2024/02/06

薩摩キッドを語りつくす! 泰尊へのインタビュー④

鹿児島〈Chimpanzee Studio〉でのレコーディング風景

–さて、ここから後半8曲について聞いていきます。まず「Mr.Lonely」。じわーっとイントロが立ち上がって、曲名のリフレインが印象的な曲だけど、俺が好きなのは後半の「そんな関係なら俺は自分から距離を置くよ」ってところ。この感覚って大人になるほど強くなるし、必要にもなってくる。暖かで居心地のいい関係も大事だけど、最終的に人はひとり。そこからしか、始まらないよね。この曲はどんな風にできたのかな?

この曲は元ネタが好きで、アルバムでは唯一、ネタや曲のテンポや構成をこちらから指定して創りました。ビートは同じ日置に住むMOODというこれからのビートメーカーで。彼とは初めて仕事しました。わざわざレコードを買ってサンプリングしてくれたり、ダメ出しにめげずに早いスピードで仕上げてくれたり、熱くやってくれて感謝してます。子供同士が同じ保育園なんですが彼の息子が可愛いんですよね(笑)。

この曲は 誰しもが抱えたりぶつからざるを得ない、人間社会を描きたくて。楽しく生きてるしそう努めてるけど、楽しいだけじゃないことも、出逢いだけじゃなく別れも、ちょっとしたことで拗れることも、誤解も、嫉妬も、勘繰られることも確実にあって、けどそれを受け入れることも大事で、それも人間というか。俺はできる限り距離感を大切にしてて。距離感ミスったら事故るし、炎上するし。それは大人になった証拠でもあるし、寂しさもあるけど、けどそれってめちゃ大切なことなんですよね。自分から向き合うことも、自分から距離を置くことも。けど、一見後ろ向きなようで実は前向きな唄なんです。地味だけど、アルバムに必要な唄。


–「RIZE AGAIN」は、イントロのピアノからして泰尊節! なんかちょっと懐かしさもある。「再び、唄旅」ってリリックもあるように旅の途中の情景や感情をつぶやくような曲だなと感じる。不思議と前半2曲目の「CALM ON JORNEY」と響き合うね。ここで改めて旅の途中、途上にいることを表明しているような曲。

懐かしいってなんか嬉しいっすね。いい感じに情が乗っかってますよね。

街から街。南から北に。この曲はまさに旅の途中の話で、東北盛岡によくお世話になってるんですがその夜の一瞬を唄にしました。2019年から何度もLIVEに行かせてもらってまして、いい街で、いい人達で。そして冬の北国の光景は込み上げるものがあって。南国からすればあり得ない光景ばかりで、憧れるんです。このビートもMAHBIE。彼は盛岡出身で、ツアー/唄旅の途中に彼の家に寄った時にこのビートを聴かせてもらって、気に入って。「旅に持っていく?」って提供してくれたんですよ。そのまま東北へ向かって、このビートを聴きながら。必然的にこの唄が産まれましたね。

大事なのは数字じゃなくて心の距離。いつだってそう想います。旅人心情。

「旅の人 Junnos」

–次は「MY LIFE IS MY LIFE」。この曲はサビのヴァースを歌うJUNNOSの声に耳が引かれる。かなり個性的な声、歌唱で全部そこに持っていかれかねないほど。この人はいったい何者? どうして、ここに登場してもらっているのかな? とにかく、妙に引っかかるんだ。

植田さんはてっきりJUNNOS君のこと知ってると想ってた!逆に嬉しいね、これを機に知ってもらえたら。最高ですよね、マジで。彼は凄まじいアジア屈指のうたうたい。

今は種子島に住む、4児の父。彼は東京出身なんですが数年前にキャンピングカーで家族4人で日本中をLIVEしながら回り移住先を探していた超ストロングスタイルな時期があり、鹿児島にもLIVEでやってきて出逢ったんです。それがまた凄まじいLIVEで未だに覚えてる。日本中に彼のファンがいるし、未だに全国を回り続けてる。声もだけど、何よりリリックがいいんですよ。吟遊詩人、リリシスト。

