テンチョー土田 映画記録2024
2024年は劇場で27本しか映画を観ていない。
あまりに少ない鑑賞は、何が人に映画を観ようという気持ちにさせるのか考えるきっかけになる。予告もチラシも誰かのツイートも人との会話も、きっかけは色々ある。
身体が一つで全部の映画を観ることはできないので、今年劇場で観た輝ける27本全てを思い返したい。そのためにまずは2023年に観た、たしかに『Komorebi』というタイトルだった映画のことから書く。
2023年12月26日『PERFECT DAYS』
この映画が全ての始まりで、この映画を観た次の年の初め、僕は近所にある普段使わない方のスーパーで古本屋を営む一人の男に肩を叩かれる。僕は野菜コーナーにいた。
「あの『PERFECT DAYS』って映画どうだった?あれひどいよな?」
お互い店舗も隣同士で住む場所も近い。彼が酔っ払った時には無事家に辿り着けるように一緒に帰路につく。初めて出会ってからおよそ10年が経つ。年の差十何歳、の人間への年始ひと言め。恐ろしいったらありゃしない。僕は「まあ、、、」とかなんとか。あの映画のことなんてとっくに忘れていた。このご時世に何がパーフェクトデイだとかなんとか思ったくらい。
おかげで植田さん、あなたが今年の暮れに激ハマりしているアキカウリスマキ。
新作の感想全部忘れました。あの時僕『枯れ葉』観た帰りだったのに。
野菜も買い忘れたし。
2024年1月3日『枯れ葉』
面白かったような気がする。
1月24日『ファースト・カウ』
ずっと観れていなくて、やっと観れたという感じだった。
画面が真っ暗でほとんど何も見えない映画だった。その中でビカーっと光るスコーンが現れたとき、なんだかめちゃめちゃ笑えたなー。僕がこの映画を観る頃には同じ監督の『ショーイング・アップ』も公開されていたけれど、僕は観ることができなかった。悔しかったけれどそれくらいのファンということなのかも。アメリカの夜のこととか、犬目線のこととか、商売のこととかすごく頭を使った。チラシのデザインに反して牛については何も考えなかったな。というかタイトルも牛のことか。いったい僕は何に頭を使ったのだろうか。
2月7日『サンセバスチャンへ、ようこそ』
この監督の新作はまだ楽しみに追っかけていて、そのことを焙煎所の店長に話したら笑われた。ほとんど内容も、観たことすら覚えていなかったけれど、今になって思い出すのは、この後観ることになる黒沢清『蛇の道』リメークの病院のシーンだと思っていたのはこの映画の病院のシーンで、バフティヤル・フドイナザーロフ『ルナ・パパ』の浮気だと思っていた箇所はこの映画のものだったということ。
退屈な映画だった。
2月13日『夜明けのすべて』
監督のファンで、観に行った。観る前はチラシのビジュアルの酷さに複雑な思いを抱えていたけれど、観終わった後は宣伝に対してより複雑な思いを抱いた。とにかく多くの人が観ておきたい映画ではあるけれど、僕の場合にはチラシの印象は強く残ることがあるので、もっと工夫してもらえたら観に行く気持ちもより強くなるなという感じ。
映画は素晴らしく、あんな強烈な光を恒星からではなく画面から浴びることができて、眩しいし素晴らしいしで感涙。何よりエンドロールの映像が凄くて目が離せなかった。おそらく16mmのフィルムで撮られたこの作品の小ささがすごく好き。
一方ケリーライカイトの映画はたぶんデジタルのカメラで撮ってますか?ものすごく考えて。
店の厨房内、カウンターを挟んでお客さんも含めみんなと賛否入り混じり話せた映画だった。楽しかったな。
2月20日『瞳をとじて』
こういう映画をたまに観られる幸せを噛み締める。
つくば市のシネコンにそれなりに人が入っていてよかったと思った。年配の方が多かったかな。
4月3日『ルナ・パパ』
シネマブルースタジオ大好き。真っ暗になります。
5月21日『クイーン・オブ・ダイヤモンド』
ただ木が燃える映像を十数分観られる幸せ。眼が炎になる感覚を味わえます。
5月22日『悪は存在しない』
公開当初限られた少数の映画館(つくば市には来ない)でのみ上映すると聞いていたので観るのは諦めていたが、都内にいた時にたまたま時間ができたのと、周りに観た人が多く僕もみんなと喋りたいと思ったので観た。開始後すぐに木漏れ日(すぐに『Komorebi』を想起)。前半少し寝かせてもらった。
最後までいまいちのることができなかったのは、タイトルの印象が強く映像に集中できなかったのと、おそらくとても難解なこの映画に脳みそがついていけなかったから(少し寝たので)。
鹿が綺麗だなとかそういう感じだった。2回笑わせてもらった。
さらに集中できなかったのは、上映中にかつて公開された同監督の映画を観た時のことを思い出していたから。当時公開後すぐに映画館に観に行って、ああ素晴らしいなと感じたのを覚えている。それから1年くらいのロングラン上映だったような。もっとかな。
僕はこの映画を観たあとに2本のさらに素晴らしい映画を観た。
