「春だ。人を見たい。家の近くの西武球場へ、西武・ロッテ戦を見に出かけた」と書き出されるエッセイが好きだ。書いたのは荒川洋治さん。2020年に刊行された『文学は実学である』所収の「春の声」。ビールの売り子、監督、選手、観客たちを難しい言葉、表現を用いずに描写する。リズムがいい。
「小さな声と、大きな声。その使いわけに人柄がにじむ。いい人だ」。ヤジを飛ばすお客さんを観察し、こう評する。そのまなざしの温度がいい。こうした言葉に触れていると、身体の奥の方が満たされていく。
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