわすことがあるんですが、とんでもない違和感と、同時に、自分たちは解像度というクオリティーコントロールに縛られていたことに気づくことが出来たんです。

TACT SATOが2025年を振り返る。常連メンバー、タクトくんの記事には厚みがあって、読みがいがある。わかりやすい形でソウル、エモーションが表明されないからスルスル読めるのだけど、よーく文字を追っていくと激アツのパッションが漏れ出している。毎年参加してくれるのが、とても嬉しい。

今日も通常営業! 明日18日(日)はイベント出店のため、16時までの短縮営業です。

2026/01/16

1/16 店日誌

東京という町の特色は、森鴎外のいう「普請中」にある。急速な近代化が進むからいつも工事が行われている。風景が次々に変わる。東京の人間はこの風景の激変を日常的に体験する。(…)京都や奈良のように(註:「な」が正しい?)古都とはそこが大きく違う。古都では「歴史」が重んじられるが、東京では小さな「記憶」が大事になる。(川本三郎)

1月16日、金曜日。今週に入って、川本三郎の著作をつづけて読んだ。『東京抒情』と『台湾、ローカル線、そして荷風』。上記引用部をふくむ前者の舞台は東京、後者はあちこちの町。どうやって移動して、どんな人と会い、どこで飲むのか───著者はときに迷い、困惑しながら乗り物や店の扉を開けていく。冒険や旅ってほど大袈裟なものじゃないけど、潔くさっぱりとした心持ちがよく伝わってきて、読んでいて気持ちがいい。

2025年を振り返ると、自分の中では大きな変化があった年だった。生まれ育った東京を離れ、宮崎県の高鍋町という町へ行くことになったのだ。アート作品を制作しながら町おこしをしていくという仕事を見つけ、それがたまたま高鍋町だった。

さいとうよしみが2025年を振り返る。長く暮らした経堂から縁もゆかりもない、宮崎県高鍋町へ───自ら選んだはずだけど、誰かに選ばれ、動かされたような引っ越しの顛末をそっちょくに綴ってくれた。「どんなに緻密な計画を立てたって、10年後のことは誰にもわからない」と実感できる人は、多くないと思う。

今日明日は通常営業。明後日18日(日)はイベント出店のため、短縮営業です。

2026/01/15

1/15 店日誌


1月15日、木曜日。年末年始に少しずつ読んでいたのは、panpanyaの漫画作品。白泉社・楽園コミックスで年1冊ペース(2014~2023年)で刊行されていた『蟹に誘われて』『枕魚』『動物たち』『二匹目の金魚』『グヤバノ・ホリデー』『おむすびの転がる町』『魚社会』『模型の町』『商店街のあゆみ』の9冊(に加えてもう1冊、全10冊)を常連マツノさんから買い取ったのだ。タイトルにつられて『おむすびの〜』から読みはじめて『魚社会』、『模型の町』、『商店街のあゆみ』と進んでいった。その後で『蟹に誘われて』から順に読んでいって『グヤバノ・ホリデー』に到着。

なんとなく読みだした、panpanya『グヤバノ・ホリデー』には脱帽。こんなにも懐の深い作品をつくる作家とは知らなかった。記憶のゆがみ、時間のながれに対しての鋭敏な感性。それを表現する柔らかな線。「知らない夏」には短篇小説のような味がある。

去年の5月にも『グヤバノ・ホリデー』を読んでいて、このとき書いた感想を友人がほめてくれたのを覚えている(嬉しかったんだ……)。漫画に関してはなにも知らない。もっと、色々読んでみたいと思っている。

仮面ライダーになりたいまま、気づけば40才になっていた人の話です。自分もへやで仮面ライダーのまねをして、1人でよく見えないてきとたたかっています。なので、読んだ時まず最初に、自分と同じことをしてるじゃん!とおどろき、なにか近い物を感じました。

だから当然、河野泰然くんが挙げてくれた作品リストを見ても分からないものばかり(ちいかわ? 漫画だったの……みたいな感じで)。もちろん最年少! 小学5年生の河野泰然が2025年を振り返る。読んでみてほしいです。

今日も通常営業! オンライン・ストア〈平凡〉もよろしくどうぞ〜。

2026/01/14

1/14 店日誌


やめるとき、一種のイベントごとのように消費した人たちに伝えたいことはずっと変わらない。あったものはすぐなくなるということ。誰かの何かに期待してただ待っているより、私はそんなものに頼らず、次に行く。(小倉快子)

1月14日、水曜日。年明けに読んだ、小倉快子『私の愛おしい場所 BOOKS f3の日々』についてよく考える。ふとしたときに書かれていたこと思い出して、自分の現状に置き替えてみたり、近隣の店と並べてみたり。上記した一節は閉業したあとの日記で見つけた(「2021年9月18日」)。はじめるとき、やめるとき。開店⚪︎⚪︎周年を迎えるとき。堂々と誉を受ける機会が店に与えられる。そんなのどう考えてもおかしいし、淡々と静かに営業を続ける人こそ評価されるべき───と書いて、気がつくのはそういう人は大きく、わかりやすい評価など欲していないってこと。

同書を取り上げた1/5の読書日記を自分はこう閉じている。「いま、小倉さんはどんな風に暮らしているのかな。また、店をやりたいなーとか思っているんだろうか」、この「とか」はよくない。「また、店をやりたいなーと思っているんだろうか」と書く方が正しい。

覚悟を決めるのが向いてないなら/混沌の中に身を投じてみるのもいいと思いたい/投じた先に何があるのかわからないけれど/2026年も楽しみながら流れに身を任せていきたいなと思いました。


植田彩乃が2025年を振り返る。ピカピカの筑波大生だった植田さんも大学院生。たぶん今も光ったり翳ったりしてるのだろうけど、こうしてテキストを送ってくれることが嬉しいし、ありがたい(自分で決めなよ〜と言っていたのが、誰でもなく、オレである……)。

今日も通常営業! 週末18日(日)はイベント出店のため、短縮営業です。

2026/01/13

1/13 雑記

年末に歩いた流山セントラルパーク駅周辺を再訪、平井〜平和台を越えて、〈BOOK OFF SUPER BAZAAR イトーヨーカドー流山店〉まで歩いていく。時間にして10分ちょいだったかな、坂をくだっていくと小さな平和台駅が現れる。ささやかなロータリー、ちょっとした町場の雰囲気を感じつつイトーヨーカドー3階のブックオフに入店。なんと、今日から550円以下の音源セール(40%OFF!)がはじまっていて、レコード棚で目を皿にする。ここで3枚購入。

本とCDもチョイと見たのち退店。きた道を戻っていくと、小さな新刊書店と精肉店が並んでる。焼き鳥が食べたくなるもぐっと我慢。そのままセントラルパーク駅に戻ると、もわっと熱い! パーカーとライトダウンを抜いで、また歩きだす。流山おおたかの森駅まで、体感で約15分、つくば市でいうところの研究学園みたいな風景。味はないけど、知らない町のつくりを観察するのは面白い。

東武線に乗り換えて、柏を目指す。目的地はディスクユニオン。レゲエとジャズのレコードを1枚ずつ購入。最近、改めて聴き直しているセロニアス・モンクの桑港独奏盤を見つけて、喜ぶ。こうなりゃ、あとは帰るだけ! さっさと電車に乗って14時半頃につくば駅に帰ってきた。

