2026/10/30

10/30 店日誌


10月30日、金曜日。来月25日刊行予定の『GO ON』vol.13に寄稿した「PEOPLE BOOKSTORE 閉店後日記(10/3~11)」をゲラで読み返して、こりゃ、なかなか悪くないと手応えを感じる。まず、編者の牧田さんによるレイアウトがいい。縦書に組み直した上で全体を整えてくれているから読みやすいし、字の大きさもちょうどいい。で、内容もいい……って書きたいわけじゃなく、「閉店後」ってのがミソなんだなーと実感したのだ。

こうやって毎日書いてる「店日誌」は開店前に書いて、更新しているわけで、期待の割合が大きい(さあ、今日はどうなるかなーって感じ)。反面、閉店後だと回想の領域に入って、自ずと内省的になる(ああ、うまくいかなかったなーっと)。店を終えて、ヨッシャ! 今日もやったぜ! なんて日はほとんどないんだよなァ。

いま身を置く状況のなかで、自分は考えている。この場所が「現在」である。/ここに立って「未来」を見るとき、すべてはまだ明瞭に見通せず、霧に包まれたような混沌のなかにある。これが「期待(プロスペクティブ)」の次元である。/一方、ここから「過去」を振り返るときには、すべてがすでに確定された事実として回顧できる。これは「回想(レトロスペクティブ)」の次元である。(黒川創)*

日記を書く上での立ち位置を考えていて、頭に浮かんだのが、鶴見俊輔『期待と回想』だった。ちょっと変わった題名なのだが、思考の道具としてはとても便利で、言葉を選ぶときにも大きな役割を果たしてくれる。鶴見俊輔いわく───「回想の次元だけで終わらせるのが科学主義だとすれば、そうではない期待の次元における思想というものを私はなるべく大切にしたいと思っています」。

結果論をベースに話せば、どうしても断定口調になるし、実際にそういう人を知ってもいる。反対に希望もしくは理想を基にした会話は抽象的になりやすいのだが、言葉にふくらみがあって、相手を萎縮させない。アイデアが生まれやすくなる。期待と回想。なるほど、よく練られた題名なのだと感心する。

*「解説:「期待」の次元に向かう姿勢」(黒川創) / 鶴見俊輔『期待と回想』文庫版 p.611

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それにしてもきのうは寒かったなあ〜。今日はどんな気候になるのだろうか。ラジオの天気予報によれば、たまに雨が降るけど暖かくなる。らしい。できるだけ軽い気分で表に出よう。

今日から明日、明後日の週末も通常営業。オンライン・ストア〈平凡〉にも動きあり。

2026/10/29

10/29 店日誌

10月29日、木曜日。(きのうのこと)秋っぽくて最高の空気! とか言って、歩きまわった午前中から風はつよかった。ちょっと寒いかなーっと店を開けてみると、オイオイ、こりゃ大変だ。強風に煽られたドングリがガラス面にパチパチとぶつかる。舞った枯葉が店のなかに入ってくる。時間とともに温度はどんどん下がって、ライトダウンを着ていないと帳場に座ってもいられない。開店直後のお客さんから陽が暮れるまで入店ゼロ。そりゃそうだよな〜と17時半前に帰り支度をしていたら建築家のスガワラさんが顔を出す。何人かが目をつけていた中古盤の大物、気の利いた古本を買ってくれて、ホッとする。

百人の人に自分の言葉を添えた百枚の映像を送るという荒唐無稽な着想を思いついたのは、絵葉書とは何かという問いを考えていたときのことだった。わたしはある時から、生きるとは書物を読み、映画を見て旅行することだと考えるに至った人間であり、(…)であるとすれば、一度旅先から絵葉書を書き送るというスタイルのもとに文章を書いてみるというのはどうだろうかと、思い当たったのである。(四方田犬彦)

暇にまかせて手に取った、四方田犬彦『100 POSTCARDS』はちょうど求めていた内容で、しみじみと読み切る。上記した通りの本ではあるのだけど、四方田氏の言葉は詩のようであり、ときにハングルで綴られたりもして、飽きずにページを繰っていけた。テキストは海藤日出男に送られたもの、図版ではスルホ・シビラの「スケート場」にイメージを拡げられた(索引によれば1932年の絵画とのこと)。

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今日もはやく閉めちゃいたいのだが、ぐっとこらえて19時までの通常営業。新刊、新譜に加えて買い取ったばかりの古本もオンライン・ストア〈平凡〉にあげているので、ご注目を。

では、開店。肌着に股引、厚手の靴下を着けて、乗り切ります。

2026/10/28

10/28 店日誌


10月28日、水曜日。朝いちばんで針をおろしたのは、高田渡『FISHIN’ ON SUNDAY』。中古盤で見つけたいなーと思いつつ、見つけられず、あっても高いしで買えなかったレコードの2026年再発盤。A面冒頭「魚つりブルース」の一音目、ギターの弦がはじかれたところで「ヒュウ!」と声がでる。今日みたいな真っ青な空、乾いた空気にぴったり。アコースティックだけれどグルーヴしてる。朴訥としつつ弾みのあるヴォーカルもいい調子。河村要助のジャケット画はもちろん、ダン・ヒックスをきどったような裏ジャケの写真もカッコいい。

