2023/04/30

横浜出張記③

15時半に開場。昨日に増して本への反応がいい。こちらから多くの説明はせずとも、本を手にする人がつづく。一冊でも多く売るための言葉ではなく、お互いに感じたことを伝え合い、本を介してやり取りをする。この状況は「仕立て屋のサーカス」の会場ならでは。この場でしか会わない、名前も知らないままの常連さん数人とも話ができた(この方々は、いつも本か音源、何かしらを買ってくれる)。

17時ちょっと過ぎに開演。初日とはまるきり逆の角度から、ステージを観る。やはりスズキタカユキさんの身が軽い。のそっと現れて、布を触り出す。大工の大塚さんも昨日より存在感がある。曽我大穂さんは、いつも通り、されど鋭く音を出す。つよく叫ぶ。芳垣さんとのリズムのかけ合いがカッコ良い。既にあるようで、まだ世界のどこにもない表現。今、目の前でつくられている音楽。中々の緊張感だ。布がこすれ、木の音がひびく。光が全体をささえる。いい予感を保ったまま、1部が終了。

休憩のあいだも本への反応がいい。床に置いたトランクの中をガサゴソ漁って、本を買っていく人が多い。3枚まとめてCDを買う人もいた。カンパニー社刊行書籍に興味を示す人もちらほら。気がつけば、お隣〈パラダイス・アレイ〉のパンは売り切れていた。

客電が落ちながら、開演。前日とは異なり、一つ一つの要素を丁寧に扱っていく。芳垣さんの演奏も孤立せず、全体に溶け合っていく。大穂さんの朗読にも効果あり。布が広がり、光があたって影が踊る。ときにつよく楽器が鳴らされる。カンカン、カンカンと大工作業の音がひびく。ばらばらな要素が有機的にむすびつく。積み木遊びのパートもダレず、いい空気をつくる。演奏の熱量が極点まで上がって、パタンと収まる。弦楽器と鐘の音だけになり、終演。最後の最後、あと30秒拍手が遅ければ、もっといい余韻が生まれたはず。暗闇のなかで急ぎすぎた反応だった。……残念。

中華街でかるく飲み食いして、宿へ(殺伐とした店だった)。なんの気もなくテレビをつけると藤澤清造の顔、根津権現裏の文字。なんと、西村賢太の追悼番組が放送されている。終了後、シャワーを浴びて寝る。

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