それにしてもよく歩いたなァ……右の踵がジンジン痛い。履き慣れない靴を履いたからか。

2026/01/12

1/12 店日誌


1月12日、月曜日。冷たい風がビューーーっ(ゴォォォォォォって感じだったかな)と吹いたら、家の中は砂だらけ。大学内の自転車は倒れまくり、大きめの枝がボキっと折れていた。あんな強風はめったに吹かない。屋外出店があった人たちは大変だっただろうなァ……。中身のないことを書きつつ、なにかアイデアが沸くかなーっと待っているけど、ダメそうです。書くことが見つからない日もありますね。

独立型音楽家? こんな呼称で伝わるかな〜と心配ではあるのだけど、筋が通っていて、創意工夫に長けた人。東郷清丸さんの自主製作本『東郷清丸(34)』を仕入れました。よくありそうだけど、これに似たものはそんなに多くないと思ってます。

今日も通常営業〜! 本の買取、在庫確認などのお問い合わせはお気軽に。

2026/01/11

1/11 店日誌


1月11日、日曜日。『GO ON(轟音)』を手がける牧田幸恵さんが足を運んでくれて、前号までの精算をしたのち、新作冊子も買い取る。共通の知人の動向(いい話ばかりです)など、ワチャワチャやり取りをして「じゃあ、そろそろ……」って頃に現れたのは増田さん。数年前まで『サテツマガジン』なる小冊子を発行していて、好奇心旺盛、つねにあちこちを動き回っている人なのだけれど、なんと牧田さんと顔見知り。へーっと驚くも、なんとなく納得して、そのまま牧田さんを送り出す。

2025年は、映画というよりも「これが人生」と思うことばかりで「私の人生が映画よりつまらないなんてあり得ない」という言葉以上の1年だった。伝えたいことは山ほどあるのだが、今回はある人との出会いについて書きたいと思う。

牧田幸恵が2025年を振り返る、冒頭の「私の人生が映画よりつまらないなんてあり得ない」ってフレーズが強烈で、かなり変わった人だと思われる節もある。でも、読んでみて分かるのは、牧田さんは小手先でごまかせないんだなーってこと。0か100かの選択肢しかないってのは大変だろうけど、インディー雑誌の発行を続けるには、それだけのエネルギーが必要なのだ。今後も牧田さんの活動を応援したい。

スライ・ストーン/新井崇嗣(訳)『スライ・ストーン自叙伝』と『ele-king』vol.36が同時入荷! エレキングは現状の音楽シーン、その背景にある社会と文化事情を知るにはうってつけのメディアなので、少部数でも継続して扱っていきたい(でも、もうちょい掛け率をよくしてほしい……)。

今日明日も通常営業! オンライン・ストア〈平凡〉もどうぞよろしく!

2026/01/10

1/10 店日誌


1月10日、土曜日。水戸に住む友人マサキ(源氏名はUmiaq Muu)がつくったカセットテープ『A Brighter Summer Day』が好評だ。一昨日受け取って、オンライン・ストアにあげた分があっというまに売れてしまう。初回、前回で友人まわりには行き渡ったのかなーと思っていて、そこまで動かないだろーと見立てていたから、びっくり。やるじゃないか、マサキ。正直、ウミアクムーという名前は覚えづらくてアレなのだけど、いいムードをつくってくれてるのは間違いない。今週末は店でもチョイチョイ流してみよう。

恥ずかしい話が、この歳になって完全に思春期がぶり返してしまい、忙しさによるhighも手伝って、感情の起伏が荒波のようにコントロール出来なくなってしまった場面も多々あった。店と、少数の友人が、ギリ繋いでくれた。いい歳して、大人の振る舞いが出来なくて、吐露した感情や自分の態度に、厳しい言葉を貰う時もあった。

鹿児島市名山町〈食堂 湯湯〉店主、中村友貴が2025年を振り返る。中村くんには毎年参加してもらっていて、年毎の熱が伝わるテキストを仕上げてくれる。カッコつけようにもどうにもならない場面あり、注目度だけが増していく状況にもどかしさもあるのかな。でも、いいじゃん! きっと、湯湯にはこれから味が染みてくる。10年経ったらどんな店になってるのか、楽しみだ。

いやーーー二日酔いじゃないって、なんて幸せ! 景色もきれいで、空気もおいしい。本が読めて、コーヒーが飲めて、音楽も聴ける。普通にできるだけでオーケーだ。

今日明日、明後日は通常営業。お暇があればご来店ください。

2026/01/09

1/9 店日誌


1月9日、金曜日。14時過ぎにマスヤマくんが来たので、店を任せて散歩にでる。天気はいいが空気は冷たい。早足でスタスタ歩いて身体を暖める。気の向くままに筑波大から天久保公園、古着屋mayとぐるっと回って30分ちょい。戻ってくるとマスヤマくんはさっきと同じ場所で本を読み耽っていた。買い取ったばかりの『Switch』の会計をしつつ色々と話を聞く。作ったZINE、バイト、これからのやりたいことなどをボソボソと伝えてくれる。うーん、そりゃどうかな〜とかたまに言いつつ、おおむね肯定して送り出す。

筑波大学芸術専攻学部の卒業制作展のポスターを持ってきたり、この週末に成人式に出ると話してくれたり、学生さんの出入りがチラホラ。さっと100円の文庫を買う人がいれば、当店オリジナルのトートバッグを手に取る人もいた。今日も開けててよかったなァ。

明日からの3連休も通常営業! お暇があればご来店ください〜。

2026/01/08

1/8 店日誌

1月8日、木曜日。ロボ宙さんの7インチ、『RINGO feat.OMSB/You & I』がとてもいい! A面「RINGO」ってのはあの「リンゴ」で、まあベタっちゃあベタなのだけど、嫌味がなくてスーッと聴ける。客演OMSBのラップ、リリックも街歩きの風景をスケッチしたような内容で好感触。B面「You & I」は昨年リリースされたCDRも大好評だった、あの名曲。散歩と口笛、友だち、好きな音楽と本、食事、酒があるしあわせ……。聴いてると暖かなムードがじわーっと広がって、満たされる。いい曲なんだよねェ。

師走のある日。描けない現実から逃避して、自転車で善福寺池まで行ってみた。描けないのは、細馬宏通さんの「東京なでなで記」の挿し絵で、描き方がわからなくなった。もともと「描けた」わけじゃないけどね。ありがたくもこうしてときどき、絵を描かせてもらったりするのだ。

こんな風に書き出されるのは、北林研二が2025年を振り返る。直にお会いしたのはずいぶん前で、たぶん10年くらいはお話もできてないのだけど、通販やSNSを通してのやり取りが少なくないから身近な人って気分がある。北林さんの描く絵、選ぶ音楽どちらのセンスも抜群で、いいな〜大好きだな〜と思ってる。

明日9日(金)から名古屋の金山〈ブラジルコーヒー〉でナツナさんの個展「最後の夢でもかまわない」が始まって、明後日10日(土)には和田彩個展「the morning sun」も始まるらしい。後者の会場はつくば市〈Cox/Shingoster LIVING〉。

今日から通常営業に戻ります! オンライン・ストア〈平凡〉もどうぞよろしく。

2026/01/07

1/7 店日誌


1月7日、水曜日。休んじゃおうかな〜と思ってたし、ブログにもそう書いたのだけど、けっきょく普通に開けている。理由としては、届くものがあること(入荷と補充)、古本の値付けが終わってないこと(年末年始に買い取った松岡正剛の書籍群に加えて、ジャズCDもあり)が挙げられる。なんとも意味なく、書いててバカみたいだなァ……と思ったら雪が降ってきた(現在7時40分)。冬本番。こうなると外に出る気もなくなってくる。

