2016/07/13

『旅行記』前・後編


“二十年前、それまで旅に興味がなく、当然海外すら行きたいと思ったことすらなかったのに、いきなりインドへ向かう。と書くと、よくあるインドものと思われそうだが、まったくちがう。というのは彼にはインドへの思い入れも予備知識もなく、ただ直感の命じるままに行動するだけなのだ。”
-大竹昭子 (『すばる』読書日録より)

美術家、佐藤貢の『旅行記』前・後編が入荷しました。
この本は凄そうだな・・・と予感し、手にとり文字を追って驚きました。こんなにも黒々とした旅行記があるのか、と。下痢、嘔吐、苦悩、殴打、失意、猜疑にまみれた日々。こんな旅は真似したくない、いや、誰にも真似が出来ないだろうと思いながらページをめくる手が止まらない。果たして前編、後編の2冊を一息に読み終え、ぼーっとした頭でいまキーボードを叩いています。やはりもの凄い本だった・・・。

散々なことを書いているので、身を引いてしまう方がいるかもしれません。が、前編の巻末に収録された本書の刊行元「iTohen」代表・鰺坂兼充氏による“佐藤貢さんとの出会い”や佐藤氏自身による短いエッセイを読むと、ああ、今をしっかり生きているひとなのだなと確認できます。「黒い」と上記しましたが、筆者が向き合う孤独には澄み切ったところがあり、そこにボクは惹き付けられたのかなとも思います。

“自分について語ったものにはどこか自己愛がつきまとう。自分の「特別さ」に苦しんでいると言いながらも、実は酔っていたり、愛撫していたりする。放浪の旅本はそういうにおいをまといがちだが、その臭みがまったくないのはなぜか。それは彼がふつうでありたいと本心から願っているからだ。ふつうでないことに固執し、それを価値づけようとする「芸術家」にありがちな態度とは真逆の精神で生きているからなのだ。”

とは、再び大竹昭子さん。見事にこの本の本質を言い当てています。
なにも、読者を旅に向かわせなくても良い。ただ、こんなことがあったのだ、という事実の記録。佐藤貢の『旅行記』前・後編をPEOPLE BOOKSTOREで販売しています。それぞれ1080円(税込)です。

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佐藤貢 / mitsugu sato
1971年生まれ。大阪芸術大学美術学科中退。1994年から中国よりアジア諸国、アメリカ、中南米諸国などを放浪する。帰国後、和歌山市へ移住。[漂流物]を用いて作家活動を再開。2005年初夏に公に向けた個展を大阪市北区にあるiTohenとPANTALOONの2会場で同時開催。この発表を皮切りに定期的な新作発表を行うようになる。
主な発表に東京渋谷区恵比寿南:lim Art、大阪府枚方市星ヶ丘:SEWING GALLERY、名古屋:コロンブックス、東京日本橋芽場町:森岡書店、名古屋:gallery feel art zeroにて開催。 ポジション2012名古屋発現代美術に招待出品(名古屋市美術館)など多数。現在、名古屋に在住。


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