「生き恥は人の糧になる 格好良い姿などじゃ響かない 転んだあとの立ち上がり方こそ人が立ち上がる力になる」。すげえリリックですよね。

"MYLIFE IS MYLIFE"は今回のアルバムの核になる楽曲のひとつ。数年前からずっとやりたかったタイトルで この曲はどうしよう?と想ったときに彼が浮かんで。いつか一緒にやりたいな、それを形にするために去年の頭に種子島まで逢いに行って、出逢って長いけどはじめてサシでゆっくり語ったんです。そこでした口約束が時間を経て、形になった。絶対彼がやらないようなビートの上でJUNNOS節がめちゃくちゃ踊ってる、メッセージも言霊も言葉遊びも。まさか、いや、きっと こんなJUNNOSを聴きたかったんだ。って想いました。海外に移住が決まったようで、そんなタイミングでこの唄を創れてよかった。

そしてこのウタには実は裏で超絶MVPがいて。それが今回ミックスエンジニアを担当してる「Quanata Recognize」。この曲はアカペラ素材があまりいい状態ではなかったんですが彼の仕事のおかげでボーカルは飛躍的に変化した、進化した。まさに魔術師の仕事だった。楽曲が北へ還る鮭のように逞しくなった。あの変化っぷり、進化っぷりには心から感動したなぁ めちゃくちゃ喰らったな〜。エンジニアって凄い。このウタには彼の魂もしっかり乗っかっているんだ。

余談ですが、このタイトルの由来は 鹿児島天文館にある 大好きなカレー屋〈BEZCURRY〉の店主が着ていたTシャツに描かれたメッセージで。そこに誰よりも反応していたのが私とハードコアバンド LIFESTYLEのリーダーYAYO兄やんで。で、LIFESTYLEの去年出した新譜のタイトルも"MYLIFE IS MYLIFE"。まさかこのタイトルが2023年に2つも鹿児島から世に放たれるなんて。大切な唄になりました。

(⑤に続きます!)

2024/02/05

薩摩キッドを語りつくす! 泰尊へのインタビュー③

今日もどこかで「薩摩キッド」が鳴っている……。

–へえ! 演奏をサンプリングすることで生まれたノイズだとは驚いた(一発録りに近いのかと思ってた……)。で、次の「SOULBIZ」でギヤチェンジ。つくばエクスプレスのアナウンスで身体の力が抜ける。イントロからSPRAって感じのユルさだよね。ほどよく黒みもあって。他の曲に比べて、言葉を置いていってるように聴こえるけど、意図的にやったことなのかな? リリックの圧を弱めにして、他の曲とのコントラストをはっきりさせる狙いがあるのか、乗りこなすのにやや苦戦したのか、気になるな。

ユルいですかね? 俺はあまりそうは想わなくて。ゆっくりだけど攻撃的なダンスミュージックというか。黒くて面白いビートっすよね! 気付いてくれてうれしい、あのワードの置き方は意図的で、新しいアプローチでラップしたかったんです。エスプラのビートは独特で変則的でつかみどころがあまりないから、最初は 「なんじゃこりゃ」って乗せ方に超苦戦して形になるまで時間かかったけど、つかみ始めたらスラスラと出てきてその勢いでRECで声を出したら案外ハマって、結果楽しめましたね。力入れずに新しい扉開けれた感というか。そして、つくばの香りと風景を。あなたの店もモロ(笑)。

エスプラは今回のアルバムの実はキーマンで、以前LIVEでつくば市天久保の〈Club OctBaSS〉に行った時に夜中に〈DISCOS〉(*Club OctBaSSに隣接するバー)で語ってる時に「俺にとって泰尊はワイルドなんだ。だからもっと作品に落とし込んでほしい」って急に言われて。ハッとなったし、あの言葉に背中押されたっていうか。今作は好き勝手やったり挑戦してるのはあの言葉のおかげでもあるんですね。よき戦友、親友。

「High Drivers SPRA/エスプラ」

–次の「YANAGIDARODEO」はイントロからヤーマンな気配が漂ってきて、自然と笑えてくる。この曲は最後に「実は……ヤナキタロデオ号」と告白するところが好き。接続するように始まる「リサイクルキャラバンのテーマ pt.3 feat,TONY THE WEED,MARIYO」には驚いたな! 泰尊くんの代表曲がまさかのレゲエチューンに! この辺りの展開は音が広がっていくようで、すごく面白かった。言葉の伝わり方も波みたいな揺らぎがある。この2曲のどうやって生まれたのかな?