一昨日、5日に公開を終えた「2025年を振り返る」。過去最多の20人が参加してくれたこの企画、自分自身がしっかり振り返って、まとめなきゃいけない。作業を終えた途端にC調なノリ言葉しか出てこなくなり困ってるのだが、どうにもならず。前からそんなもんだろ! とツッコミを入れて開き直る。

2月は大雪だったけど、午前中に雪かきした後もへたばらずにカメとハトの皮を剥いているじゃないか。カメは腹甲を開けるのが大変だし開けたらすぐ内臓で気持ちが下がるし、ハトは皮が薄くて肉がネバ付いていて凄く面倒なのに、さすがだ。その後もハイペースで制作している。

ずいぶん前からの知り合いで、石川県輪島市在住の剥製士・上野郁代の記録は、かなり貴重じゃなかろうか。「カメの腹甲を開ける」とか「オオサンショウウオの交雑個体のみ記録」ってのはそうそう読めるものじゃないと思う。

さあさあ、今日もやるぞ! 18時までの短縮営業ですが、よろしくどうぞ〜。

2026/01/06

1/6 店日誌


1月6日、火曜日。“スリープ・ナウ・イン・ザ・ファイア”のイントロが脳内で再生される。ジャカジャカジャージャーとファンキーなリフを奏でるトム・モレロと目が合った(と思ってる)のは2000年の6月24日(土)の幕張メッセ、1曲目は“キック・アウト・ザ・ジャムズ”でステージ袖に超ノリノリのリック・ルービンがいたんだよなー(事実かどうかは未確認。誰か知ってる人いますかね?)と考えつつ歩いていると、いつの間にかスマップの“シェイク”に変わっていた。今日会わない? ってキミの電話〜。

定休日なんだけど開けるのは正月休みもあったし、特別な予定もないからで、なんなら明日は休んで湯浅湾のライブを観にいこうかな〜と考えている。真昼間の東京、お茶の水界隈を歩きたいんだよなァ。

そんなわけで、今日も営業中! お暇があればご来店ください〜。

2026/01/05

森本英人が2025年を振り返る

 ZINEを出しましょう。もちろん、ぜひやりましょう、という話をしながら、その実、ZINEというものがなんだかさっぱりわからない。ZINEフェスやアートブック・フェアに足を運んでみたけれどもやっぱりわからない。というか、ますますわからなくなってしまった。そもそも手に取って読んでみたいと思えるものに出会えていない。そんな状態がもう2年も続いていた。自分はなにか思い違いをしているんじゃないのか。

 夏が終わるころ、たまたま見つけたシカゴのZINE専門のオンライン・ショップでなんとなくおもしろそうなZINEをみつけたのをきっかけに、いくつかその手のショップを辿って、けっこうな量を買い込んだ。

 『1900年代初期のボストンにおけるイタリア人相互扶助組合について』、『移動式監獄展示バス:20世紀中期の少年犯罪防止方法』、『パレスチナのレコード・ジャケットのグラフィック・デザイン集』、『カントリーのもっとも有名かつレアなシングル盤「PSYCHO」の物語』、『ドラックにまつわるカントリー・ソング10選』、『シカゴ・リーダー紙所有のミュージシャン宣材フォト・コレクション』、『ヒップホップの黄金期におけるミリタント&アフロセントリックなロゴ&アイコン集』などなど。だいたい5ドルから8ドル、高くて11ドルといったところ。

 送られてきたZINEの、おそらくどれも自分たち自身で裁断、中綴じをして製本したらしい、愛くるしい無骨さに驚いた。

 『12月3日』というタイトルのZINEは、アメリカ中西部で1990年12月3日に起きると予言されながら、実際には起きなかった地震の騒動の記録。『キッチンから』は、教会や地域コミュニティの活動資金を得るために、アメリカの様々な地域で販売されていたクックブック(我が家のレシピ集)のコレクションと考察。『ポスチュマス』は、いまはクローズしてしまった、全米各地のローカル・ミュージック・シーンを支えたDIYイベント・スペースへの愛情溢れる追悼文集。『アントニア』は、自分が生まれ育った町に似ていると思えるようなものをいままで読んだことも見たこともないという作者が、その郵便番号もない小さな故郷の田舎町アントニアについて綴ったZINE。その町がとりたててユニークなわけではない。ただ「わたしが出会った田舎の描写は、親しみが持てず、あまりにも辺鄙だったり、あまりにも馴れ馴れしかったり、あまりにも単純で、あまりにも貧しく、あまりにも不気味で、あまりにもロマンチックすぎる世界のように思えた」。『フィッシュ・イン:1960年代の黒人とネイティヴ・インディアンの連帯』を読んで、1960年代当時、ネイティヴ・インディアンの団体が黒人の公民権運動からは距離をとっていたということをはじめて知った。その流れに逆らって、公民権運動に刺激を受けたネイティヴ・インディアンの若者たちが行ったある抗議活動に、黒人たちも連帯を示し加わったという記録を拾い集めたZINE。『逆さまのパンクス:フガジ・バスケットボール・リング・ショウの奇妙な真実の物語』は、ワシントンD.C.のパンク・バンド、フガジがデビュー直前に行った伝説のライヴの舞台裏を、イベントのオーガナイズなどまったく未経験だった当時19歳の主宰者に寄り添って描いたもの。彼はずっとライヴは失敗だったと思っていたし、その後二度とイベントを主催することはなかった。

 どれもとてもローカルで、ときにとてもパーソナルなテーマ、歴史のエアポケットに落ちたまま忘れ去られてしまった出来事にフォーカスしているのに、時間をかけて丁寧にホコリや泥を取りのぞいたさきに見えてくるものに、一転して親密な、現在の自分とどこかで確実につながっているという感覚を覚える。

 『なぜファシズムの時代に自費出版を?/その出版日記』には、ZINEの出版/ディストリビューションを行っている著者の活動がどのようにしてはじまったのかが記されている。それはアーティストの友人とランチを共にしていたときの次のような会話からはじまった。「莫大な冨と権力を持つ最低の連中にとって可能なかぎり役に立たないアートのかたちってなんだろう?」。著者が考えたのは「まずは7ドルのZINEからはじめてみよう」。

  僕が気になったZINEの出版や流通を手掛けている人たちの声を拾い集めていると、80年代後半のワシントンD.C.のパンク〜ポスト・ハードコア・ムーヴメントに少なからず影響を受けている様子が伝わってきてなんだかうれしくなってしまった。フガジを聴いて育ったティーンエイジャーが、それから30年以上たったいま、ZINEの制作、出版を楽しんでいる。素敵じゃないか。

 いくつかのZINEを読みをえたいま、その認識は半分間違っていたのかなという気もしてくる。むしろフガジやディスコードのDIY活動が成立しえたのは、そもそもこうした若者たちの存在があったからじゃないのか。

 アンダーグラウンドでもインディペンデントでも、オルタナティヴでもなんでもいいが、そこがメインストリーム予備軍の溜まり場だとしたら、僕にとってこれほどつまらないことはない。

「許可を待たずになにかをつくる自由を体験すること」

「アンコントローラブルであること」

なぜファシズムの時代に自費出版を?/その出版日記)

