2012/11/27
自由 / リベルテ
“目覚めた小道に
広がった道路に
あふれる広場に
ぼくは君の名前を書こう”
今朝、不意に届いていた。
詩の一片。これいいな。気持ちがいい。清々しい。
自由。リベルテ。力強い言葉に、早朝に出会う。とても嬉しい。
毎朝、小道は目覚めるし、道路は広がる、広場はどんどんあふれだす。
太陽が顔を出す。一日がはじまる。
自由。リベルテ。
これはポール・エリュアールの詩なんですね。
おもいっきり浴びました。じっくりと読んでみます。
たしかに受けとりました。
***
“自由(リベルテ)”
ポール・エリュアール
小学校のノートに
ぼくの机に、木々に
砂に、雪に
ぼくは君の名前を書こう
読んだすべてページに
白いすべてのページに
石に、血に、紙に、灰に
ぼくは君の名前を書こう
金ぴかの肖像に
戦士の武器に
王様の冠に
ぼくは君の名前を書こう
ジャングルに、砂漠に
獣や鳥の巣に、エニシダに
子供時代の木霊に
ぼくは君の名前を書こう
夜の素晴らしい時に
昼の白いパンに
婚約した季節に
ぼくは君の名前を書こう
ぼくの青空の切れ端すべてに
カビた太陽の池に
輝く月の湖に
ぼくは君の名前を書こう
野に、地平線に
鳥たちの翼に
さらに影の風車に
ぼくは君の名前を書こう
夜明けの息のそれぞれに
海に、船に
とてつもなく高い山に
ぼくは君の名前を書こう
雲たちの泡に
嵐の汗に
降りしきる退屈な雨に
ぼくは君の名前を書こう
きらめく形象に
色とりどりの鐘に
自然の真理に
ぼくは君の名前を書こう
目覚めた小道に
広がった道路に
あふれる広場に
ぼくは君の名前を書こう
ともる灯りに
消える灯りに
集まったぼくの家々に
ぼくは君の名前を書こう
ふたつに切られた
鏡の中と、ぼくの部屋の果物に
空っぽの貝殻のぼくのベッドに
ぼくは君の名前を書こう
食いしん坊で大人しいぼくの犬に
その立てた耳に
そのぎこちない前足に
ぼくは君の名前を書こう
ぼくの戸口の踏み台に
慣れ親しんだ物に
祝福された炎の波に
ぼくは君の名前を書こう
同意した全ての肉体に
友だちの額に
差しのべられた手それぞれに
ぼくは君の名前を書こう
驚きのガラスに
沈黙よりはるかに
慎み深い唇に
ぼくは君の名前を書こう
破壊されたぼくの隠れ家に
崩れ落ちたぼくの灯台に
ぼくの倦怠の壁に
ぼくは君の名前を書こう
希望のない不在に
裸の孤独に
死の歩みに
ぼくは君の名前を書こう
よみがえった健康に
消えた危機に
記憶のない希望に
ぼくは君の名前を書こう
そして、ひとつの言葉の力で
ぼくはまた人生を始める
ほくは君を知るために生まれた
君に名づけるために
自由(リベルテ)と。
Poesie et verite(「詩と真実」), 1942年
翻訳:2003, Parolemerde2001
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