2022/01/31

2月の営業案内(改訂版)

2月16日(水)から28日(月)の会期で京都の書店〈誠光社〉で開催する、JUN YABUKI Solo Exhibition「LIGHT HERE,LIGHT NOW」の設営・搬入のため、2月15日(火)・16日(水)・17日(木)は休みます。18日(金)から通常営業。その翌週、21日(月)は定休日ですが、開けようかと思っています。

2月17日(木)から開催予定だった、「仕立て屋のサーカス・京都公演」はいったん延期。会場は木屋町〈UrBANGUILD〉のまま、別日程を調整しているようです。あらたな開催告知をお待ちください。

1/31 雑記

定休日。ひさしぶり柏に出かける。頼んでいたレコードが〈ディスク・ユニオン〉に届いたと知らせがあったから。この店で、中古盤を見はじめると時間をわすれる。物欲があばれだす。どれを買うか、買わないか。いっそ手中のものすべてを買ってしまうか。頭の中も落ち着かない。店内をうろつく姿はきっと、すごく怪しいだろう。

頼んでいたものをさっさと受け取り、すぐ帰る。なんてことはできるはずなく、数枚のレコードとCDを買ってきた。いま、ブリジット・フォンテーヌ『ラジオのように』を聴いている。

2022/01/30

1/30 店日誌

胸のうちを他者に伝える作業は、じつはとても複雑で、微妙で、時間を要するものである。ひりひりした緊張感をともなう思いやり。そんな心の変換装置があってこそ、言葉は生きる。–堀江敏幸「開かずもどき」(『一階でも二階でもない夜』所収)

1月30日、日曜日。昨日、はじめて立ち読みを注意した。なにせ長い。一冊を読み終えるいきおいで読みふける。換気ついでに冷気をいれても感づかない。どれくらいの時間だったか、定かじゃないが「長いよ」と声をかけてしまった。「帰れよ」とは言わなかったが、あの若者、もう来ないだろうなあ。

こうして長く店にいると、まんぜんと時間をつぶしにきたか、そうでないかを感じてしまう(それが、必ずしも正しいものとは思っていない)。別にいいのだ。買わなくても。でも、その場に流れる時間、気配を察するくらいの感度は持ってほしい。

今日は11時から19時まで、開けています。

2022/01/29

『FAR』

HAPPFAT『FAR』(CD-R)が届きました。
香川県在住のDJ、HAPPFATの現時点での最新ミックス(来月には新作PORTA DE MOLAが待機中!)。オルガンの音が印象的な序盤はメロウ&サウダーヂ、ほんのりエキゾチカ。小さめなファンク&ソウル・ナンバー、歌もので繋いでいく中盤以降はちょうど良く身体をあたためてくれるでしょう。

販売価格は1100円(税込)。好評の過去作『borrado』『MELT 2』も在庫しています。

1/29 店日誌

1月29日、土曜日。大げさでなく、約20年ぶりに再生したROSSO『BIRD』。ヘヴィ・ブルーズ「惑星にエスカレーター」から駆け抜ける「シャロン」、ともに6分台。記憶より長尺で驚く。「I♡PUNK」、「カリプソ・ベイビー」、「グラスホッパーはノーヘル」。スピーディー、グルーヴィー、ロックンロール! 乾いたあきらめ、やけくそ気味の歌詞とが相まって、アメリカン・ニュー・シネマをおもわせる。「星のメロディ」でエンドロール。ここで終わってくれたらよかったのに。

今日、明日は11時開店、19時閉店。買取依頼、通販などのお問い合わせはお気軽に。

2022/01/28

1/28 店日誌

1月28日、金曜日。じっくり本を読むつもりでいた昨日、間はあいたものの友人、知人、お客さんがつづけてやって来た。各人、本を売ってくれたり探しにきたり、「心安らぐレコードは?」と聞く人もいた。若干あわてながらもやり取りをして、どうにか落ち着いた夜。「おすすめの詩集は?」と聞いた若者に『頁をめくる音で息をする』をすすめる。詩集ではないけれど、きっと気に入ってくれるだろう。

今日も好天。15時から20時まで開けています。

2022/01/27

柴田大輔 写真展「ほにゃら」


昨年設立20周年を迎えた、障害のある方の地域生活をサポートする当事者団体「つくば自立生活センターほにゃら」の皆さんと、皆さんが街で生活する中で出会った地域の方々を撮影しました。

柴田大輔 写真展「ほにゃら」
会期 2022年1月27日(木)−2月7日(月) 11:00–19:00 ※火・水定休 
会場 千年一日珈琲焙煎所 CAFE(茨城県つくば市天久保3−21−3星谷ビル1−F/G)

1/27 店日誌

1月27日、木曜日。昨日は定時前に来た方を迎えいれ、そのあとにもうひと方。それぞれにゆっくり本を選んでいく。しばらく間が空いて日が暮れる。手持ちの本を読み進める。さあて、今日はどうなるかなあと思いはじめたところに、友人が立て続けにやってくる。そうしてもうひとり、お客さん。

店に足を踏み入れる人、だれもに丁寧な接客などできるわけがない。話をすることも多くはない。むしろ、放っておいてほしい。その感覚が伝わると、店にいてすごくらくだ。感染拡大がどーこー! といった話はよそでしてほしい。

来月の出張計画の見直しを思案中。どうしようかな。

2022/01/26

Today’s YouTube #413

https://twitter.com/OxTxMx/status/1485085039788388354

1/26 店日誌

読み終わったあとに、読者が本を捨てても良い、とにかく読み終わるまでは頁がうすくなるのを惜しむような作品を書きたいと思っていた。–生島治郎

1月26日、水曜日。生島治郎『星になれるか』を読む。回想録的な群像劇『浪漫疾風録』の続編。1950–60年代のミステリ作家、編集部や出版社のようす、時代のざわめきを活写した『浪漫〜』にくらべて、下世話な印象。とくに「バンコク有情」と「ドリアンの謎」。吉行淳之介と長部日出雄とのタイ旅行、猥雑な体験記は読み飛ばすのにうってつけ。

直木賞受賞後の後半、作家にかかる重圧ゆえの睡眠薬中毒、家庭の崩壊。深刻なテーマではあれ、自己中心的な気配がぬぐえずやや興醒め。最終的にも出自の話にむりやり着地させた気がしてしまった。