 ZINEという手法でしか伝えられないものがあるということを、やっと実感できた気がしている。アンダーグラウンドにもインディペンデントにも、その存在をかけて貫くべき本分、守らなくてはならない領域というのものがあるはずだ。

惣田紗希が2025年を振り返る


2025年はいろいろなことから10年が経ち、それぞれのそれからの10年目に立ち会い、自分でも10年ぶり、それ以上ぶりにやってみることが多い年だった。10年以上個人のまま仕事をやっていると、今現在が過去の仕事に責任として反映されていくような気もするし、流れ去っていくものが大半な気もするし、そんななかで何がどう積み重なっていくのだろうと思う。

年始に本棚に入らなくなった本を整理して、売るなりなんなり処分してもいいかと思った本を振り分けてみたら山のように積み上がった。ここ数年、グラフィックデザイナーやイラストレーターや建築家が足利に移住してきているという状況を間接的にぼんやり把握していたので、その人たちに声をかけて古本イベントをやってみるかと企画。ただただこの本の山を処分したいという一心で。

とりあえず同級生のデザイナーの鶴見と、鶴見とオフィスをシェアしている建築家の丸さんと、イラストレーターの村松くんに声をかける。村松くんはPEOPLEの民、河合浩さんから足利=惣田と聞いていたらしい移住者で、つくばとの縁がある。村松くんは欠席となったけど、鶴見と丸さんのオフィスを会場として使えることになり、GO ON牧田さんとサトウタクトくんに声をかけ、ashikaga social spot と銘打ってとりあえずやってみた。

やってみると、出店者も来場者もそれぞれ個人の文化を持ち寄るみたいな感じでおもしろかった。イベントを終えた日の夜に15周年だったマーラーズパーラーにタクトくんを連れて行ったら、さっきまでのイベントでは見なかったとびきりの笑顔を輝かせ、全員初対面にも関わらず10年友達みたいな絡みと面構えをしていておののいた。「この感じPEOPLEに近いかも!」と大声で言っていた。

それ以降、個展と仕事で4月以降は毎日締切フルマラソン状態で、ドタバタ駆け抜けていった。その間、ashikaga social spot 第二弾を牧田さんとタクトくんが企画してくれて、ただ楽しみにしている人となる喜びを味わう。


第二弾に牧田さんとタクトくんが揃えたのは、つくづくの金井さん、PEOPLEの植田さん、pottmann、そして足利のフレッシュ枠の速水くん。

PEOPLEには2014年に河合さんの展示を目的に初めて行って、それ以来ちょくちょく通うなか、いつだったか白い紙に青い線画の絵が印刷されたポスターを植田さんが指差し、「最近この人おもしろいよーサトウタクトくん」と言っていたのを覚えている。更にある日、マーラーズパーラーで牧田さんと打ち合わせした時、牧田さんがタクトくんデザインのつくづくTシャツを着ており、タクトくんが足利に移住してきたことを植田さんに聞いていた状態で「これを足利で着て歩いてたらサトウタクトくんに気づいてもらえるかも!」と言っていた。その時は、遠回りすぎでは? と思いつつ、一連の流れを全て伏線回収するような日となった。打ち上げでは金井さんと植田さんがジジイぶりを発揮していてやかましかったけど、片付けを終えて合流した牧田さんがそのふたりの上を行くやかましさで全てを覆い尽くしてきたので、金井さんがおとなしくなっていた。

コロナ禍以降全然行けていなかったPEOPLEの品揃えは足利でも輝いていて、ひとつの興味が水切りの石のようにビュンビュン飛んでいくような楽しさがあった。やはりお店に行かないとだな。SNS上の情報や流れを受け止めきれないというか、考える余地よりも即座の反応が求められているような感じがしんどくなると、アプリを消して距離をとるようにしている。紙やブログ、対面では話せることや受け取れることが増える。わたしは対面ではめちゃくちゃ顔に出るけど、SNSで見えてるところだけで理想を固められても困る。そこに辿り着くまでの移動を経て、実存を確かめ合って、それから少しだけ対等でいられる時間を過ごせるようになるのかもしれない。また2026年もなにかやれたらいいな。

写真:打ち上げのあと雨のなか拳を振りかざし宿に向かう植田さんと見守る牧田さん

キングジョーが2025年を振り返る


2025年を振り返ると、2月に転職して夜勤中心の生活になったことが自分にとって大きな変化でした。

夜勤明けに帰宅してひと息つくと、平日の昼間に自由な身であることが嬉しくやたらと映画館に行ってたような気がします。

『シビル・ウォー』『サブスタンス』『愛はステロイド』『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』と、残忍もしくは陰気で自意識こじらせたようなやつ、他人への共感能力に決定的な欠如のあるやつが出てくる映画ばっかり観てたように思います。

決定打は『ボディビルダー』。劇中、主人公による陰湿な意趣返しのシーン。そのシーンでラジカセから流れる音楽に上記残忍or陰気映画が一本の線でつながった気がして、その線が「現在のダークサイド」を象徴しているように思えて、震えました。

※その反動で、友人のDJ薬師丸さんにお勧めされた映画『シャドウズ・エッジ』を観た時、齢70でまだまだ元気にスタントをこなすジャッキー・チェンに心が洗われるようなスッキリとした気持ちになりました。敵の「影」と呼ばれるおじさんも又良くて。老いも若いもAIも皆で力を合わせて悪を倒して。かと思ったらラストで根絶ではないことが雑に暗示されて。


あと大きかったのは、10年近く集めてたタイのレコードでミックスCDを作ったこと。アジア音楽と文化を“タムブン”の精神で伝えるメディア”てんぱりてんぷる”やタイ音楽DJのKO MEGさんによる活動を見て「おれもなんかしたい」と思い立ったことがきっかけでした。これが当初思ってたよりも沢山の人に聴いていただけて(ありがとうございます!)嬉しいよりもビックリしました。

※ちなみに大阪は淡路の自転車屋兼サムシングを売る店タラウマラに本ミックスCDを卸しに行った際、偶然店内で居合わせた植田さんを店主土井くんに紹介していただいたのがご縁で今にいたります。

「ミックスは三部作にしよう」と決めてたのですが、それほどタイのレコードを沢山持ってる訳でなく(普通だとなかなか買えない)(筆者はタイに行ったこともない)、キラー曲は根こそぎ最初のミックスに入れたんで「2作目でクオリティが落ちたよね」「まあしゃあない。ジョーもよう頑張ったんちゃう」と言われるのも嫌なので、続編の為に秋以降はオークションを中心にタイのレコードを探しては買いを繰り返してました。特に現地から出品してくれる日本のディーラーの方からよく買ってたのですが、タイから送ってくれるのでうちに届くのに10日弱かかるんです。待つのも楽しいものですが、そうして待ってる間にその人が又良いレコードを出品するんで、待ってる間にまた買って、それの到着を待ってる間にまた・・・みたいなことがずっと続いて先週ようやくひと区切りつきました。これから最終の選盤と曲順を練ってライブ録音に挑みます。上手に繋ぐことができるか、今から不安です。

タイの音楽、ほぼ情報が無い(探せばあるけど)上に、文字も読めない(ひと手間かければ判読できるけど)のでオークションにリンクされた試聴ファイルをじっくり聴いて判断したり、試聴不可能の場合はオークションに添えられた紹介文を必要以上に信用して、イチかバチかに賭けるような買い方をしてます。燃費は悪いけど、「すごい!」と思える曲に出会えた時の、脳汁がドバドバ溢れるような興奮の迸り、驚きと発見は趣味を超え最早や生きがいとなりつつあります。