ヤナギタロデオです(笑)。つい最近、元の持ち主の柳田さん(ウルトラ大工)がカミングアウトしてきてビックリしたんですよね(笑)。「え、今更?」って。 この曲も前々から作りたくて、モーターアンセムというか、笑える自慢というか。音楽の利益で買ったキャンピングカー乗って全国回ってるラッパーなんていないからこそ、これは唄にしたくて。ビートはPANICtracks、横浜の兄ちゃん達であるgnkosaibandの凄腕ギタリスト/エンジニア/屋台骨が担当してくれて。彼が以前出してたEPにこのビートが入ってて一目惚れして。で、無理くりお願いして快く使わせてもらいました。これはPANICtracksのエディットセンスに脱帽した楽曲ですね。一度ラップ乗せた状態とアカペラを送ったら2時間後に全く違う曲として返ってきて、それがヤバすぎてブチ上がって。そっから原曲のエッセンスをいい塩梅にいれて……感動したなぁ。トラックメーカーではないミュージシャンPANICtracksの底知れぬ狂気と才能をたっぷり知った曲になりました。まぁ何より、笑えて最高。

リサイクルキャラバンのテーマはバッチリですよね! シリーズ第三弾となる今作ではレゲエに挑戦したかったんです。レゲエのノリが好きで、生きてく上でもこれからの自分に必要な要素だよなぁって想ってて。ビートは盟友MAHBIEなんですが彼に注文して。したら彼は速攻で答えてくれて。元々彼がリサイクルキャラバンシリーズをめっちゃ好きで。「LIVEで常に唄うべきだよ!」って前から言ってくれてて。じゃあパート3はあなたでしょ!って。

で、イケイケなシャウトカマしてくれたMARIYOは鹿児島のレゲエシンガーで孤軍奮闘、長年活動してて。この唄には、そのジャンルでちゃんと活動をしてる人の声を載せたくてお願いしました。めっちゃ味が出てますよね。

TONY the WEEDことトニーさんはたまたま住む街日置に来てて。共通の友人宅に暫く世話になってたトニーさんに便利屋の仕事誘ったら来てくれて、一緒に仕事して。その時「いつか曲作りたいね」ってなり、じゃあ正にリサイクルキャラバンのテーマでしょう!って参加してもらいました。そして 各自が参加してまとまった後にMAHBIEのエディット、更に ミックスエンジニアのQuanata RecognizeのDUB魔術により生まれ変わりましたね。リサイクルキャラバンのテーマシリーズ、pt20ぐらいまでは作りたい(笑)。


–おーー! いいねえ、リサイクル・キャラバンpt.20! それは泰尊くんにしか出来ないよね。次の「ひかりのこみち」は旅を終えて、一度帰宅。子供たちの顔を見た場面なのかなと思ったり。前半ではいちばん暖かみのある曲じゃないかな。冒頭の声ふくめ、ここにこの曲を入れた理由はあるのかな?

個人事業主アンセム、これからも期待しててください。

"ひかりのこみち"、これは旅というよりは日々。父親としての変化と日常を描きました。家族の唄、子供たちの唄は1stアルバムから描き続けていて。前作で言うと"again"、"ごにんぐらし"の続編ですね。ただ、今までと大きく違うのは “家族”や”個”が対象だったのが 周りの”皆”を思い浮かべて描きました。このビートは、佐賀を拠点に活動するCogaAtsushi君が手掛けました。きづけば長い付き合いになってきたいい男なんですよ。

彼が結構前にこのビートを送ってくれて ずっとあっためていた。聴いた瞬間から、テーマもイメージも浮かんでいたが 時間をかけて創っていった。ホントに時間がかかった。同じタイミングで、長女が保育園から小学校に、次女も成長したり。四季を越えるまで熟成させていた。この楽曲は 〈森の子〉という近所の友人達が立ち上げた子供と親達の居場所創りコミュニティのおかげで出来上がったといっても過言じゃない。

小学校に入ると 色んな情報が入ってくるし、色んな子達がいること知る。いいこともそうじゃないことも。不登校だったり、世界はちいさな社会問題で溢れてる 学校がすげ〜楽しい子もいれば、勿論そうじゃない子もいる。ルールを守れる子もいれば、勿論違和感を感じる子もいる。

