いつでも何かを読んでいなくちゃ駄目だ、と彼は言った。文字通り
7月23日。妻が図書館で借りてきた、アリ・スミスの『秋』の中で見つけた一
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7月24日。朝5時くらい、カラスの鳴き声で目が覚める。燃えるゴミの日だからだろうか。そのまま起き出し、軽く本を読ん
東京五輪に合わせて設けられた祝日、今日はスポーツの日というら しい。まったく安直。くだらない。そう思っても世間は祝日。 店を開けると、人がけっこうやって来る。特に夕方以降、 久しぶりの友人や知人、はじめましての方々など次々にご来店。 ありがたい。けれど、疲れる。 ポッと空いた隙をみてビールを飲む。すごく美味かった。
音頭場で買える食べ物は決して美味ではないし、値段も割高である 。ただし、こういう場所で味だの値段を云々するのはナンセンスだ 。デリーシャスだのコスパを云々するならスマフォに頼って他所へ 行け。(鷲巣功『河内音頭』ele -king books)
敬愛する方に薦めてもらって、少し前に購入していた『河内音頭』 。与しがたい雰囲気を放っていてなかなか手に取らずにいたのだけ れど、思いきって読みはじめて、すぐに見つけたこの台詞。ああ、 大丈夫。きっと気が合うと感じて、味読している。著者の鷲巣功さ んの語り口に独自にイントネーションを感じる。鷲巣さんの話に耳を傾けて いるような感覚を覚える。
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7月25日。朝からつよい雨。ザーッと降って、止む。セミが鳴き だす。これが午前中から幾度も繰り返される。油断して出かけると ずぶ濡れになる。店を開けた13時ごろは曇り空、ここから2時間 も経たないうちに大雨、雷。自転車で走る若者たちが走る、走る。 店に来る人は少ない。今日はこのまま静かに時間がすぎるのだろう か。
店をほうって、コンビニでコーヒーを買って帰ってみると、友だちが いてビックリする。流れのまま軽くビールを飲むうち、お客さんが やって来る。不思議なことに一度来店があるとひっきりなしに誰か が来てくれる。すごく久しぶりにライターの木村衣有子さんも来てくれた。色 々と話が出来て楽しかった。サッポロラガー(通称赤星)のことなど。
シーナさんが口についたビールの泡を手でぬぐった。そう、やはり 、このころからシーナさんはビールの人だった。(亀和田武『夢でまた逢えたら』光文社)
本を読んでいて、ふと、懐かしい気持ちにとらわれる。そうだった 。自分は二十代のはじめ頃、椎名誠さんの著作と波長が合い、 勢いまかせに読んでいた。そうするうちに、 元々好きだったビールがより一層好きになった。今も続けている缶 ビールをコップにうつしてのむ習慣も、元々は椎名さんの真似なの だ。
軽妙なエッセイ集のような顔をしたこの本、『夢でまた逢えたら』はとても面白い。ゴシッ プめいた話もあれど、社会批評としても十分に通用する。
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7月26日。謎の四連休、最終日。朝から雨がつよく降っている。 よくもまあ、毎日降るもんだねえ、なんて話していたら、昼前から 急に晴れる。太陽が顔を出すと、いきなり夏になる。FUJI ROCK FESTIVAL開催中の苗場スキー場を彷彿させる温度、空気。 ちょうど良く遊びに来た友人と開店早々ビールをのむ。この連休中 は序盤は静か、中盤、夕方頃からお客さんが動き出す流れが続いて いたのだけど、この日も同じ。閉店の20時まで来客が絶えず、 驚いた(とは言え、後半はポツリポツリという感じ)。
なにか見えたような気がして一年一組一番が植え込みに近づくと、そこには白くて丸いものがあった。(柴崎友香『百年と一日』筑摩書房)
早い時間からビールをのんでしまったし、知り合いが何人か来てく れたこともあって、昨日買ったばかりの『百年と一日』 は冒頭の一文から全然進まなかった。
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7月28日。蒸暑い。雨はやまない。静かに本でも読もうか、と思 っていたところに段ボール二箱分の買取依頼。以前からちょこちょ こ来てくれていた読書家のスケーター、Hくん。東京に引っ越すにあたって 蔵書を整理したいらしい。これが、なかなか力のあるコレクション 。とりあえず預かって、明日までに査定をする約束をする。そこか ら知り合いの来店が続く。同時に、さらに買取が2件。その間、 友人たちとしゃべる。そうすると、自分の時間はまったくない。 今日は本が読めなかった。
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7月29日。とても静かな一日。お客さんも少しだけ。気がつけば 、売上ゼロという日はほとんどなくなった。わずかではあれ、 何かしらの売上はある。でもそれは最近のこと。昨年までは、 年に何度かあったはず。
いろいろの生き方があるとは思いますが、七十数年生きてきてはっ きり分かったことは、やりたいことをして生きるのがいちばんよさ そうだということです。ぼくも、 やりたいことだけやってきたとは思いませんが、少なくともやりた くないことはやらないで生きてきたとは言えるかもしれません。( 木田元『闇屋になりそこねた哲学者』晶文社)
以前、知り合いの方がすすめていたように記憶している『闇屋にな りそこねた哲学者』を古本屋で手に取る。終始、丁寧な語り口では あるのだけど「ケンカはプロですから、どの程度のことをすればど うなるという計算は本能的にできますので、 ギリギリの脅し方をしてやります」なんていう言葉もあり、著者の 木田元さんに興味が増す。
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7月30日。お隣〈千年一日珈琲焙煎所〉で開催している河合浩さ んの個展もあって、人の出入りが多い。知り合いも多く混ざるので 、話す機会も増える。一昨日、沢山の本を持ってきてくれた若者に お金を支払う。しっかり値段をつけたので、喜んでくれる。その後 、知り合いのアナキスト、Kさんが貴重なアナキズム関連書をわけ てくれる。近年、大きな関心を持っている分野なので、興奮する。 与しがたいものもあるけれど少しずつでも読んでいこう。そんなこ んなで、今日はまったく本を読めず。終盤はやけになってビールを のみ、閉店となる。面白い一日だった。
早い時間からビールをのんでしまったし、知り合いが何人か来てく
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7月28日。蒸暑い。雨はやまない。静かに本でも読もうか、と思
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7月29日。とても静かな一日。お客さんも少しだけ。気がつけば
いろいろの生き方があるとは思いますが、七十数年生きてきてはっ
以前、知り合いの方がすすめていたように記憶している『闇屋にな
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7月30日。お隣〈千年一日珈琲焙煎所〉で開催している河合浩さ
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7月31日。賑やかな一日。だけれど、売れた本は一冊だけ。何年 かに一度ある、こういう日。やたらと人が来て、よく話し笑って、 ハッと気がつくと売り上げはほとんど無し。当然本は読めていない 。むなしい。さみしい。という感慨はないけど、ほんの一瞬「 何やってんだか」と思う。でもまあ、これが自分の店か。 とすぐに持ち直す。こういう日が何日も続くと、 さすがに参ってしまうのか。どっこい、 それこそ店だろうと開きなおっていられるか。出来れば自分は後者 でありたい。
後半、やや息切れしたけれど、これがほぼ一週間の記録である。扉 さえ開けていれば、誰が、いつ、来てくれるかよめないところ が店の醍醐味。ときに渦に呑まれるように時間が過ぎて、エネルギ ーも吸い取られる。静かに、自分の内面と向き合っているうちに過 ぎる時間もある。ほどよく来店がありつつ本も読めるときも ある。それ以外、言葉にできない平板な日も多い。今後もうまく、 店と付き合っていければいい。
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