今日、明日、明後日は15時開店。のんびりとやってます。

2022/01/25

1/25 店日誌

1月25日、火曜日。あっという間に今月も終わり。というのは日付、数字だけの話。どうやって日々を重ねてきたのか、振り返ってみれば色々あったと納得できる。小さくとも、やれることをやるしかない。その結果や反応はとおい先、おもわぬときに得られることがある。

週はじめ。いつもどおりに開けています。

2022/01/24

1/24 雑記

クリント・イーストウッド主演、監督作『クライ・マッチョ』を観た。朝一番の上映回で観客は三人。約100分。カウボーイ、ロデオ、ロードムービー。メキシコ。走る馬。埃たつ風景。少年と雄鶏。それらすべてが老主人公を引き立てる。不意に出会う、ちいさな町。そこにあるダイナーで流れる音楽がいい。

想像以上にからっと乾いた小品だったことに驚いた。昼寝の夢でみた世界を映画化したものだと言われても、自分は納得する。さらりとした終幕。つよい男の時代は、すでに終わったということか。

書きっぱなしのメモである。

Today’s YouTube #412


2022/01/23

河合浩個展「Forgotten Times」

今回の Open Letter での展示は、河合さんのいつものカオティックな展示スタイルから少しステップバックして、彼の画業の営みを、過去作や立体作品なども交えながらすこし俯瞰して見れるものにできたらと思っています。

河合浩個展「Forgotten Times」
会期 2022年2月19日(土)〜3月20日(日) ※土日のみオープン(予約制/入場料500円)
会場 Open Letter(東京都杉並区下高井戸 5–3–17)

1/23 店日誌

1月23日、日曜日。先日買い取った本の中に入っていた、梨木香歩『炉辺の風おと』。装丁と題名に惹かれて読み始めたら、止まらない。客足のたえないなか、ときに中断しながらページをめくり続けた。途中、途中で立ち止まって、おもいを巡らせた。

自分の見ているものがよくわからなくとも、もしかしたらそれ、と見当をつけつつ日々を送る。あれはどういうことだったんだろう、と疑念を解かずに日々を送る。(中略)それは葛藤を抱えて生きるようなものだから、もやもやと苦しくもあり、力も要ることだ。けれどその納得しないエネルギーが、いつか時宜を得て、すべてのことを明らかにすると信じている。(「遠い山脈」)

上記以外にもここに引いて紹介したいところはある。もっと分かりやすく、伝わりやすい箇所もあるのだけど、「疑念を解かずに日々を送る」こと、つまりは「日々、自分なりに考える」ことで社会、時代の見え方が大きく変わると感じる昨今。この意思表示は重要ではあるまいか。

本書以外にも、きっと気にしてくれる方が多い本、けっこうな冊数がある。今日もどんどん棚に並べていくので、ご来店の上、何かしらを見つけてほしい。

今日は11時から19時までの営業。明日、月曜は定休日。

2022/01/22

1/22 店日誌

1月22日、土曜日。昨日の口開けのお客さんは筑波大学に通う、Uさん。定期的に足を運んでくれる。引っ越しなどいくつかの懸念事項に関してはなしを聞く。順調に進むこと、時間をかけても、すぐに答えを見出せないこと、色々とある。年齢や立場に限らず、ひとつひとつが固有の体験だよなあと思う。また、顔をみせてほしい。

その後はなじみの方、友人、ご近所さんなどが顔を出す。ちょうどよい温度でやり取りができた。特別なことは、なにもない。まあ、ぼちぼちやっている。

今日、明日は11時開店、19時閉店。のんびりやってます。

2022/01/21

港の人の刊行書籍

鎌倉の出版社「港の人」の刊行書籍が届きました。
左上から、黒田博『私映画 小津安二郎の昭和』村山恒夫『新宿書房往来記』石田千・牧野伊三夫『月金帳』第一集平林敏彦『言葉たちに 戦後詩私史』。どれも、しっかりと存在感のあるたたずまい。じっくり時間をかけて、読みすすめてほしい書籍たち。

本によっては先日入荷したばかりの「夏葉社」のシブい新刊とも響きあう箇所もあるのでは。冬ごもりのお供にいかがでしょうか。

1/21 店日誌

1月21日、金曜日。昨日、大きな買取依頼があり、その査定のさなかに「港の人」に注文していた新刊が届いた。今日、明日には「STAND! BOOOKS」から補充分が届くだろう。いつも本にかこまれている。本屋だから当たり前なのだが、改めてこの現実を認識した。

今日も通常営業。通販などのお問い合わせはお気軽に。

2022/01/20

PEOPLE BOOKSTORE オリジナル・トートバッグ


JUN YABUKI × PEOPLE BOOKSTORE オリジナル・トートバッグ
2月16日(水)から始まる、京都〈誠光社〉での展示「LIGHT HERE,LIGHT NOW」に合わせて、久しぶりに再生産。定番色のナチュラルに加えて、約2年ぶりにブラックもつくりました。ナチュラルがやや硬め(厚手)、ブラックは柔らかめ(薄手)。どちらも「やや」ですので、大きな違いはありません。一度洗濯するとクタっとして質感がかわります。

販売価格は3300円(税込)。当面は当店と展示会場でのみの販売です。

1/20 店日誌

1月20日、木曜日。昨夜、お知らせした「仕立て屋のサーカス・京都公演」への出店(2/17–23 UrBANGUILD)「JUN YABUKI Solo Exhibition」開催(2/16–28 誠光社)のため、2月15日(火)からの店舗営業はしばらく休み。その翌週、22日(火)から通常通りに営業できるはず。

今日も書籍(新刊・古本)に入荷あり! 中古音源には日々、動きあり!

