2022年を振り返る
大阪は東淀川区にある淡路という街で自転車屋「タラウマラ」を営んでいる土井と申します。タラウマラでは中古自転車の販売・修理に加えて、zineや音源を制作しています。2022年は相方のマリヲとともに8点のオリジナル作品をリリース致しました。誰もが手に取れて誰もが幸せな気分に浸れるようなものが必ずしも誰にとっても良い作品とは言えません。言いたくありません。タラウマラ発行の作品は人によってはある種の不快感が伴うであろうことを自覚していますが、偶然にも目や耳に捉えられるカタチを伴って提示されたそれらの断片が、表現ではなく生活の一環として編み込まれたものだからという自負があります。そこには「丁寧な暮らし」なんてものは微塵もありません。息を吐くだけで他者を不快にさせ、日夜、排泄物を垂れ流す私たちの日々の堆積がたまたま紙に印字され、或いはコンパクトディスクやカセットテープに焼き付けられたのです。見せかけの心地良さに流されないために、もっと這いずるべきなのだと思う、そう考えておられる方々には是非とも手に取って頂きたい作品たちです。
そして2022年12月30日に相方マリヲがタラウマラを退職致しました。お互いに100%と100%の力でぶつかり合って、何とかギリギリ店として機能するような危ういバランスでの経営状態だったこともあって、こうなるのは必然だったのかも知れません。3年前に淡路の路地裏で偶然出会った私たちの必然の解散、その背景には当たり前のように無数の偶然が折り重なっているのです。敬愛するトラックメイカーhankyovainの楽曲「他人の事情」にラッパーとして客演したマリヲは、自身を人間見習いの人間であることを自覚していましたが、そんな彼が2023年には「世の人」(百万年書房)として世に問われるのです。私は驚きません。むしろ遅いと感じるくらいです。いまはただただマリヲの今後を楽しみにしつつ、引き続きツッコミのポジションを虎視眈々と狙い続けたいと考えております。
土井政司 タラウマラ店主
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