ああ、それにしても! この秋っぽい空気は最高だ。歩くのにもっとも適した環境で、用がなくても外に出たくなる。スーパーやドラッグストアをまわりつつ、ブックオフに寄ったり、気持ちよく歩きまわった(ちょいと風は強かったけど)。

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益子〜北茨城の磯原へと出店が続いた10月、週末ごとの晴天に助けられ、たくさんの人と交流ができた。来週からはじまる11月は3日(火・祝)の「天久保文化祭」と28日(土)の「緑ヶ丘文化祭」に出店予定。はからずとどちらも文化祭。芸術と文化、読書の季節ってことなのかな。どちらも張り切って臨みます。

急ですが、今日は18時までの短縮営業。夜は冷えそうなのでお気をつけて。

2026/10/27

10/27 雑記


朝いちばんの予約で〈Bespoke〉で散髪。帰宅してすぐ車に乗ってドライブインで昼食、流れのままにJAXAを見学、再度帰宅したのち店まで自転車を走らせて、オンライン・ストアでの購入分をピックアップ。何度目かの帰宅でようやくシャワーを浴びてほっとひと息。しばし休んで、近所の蕎麦屋で一献……。

2026/10/26

10/26 店日誌


10月26日、月曜日。きのう、常連イシワタさんが久しぶりにご来店、お約束のごとく数枚のレコードと本を売ってくれる。アレクサンダー・スペンス、ピーキング・ライツ、遠藤賢司に加えてフォージ・ユア・オウン・チェインズと題されたサイケデリック・ソウル・コンピ。これまたどれもが特殊でぼーっと聴いてられない。今朝の空模様と同化するようなアレクサンダー・スペンス、パンク以降のニュー・ウェイヴの気配のつよいピーキング・ライツ、極上曲がならぶフォージ・ユア〜と順に針をおろして動けなくなる。ズンと沈むような引力があり、スピーカーの前で固まってしまった。

売って、買って、売ってを何巡か繰り返してくれるお客さんがいて、古物商は成立している。お互いに求めず、飽きずの線を保ちながら付き合える人がいて、店の鮮度が保たれる。イシワタさんのほか、鮮やかな印象を残していった若者たち、しずかに本を選んいくお客さんが混ざっていて、刺激の多い週末だった。

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意味や効率を求めて回転し続ける現代社会のシステムから逸れ、この匿名性に満ちた静謐な空間を歩き続けるうちに、僕はいつしか心地よさを覚え、救いにも似た開放感さえ抱くようになっていた。/ここでは、誰も何者かであることを求められない。(三好祐介)

千葉県在住の写真家、三好祐介の最新作品集『REMNANT 16』が入荷。3年かけて撮影してきた国道16号線周辺の風景が収まっていて、同テーマだった前作とは異なる色合、風景が切り取られている。三好くんの個展「REMNANT 16」も天久保1丁目〈Gallery Y〉で開催されるので、ご注目を(会期は11/28~12/8)。

雨の降る月曜日。古本を中心に、今日もいろいろ入荷予定です。

2026/10/25

10/25 店日誌


10月25日、日曜日。9時22分に歩きだし、資金繰りのことなど考えつつ進んでいると「おーい」と声が聞こえて顔を向けると、なんとツカちゃん! 配送の仕事中に通りすがったらしい。会ったのは何ヶ月ぶりかな、元気そうで安心する。アマゾン関係の配送業を仕事にしている知人が何人かいて、彼とか誰とか、最近ではなんとアイツも。なんなら会社を立ち上げた人も知り合いで、共通の知人も多いから話しだすと長くなる……のだが、短めに切り上げる。スーッと走る軽バンを見送って、また歩きだす。

さあ、入金! 覚悟してATMに向かうも、今週末は休業。がくっと拍子抜けするも、また明日だなーと思い直して、もうちょい歩く。近所の千年一日珈琲焙煎所には「今日は13時開店です」との貼り紙あり。店に着いて時計をみると10時ぴったり。

道に出れば、誰かと行き合う。まったく知らない人がいれば、顔だけ知ってる人もいる。挨拶をしたり、会釈を交わすときもある。ぼんやり考えてると、その当人が現れて、びっくりすることもたまにある。

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先月刊行した、山名昇『正岡子規はバイトなどしない 副読本●『寝ぼけ眼のアルファルファ』について』の取扱店がじわじわ増えている。北海道、群馬、東京、大阪、京都、広島、鹿児島。遠からずリスト化して紹介したいなーと思っている(この本らしい、特殊な地図ができるから!)。

今日明日も通常営業。本の買取、在庫確認などのお問い合わせはお気軽に。

2026/10/24

10/24 店日誌


10月24日、土曜日。家を出たのが8時19分、小雨がぱらぱら降ってるけど、大丈夫でしょ! っと早足で歩きだす。見かけたのは古い家の前にいたおばあさん、自転車の大学生、それくらいか。天気のすぐれない土曜の朝、歩いてる人はいなかった。筑波大学内の郵便ポスト荷物を投函、店に着いたのは8時54分。ラジオをつけるとエルヴィス・コステロ、気がつくとゴンチチの番組に切り替わっていた。

え、村上龍が……! 動揺、衝撃が消えきらない夕方には小林信彦も。こればかりは、どうしようできないのだが、きのうは店にいて落ち着かなかった(ついに松井が監督に! って明るい驚きもあり)。

今日はこのあたりで開店します。オンライン・ストア〈平凡〉もどうぞよろしく。