2022/01/19

「仕立て屋のサーカス 京都公演 2022」2/17–23

約2年ぶりの京都公演。2月17日(木)から23日(水・祝)の会期で開催される「仕立て屋のサーカス・京都公演 2022」に出店します。会場は木屋町(住所としては材木町)にあるライブ・スペース〈UrBANGUILD〉。当店、PEOPLE BOOKSTOREは7日間公演の前半、17日(木)、18日(金)、19日(土)、20日(日)に参加予定です。

開演時間、料金などのより詳しい情報は「仕立て屋のサーカス」公式アカウントからの公開、告知をお待ちください。

マメイケダ展「フーテン風ツウ、パンもいいが米もたべたい」

塩見さんがパン屋をやるほどおむすび屋をやりたくなる、と打ち合わせで言ってたのが印象的でチラシの絵はおむすびを描いてみました。おむすびを描いた新作多めかもです。東京で滞在制作もし少しずつ新しい絵も増やしていく予定です。

マメイケダ展「フーテン風ツウ、パンもいいが米もたべたい」
会期 2022年1月13日(木)〜25日(火) 13時–18時 ※18日(火)19日(水)20日(木)は休み
会場 パン屋 塩見(東京都渋谷区代々木3-9-5)

1/19 店日誌

1月19日、水曜日。並びの店すべてが休みの火曜日は、しずかで気楽。自分の店だけに灯りがともるようで、作業の照準を定めやすい。淡々と値付け、品出しをする。棚の本を入れ替える。わずかな移動、入替で店の顔があたらしくなる。まじまじと眺めて、また手を入れる。そうこうするうち、お客さんがぽつりぽつりとやってくる。

不思議なもので、場所を変えて面出ししたばかりの本を手に取り、買っていく人がいる。何年も挿しっぱなし、積んだままだったものが、あっという間に、いなくなる。手から手へ。そんな言葉が頭に浮かぶ。

今日も、いつもどおりに営業中。ご都合に合わせてご来店ください。

2022/01/18

1/18 店日誌

1月18日、火曜日。1月、2月の週末営業を11時開店、19時閉店とする。2時間であれ、その時間帯でしか来られない人がいるとわかったから。あと、何より自分の気分が良かったこと。これが大きい。午前中から全体の見通しを切り替えて、早めに動き出す。以前できたことができなくなることもある(「午前10時の映画祭」に行けない!)。今は、それが良いのだと思っている。

週はじめの火曜日。いつも通りに開けています。

2022/01/17

1/17 雑記

朝、思いたって筑波山に行く。ケーブルカーに乗って山頂へ。約8分。その辺をそぞろ歩いて、なんとなく入った食堂でけんちんうどんを食べる。また、少しぶらつく。まったく面白味を感じないまま、ケーブルカーで下山した。今日はなぜ、筑波山に行ったのだろうか。

2022/01/16

奥山淳志「『動物たちの家』出版記念写真展」

奥山淳志「『動物たちの家』出版記念写真展」
会期 2022年2月17日(木)−3月21日(月・祝) ※火・水定休 
会場 千年一日珈琲焙煎所 CAFE(茨城県つくば市天久保3−21−3星谷ビル1−F/G)

1/16 店日誌

1月16日、日曜日。13時から11時。たった2時間の変更ではあれ、開店時間を早めてみると普段とはちがう、あたらしい動きがある。きのう、その時間に来店したのは2〜3組。多くはない。でも、これまで来なかった人も来た。なんとなく新鮮な気配を感じた。冬期だけでも、営業時間を変えてみようかと考えている。

きっかけはちいさく些細なことでも、こうして店は少しずつ変わっていく。場所は変えられなくても、時間を移動してみることで、見つけられるものがある。やっぱり店にいるのは面白い。

今日は11時から19時までの延長営業。明日、17日(月)は定休日。

2022/01/15

Today’s Youtube #411


1/15 店日誌

1月15日、土曜日。先週末に買い取った、平岡正明『ジャズ論集 プレンティ・プレンティ・ソウル』をひもとき、恐れ入った。氏独特のジャズ解釈––楽器の一音、ひとつのフレーズ、ささいな声から読み取る現場の状況。時代背景、個人の気分をひねり出す言葉の数、その強度に驚かされた。今、こんな風に音楽に耳を傾ける人はそう多くないだろう。

学習、独習から得る知識、情報を組み立てる力も必要だ。それを土台にして、想像力をおもいっきり飛躍させて、言葉をとらえる技術。感じたことを、そのまま言語化する勇気、心意気。的確過ぎてもつまらない。派手な言葉選びに頼りすぎるとカッコ悪い。個人が自身に見合った言い回しを獲得する気風が増してくれたらいい。

急ですが、今日の閉店時間を17時とします。明日は11時から19時までの延長営業。

2022/01/14

『私の文学渉猟』

曾根博義『私の文学渉猟』が届きました。
こちらも、夏葉社のシブい新刊。近代日本文学者の研究者であり、古本蒐集家でもあったという、曾根博義の本と文学にまつわる文章48本を精撰、構成したアンソロジー。自分はまず「渉猟(しょうりょう)」の読み方、意味を調べるところから始めました(「渉猟:あちらこちらと広くあさって歩くこと。転じて、多くの書物を読みあさること」)。未知の文学者、出版社、刊行書籍を知る絶好の機会になりそうです。

販売価格は2530円(税込)。約400ページ。ゆっくり、じっくりお楽しみください。

『第一藝文社をさがして』

早田リツ子『第一藝文社をさがして』が届きました。
夏葉社のシブい新刊。滋賀県大津市桝屋町に存在した「第一藝文社」、その発行人とされるのは「中塚悌治・道祐・勝博」の三つの名前。おもに映画に関する本や詩集を手がけたとされる出版社、その発行人はどういった人物だったのか。その刊行書籍とぐうぜん出会い、ただならぬ興味をもった早田リツ子さんが、ゆかりのある人物や場所を訪ね、書物をひもとき、ものしたルポルタージュ。

販売価格は2750円(税込)。古書店〈善行堂〉をいとなむ、山本善行さんによる解説もやさしく、丁寧。

11/14 店日誌

1月14日、金曜日。入荷したての角銅真実『時間の上に夢が飛んでいる』『Ya Chaika』に加えて話題の石橋英子『Drive My Car (Original Sound Track)』(予約キャンセルが一枚だけ。取置、通販不可)など新譜レコードの品揃えが充実してきている。その中でも、当店的イチオシは三村京子『岸辺にて』

回転のはやい中古・委託レコードはもちろん、CDやカセットテープにもご注目を。どれも再入荷の確約がないものばかり。「あ!」とピンときた自分の直感を信じてみると、あらたな扉が開くかも(ひっそりと一部音源、セール中)。

