ジェームズ・マンゴールド監督作品『コンプリート・アンノウン(名もなき者)』を観た。予告編をイヤってほど観せられていたから、事前情報はできるだけシャットアウト。友人たちの感想も耳目にいれないまま劇場に向かう。いつものシネコン、シアター5。前より真ん中に席を取る。それにしてもさみしい集客! 平日昼間とはいえ、観客は自分を入れて5人未満……。
主役のティモシー・シャラメがいい。若きディランの尖り方と言うべきか、未成熟なんだか老成してるのか、実態不明の存在をうまく演じている。音楽、小説、映画から何を吸い上げ、養分とするのか。ボブ・ディランは自身の表現に取り入れるべきものを掴むセンスに長けている。何より、声がいいしハンサムなのだ。そりゃあ、放っておかれるわけがない。
キューバ危機、ケネディ暗殺、黒人公民権運動、激動の時代と直に交差するフォーク・ソングが作られたのは彼の感性あってこそ。運動にのめり込まない距離の取り方。乾いた眼。共感に溺れず、されど感情を殺さずに捉える言葉。そんな特別な人間だから? 生身のディランは他者とうまく関係できない。
アメリカン・ヒストリーX、ファイト・クラブ、25時なんかで好きになったエドワード・ノートンの出番も多くて嬉しかった。ノートン演じるピート・シーガーの妻、トシ役の初音映莉子も効いていた。エル・ファニングは大人になったなあ。ジョニー・キャッシュ、ボブ・ニューワースを演じた役者も好印象。
いやあ、とても良かった。映画館を出てしばらく行き場に迷ってしまった。
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