「なんで学校に行かなきゃいけないの?」

って言われたことだってあった。親っていっても親として子供と同い年だし、未熟だし、悩みや迷いは勿論ある。けど、おかげで色んなことを考えるキッカケになったし、友人達が向き合ってる姿を近いところで見たり、一緒に関わったり、現在進行形で無理なく一緒に楽しんでいる。

おかげでこの曲は "個" じゃなく "皆" を浮かべながら創り上げた。自分にとっても成長できたことを曲を通して気付けた。子供たちの声は、アツシ君からの提案で。森の子の子ども達の声。子ども達の前でこのウタを流す度に瞬間に 「この声、◯◯!」ってイントロクイズになってまして、めっさ愛しいんですよ。大切なウタになった。

この唄が前半を締める一曲になってくれましたね。ここだな、と。ちなみにこのタイトルは少し前につくばのシンゴスター(*つくば市小野崎の〈Cox/Shingoster LIVING〉)で展示した友人で熊本在住の陶芸家・北川麦彦の親父さんが作った詩集のタイトルから勝手にいただいたのです。ひかりのこみち。


–インタールード、中休み的な「u&mi」。ここまで来て、おー遠くまで来たなあって感じだよ! まだまだ旅は続くけど、いったん休憩。茨城在住のDJ、いけたらいく氏のトラックを採用したのは何かきっかけがあったのかな? のどかな空気があってやすらぎます。

いやあ、遠くまで歩きましたよね。 聞いてる(*読んでる)皆さんマジでありがとう。いけたらいく、ことエステンさん!つくばのOctBassで俺とこしのかんばいちゃんのリリパをしてもらった時に出逢ってリハから意気投合したんです。LIVEもしっかり身届けてくれて、感動してくれて。彼のバイブスは記憶に残ってて。なんか信用できるオーラというか。その後、すぐTAPEを贈ってくれて。

 「ビートも作ってるから贈るね」って贈ってくれたビートがこれだったんです。ビートレスで、切ないけどあたたかくて、ビンテージな音で。なんかじわ〜って心に沁みて、いつかどこかで使わせてもらえたらな、と。そして制作を進めて行く中で、ボリュームがある程度見えて来た時に 「これはどこかにSKITが必要だぞ」って想ったんです。じゃなきゃ事故るというか。その時に思い出したんですよね、ああ あのビートがもしかしたらハマるかもって。

声や言葉が載らない「SKIT/インタールード」がしっかり立ってるフルアルバムが好きだし、理想で。映画のような。そこに見事にハマりましたね。理想に近付けた。何より作品自体の風通しを良くしてくれた。この曲があるとないでは作品の印象はきっと大きく違う エステンさんいい仕事してくれましたよね。

(④に続きます!)

薩摩キッドを語りつくす! 泰尊へのインタビュー②

鹿児島〈食堂 湯湯〉には泰尊コーナーがある!

–それはいい出会いがあったね。薩摩藩の歴史、弾圧や差別、侵略の事実を受け止めて現代に立つ自分のルーツになる言葉を使う。薩摩キッドってタイトルに込めた意志、しっかりと伝わりました。話してくれてありがとう。

では、ここから収録曲の話に移ろうか。まずは「口上荒磯」! 俺、この曲すげー好きなんだよね。砂埃の向こうからマイク一本のラッパーが現れるような情景が浮かぶ。エッジのあるフロウもオープニングにぴったりだと思う。重要な役割を果たしているギタリスト、souさんのことを知りたいな。その上で、この曲をつくった意図も話してほしい。

俺もこの曲めっちゃ好き。ずっと前からギター一本とラップ一本の曲が創りたかったんです。俺にとっての”ご挨拶”。何小節かわからないくらいスピットしてます。

SOUは、茅ヶ崎出身埼玉在住のギタリストで。出逢いは初めて東京でLIVEした2016年。MOROHAのアフロって男が引き合わせてくれて、渋谷〈EAR〉という彼が働いていたBarで僕の1stアルバムのリリパを組んでくれてその時の共演者で。凄腕の同い年で速攻意気投合したんですよね。それから彼は今もそうなんですが関東にLIVEで行く度に必ずと言って良いほど足を運んでくれる義理堅く優しい男なんです。で、ずっと弾き続けてるのも知ってたし会う度に「いつか創ろうね」って話をしてて、ただそれはずっと実現してなくて。で、最後に会った時もそういう話をして別れたんだけど前ほど表情に活気がないことに気付いて(勘違いかもしれないんだけど)。

その時にその「いつか」をずっと先送りしてる自分にも気付いて、もしかしたらそのままフェードアウトしてしまうかもしれない。それは嫌だな、と。丁度このアルバムの制作を考えていたタイミングもあって思い切って声を掛けたんです。彼はめちゃくちゃ喜んでくれて。そして何度もダメ出しする俺にめげずにしっかり答えてくれたんです。いい仕事してくれた!!