タイ以外にも盟友の佐藤マタが手ほどきしてくれるインドネシアの音楽や、昨年の盆に度肝を抜かれた朋友・長谷川陽平の回したトルコのサイケロック(陽平氏は大韓ロックのオーソリティでもあります)、そろそろ手をつけたいシンガポール界隈のア・ゴーゴー、映像も込みで観たい知りたい聴きたいボリウッドもの他、アジアの音楽への興味は日増しに膨らむばかり。

心を揺さぶるカッコいい曲に少しでも多く出逢うこと、それを大きい音で回して誰よりも踊り狂うことが今年の目標です。

(キングジョー)

1/5 店日誌


1月5日、月曜日。さあ、ようやく! 「2025年を振り返る」の記事がすべて集まった。合計20人。それぞれの角度、方法で1年間をまとめてくれた。元旦から公開を始めて5日目だけれど、だいぶ長い距離を走ったような気がするのは、みんなのテキストの力ゆえか? 単に公開作業に疲れただけか? どっちでもいいのだけれど、手応えは大きい。参加してくれたみなさん、ありがとう。読んで、感想をくれた方々にも助けられた。読んでる人がいる、そう実感できるのが一番の力になった。

今日は11時~13時~15時のペースで3人の記事を公開予定。中村くんが本編ラスト、アンコールで強力な3曲を。全記事をアーカイブするので、気になったものから、時間のあるときに読んでほしい。

今日明日は11時から18時までの短縮営業! 古本の入荷多数〜!

2026/01/04

中村友貴が2025年を振り返る


『2025年は簡単に終わらせてくれない』


旅をしてました。

あちこちに出向く、現実の旅もそうなんだけど、自分の中に潜る内向きな旅を。

それがいいことだったのかは、現段階では判断できない。


観に行ったLIVEやDJ、パーティー、企画した展示や音楽の場、会った人、喋った人、お店に来てくれた人、初めて足を運んだ店に通っている店、訪れた遠くの場所、そこで会う友人たち。それぞれの場所での一瞬は、きらめく思い出深い名場面が、2025年もたくさんあった。そういう時は、心底楽しんだのだと思う。その一方で、ある時期から何か晴れない気持ちがずっと心につきまとい、それに飲まれてドツボにはまって、正直に言うと、2025年の後半は、ずっと元気じゃなかった、ように思う(とか書いちゃうと気を遣わせてしまいそうだが、いつも通りで大丈夫です!)。


何気ない会話のなかで「もう35歳なんだよね(実際には2026年の3月)」と発した瞬間に「アレ?」と思った。35歳を急に認識、意識してしまった。いやいや、人生の半分きてしまったぞ。ちゃらちゃら遊んでもいられないぞ。時間も無いくせに金もびっくりするくらい無い。体力はまだあるが、このペースで店を続けられるのもあと何年だろうか?猫は可愛いが、猫だけでは埋められない何かも、ある。全然何も出来てなくね?このままでいいのか?俺は。よくなくない?どっちなんだ。みんなどうしてんの?


“こっちの道”を選んだ時から、いわゆる幸せとは、また別の幸せがあると信じて、ちょっと盲信気味で生きてきてしまったが、ここにきて、急にブレが、揺らぎが、焦りが、生じてしまった。じゅうぶん楽しいし、今が幸せなのもわかってんだけどね。猫も可愛いし。恥ずかしい話が、この歳になって完全に思春期がぶり返してしまい、忙しさによるhighも手伝って、感情の起伏が荒波のようにコントロール出来なくなってしまった場面も多々あった。店と、少数の友人が、ギリ繋いでくれた。いい歳して、大人の振る舞いが出来なくて、吐露した感情や自分の態度に、厳しい言葉を貰う時もあった。言う方からしたらたまったもんじゃないし、それなりにちゃんと落ち込んだりするけれど、めっちゃありがたかった。初めて、己を見つめ直し、変われぬ苦しさを味わい、変わりたいとも思った。「俺は俺」だけじゃダメな年齢になってきたんだぞ、お前は。とは言え、友人とのやり取りの中でどんどん歯車が噛み合わなくなってきた俺に言われた一言は「深刻すぎ!!」。マジでそれだった笑 そんな時は陽気なラテンのオジサンを憑依することにしよう。


そんななか物凄い勢いとスピードで企画・制作したのが旅と多動のマガジン『珍珍道中』で、2024年のイケイケの旅を振り返ることで、良い意味で自分の店を見つめ直すきっかけにもなった。結果、店の純度を深めるために県外での出店はしばらく休み、店以外のプロジェクトは極力断つ決断をした。制作期間、人生で初めての経験なんだけどhighになり過ぎて不眠になって、あ、コレはいよいよマズイぞと本気で思ったが、これを2025年に作って本当に良かった。協力してくれたみんな、買ってくれた人たちありがとう。今はちゃんと寝られています。


そう、このマガジンのレビューを植田さんがブログに書いてくれて、とても嬉しかったんだけど、そこでも言及していて「さすが鋭い!」と思ったことがあって、多分、こういう生き方と〈食堂 湯湯〉という店の第一章が、ゆるやかに終わったんだと思う。それは「初期衝動だけでやること」の終わりでもあったはず。熊本で大切な友人で先輩が天国のような店をやってるんだけど、今年「2周年祝いにあげるけん」と貰ったレコードを(ちなみにKOHEI JAPAN「夜の狩人 featuring キエるマキュウ&宇多丸」)、悩み出した時期に何気なく引っ張り出したら手紙がついてて「2歳はイヤイヤ期」と書いてあって、くぅ~!!何でもお見通しやないかい!とクラい、改めてこんな先輩には頭が上がらないと思った。


こんな感じで内面にばかり深く潜ってクヨクヨばかりしていた今年の後半だったので、植田さんから今年もこの原稿の依頼があって、ハァ…暗くなっちゃうなァ…なんて考えながら、書く内容、書きたいことは頭にあったから、あとは書くだけ!書いたら2025年が締まる!と思っていたところ、12月の27日に、その人は突然店にやってきた。


憧れの…ってのも変だけど、店をやるにあたって、その思想、文章に多分1番くらい影響を受けている“憧れ”の飲食業界の人がいて。“憧れ”のタイプは色々あれど、ちょっと離れた距離からその人の言葉を享受できたらいいかな、会いたくはない、わざわざ会わなくてもいいと思っていたのは、やはりその人が“めんどくさい”の一言では片付けられない一筋縄じゃいかなさと鋭さ、ある種の嗅覚と自分の言葉を持ち合わせているからで、うーん、好きだけど会わんで良し、交わることもきっと無いだろうし、とずっと思っていた。ジャッジされるのが怖かったのかもしれない。まあ、その人がこの年の瀬に急に店に来て、飯を注文しているのである。本物だ~とか思っていたより大柄だ~とかアホみたいに思いつつも、いつも通り作って出す。

その方はとあるプロジェクトの件で、その話をしに来てくれたってのが食後にむこうから話しかけてくれてわかったんだけど、その話もやはり一筋縄じゃいかなくて、鋭くて、本で出会うその人のまんま、ロックスターじゃんって思った。そして、ひとしきり話したのちにこう切り出した。


