2014/09/06

「『Get back,SUB!』展」開催にあたって


どうにかしなくちゃ、と思ってる。何がってボクたちの文化のことだ。
まったく畜生。放射能のことなんかいくら考えても答えは出ない。どこぞの首相の顔は好きになれないし、思い出したくもない。有名なあのおじいさんは中国と戦争がしたいと言っているらしい。まったくもう。まったく嫌になる。そんなことばかりだ。そして、ボクが煩雑なニュースに頭を抱えているあいだに、ものすごく大事なやつがどこかに隠れてしまったような気がしてきた。あの、非効率で無駄ばかりの文化、カルチャーってやつが、どこか遠くに行ってしまったように思えるんだ。気のせいだよね? そんなことないよね? と何度も自分に問うてみる。でも、やっぱり彼らの居場所はすぐには見つからない――—。

サブ・カルチュアなんて無かった。仮にあったとしても、政治や資本に全部絡めとられていく。-草森紳一

この国の文化は、メイン対サブという区分が意味をなさなくなって以降も、消費されるスピードに創造が追いついていないという点で、ますます疲弊しているように見える。古典だけじゃない。この国では、ありとあらゆるものが絶ち切られたままだ。-北沢夏音

北沢夏音氏による『Get back,SUB! あるリトル・マガジンの魂』は2011年10月に上梓された。その発売を知り、ボクはすぐに近所の書店に注文をして購入した。そして読んで、驚いた。この書物に込められた熱は相当のものだった。北沢氏による文化-文中ではサブ・カルチュアと表記される-への愛情、とてつもなく大きなこだわりに触れて、目が覚めたような気がした。圧倒的な断絶を目前にし、埋めようの無い大きな溝の前に立ったとしても、この本の筆者はあきらめない。心の声に導かれて、一つずつ扉を開いていくその姿に、ボクは感動した。いや、感動では言い足りない。ボクも北沢氏と同じ熱に取り憑かれ、興奮し、鳥肌を立てながらページをめくっていった。

何度も読んだ。その度に新しい発見があった。
ボクは思った。どうにかしなくちゃいけない。ここで文化を絶やしちゃいけない。俺はこの人に会って、話を聴かなきゃいけない。そして、ボクはその思い込み(素っ頓狂な勘違い)に導かれて、北沢夏音氏に会うことになる。

2013年の1月7日に神保町で落ち合った、植田浩平と北沢夏音。終わらない、本当に終わらない話を二人は続け、ボクはひとつの提案をした。『Get back,SUB!』にまつわるイベントをつくばで開催しましょう。北沢さんともう一人ゲストを招いて、文化について話をしましょう、と。熱にまかせた若造の提案を北沢氏は快く了承してくれた。ぜひやりましょう。必ず実現させましょう。そして、ひとつの曲を教えてくれた。これは『Get back,SUB!』のテーマ曲だと思ってるんです、と。

それがこの曲、“BLOW IN THE WIND”だ。

視点を変えて 目線を変えて
何か 違うことを やってみようぜ
視点を変えて 目線を変えて
何処か 違う場所へ 行ってみようぜ

気まぐれ飛行船も いつしか地上へ
裏路地の少年も 大人になって夕暮れ
連なってる 繋がってる 思い出をかすめて
しなやかに ひそやかに そっと風は舞って

普通じゃないものに今でも夢中さ

それから一年と七ヶ月。ようやく、あの時の約束を果たせることになった。
9月2日から14日までの約2週間、自分の店「PEOPLE BOOKSTORE」で、2012年に神戸・海文堂書店で行われた『Get back,SUB!』刊行記念イヴェントをきっかけに結成された『SUB』研究会とPEOPLEの共同プロデュースによる展示「『Get back,SUB!』展」と「トーク・オデュッセイア」を開催することになったのだ。ゲスト・トーカーとして迎えるのはやけのはら氏。上述の“BLOW IN THE WIND”という曲をつくった張本人だ。もちろん喋るだけじゃない。ミニライブもあるし、アフターパーティーではDJだってやってくれる。さらに言えば、やけさんと北沢さんのコラボレーションだって予定している。とにかく盛り沢山。普通じゃないものばかりを楽しめる、そんな企画が実現するのだ。

そう! ここまで長々と書き連ねてきたけれど、言いたいことはシンプルなのだ。
9月2日からはじまる「『Get back,SUB!』展」をどうぞお楽しみに。9月6日のイベントのご予約はお早めに。それだけだ。
でも、それを言うには自分の思いを整理しなくちゃいけなかったし、告知を前に覚悟を決めなくてはいけなかった。と言うか、本当はこのイベントの開催概要をまとめなくてはいけなかったのだ。その為に長文をつかって、あらましの説明をしてきたのだけれど、どうだろうか。これはイベントの内容説明ではなくて、ボクの個人的な思い出話でしかないよな、と思う。展示の詳細は改めて知らせるので、もう少しだけ待っていてほしい。

とにかく今日はここまでだ。言いたいことは言えたような気がする。
ボクは文化はどこに行ったんだ! という話がしたいんだ、ということだ。

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