「いつかのEARがここで繋がる」とはまさにこういうことで。

で、イントロとしては長いんだけど一本録りだから編集ができないと、じゃあこのまま行こうと。だったらこの曲を通して俺が普段歩いてる風景や思考や人々や店や今までとこれからを一気に紹介しちまおうと。休まずに一気駆けしちまおうと。リスナーのケツに火つけちまおうと。俺も一本録りで臨んだからその時の緊張感もしっかり残ってますね。これが俺からの、薩摩キッドからの、ご挨拶です。


「口上荒磯 guitar by sou / 泰尊,TAISONG featuring 笑福神楽団」

–2曲目の「CALM ON JOURNEY」、これぞ泰尊節だなーと思う。メロウでタフなチャレンジャー、やさしいけど甘くないリリック。はっきり言えば、耳にして新鮮味はない。でも、曲順的には必要だと思う。旅の途中の自問自答をラップしてるのかな、と思っているけどどうだろう?

この曲はまさにそうですよね。正直、アルバムに入れるか最後まで迷ったくらい自分らしい唄。めっちゃ好きなんですが、新鮮味はないですよね(笑)。

だけどそんな唄を2曲目に持ってこれたことが実はミソで。こういった曲は全体がまとまりやすくなるからクライマックスに持ってきがちだと想うんです、作品に強度がなければ尚更。だけど今回は2曲目っていうすげえ実は重要な位置に持ってきた。今回のアルバムに強度に自信があるからこそ、ここで。むしろここしかなかった。

確かに、自問自答ですね。慈愛も、自戒も込めて。リリックにある 「それで良いじゃん」「それじゃダメじゃん」本気で言ってくれる人。植田さんもそういう人だと思うんですが、良いことだけ言う人じゃなくて、褒めてくれる人だけじゃなくて、厳しいこと、ハッとさせられる人の存在。

で、自分ばっかり話すんじゃなく「そっちの調子はどう?」って相手に一言でも問いかける大事さ。ある時にやっぱり一方通行じゃダメよねって想ってて。この曲は冬の関東で描いてましたね。「急ぐんじゃねえって言われたわ/まるで新宿行各駅停車」とか、10分早く行くために鮨詰めの急行乗ってる人々を見て乗るの諦めて後に来た各停のったら超ガラガラで、優雅に本を読みながら目的地に向かって。ああ、やっぱりそうだよな、とか。って考えた自問自答ですね

この唄はビートに導かれ、そんな断片を繋ぎ合わせて調和を願ったコラージュですね。

2023年12月8日、食堂湯湯でのライブ!

–「Keep on moving,making magazine」! この曲いいよね。今年に入って本格化している〈食堂湯湯〉店主の中村くんとの協働をイメージさせるリリックもいい。なによりグルーヴィーなトラックのノリがいいし、カッコいい。ここでシャウトしているヨロイたけしさんって何者なのだろうか? ここで歌われるmaking magazineって言葉の意図も知りたいな。

この曲もいいっすよね、DJ YASAのビートとスクラッチが爆発してますよね。LIVE序盤でフロアに火を付ける曲が創りたくて、今までこういったノリの曲を意識して作ってなかったなあってのもあり産まれましたね。

ヨロイたけし氏は宮崎在住のファンタジスタ。前衛アーティストであり、現役バリッバリの板金屋なんです。自分で叩いて作った銅板の鎧を身に纏い九州中のイベントやパーティーを祝いにやってくる素敵な男なんです。「総員前進」がキーワード。鎧を身に纏い、パフォーマンスもするし、ポン菓子機を持ってきて爆破させて子供達に配ったり、オーガニックコーヒーを出店したり、純粋にひたすら踊ってたり愛すべき男なんです。無農薬の畑や田んぼもやっていて、奥さんも〈ippuku-ya〉という知る人ぞ知る最高のご飯屋(出店メイン)も営んでて、生き方にこだわった素敵な夫婦なんです。いつも優しく見守ってくれていますね。そんな彼の渾身のワードを世界を獲ったターンテーブリストにコスってもらうなんて超面白いよなって想ったのです。

