村上慧『家をせおって歩いた』が入荷しました。
美術家として、人間として、日本社会の不可思議さと徹底的に向き合うために著者は「移住を生活する」と標榜し発泡スチロールの家を担いで歩き、移動しながら生活をして、各地の民家の絵を描きためる旅に出ました。本書はその創作活動369日の記録日記です。
幕開けの2014年4月5日から濃密です。ここにある「僕たちは閉じ込められている」という記述、コレが重要。その事実に意識的であれば、思考停止に陥らず、安易な答えを求めることなく生きていけるはずだと思うから。見ず知らずの誰かが用意してくれた道を歩くのではなく、未踏のけもの道を歩むように。「定められたダンスを踊ることが『楽しい』と思えてしまう体になりたくない」と著す村上さんに、ボクはつよく共感しました。
『家をせおって歩いた』は、同じつくば市で生まれた出版社「夕書房(せきしょぼう)」からの刊行。こういう書物をつくり、広げる人が身近にいるってだけで力が湧きます。自分なりに考えてみて、試行する。そのためのヒントが散りばめられたこの本を、是非ご体験頂きたい。
販売価格は2160円(税込)。お手元に一冊、いかがでしょうか。
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「結局なにも変わっていない。あの震災は日常を変えるチャンスだったはず。 日々の生活について、消費や生産や労働や社会システムについて見直していけるはずだった。 だけどなんか知らないけど、どんどん元に戻っていく。僕自身も、ふと気がつくとまるで何事もなかったかのように以前の生活に戻っていこうとしていた。あんなことがあってもなにも変わらないのかと思うと、ぞっとした。日常が終わらないのが悔しい。すべてが消費に回収されていく。僕は他の誰でもない僕自身の日常を終わらせないといけない。日常を終わらせるために、家を出ていかなければならなかった。」 A5変形・ソフト上製・カバー帯あり 304頁(カラー16頁含) ISBN 978-4-909179-00-5 C0078 装幀:佐々木 暁
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