明日と明後日は変則・短縮営業(11時〜18時)。ご来店の際は確認を忘れずに。

2022/01/13

『時間の上に夢が飛んでいる』(LP)

角銅真実『時間の上に夢が飛んでいる』(LP)が届きました。
2017年発表のファースト・アルバムがアナログ化。瑞々しいアイディアに満ちた12曲、約40分飽きることなくあっという間! 角銅真実はヴォーカル、ピアノ、ギター、ドラム、パーカッション、マリンバ、オルゴール、キス(!)などを担当。自由に羽を広げつつ、参加ミュージシャンとも見事に調和しています。

販売価格は3300円(税込)。『Ya Chaika』(LP)と同時入荷。

『Ya Chaika』(LP)

角銅真実『Ya Chaika』(LP)が届きました。
本人の歌・声を中心に据えた、2018年発表のセカンド・アルバム。選ばれた音、一つ一つに宿る必然性、創造性は麗しく、どこか儚い。日暮れどきや早朝など、できるだけ静かな環境でじっくり味わってほしい作品です。アナログ化を待っていた人も多いでしょう。

販売価格は3850円(税込)。『時間の上に夢が飛んでいる』と同時入荷。

Today’s YouTube #410

1/13 店日誌

1月13日、木曜日。一昨日、前触れなくポストに入っていた音源、ジョンとポール『the BEST of SAM COOKE』がすごく面白い。現在、京都の書店〈誠光社〉のウェブページで展開している「いいなアメリカ ジョンとポールが歌うランディ・ニューマン」のように、耳から入る音、目で読む歌詞、頭でとらえる楽曲構造を特有のユーモア感覚とおり混ぜて再構成したサム・クック。

ダーリン、優先に。愛を優先に。ダーリン、優先に。そうですよ、どう?

この文字面だけを見て、「センド・ミー(YOU SEND ME)」の歌い替えだと気がつく人は、まずいないだろう。とにかく秀逸、絶妙な柔らかさ。質感移植の技術の高さに恐れ入る。ジョンとポール。表現者ではなく研究者と呼びたくなる、稀有な人。

15日(土)、16日(日)は変則・短縮営業。今日、明日は通常営業です。

2022/01/12

1/12 店日誌

1月12日、水曜日。開けていてよかった。一日にひとつ、ふたつでもそう思えることがあれば、とりあえず店は続けていける。もちろん、金銭的なやりとりを抜いては考えられない。ただ、精神的な充足感がなければ、路面にたいして店を開いてる意義はうすい。

通りすがりに覗いていった人。わざわざこの場所を目指して来てくれた人。いつも通りに来た、友人。誰にも等しく感謝の念を持てるわけがない。何も買わずに帰っていく人が続出すれば落胆もする。そういった色々を踏まえた今、店にいることの面白味を見出せてきたような気がしている。

(店にいないこと。いられない事態、状態も含めて楽しみたい気持ちが芽生えた。と、いうことかもしれない。)

今週末、15日(土)と16日(日)は変則・短縮営業。それ以外の日は通常営業です。

2022/01/11

1/15,16 短縮営業のお知らせ

今週末、1月15日(土)と16日(日)は変則・短縮営業です。両日とも11時開店、18時閉店。普段より2時間早く開けて、早く閉めます。お手間をかけますが、ご来店予定の方は営業時間をご確認の上、お出かけください。

1/11 店日誌

1月11日、火曜日。年末年始から昨日、成人の日まで休みだった人もいるのだろうか。まあ、いたらどうこう思うわけじゃない。うらやましいわけでもない。それぞれ、めいめい望むペース、スピード感を意識しながら働いたり、休めるようになればいい。

祝日、旗日と言っても都合よく動かされて、消費活動のための土台になる。それに今さら違和感をとなえても意味がない(休みの余裕がなければ、自分の店に来れない人もいるわけだし)。雇われるか、そうでないかで日付けの持つ意味が変わってくるのが興味深い。

今日は天気によっては早じまい。無理なくお出かけください。

2022/01/10

1/10 店日誌

1月10日、月曜日。成人の日。昨日は開店とほぼ同時に買取依頼の方がご来店、そのまま途切れることなく査定、支払、査定、支払……と来店、依頼が続いた。こんなに本を買い取ったのははじめてだ。この循環があってこそ、うちの店は活気づく。いつだって買取依頼は大歓迎。お声がけはお気軽に。

くもり空の連休最終日。今日ものんびり営業中。

2022/01/09

1/9 店日誌

1月9日、日曜日。スズキナオ『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』『深夜高速バスに100回くらい乗ってわかったこと』(STAND! BOOKS)が一昨日、ようやく再入荷。同出版社の最新刊、寺尾紗穂『天使日記』も補充済み。古本の買取も多数。連休中どんどん棚に並べていくので、何かしら見つけてほしい。

今日、明日は13時開店! ご都合に合わせてご来店ください!

2022/01/08

2/16-28 「LIGHT HERE,LIGHT NOW」

かっこいいものを求めて、音楽を聴いたり、映画を観たり、町に出かけたりした日々のことを思い出します。かっこいい本。厚くて大きいのもすばらしいです。-島田潤一郎(夏葉社)

2021年7月に刊行した、矢吹純の2冊目の作品集『LIGHT HERE,LIGHT NOW』は306ページ、フルカラー。「電話帳のような本にしたい」という矢吹本人の意向を再現したのは、デザイナーの佐藤拓人(TACT SATO)。膨大な原画、そのものの力を削ぐことなく本に落とし込むことに成功したのは彼のおかげ。イラスト、ドローイングをまとめたものであり、コラージュ・ブックでもある作品集を開くたび、見つかるものがあると思う。

2月16日から始まる〈誠光社〉での展示では、作品集に収めた原画のほか、新作も多く展示予定。その他、トートバッグなどのグッズ製作が間に合えば、会場に持っていくつもり。楽しみにしてほしい。

今回の展示を通して、「イラストレーター・矢吹純」を認知する人、『LIGHT HERE,LIGHT NOW』を手にする人が一人でも増えたら、とても嬉しい。

-植田浩平 PEOPLE BOOKSTORE

JUN YABUKI Solo Exhibition「LIGHT HERE,LIGHT NOW」
会期 2022年2月16日(水)〜28日(月) 10:00-20:00
会場 誠光社(京都市上京区中町通丸太町上ル俵屋町437)