「58にもなると(僕の作った「鶏の汁かけ飯」を)美味い、とも言い切れない。けど、美味いロック飯がきたって感じです。台湾には研究の余地がある。言葉じゃなくて響く美味さ…みたいなのが、台湾のジーサンの食堂とかにはある。んん~まあ、美味かったです。また会いましょう」と言って帰っていった。一筋縄じゃいかねえ~!ホンモノだ~!要は、その人にとってはあまり美味しくはなかったって初対面の僕に面と向かって言ってくれたんだけど、ちゃんと言うし、正直だし、見透かされたし、こちらの知らない世界にも繋がるヒントもくれた。多分ずっと数字じゃない「美味しい」とは何かを考え続けている人。だからこの人の言葉や文章、センスや捻くれ方が好きなのだろう。2025年にまだこんな瞬間があるとは思ってなかったぜ。


※ちなみに「鶏の汁かけ飯」に関しては美味しくなり過ぎないように作っているフシがある。多分突き詰めていくとラーメンの過剰さになるような気がしているからだ。朝から過剰な美味しさのラーメンは不必要だと思っているから。でもやっぱりその人もだし、いつものお客さんもだし、「美味しい」ってことが何よりも「正しい」とは思う。台湾には、ラーメンとは違う世界線の「美味しい」があるのか、その人が足りないと思ったのはなんだったのか。一度会ってしまったから、続きを話してみたいと強く思っている。そして台湾にも行かなきゃだな。


ここまで書いた現在、大晦日の20時36分。初めてバイトを雇いたいと思った程の激混み営業後の片付けもままならないままの買い出し、仮眠(ここ数日はずっと寝不足だった)、温泉、からのこの原稿。これから片付けをして、仕込みをする。元旦も営業なのだ。このままだと年越しそうだな。2025年は、全くもって、簡単に終わらせてくれなかった。


中村友貴(食堂 湯湯)

上野郁代が2025年を振り返る


上野です。大学時代をつくばで過ごし、まだ本屋をやってない植田さんと知り合いました。植田さんはママチャリに乗ってるとバカにしてくる大人でした。大学では油絵を専攻していましたが今は鳥や動物の剥製を作る珍しい仕事についています。油絵はあまり真面目に勉強できず、卒業目前になった時にもうちょっとちゃんとしたい、手に職をつけたい、就活したくない、将来的には自営業一択だ!!と考えて何故か剥製屋がいいな、絶対向いてる!と東京の剥製屋に勤め始めました。周りは2,3年で辞めるとヒソヒソ言っていたと後になって知り、それはそうだよなと笑ってしまったけど一応10年弱働き、2022年に故郷の石川県は輪島市に戻って開業しました。山と海が綺麗な過疎地、能登半島。24年の大地震の被害は幸い小規模に収まり、まあ瓦屋根はまだボロボロですが取り敢えずはつつがなく営業しています。屋根を保護するブルーシートは2年経てば流石に朽ち、破片が庭に散在している。今年の11日はそこそこに雪の正月でした。元気に雪かき、黙祷。

 

2025年を振り返る。とてもいいお題をありがとう。2025年は仕事のペースを上げるべく気張って1年を始めたつもり。とにかく開業して丸2年、仕事の進みの遅さに反省することばかりだった。雪かきや草刈りなど一軒家の管理に慣れていないことや仕事場の整理整頓が不十分なこと、自宅兼仕事場という素晴らしい環境でついついゆっくりしてしまうことなど原因は色々あった。被災から1年で、まだまだお客さんから気を遣われる立場だったけど地震の影響はもうなかった。雨漏りしている天井裏に登ったらアップダウン激しくて一気に筋肉痛とかはあったけど。あとネコを2匹飼っちゃったり。これは地震前からですが。すごくよく話しかけてくるんですね、室内飼いのネコって。剥製に噛みついたりせずいいコです。遠方の友達も以外と遊びに来る。何泊でもしていいよとか言って海で遊ぶ。お気に入りの海が地震で隆起して陸になってしまい涙。泳げないなら、とダイソーで釣竿を買っちゃう。遊び終わったら疲れて寝る。で、もう心配になって作業日誌をつけ始めた。私はいつどれくらい働いているのか?素朴に疑問だった。


剥製業は年度末納期の依頼が多いので冬が繁忙期、なので1月からの記録を見返すと思ったよりよく働いている。2月は大雪だったけど、午前中に雪かきした後もへたばらずにカメとハトの皮を剥いているじゃないか。カメは腹甲を開けるのが大変だし開けたらすぐ内臓で気持ちが下がるし、ハトは皮が薄くて肉がネバ付いていて凄く面倒なのに、さすがだ。その後もハイペースで制作している。大雪が過ぎ去って春が来た時の喜びはすごかった。オオイヌノフグリの群生がとても綺麗で春の尊さを感じた。だからか分からないけど仕事はあんまり進んでないね。釣りに行ってます。釣果は小さいカサゴ1匹、リリース。あと大型剥製のクリーニングのために出張に行っています。詳細は書けないけど同業者と関われる珍しい仕事で楽しかったな。色々な情報交換ができた。狭すぎる業界で頼れる人がいるのは嬉しい。ちなみに前の職場だった東京の剥製屋は私の100倍くらい忙しくしている。


6月からは草刈りが始まる。自分の土地の管理とは別で、どうやら国の事業らしい中山間地域に数ある休耕田をいつでも復帰させられるよう主に草刈りをして管理する重労働、が始まる。毎週末しかも土日両日使ってみんなで元気に草を刈っている。好んで参加している(※日当は出ます)。奥能登豪雨で被害を受けた米農家さんに一部提供できたので重労働の意義はあった。しかし日誌の記録はスカスカなので、恐らく疲弊して働いてないのが居た堪れず放棄している様子。唯一オオサンショウウオ交雑個体のみ記録。実は初めて作る両生類!制作例が国内に多くあるのであまり身構えなかったけど結構大変だった。リベンジしたいなあ。そして夏は爬虫類をめっちゃ作ってますね。鳴き声が小さいから集合住宅でも飼いやすいというよく分かんない理由で飼育者が増えているそうです。問い合わせの度に種名を検索して、初挑戦ですけどいいですか?と断って受けることが多い。鱗や皮膚の質感、そもそも形状が個性豊かなので結構楽しい。しかしレオパなどのヤモリ系は皮膚が薄くて難しい。ご了承ください。


秋、中型哺乳類(種名は配慮して省略)の制作に思いのほか手間取り、それが1ヶ月ほど続いたところで記録を放棄、なんとそのまま年末まで空欄が続く。一応書いておくけど中型哺乳類は苦心の甲斐あって納品先にとても喜んでもらえた。安堵の気持ちで良かったー!と叫んだ。その拍子に苦心の記憶を無くしてないか心配になる。この時の話ではないけど、10年東京で働いた記憶がリセットされたのかな?と思うくらい初歩的なミスをよくやった2025。そして再びの冬、やはり年度末納期の依頼に現在進行形で追われているのでよく働いたという実感で終えることができた。年末にまとめて鳥を作る。納品先は茨城です。この企画にあたり写真を1枚添えること、と言われたので何体か撮影してみました。糸でぐるぐる巻きつかれているのは羽が浮いてこないようにするため。針は皮が浮かないよう固定したり、糸の支柱にしたり。鳥は状態が良ければスムーズに作れるので楽しい。作業中に道具を床に落としまくり、なんかこういうこと前からよくあるなーとぼんやり考えてたら90×60cmの作業机がちょっと小さいことにやっと気付いた。2026年は120cm幅のものに変えてみます。