「making magazine」。この言葉は植田さんも縁深い中村こと中ちゃん(a.k.a dj champon)が俺にくれた一言からインスパイア。彼が俺のパーティーや生き方をずっと見てくれた上で「タイソンは街の編集者だよね」って言ってくれて。「雑誌みたいなパーティーだ」って。ああ、そういった見方もあるんだって嬉しかったんですね。

街や暮らしをデザインする、じゃなく、物語を紡ぎ、編集する。エディットする。そりゃヒップホップだわ!と。きっと中ちゃんもそう在りたいと願ってる生き方だと想うし。「KEEP ON MOVING」じゃ、ありがちすぎるタイトルだと想った時にそれを想い出して、造語を創る感覚で「MAKING MAGAZINE」を足したら いい感じにフィットしてくれたんです。

雑誌のように、ラフにタフに。ワクワクを忘れずに。生きて行きたいもんです。


–しっかり答えてくれてありがとう。では、次が「薩摩キッド」だけれど冒頭でけっこう話してくれているので飛ばして、「REBEL REBEL,PEOPLE PEOPLES」のことを聞こうかな。ハードコア・パンク・バンド、LIFESTYLEの演奏の上でのラップ! 一瞬驚くけど、すんなり聴ける。「何も無い街で 何かを探せ」という言葉が象徴的なこの曲、ずばりどんな試みなんだろう? 地場の先輩、先達への敬意の表明。これからも諦めないという意思表示と俺は読んでいるけれど。

THE MESSAGE。このタイトルとサビのフレーズは生きるテーマみたいなもんです。そんな唄には、鹿児島でずっとカッケー背中魅せてくれるLIFESTYLEの楽曲をサンプリングしたかったんですよね。何より1番伝えたいことが詰まってるし、この曲に込めました。

激しいこと言ってたり、社会をぶった斬ったり、だけどよく聴いてみたらチャーミングだったりクスッと笑えるフレーズも仕込んだり、ただの文句じゃ終わらせない、怒りや哀しみや混沌の中でしっかり立って、遊ばせてもらいました。レコーディングはめちゃ大変でしたが(笑)。 

この曲は 「違和感」に重きを置いていて。同じ日置という街に住む凄腕のビートメーカーのhiatohが何回もやり直してくれて。最初はもっと綺麗だったんです、だけど、もっと汚そう、もっと解放できるっしょ、って追求した結果こんな仕上がりになりました。ラストバースに行く前のチャイムは日置市の12時のチャイムです(笑)。

アルバム内でも特に、レコーディングエンジニアとビートメーカーとミックスエンジニア、私、4人の結晶ですね。

コンビニが一個しかない、引越して今や一個もない街からでも 全国に発信できるし、行動できる。 "なんもない"って嘆いてる暇ねえわ、探せ!!動け!!したらなんかしらあるよ、胸張れるよ、きっと報われる時が来るよ。それはずっと言い続けたい。

諦めないし、続けて、続いていく。けど肩にそこまでチカラは入ってないというか。そんな感覚はアルバムのムードになってますね。

あと、"薩摩キッド"で言い忘れたことがひとつあり、ビートを担当したOWLBEATSは鹿児島を代表する、いや、日本を代表する素晴らしいビートメーカーだと想ってるんですが。彼の出身は奄美大島なんです。そこもちゃんと繋がってるんです。

(③に続きます!)

薩摩キッドを語りつくす! 泰尊へのインタビュー ①

当店でも『薩摩キッド』を販売中!

