2013/06/06

「十人の賢人が何もしないよりは、バカといえども歩き回る方が、値打ちがある。」


「この本は、多くの自叙伝にあるような自分の成功談を得々と語るという内容ではありません。むしろ、若気の過ちや勇み足、思慮分別の足りなさや、猪突猛進したためにかえって泥沼にはまりこんでしまう、という失敗談でいっぱいです。(中略)しかし、これらの失敗談は不思議に暗い雰囲気がありません。セゲラは全くへこたれることなく、そんな失敗ばかりしてしまう自分にいささか困りながらも、なんとかうまくやろうとしています。」 ―訳者あとがきより

ジャック・セゲラによる『広告に恋した男』。
1970年代にフランス広告界に飛び込んだ、セゲラによる自叙伝だ。語り口がとにかく軽やか。くるくる、くると話が踊る。ダリもプレヴェールも、愉快に現れ、豪快に笑う。なんとなく思う。この本はのリズムは、レイモンド・マンゴーの『就職しないで生きるには』を読む感覚に近いのだ。ユーモアとジョークを交えながら、独力で生きる豊かさと激しさを描いていくからか。そう考えるとこの2冊。同じ匂いがする。

「人に使われるか、自ら生きる術を身につけるか、選ぶべき時が来たのだ。」
「人生は、出会いがあるからこそ、生きる価値がある。出会った瞬間に、時は止まり、発見が始まる。」


何度読んでも、面白い。はじめて読んだのは4年前だった。ポエジーとユーモアはくさらない。だははと笑い飛ばせる失敗談をつくれるか。必要なのは度胸と愛嬌。読むたびに、セゲラの話に夢中になっている。自分もこういう風に、仕事をしたい。

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四年前のこと。
以前の自分のブログを読み返す機会があり、この記事と本を思い出した。2009年というとつい最近のような気がする。4年前というと、ずっと昔のことのような気もしてくる。点でみるか、線でみるか。それだけで時間の流れ方は速度を変える。ひとつの事象の意味合いも変わってくる。

それはとても不思議なことだ。

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