1/8 店日誌

1月8日、土曜日。ようやく今日が何日で何曜日か実感できるようになってきた。お正月気分が抜けたところで世間的には三連休。休め、働け、休め……また、働け。こんな感じで動かされると自分なりのリズムなんて作れないだろうと心配になってしまう。もう何十年、何百年もそうして社会が動いてきたと教えられても、いまいち腑に落ちない。

今日、明日、明後日は13時開店。おおよそ20時までは開けているつもり。

「Our lock down party」

「Our lock down party」
日時:1月16日(日) 16時開始
料金:2500円(1ドリンク込み) ※30名限定
会場:OctBaSS/Bar DISCOS(茨城県つくば市天久保1−5−4)

・lock down talk「Mystic High 製作秘話」17:00-
出演:CHIYORI × YAMAAN,二木信,SPRA(OctBaSS),etc…
・lock down party
出演:CHIYORI × YAMAAN,SPRA×BUSHMIND,sonic,AIWABEATZ,THE PARK BOYZ,ATEBOI,YONAMI,EASTERN.P,etc…

2022/01/07

『Drive My Car (original sound track)』(LP)–完売しました!–


石橋英子『Drive My Car (original sound track)』(LP)が届きました。
国内外で高い評価を得ている映画『ドライブ・マイ・カー』(監督:濱口竜介)のサウンドトラック。音楽作品としてあらたに構築された楽曲群はそれぞれに空間的であり、流れるような可塑性を感じさせます。ジム・オルーク、山本達久、マーティ・ホロベック、須藤俊明、波多野敦子が参加。

販売価格は3850円(税込)。ご予約が規定数に達したため、これ以降の通販・取置は不可。ご了承ください。

1/7 店日誌

1月7日、金曜日。空をあおいで。年始に買い取った本の中に入っていた、こだま和文の著作。1982年に結成された「MUTE BEAT」のリーダーであり、現在は自身の名を冠した「KODAMA AND THE DUB STATION BAND」で活動をつづける氏が綴る文章は淡々としていて、独特の響き方をする。

今日、空をあおいで歩いていると、きっと滑って転んでしまう。それほど路面がカチカチだ。店の前の道路はほとんど陽が当たらない。さっきから自転車が転んだり、原付が滑ったりしていてヒヤヒヤする。

移動の際はお気をつけて。当店は月曜日まで休まず、開けています。

2022/01/06

『岸辺にて』(10inch)

三村京子『岸辺にて』が届きました。
2020年に自主制作されたCD-R音源をアナログ化。録音した室内の空気もそのまま封じ込めたようなささやかな声と歌。小部屋のような音楽作品。外側はもちろん、内側ひとつひとつの細部にも丁寧に手が入った装丁をふくめて、味わってほしい。稀有な存在感のレコードです。

販売価格は3080円(税込)。同じく円盤からリリースされた、『mother water』も在庫しています。

1/6 店日誌

1月6日、木曜日。一昨日、昨日と数は少なくとも、たしかに店を目指して足を運んでくれる人がいた。たまたま自転車で通り過ぎて、見つけてくれる人もいた。非効率であっても、やはり店は開けてナンボだ。馴染みのお客さん、友人たちとじっくり話をするのも大事だし、あまり縁のなかった顔見知りに声をかけてみると、発見があって面白い。意固地になりがちな自分を反省することもある。

外に出している均一価格の文庫本、100円〜500円の本に日々補充、入替あり。店内の書籍、音源(新譜・中古・レコード・CD)にも入荷があるので、何かしら見つけてほしい。

今日は13時から19時まで、開けています。通販などのお問い合わせはお気軽に。

2022/01/05

1/5 店日誌

闇市は一九五〇年を境に姿を消してゆくから、俺あたりが闇市を実体験した最後の年齢だろう。フランス語で「コンミューン」、ロシア語で「ソヴェート」というものは日本では「闇市」という。そして闇市はアジアの市場に普遍性がある。よみがえるのに値する。-平岡正明(「さいふうめいという作家の舞台」/『アングラ機関説 闇の表現者列伝』所収)

1月5日、水曜日。闇市。自分はその語感、言葉が含む力、その場から生まれた文化に惹かれている。いつだったか、友人に誘われて遊びに行った白楽は六角橋商店街での「ドッキリ闇市」は面白かった。あちこち、うじゃうじゃと出店があって、角を曲がるとジャズの生演奏にぶつかったりした。そんな場で数年ぶりに会うひとがいたり、今も縁のつづく出会いがあった。

本を読んでいると、閉じていた記憶の箱がばかーん! と開くことがある。そこから飛び出してくるのは、いいものばかりじゃない。だけれど、それがなくちゃ、興奮がない。記された一節に触発されて、動き出すものがある。

今日、明日は13時開店! 19時頃までは開けてるはず!

2021年を振り返る

参加してくれたのは、10人。掲載順にTACT SATOJUN YABUKIトニー李natunatuna金井タオル吉良幸子文庫善哉野田昌志小野寺伝助河野友花。突発的に頼んだにも関わらず、みなさんが快く参加してくれました。返事がくるまでの不安と心配、原稿が届いてからの喜び。にわかではあれ、編集者のような気分ですごした一週間。寄稿してくれた方々に本当に感謝しています。おかげで、この正月はまったく退屈しませんでした。

改めまして、本年もPEOPLE BOOKSTOREをよろしくお願い致します。2022年は店での営業以外にも催事、出張を増やしたいと思っています。何かしらのお誘い、お声掛けはお気軽に。何事もまずは相談して、実現させていきましょう。