以上、振り返ってみて。24年の被災直後と比べると当然仕事のペースは上がっているけど、もうちょっと沢山作れるといいですね。もっとリズムを整えて、夏に死ぬほど遊びたい。書きながら、ちょっと前まで私の剥製技術の天井は正直もう見えてると思ってたことを思い出した。別にそうでもなかったので頑張ってほしい。制作の機会が少ない中型以上の哺乳類、鳥類の経験が増えるといいなと思う。また同じ季節が巡ってくると思うと嬉しいです。

                            

ハーポ部長が2025年を振り返る


『本のコミューン 対抗文化のイヴェント記録と通り過ぎた旅人たちの風』、略して『本風』。


2025年は自分がつくった本の風に乗って、いろんな〈世界〉を旅した一年だった。2026年は午年。「馬を放つ」(by 野本三吉)ことで一体どこに辿り着くのだろう。

1月

『本風』の編集作業に没頭。昨年末で長年運営に関わった下北沢のブックカフェ「気流舎」が閉店。わけあって最終営業日(大晦日)に「気流舎コレクティブ」を脱退。なのでぼくは最後に気流舎を去ったメンバーとなった。タイトルが長くなってしまったが、「通り過ぎた旅人たちの風」という言葉を付けたのも、この12年間の共同運営(店としては17年)で、さまざまな事情で去っていった運営メンバーやお客さんのことを思い出したからだ。その中には死者も含まれている。ワケアリで辞めたのに、閉店後すぐに場の追悼アンソロジーを作るなんて自分でもどうかしてると思いつつ、同時に、なんだか不思議な強い力に動かされているのを感じていた。

2月

正直、編集がわからない。校正がわからない。出版社などで編集者として実務経験を積んだことがない。ZINEのようなものを遊び半分で作っているうちに、なんだか作れるようになってしまった。これも素人監督をサポートするベテランカメラマンのような存在のデザイナーがいてくれたおかげだ。今回、デザインを担当してくれたnuの戸塚さんは商業出版でもひっぱりだこの売れっこデザイナーで、年度内に刊行すべき本のデザインで大忙し。こちらが投げた球がなかなか返って来ないゲラのキャッチボールが続くと、こっちはこっちで待ち時間に変な欲が出てきて、録音していたイヴェント音源をどんどん新しく文字起こししてしまう。気づくと当初の倍以上のボリュームになって、挿入したい図版もどんどん増えていく。戸塚さん、ごめん! 

3月

完成を急ぐ理由は、チェンマイ行きの航空券をすでに買ってしまっていたから。その日までに刷り上がって、完成品をチェンマイでの取材でお世話になった方々に渡したい、というあまい素人考えがあった。作戦変更。チェンマイで校正作業をしよう。ほぼあがってきたゲラを印刷し、その紙束と赤ペンを持って、いざアナログ・ノマド。行きの飛行機で信じられないくらい集中できたけど、やっぱタイに着くと怠けちゃうね。せっかくならチルなヒッピーたちがだらっとしてそうなパーイまで足を伸ばそうと、726つものカーブがある山道をミニバンで蛇行してたら猛烈な吐き気が。やばいやばいとスマホの中のオフラインで聴けるコンテンツを探してその音に全集中。去年のぼくの誕生日に気流舎で行われたロバート DE ピーコのライヴ音源でなんとか苦境を乗り切る。『本風』最後の旅エッセイにこの音源のQRコードを載せようと思いつく。やっぱり旅をするとどんどんアイデアが降りてくる。移動は偉大だ。

4月

ついに『本風』完成、1,000部自宅に納品される。部屋がインク臭い本の束で埋まってしまい、この風景が自分が望んでいた「千のコミューン」か、と愕然となる。早速、ページを開いて仕上がり具合をチェック。入稿前に何度も確認した巻末付録のロバート DE ピーコ『ライヴ・アット・気流舎』のQRコードをスマホで読み込んでみる。えっ!エラー? なんと10日後には有料に切り替わる詐欺まがいのサイトにひっかかってしまい、数万円払わないと復活できない事態に。頭真っ白、顔真っ青。千部の本を人質に身代金を要求されている状態。払うのは悔しいし、このままだと欠陥商品になってしまう。このピンチをチャンスに変えるためには、上からステッカーを貼って、もともとこれがやりたかったんですよ感を醸し出すしかない。ボーカルひろしくんの絵の画像をネットから拾ってきて、その上にQRコードを載せて、急遽ステッカー業者に発注。一冊一冊、千冊これから貼っていくのか....

5月

ISBNコードを付けてないし、作った本を自分で売っていかなければならない。幸い前著の『アマゾン始末記』のときに飛び込みで開拓した店舗が全国にあり、再び連絡をしたり、また飛び込みで営業したり。今回は有難いことに全国45店舗に扱ってもらっている。本屋に卸したからって、そのまま自動的に売れるものでもない。大阪、京都、東京各所でイヴェントをいくつも企画し、話題作りを自己演出。しかし、自己宣伝をし続けるのはなかなか辛い、誰か宣伝してくれないかな、と思っていたときにPEOPLE BOOKSTOREさんが好意的に紹介してくれて嬉しい。レゲエの記事を面白がってくれたみたいで、これは源担ぎにGREENROOM FESTIVAL 20th Anniversaryで来日するYG・マーリーを拝みに行った方がいいんじゃないか、入場料めっちゃ高いけど、あわよくばお母さん(ローリン・ヒル)一緒かも、と思い立ち、いざ横浜へ。気づくと最前列で、ボブ爺の「バッファロー・ソルジャー」の曲に乗って客席に降りてきたYGと手が重なる。ジャー・ガイダンスなスキンシップあったけど、お母さんはいなかった。

6月

タイ・バンコクを拠点に活動するレゲエバンド、シーラチャーロッカーズ来日。とにかく最高のライヴパフォーマンスだった。タイのレゲエって勝手にゆる〜いイメージ持ってたけど、完全に覆された。演奏はタイトでソリッドでダビー。そんでもってタイの伝統音楽を融合させた独自のサウンドなわけだから、大ファンになってしまった。「音楽を通して人々の心に変化をもたらしたい」と語るフロントマンWINの人間力も大きい。彼らの来日ツアーの様子がYoutubeにあがっているのでぜひ見て欲しい。日本のレゲエシーンはヒッピーシーンと繋がっている部分があり、彼らが長野の大鹿村 「八角堂」でライヴしているのはその縁だろう。ぼくも一度、正月に八角堂でのレゲエ新年会に参加したことがあるけど、メンバーが「まるで親戚が集ったみたいだった」と感動するのも納得の同じトライブ感。タイで大鹿村みたいな拠点をつくることが彼らの夢らしい。

SRIRAJAH ROCKERS - SHOWCASE IN JAPAN 2025 (Video blog)

https://www.youtube.com/watch?v=3Pk-UGbQ0Cw&t=1122s

ele-king の野田努さんに『本風』を献本したところ、紹介してくれるというので大喜びで「お願いします!」と返事したら、「じゃあ、書いて」とのこと。またまた自己宣伝をすることになってしまった。