鹿児島のラッパー・泰尊から電話があったのは去年の11月頃だっただろうか。年末に新しいアルバムができるから、植田さんにコメントを書いてほしい。インタビューもしてほしい。そう言われて、ほんの一瞬戸惑ったけど、すぐに「やるよ!」とこたえてしまった。そこからがまあ、長い道のりだった。ときに泰尊くんを焦らしながら、牛歩のように一歩、一歩進めていったのが下記のやり取り。短くはならないだろうと思っていたけど、まあ、ここまで長くなるとは! 泰尊が、たっぷり、じっくり語った『薩摩キッド』のこと。ごゆっくりお楽しみください。(*PEOPLE BOOKSTORE 植田)


–泰尊くん、新作『薩摩キッド』の完成、発売おめでとう! これから本作をひもといていこうと思います。……ですが、再生する前に、いくつか聞きたいことがあります。いつからこの作品の構想が始まったのかな?

植田さん、ありがとう!いつかあなたにインタビューをしてもらいたい、と想ってました。念願。どうか色々とよろしくお願いします。

作品の構想か……。今回の作品だけじゃなく、ここ最近は 「よしアルバム作るか!」ってよりは、まず一曲自然に作って。出来上がって。その曲の、そのウタの、出来上がった状態がサインでありメッセージというか。

今作では16曲目の “再見”がそうで。このウタが出来上がって 「ああ、いいウタだなあ」って想えて。その時に 「ああ、アルバム創れってことかあ」って気付く。そうなって気持ちがアルバムに向かっていくのです。そこから本格的に制作モードに突入するって感じですね。2022年の秋頃だったと想います。


–全18曲、67分48秒。このスケールは最初から頭にあった? それとも、録音がすすむなかで増えていったのかな? 狙った上でのこの容量か、結果的なものなのか、気になります。

(*狙いは)全くなかった(笑)。ビタイチ。

録音が進む中で増えていきましたね。超結果的。ただ今作は今までの制作の中で一番特別だった、というか。2枚作った気分なんですよね。制作過程で、病気になったり、立ち止まったり、手術したり、戦線に復帰できたり。色々なことが起こりすぎて、それをしっかり落とし込むには そして「本当にやりたい、残したいもの」の理想や希望に近づくには やっぱりこのぐらいのボリュームは必要だったな。と結果的にですが。

あと今は 「短く、少なく」な時代じゃないですか。そういうのでボリュームとか少しだけ悩んだ時もありましたが、ふと気付いて。

「いや、そもそも俺そこの螺旋にいねえわ」って。「何を気にしとんねん」「誰に気を遣ってんねん」って。だから吹っ切れて好きにやりましたね、今作は特に。


–泰尊くんは録音するときに聴き手のことは考える? 具体的に聴かせたい顔が浮かぶか、という風な情緒的な質問ではなくて、聴く人がどうやって作品を受け止めるのか、全体をつかむまでの時間は想定はするのかな?

初めてそういう質問されましたね。面白い! 正直考えないですね。時間も。もし考えてたら絶対にこの時間数/曲数にならないはず(笑)。

ただ、バランスは物凄く考えます。アルバムを作ること、それは ”作品集を作る作業”ではないんですよね僕の中では。作品を並べて ただパッケージングして……ではなくて。

その先の作業であり、物語を紡ぐクリエイティブな行為だと想ってて、アルバム制作というものは。だからこそバランスを常に意識しながら制作を進めていきます。その「バランスを考える」ってことが 「聴き手を意識する」と、どこかで繋がってる気もします。

すっげー身近な例えすると弁当作りとか近いかな、と。


–断片というか曲を一つずつ仕上げて、積み上げていく。その上で全体像を提示する。なんてイメージなのだと受け止めました。やっぱり喉のポリープのことは大きいよね。構想から制作、録音までにいったん谷間が出来た。それが今作のヴォリュームに繋がっているわけだ。納得。

先行シングル的な立ち位置だった「薩摩キッド」、あの曲を表題(アルバムタイトル)にするのは最初から決めていたのかな? 

勿論最初はきっとその時に創りたいものを創ってるんですよね。けど途中からは必要な要素を探して、導かれていく感覚なんですよね。歌詞も音もトピックも。まぁそれも結果的ではあるんですが。常に考えることを放棄せずに、その上でバランスを意識するのが普通になってくれたおかげで導かれていく感じです。

なんか綺麗に聴こえるかもしれませんが、そりゃまぁざっくりなんですけども(笑)。

タイトルも全然決めてなくて。結構ギリギリまで "薩摩キッド"か"再見" で迷いましたね。ただ、やっぱり薩摩キッドという言葉が持つポップさと、今回5枚目ですが、なんかファーストアルバムみたいなフレッシュで熱い作品に仕上がったのもあり、なんか繊細な言葉よりポップで勇敢で潔いタイトル "薩摩キッド"が似合うなぁ、と。勿論、鹿児島を代表する作品って自信も表明してます。


