むこう一年、レコードは買わない。春の頭に突如そう宣言して自分を驚かせた友人が、早くも禁をやぶりレコードを買いはじめた。二、三日酒を抜いて、しばらくのまなくてもいいかなーと話していた人が、実はあのあと酒屋に行っちゃいましたと話してくれた。二人ともいいなあ。好きだなあとしみじみ思う。
まるで磁力に引かれてでもいるように、「手っ取り早い」方角へと私たちの精神は流れて行き、何やら得体の知れない大きなものに呑みこまれ同化される。磁場を形成しているのは集団の世界だから、これは集団と個体の本質的な相違、根本的な対立という問題に他ならないだろう。(「終り良ければ」)
今、よんでいるのは岩田宏『渡り歩き』。2019年2月に刊行された草思社文庫版。この文庫の紙質や重量、文字間、レイアウトが自分の好みにすごく近い。内容が良いことはもちろん、手にする負荷が少ないからか、スルリスルリ、滑るように読めてしまう。
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