対抗文化の本

https://www.ele-king.net/columns/011815/

7月

タイはチェンマイの地に再び降り立つ。今回は『本風』刊行記念イヴェントをやるため。なぜにチェンマイで刊行イヴェントをやるのか(日本語の本なのに)、それはただやりたいから。頭の中に浮かんだアイデアをどんどん現実化するゲームをただ楽しんでいるだけ、なのだ。2度のチェンマイ旅でできた縁を頼りに、旧市街のホステル〈Deejai Backpackers〉のヤード(庭)で「ヴィジョン・オブ・チェンマイ」というギャザリングを開く。共催はCCC(チェンマイ・チル・クラブ)というチェンマイ在住のチルな邦人女子会? 大変お世話になりました。そのときの様子を「チェンマイの磁場」というタイトルで『なnD 12』に寄稿したので、読んでみてください。

『なnD 12』

https://nununununu.net/2025-1209-2134-4691/

8月

Youtubeで札幌の高校生バンド、テレビ大陸音頭を見てハマる。フジロックに出た直後に、寿町フリーコンサートに出演するというので、いざ横浜へ。元気いっぱいの高校生のシャウトとディストーションに、前列に座っていた寿のご老人方が耳をふさいで、顔をしかめるも、孫の活躍を見守るような、あたたかい眼差しも感じる。翌日には豊田にいて、「橋の下大盆踊り」。ノマド映像作家ヴィンセント・ムーンが、自身が記録した世界中のトランス儀式の映像と音をライヴ・リミックスする「ライヴ・シネマ」が急遽ブッキング。友人で『本風』にも旅エッセイ(「風に吹かれて」)を寄稿してくれた平田博満くん(テリー・ライリーの弟子になってしまった!)がいろいろとアテンドをしている模様。ヴィンセントのプレイの前に一緒にティー・セレモニーしたら、なんかいろんなことを思い出す。ぼくがシャーマンの治療歌「イカロ」に強い興味を持ったのは、10年前に吉祥寺バウスシアターでヴィンセント・ムーンのシピボ族シャーマン映像を爆音で体験したからだった!

ハーポ部長『アマゾン始末記』(品切れ、古本で探してください!)

https://ayacari.base.shop/items/81039357

9月

夏らしさを求めて、東京オペラシティで開催された「東京音頭 –TOKYO ONDO–」に行く。BON DANCEのDJ陣は、ALTZ / COMPUMA / IORI / SEI / YAMARCHY / YO.AN。歌手のhouさんが「いきんや節」を歌い、 ベリーダンサーのNOURAHさんがフリースタイル盆踊りを舞う。「未来がただ暗いなんて思わされてないで、笑っておくれよ」という歌詞にグッと来る。セックス・ピストルズのポール・クックの娘で、再結成後のザ・スリッツにも参加していた、UKラヴァーズ・ロック/レゲエ・シンガーのホリー・クックが、なんと家から徒歩5分のライヴハウスでライヴをしに来てくれる。近所に出現したロンドンに興奮。

いきんや節 IKINYA-BUSHI / hou

https://www.youtube.com/watch?v=ltp7YP1v7Hw

Hollie Cook - Superstar / Sugar Water (live at Freedom Sounds Festival 2023)

https://www.youtube.com/watch?v=ZQ4zWCyWn4w

10月

『本風』の最終ページにインタビューを掲載したモリテツヤくんの汽水空港10周年フェス「一斉着陸」に本の出店をするために遠征。鳥取空港までの飛行機代が高いんで、ジェットスターのセールで高松空港まで行き、そこから旅をしながら鳥取の会場まで着く、というビートニクなプランだったが、本が死ぬほど重いってことをすっかり忘れていた。郵送で20kg先に送ったので、手持ちで運ぶのは40kg。高松から始まる同行二人のブック遍路。岡山の友人のアテンドでなぜか修験道のお寺を巡ったり、日本第一熊野神社で「セロトニン御守り」なるものをゲットしたり、寄り道をしながらもようやく会場に辿り着く。着陸直前にスーツケースの車輪が重さで曲がってしまう事故が発生し、無理矢理引きずって何とかゴール。着陸地点からは、本当に素晴らしい時空間が広がっていた。本屋主催のフェスだけに、本がたくさん売れ、帰りは大阪の「マヌケ出版社」の車で新大阪まで送ってもらい、そこから優雅に新幹線で帰宅。

寺尾紗穂 Live in 汽水空港10周年フェス 「一斉着陸」

https://www.youtube.com/watch?v=4nlh34fmc-4

11月

最近毎年行っている「武蔵野はらっぱ祭り」へ。夜は渋谷に行き、ロブ・スミスの来日公演。1980年代末からスミス&マイティとして活動、マッシヴ・アタックのデビューにもかかわり、ピーター・Dとのモア・ロッカーズではジャングルを、そして2000年代後半より、ダブステップへとフォーカスしたソロ名義RSDで活躍するブリストル・サウンドの要のような人物。オールで踊って、そのまま寝ずにまた「武蔵野はらっぱ祭り」2日目に戻る。芸術の秋は歳を忘れて、めっちゃ行動的。後半はダブ尽くしで、川崎の「more!!! DUB DUB DUB」では「SUSHI AUDIO WORKSHOP」 と 「PRESSURE HIGH SOUNDSYSTEM」のサウンド・クラッシュならぬ、サウンド・ジャミング(2つのシステムが共同で音出し)を堪能。そして久しぶりのマイティ・マサ。人生最大の低音を浴び、音圧で何か邪気が祓われたような気になる。渋谷では、現代に蘇ったオープンリールの名機でON.Uサウンドを体感する「OPEN REEL DUB Listening Event」、六本木の「DUB SESSIONS 20th ANNIVERSARY」では、エイドリアン・シャーウッド、マッド・プロフェッサー、デニス・ボヴェルのダブ御三家による三者三様の音の直接レッスン。デニス・ボヴェルは、『本風』の石田昌隆さんの記事でもキー・パーソンとして取り上げられているUKダブ界の超偉人。

12月

1日からインフルエンザを発症し、39.5℃まで熱が上がる。意識が朦朧としているなか、何をとち狂ったか、新シリーズが開始された『ストレンジャー・シングス5』を一気見。悪夢がずっと目の前で繰り広げられていて、アヤワスカで一番しんどい時を思い出した。治ってもしばらく虚無状態。とりあえずネットフリックスを解約しようと思い立ち、その前に観ておきたいコンテンツはチェックしておこう、と今でもまだ『ラヴ上等』など、どうでもいいコンテンツをだらだら観続けているありさま。去年の今頃は、『本風』の編集に没頭し、創作意欲に満ち満ちていたのに、今年はこのていたらくぶりだ。冬至の日に思いたって、創作活動開始。今年刊行された神本秀爾『ラスタファーライ入門: ジャマイカと日本で人類学しながら考えたこと』を読んで、入門だけじゃ物足りなくなり、自分で上級者向けのラスタ本の翻訳を始めた。Horace Campbell『Rasta And Resistance: From Marcus Garvey to Walter Rodney』。英語の勉強を兼ねての試作だけど、私家版にするだけでは勿体ないんで、翻訳権のこととかよくわからないけど、来年はこれを何らかの形にしたい。30日に、アーバン・ラスタ・スタディーズの仲間と「TOKYO DUB ATTACK 2025」で一年の邪気をダブ祓い。帰ってきて寝て起きて、大晦日、今これを書いている。



『本のコミューン 対抗文化のイヴェント記録と通り過ぎた旅人たちの風』

企画・編著 ハーポ部長

デザイン 戸塚泰雄(nu)

発行所 文借社

2025年4月20日発行

四六判334ページ

定価 2,000円(税別

詳細

https://ayacari.base.shop/items/104200844

真木悠介『気流の鳴る音』とのセット販売

https://ayacari.base.shop/items/129897236