PEOPLE BOOKSTORE店主 植田 浩平

河野友花が2021年を振り返る

 一年を振り返って文章を書けだなんて、一角の人物でなければ依頼されないもんかと思っていたよ。戸惑いながら思いめぐらし、浮かんだことが二つ。
 春、ふだんは「誰かに伝えたいことなんて何もない」という私の夫が、或るアルバムについて「俺はこの素晴らしさを世界に知らしめたいんだよね」と言い出した。驚いていると、「あー、世界ってね、俺の世界よ。俺の世界にこの良さを広められれば、それでいいんだよね」平然と言い放ったその一言。これがひとつ。もうひとつは、年末に観た濱口竜介監督『偶然と想像』の中である人物が発する「自分だけが知っている自分の価値を抱きしめなくてはなりません。そうして守られたものだけが、思いもよらず誰かと繋がり、励ますことがあるからです」という台詞。
 閉じられているようで実は外へ広がり繋がってゆくイメージとともに、2021年に私が読んだ中から10冊を選んでみました。
  1. 『日本映画作品大事典』山根貞男 編(三省堂)
  2. 『最低な日々』相米慎二(A PEOPLE )
  3. 『美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道』春日太一(文春文庫)
  4. 『女の足指と電話機』虫明亜呂無/高崎俊夫 編(中公文庫)
  5. 『山を走る女』津島佑子(講談社文芸文庫)
  6. 『男』幸田文(講談社文芸文庫)
  7. 『まっくら』森崎和江(岩波文庫)
  8. 『子どもたちがつくる町 大阪・西成の子育て支援』村上靖彦(世界思想社)
  9. 『きっと誰も好きじゃない。』高木美佑(TALL TREE)
  10. 『妻の温泉』石川桂郎(俳句研究社)
 ①は、編集に22年、うち編集方針を決めるのに5年、原稿依頼と回収に5年、校閲作業に10年という、それだけでもう十分「とんでもない」事典なので、当然、お値段も高額。それで、新聞の紹介記事を切り抜いて夫に見せ「ほんとうは4万7,300円なんだけど、年内に買うと4万1,800円だって。誕生日プレゼントにちょうだい」とねだりました。夫の呼びかけで親族一同がお金を出し合い、45歳のお祝いに買ってもらいました。先日たまたま酒席で、この本を持っているという人に会ったのですが、お互いあの本を持っているというだけで高揚して、大変盛り上がりました。こんなふうに『日本映画作品大事典』個人所有者を見つけていき(彼は、この本を個人で所有しているのは手書きで名簿を作れるくらいの人数ではないかと推測していました)、いつか、そのメンバーで集まって飲んだら楽しいだろうねえ、と話し合いました。全員が胸にけなげな赤い表紙を抱えて、集合写真を撮ったりしてね。

 ⑩は10冊の中で唯一、図書館で借りて読んだ本。書庫から出してもらうと、全体に激しくヤケていてシミがあり、数々の修復を越えてきた痕跡。表紙にはペン字で「◯◯徳三郎氏から借用」と書かれてありました(図書館所蔵なのに、借用ってどういうことなのか)。図書館の方によると、この『妻の温泉』は、1954年の初版以降は再版されておらず、全集などに収録されてもいないそうで(全集自体がない)、出してくれた本も「本来ならお貸しできる状態じゃない」とのこと。それでも貸してくださった本を大事に大事に読んでるうち、私、返したくなくなっちゃってですね、延滞後に貸出延長して、なんとまだ今、手元にあります。それにしても、どうしてこういう、押し付けがましさのないいい本が、ふつうに読めないのかなあ。白洲正子の『鶴川日記』より私はずっと好きだけど。『鶴川日記』の中の1篇「ロケーション」では、白洲邸で佐分利信監督『広場の孤独』の撮影が行われた様子が書かれているんですが、ここで①を開いたら、ちゃーんと394ページに『広場の孤独』、載ってました。見つけた時のこの気持ち、なんて言ったらいいんだろうな。安心感とも違う、単純に嬉しいとも違う……。こういう、シャキッと言い表せない感情や感覚を守りながら、2022年を生きていきたい。
(People Bookstoreに『妻の温泉』が入ってきた際は一番にご連絡ください。)

 あ ま り 寒 く 笑 へ ば 妻 も 笑 ふ な り
 昭和二十二年だつたと思ふ。山本健吉さんが呼んで呉れて、生れて初めて出版社といふものに勤めたが、そのN社も一年足らずで潰れてしまつた。年の暮れに迫つて就職口はない、金はないで、家にぼんやりしてゐた頃の俳句だ。(中略)
 夫婦で炬燵に対きあつてゐたかも知れない。昼めし代りのサツマイモの残りを、コンロで焼き直し、番茶をすゝり、口を利くのも億劫だつた。さうして暖かいのは炬燵の中の手足だけ、顔も耳もぴりぴり痛い。寝てゐる二人の子供の白い息が、少し長いのと短いのと、掻巻の襟に並んで見えて、何だかとてもやりきれない気持だつた。
「寒いわねえ」
「あゝ……」
 私は誰に向けるともなく腹が立ち、それからフツと、妙に可笑しさがこみあげてきて、さうして思はず大声で笑つてしまつた。妻も誘はれて「ウフフ」つと笑つた。その時の私達の笑ひには、まつたく何んの意味もなかつたけれども、私は「大丈夫だ、大丈夫だ」と心のうちで繰り返し呟ひてゐた。           
石川桂郎「私の俳句」――『妻の温泉』より 

河野友花

2022/01/04

小野寺伝助が2021年を振り返る


2021年に感銘を受けたこと。

①近所の銭湯
2021年は年明け早々、仕事の関係もあり横浜へと引っ越した。家の近所には街場の銭湯があり、サウナ、露天風呂、ちょっとした食堂までも完備。荒んだ心を幾度となく洗い流した。晩秋、日曜日の夕方に入浴後、地元民が集う食堂でサザエさんを見ながらビールを飲み唐揚げをつまんでいる瞬間、ここは天国かと思った。コロナ禍でも威勢よく銭湯を運営する御姉様方の姿に感銘を受ける

②近所の中華料理屋
引っ越してきた街に洒落た料理屋は一軒もないが、町中華が四軒もある。その中で外観的には一番期待していなかった店のおいしさに驚き、頻繁に通った。ある日酢豚を食べた時、美味に感動していたところ店主が「中華街行けばもっとおいしい酢豚食べれるのに、ごめんね~」となぜか謝ってきた。その謙虚な姿勢に感銘を受ける。

③六代目神田伯山 襲名・真打披露公演@神奈川県民ホール
演芸好きの妻に連れられて、初めて生で見た神田伯山の講談に圧倒された。終盤の高揚感は、むかし野音で観たROVOのライブみたいだった。突き詰めて突き抜けることの凄みに感銘を受ける。