「薩摩キッド TAISONG/泰尊 Prod.by OWLBEATS」

あと このタイトルにはひとつ物語があって。

僕はずいぶん昔から奄美大島に太い縁があって、はじめて奄美へLIVEで呼んでもらった時に とある方に 「泰尊、奄美大島と鹿児島(薩摩藩)の歴史って知ってる?」って言われて。僕は恥ずかしながら全然知らなくて、正直に伝えると、色々教えてくれたんですね。で 「君には知ってほしいなぁ」って言われたんです。その当時鹿児島のラッパーとかの間では"薩摩"って言葉がファッションの様に使われてて。”レペゼン薩摩”みたいな。僕もそこからはそういう使い方は一切やめましたね、

で、そこから毎年奄美大島に通って、ライブして、沢山の友ができて。奄美大島の仲間たちもこっちに呼んだり、紹介したり。少しずつ歴史や街や人を知って行き、ポジティブな交流をずっと続けてきて。ようやく "薩摩" って言葉を使ってもいいんじゃないかな?って想ったんです。まだ歴史のことは沢山知ってるわけじゃないですが恥じない男にはなれたんじゃないかな、って。過去は過去としてひどい歴史や差別や弾圧があったことを受け止めて、そこから時を経て、現代を生きる若者達が音楽を通して超前向きに繋がってるっていうのはめちゃくちゃ意味があることだと思うんですよね。だから僕にとっては"薩摩"って言葉を使えるようになった想い出深い作品になりました。ちょいと脱線しちゃいましたけど。

(②に続きます!)

ピープルブックストア日報 2023年9月1日〜20日

天久保一丁目の印刷工房〈えんすい舎〉謹製、「ピープルブックストア日報」(9/1〜20)が出来ました! ブログに書いている日誌を基にして再構成したもので、イラストはおなじみ坂尾裕幸くん(今号は俺の顔は使用禁止にしましたw)。えんすい舎の店長・小林佑生くんのレイアウトがあってか、いつもよりするっと読める気はします。

かなり言葉を削ったつもりだったけど、紙にして読んでみると、いらない部分がまだまだあったと気付かされる。この号の最後に登場する人が奇しくも昨日、現れたのは驚いた。不思議なこともあるもんだ。

店頭購入はもちろん、メール通販、オンライン・ストア〈平凡〉ご利用の方にもお付けします! 

2/5 店日誌

2月5日、月曜日。雪が降る、積もる、かもしれない。いや、たぶん降るから無理には出かけないように。5センチと言っても降る量であって慌てないでほしいけど、それ位は積もるかも。そうやって曖昧に、でもけっこう強めに脅かされると出かけたくないよなーと思うのは俺だけか。とりあえず店に来て、開けてはいるけど、人はくるのか……と書いてるうちに、しっかり雪が降ってきた。

「ピープルブックストア日報(2023年9月1日〜9月20日)」が久しぶりの刷り上がり。短い秋のようだった9月上旬の記録。記述も心なしかサッパリしていて読みやすいような。物足りない、まあ普通、面白かったなどのご意見、ぜひ伝えてほしいです。

今日は18時までの短縮営業。お出かけの際はお気をつけて。

2024/02/04

齊藤祐平個展「膝がかゆい」

私は普段古書店を経営しながら絵を描き、発表している。 店は、お客さんとしゃべっていて「アートのことはよくわからないんですけど、齋藤さんて絵も描いてるじゃないですか」と言われた時に「僕もアートのことがよくわからないんですよ、よかったら一緒に考えませんか」と答えるきっかけを与えてくれる。

アーティストとしての振る舞いは、その人間が美に従事していることを保障しない。 しゃべっているうち、そのお客さんの中にあったアーティスト像を支える膝のあたりが崩れ始めて、私はやっと個人になる。

齊藤祐平個展「膝がかゆい」
会期 2024年3月14日(木)~4月8日(月) 11時~18時 ※火曜・水曜定休
会場 千年一日珈琲焙煎所CAFE(茨城県つくば市天久保3-21-3星谷ビル1-F/G)