サリー・ポッター監督作『選ばなかったみち』は音の映画だった。玄関ブザー、携帯電話。電車、自動車、救急車。街のざわめき。次々に耳に入ってくる。回想場面では波。風。砂。女性の声。その間をつなぐ劇伴、ギターとベースの音も耳にのこる(エンドクレジットに目を凝らして、ギターの演奏者がフレッド・フリスだと知った)。
正月に観た『ノー・カントリー』での怪演に背筋がこおった、ハビエル・バルデム。やはり、独特の表情だ。どこか沈痛な面持ち。笑うとぐにゃっと歪むけれど、観ていて一度も安心しきれなかった。彼の手と娘役エル・ファニングの顔の大きさはほぼ一緒。声が太い。どうしたって気になる役者だ。
ギリシャ、メキシコ、ニューヨーク。点在するシーンは繋がっているのか、否か。はっきりとは描かれない。目と耳から入ったものが脳内で直結しない。断片的に繋がったり、そのまま放られたり。戸惑わなかったと言えば嘘になる。観ながら、考え事が止まらなかったのは、制作者の狙いなのかと思う。
回想のなかに導きこむ、音のあり方。さまざまな背景を前に立つ、ハビエル・バルデムの存在感が好みだった。誰か、この映画を観た人と話がしたい。
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