④金子文子著『何が私をこうさせたか』
SNSに自分の主張を投稿したり、行動を起こしたりすることだけが反抗ではなく、本を読むこと、勉強すること、知識を得ることもまた社会に対する反抗となる。そう実感した本。感銘を受け、繰り返し読んだ。

⑤しいねはるか著『未知を放つ』
地下BOOKSとして、2冊目の刊行物。コロナ前から製作を始め、2021年6月にようやく発売することができた。入魂しすぎて反応が恐くもあったが、心を込めて書かれた紹介文や、SNS等に書かれた読後の感想に幾度となく感動する。ありがたいことに年末には初版がほぼ無くなった。これからも愛とユーモアと狂気を大切に活動していきたいと思った

いつになく、あっという間に過ぎ去っていった2021年。それでも、振り返ってみると心を動かされることが結構あったな。心があれば大丈夫。

2022年の抱負とかは特になく、一日一日を積み重ねていきたい。クソパンの続編も刊行したい。 

1/4 店日誌

1月4日、火曜日。2022年の営業初日。都内の電車なんかは空いているようだけど、つくばの街はどうなんだろう。今日はまだ、お正月休みでのんびりなのかな。ご近所〈古着屋may〉は明日(5日)から、お隣〈千年一日珈琲焙煎所・カフェ〉は明後日(6日)から営業とのこと。

今日、明日は13時から18時までの短縮営業! お暇があれば、お運びください!

野田昌志が2021年を振り返る

  目の前のカレンダーはもう2022年になっていて、いや2021年ももう終わるのかとひとり妻の実家のトイレに座ってボーッとしていた。窓の外では雪がハラハラ舞っていて、そうかそうかとチラともう一度カレンダーに目をやると2021年の隣に令和4年、平成34年、昭和97年と書いてある。うーん昭和97年!小学生のころ近所のスイミング教室で昭和が終わったのを知ってから、そんなに経ったとは...なんだかたまげたなと私は妻の実家のトイレで感慨に耽りながら、モジョへイに依頼を受けた昭和96年を振り返ることにした。



 世間がなんだかザワザワしだした2020年の3月に息子が生まれ、我が家は妻の実家のある長野は木曽で子育てをして、私はひとり神奈川の藤沢で写真を撮ったり映像を作ったりの単身赴任状態で生活することが多くなったが、2021年は神戸で撮影したタートルアイランドLive版のダイジェスト映像の編集から始まった。これはグランストンベリー・フェスのメインステージにも立った彼らのライブ(と言っても会場にはスタッフしかいないため好きなポジションから撮影できる録音と撮影のための生ライブ)を2日間最前線で浴び続け、夜は呑み食いしまくるというそれはまあ豪奢な時間であった。個人的に好きな曲SELF NAVIGATION10年ぶりに撮れたのは最高であり、やっぱり素敵な曲だと再認識。霞がかるマホロバいざ行かん列島!

https://youtu.be/KapCPU4W72U



 4月の下旬、山崎円城さんのMVのために長野の妻の実家から車を走らせて上高地に向かう。水を裏テーマに決めて中目黒の川から江ノ島の海を撮り、そして上高地に来た。しかし雪解けの上高地の圧倒的な景色がなかなか撮れず、当時のメモを見返すと悩みは深い。

「今回のひとつの目的は水を撮ることなので、透明な水を寄って、引いて、またいろんな方法や角度から記録する。しかしやはり留まり、待つ撮影が出来ない。もしかしたらこの先にはもっと良い水を撮れるシチュエーションがあるかも知れないし、実際にそういうことは多い。しかし自然を撮るというのはひたすら通い、待ち続けることなんじゃないか。そう頭には浮かんで来るが、先への好奇心が抑えられずにまた歩きだす。数回シャッターを押すと、流れとは逆に足を向ける。やはり自分は動くカメラマンだ、と自分に言い聞かせてまた森の中、木の下へと戻って行った。」

自然に打ちのめされた撮影ではあったけど、映像は無事完成して一安心。写真で見せていくシンプルな構成は個人的に気に入っている。

https://youtu.be/xPlQ0VuASjk 


5月になると、ギタリスト小池龍平さんの紹介で台湾のミュージシャン台湾のミュージシャン以莉・高露さんの「尋找你」という曲の映像が公開された。

2020年から撮影編集を繰り返していたけど無事公開できて小躍りする。本来ならば台湾に飛んで撮影したいところだったが、曲を聴いて日本で撮影し、それを見て台湾で撮影してもらって話し合いを繰り返し完成。ストレートなMVというのはなかなかに難しく気恥ずかしいがそこから逃げちゃダメだと感じたし、そこはちょっとした演出やアイデアだろうなと。楽曲の良さもさることながら、台湾のカメラマンの技術の高さにも救われた映像に。

https://youtu.be/daQAjbB4LHs



 521日、少しだけ出演させてもらった石井裕也監督「茜色に焼かれる」が公開される。石井監督の映画に出させてもらうのは2回目だが、その演出に毎度驚かされ勉強になる。

今回私は尾野真知子さんに酔っ払って絡む4人のバンドマン役のひとりで、台本にはセリフがなかったがリハーサルであーしようこーしようと決まっていく。その時点では4人ともまあまあなセクハラ具合だったが、監督に「4人にグルーブ感がないし、今の時代に全員がそんな絡み方をするかな?」など指摘を受けバンドメンバー役で話し合い、各々の役を詰めていった。「野田さんはもっと強く!」ということで始めはアコギのシンガーソングライターみたいに歌っていたのが、ついにデスボイスになり音声さんから「リハと違いすぎますが大丈夫なんですか」と言われたのもよき思い出。

https://youtu.be/jgJfiTe7D6k


そして初めて演技させてもらった石井監督の映画『生きちゃった』がNETFLIXで公開された。問題作で刺さる人には刺さりまくる映画になっているので、お時間ある方は見てもらいたい。

https://www.netflix.com/title/81494868



 8月神奈川に来た息子が朝4時半くらいに起きるので、3時に起きてメールの返事の下書きや映像の編集をしてそこから起きてきた息子を連れて出かける。息子は外遊びが好きだが、真夏の4時半というのはもう結構な暑さで蚊も飛んでいるしで、ふたり始発の江ノ電に乗り込み鎌倉や七里ヶ浜で散々遊んでいた、幸せな暑い夏。



