2020/06/03

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随筆というやつは何を書こうかと思案するのに案外時間がかかる。ひとはどうか知らないが私はそうである。こんどもあれにしようかこれにしようかと迷っているうちに時間がきてしまった。−木山捷平「報告」

今朝、部屋で寝転がって、木山捷平『行列の尻っ尾』(幻戯書房)を読んでいて、見つけた一節。なるほど、これは自分の日誌と同じこと。大した内容でなくても、日々、何を書こうかと焦ってしまう。開店時間までに何かを書かなくては、と考えれば考えるほど混乱して筆は進まない。ギュッとした結び目を解くように頭の力を抜くと、何かしらを思い付いて、数行をごまかせる。どうにかして定時の開店前に書き上げられると、ホッと安心。ようやくコーヒーをすするような心持ちになる。

始めてしまった日誌に追われている自分を、木山さんが、うまいこと言い訳してくれたような気がして嬉しくなった。ひと時であれ、本が絶妙な逃げ場になった。

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