午前中、御茶ノ水駅前の喫茶店〈穂高〉で安田謙一『神戸、書いてどうなるのか』を読み終える。神戸に関する108篇のエッセイからなる本書の後半、96番目の「ロックは無用」と題された〈喫茶カウボーイ〉に関する文章から読み始めて、「アナザー・デイ ──神戸育ちのてぃーんずぶるーす・その10」まで、ひと息に読んだ。通読するのは二度目のはずなのだが、心臓の奥の奥、ハートに近い部分が揺さぶられた。感動、という言葉は正しくない。つよく、はっきり心を掴まれて、言葉を失った。
私が愛した神戸の多くのものは姿を消したけれど、神戸が面白くなくなったとは言わない。その言葉は必ず私に返ってくるのだ。(「アナザー・デイ──神戸育ちのてぃーんずぶるーす・その10」)
穂高でいちばん好きなのは入ってすぐの道路沿いの席。正方形の小窓から行き交う人たちを眺めていると、街を覗き込んでいる気分になる。老若男女、急ぎ足の人もいる、ゆっくり歩く人もいる。それをチラチラ眺めながらコーヒーを飲んでいると、じわじわと安らいでくる。ああ、それにしても! 『神戸、書いてどうなるのか』は本編以降の写真と注釈、あとがきまで素晴らしい。なんと滋味深い本なのだろうか。
その後に行ったディスクユニオンで買った、曽我部恵一『いい匂いのする方へ』もまた心に響くエッセイ集。今日は本を読むための日だったのかもしれない。
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