 9月、飛騨高山ジャズフェスティバルに呼ばれたり生配信が増える。代官山に「晴れたら空に豆まいて」というイベントスペースがあって、そこのオーガナイザーさんたちは本当に個性豊かで興味深く、よく撮影や生配信のお手伝いをさせてもらっている。ここが好きなのはそんなオーガナイザーの個性が演者さんの幅の広さに繋がっていて、柳家喬太郎さんから浦沢直樹さん、アイドルから三宅純さんにメキシコやドイツのミュージシャンが日々代官山の地下でライブを行なっている...のだが今の状況はさすがに厳しいことも多い。しかしスタッフさんは「野田さんカメラ教えてください!」と即自分達でライブ配信のセッティングを組み上げ世界に流し出し、そしてそのカメラ技術の上達速度は本当に刺激になった。音も最高な素敵なハコ。

http://haremame.com/



 11mama!milkさんレコードのインナーで写真を使ってもらう。

11年前、Barでマスターにどんな音が聴きたいか聞かれ、妻が静かでカッコいい音楽とリクエストしたら流れてきたのがmama!milkさん。それからいろんな縁があっての今回で非常に嬉しい。 昔、友人に「キミはうるさい音だけがパンクだと思ってるでしょ。」と言われたが、mama!milkのおふたりの美しい旋律から滲み出るパンク感が大好きだ。自分が思うパンクと世間のパンクは違うかもしれないけど。

パンクと言えば、葉山のカフェDAYS386のタケミヤが「今度さー、筑波のモジョヘイくんとこの展示すんだよねー。」というのでノコノコとカメラを持ち出かけると、店の前にデッカイ髭の男が煙草を吸っていてそれが今回絵を展示するJun Yabukiさんだった。口数多くない彼の立ち振る舞いは、福島での彼の暮らしを想像させて思わず撮ってしまう魅力に溢れていた。勝手な妄想だけど、五十嵐大介さんの漫画のリトルフォレストみたいな、福島の山奥で日常を大事に送っている姿が頭にありながらカメラを回していた。描き始めの作品はチラシやカレンダーの裏に描いてあって、そのDIY感や佇まいはまたパンクを感じた。そしてクロージングパーティでのTACT SATOさんはパンクいやクソパンだった

http://people-maga-zine.blogspot.com/2021/11/days-386.html



 そして12月、2020年に亡くなったTONY ALLENの映像を再編集して公開。

8年前に来日した時にKINGDOM☆ AFROCKSTONY ALLENMVを作るので撮影していたのだけど、まあ魅力的な人たちで必要以上にカメラを回していたことが今回の映像に繋がった。撮りすぎるのも被写体の人に負担をかけるが、今回は撮っててよかったなあと。撮影した2013年で70歳を越えていたはずだけど、朝まで遊んだりパワフルな人だった。そんな彼の日本で楽しんでいる姿を記録できて本当に良かったと思う。TONYを撮っていると、世の中凄い人はいるけど偉い人ってのはいないんだなと思ったのを思い出すな。

https://youtu.be/vaX5xRsTdv0



 長野の雪の中のトイレで今年を振り返っていると、思ったよりいろんなこと撮ったんだなとしみじみ。いろんな人が遠くに行ってしまって、息子がやってきた。これからも近くの人たちを記録していけたら嬉しく思う。そういえば数日前に見た、毎年楽しみにしているM1の後に芸人さんが「芸に人間性が出てきたから錦鯉がM1優勝したんだよ。」と言っていたのを聞いて腑に落ちたことがあった。いろんな映像や写真に漂うコレってなんだろなあと、匂いとか空気とか言ってたけど人間性かと。人間性ってやつがもっと映り込めばより良い写真と映像になるなあ、けど自分の人間性ってどんななんだ?と齢四十三にして思春期のような悩みを漂わせながら、妻の実家のトイレからコタツに移り私は2022年を迎えたのだ。

2022/01/03

文庫善哉が2021年を振り返る

文庫善哉と申します。

年に一度、漫画家・山川直人さん、版画家・保光敏将さん、珈琲杖店主・薗田千晴さん、イラストレーター・長田結花さん、デザイナー・小沼宏之さんと、同人誌『サイコロ』を作っています。
ふだんは仕事の傍ら、本を読んだり、美術展に行ったり、庭仕事したり、おやつを作ったりして過ごしています。
肩書きをさがしてみましたが、どうにも思いつきません。
たとえば毎日の晩酌を心の糧にしているひとがいるように、休みさえあれば美術展へ行き日々読みたい本を読むことがなによりの楽しみで、それを小学生の頃からただただ続けてきた、そういう者です。

2021年の振り返り、というお題をいただきました。
実は2020年11月から2021年の1月にかけて、人生ふたつめの臓器を摘出し(人間はふたつも臓器を失っても生きていけるものですね。つくづくすごいなあ)療養していました。
その後も治療を続けながらの1年でしたが、ありがたいことに好きなことはほぼ問題なく続けることができました。
ただひとつ、美術展へ足を運ぶことだけは数ヶ月できずにいました(とはいえ一時退院した足で牧野伊三夫さんの個展に行ったことを思い出しました)。
それを再開できた喜びは、とても大きなものでした。

美術も、文学も、音楽も、実際にそれを創った人の思惑などわかりはしない。
けれど、目を凝らし、耳を澄まし、触れる、ひたむきさや、小さな煌めき、言葉にできないようななにかに胸が震える、そして思索する時間が好きなのです。

これからもそうして大切なことを心に留めながら過ごしていけたらいいな、そしてなにかを創っていくことができたらな、とも思っています。

2021年 とても好きだった展示5つ
①東京都美術館『Walls & Bridges  壁は橋になる 世界にふれる、世界を生きる』
②練馬区美術館『電線絵画展-小林清親から山口晃まで-』
③千葉市美術館『平木コレクションによる 前川千帆展』
④練馬区立美術館『ピーター・シスの闇と夢』
⑤ギンザ・グラフィック・ギャラリー『ソール・スタインバーグ シニカルな現実世界の変換の試み』