『三度目の、正直』『スザンヌ、16歳』
2本とも劇場はがらがらだった。それが不思議だったな。
素晴らしいと思う映画に幸運にもたまに出会うことがあるけれど、ほとんどの映画は見逃す。
観ることのできなかった映画に思いを馳せながら、観ることのできた映画をきちんと思う。
『悪は存在しない』はのちにつくばでもかかった。最初からやってくれればと思う。
渋谷で観たので終わった後、老舗の台湾料理屋故宮へ行った。美味しくて満足。
(写真は故宮の素晴らしい裏口です)
6月13日『違国日記』
漫画原作ものということを知ったのは観終わってから。これは信頼できる人のツイートを見て観に行ってみた。途中から最後のシーンがどうなるかわかって観ているのに、きちんと号泣。出てくる俳優たちがとても魅力的に映る映画だった(特に女の子たち)。家のなかで引き戸をただ開けたり閉めたりするのを見て、こんなの観ながら140分過ごせるのなら最高だなとか思っていた。主人公のうちの一人の女の子が高校で軽音部に入りバンドを組むのだけれど、その部室での練習風景、奥で椅子か何かをばちで叩いている人の、そのドラミングが上手すぎてびっくりした。まじで。
6月19日『蛇の道』
自身の旧作のリメークらしい。元の方は観ていないけれど観に行ってみた。
ものすごくよくできた映画で、観ているうちにこの先どうなるのかわかってしまうくらい綺麗だった。けれどこの一本ではこの人の映画の良さまで辿り着けない気がしてなんとなく消化不良を感じた。愛すべき小さな作品という感じか。
メインビジュアルで引き摺っているあれはぜったいコントラバス。
6月某日『胴鳴り』
観れなかった。
6月28日『左手に気をつけろ』『だれかが歌っている』
御用だ御用だ!!
タイトルがアレなのとチラシのデザインが素敵すぎるので、観るかどうか迷っていたけれど、観たかった映画を観れなかった悔しさをバネに観に行くことができた。誰かの脳内で流れている音楽が自分の脳内でも流れることはよくあることだけれど、改めてやはりよくあることなのかと思った。あちらの世界では爆音でドラムの音が聴こえている。よね?
助監督の方と横浜の展示でご一緒したときにしゃべることができて幸せだったという思い出付き。
7月8日『ザ・ウォッチャーズ』
観始めるまでお父さんの撮った映画かと思っていた。娘だった。
めちゃめちゃつまらなくて笑えた。居酒屋の主人と画家と一緒に観に行けたのはいい思い出。帰り道、ひとりはご立腹、ひとりはなだめ役。
7月14日『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』
シネプレックスつくば二本立てのうちの一本。
たくさん笑ったなー。上映時間30分くらいで料金が安いのも良かった。
2025年の2月にはこの人の特集がユリイカで組まれるらしい。楽しみだ。
7月14日『メイ・ディセンバー ゆれる真実』
シネプレックスつくば二本立てのうちの一本。
けっこう重厚な作りで(二本立ての一本目と比べるとだけど)、足を組んで難しい顔をして観た。けっこう面白かった。いろんな映画からの引用とかあるんだろうけど、とにかく気にしないように観てみた。けど難しかったな。僕は幼虫とか苦手なので少し困った。まあ蛾の羽とかも左右対称だったりするしなー。『キャロル』より断然良い。
まさかのピープル植田さんが観ていて盛り上がった。植田さんは僕よりさらに困惑してたみたいだ。植田さんとシネプレックスムーヴィートークできるの嬉しい。
7月17日『フェラーリ』
勝手にシネプレックスつくば二本立て第二弾一本目
この映画を観る前に、ネットフリックスで『フォードvsフェラーリ』を観た。面白かったなー『フォードvsフェラーリ』。終始ドキドキしっぱなし。主人公の奥さんが整備場に現れる時なんかもう眩しくて時間が止まってたな。
『フェラーリ』観るときも完全に引きずられてアダムドライバーの奥さんばっかり見てたけど、全体的にはまあまあだった。難しすぎて。アダムドライバーは見るだけで笑える。怪物。
7月17日『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』
手にプレックスvol.2 二本目
近くのお蕎麦屋さんで昼餉後に観た。
まじで最高。言うことなし。大人が一生懸命あの温度感の画面を作ることにときめく。終映ギリギリまでこの映画の存在に気づいていなかったので、勝手にだれも観ていないと思っていたが、植田さんが観てた。「あれは観るだろ」って。
8月2日『ヨーヨー』
シネマブルースタジオ大好き。前半長かったな、、、。
8月28日『墓泥棒と失われた女神』
もうずーっと夢。画面のふちとかぼやけてて、ダウジングで墓掘りやって金稼ぐ。
夢みたいな話。自分好きそうだなーと思って一生懸命観たけど、なぜかグッとこなかった。なんなんだろう。夢だからかな。
9月14日『ナミビアの砂漠』
やっぱりあのピンク色のチラシ、頭から離れないし、「みろ〜」ってあの俳優が迫ってくる感じする。けっこう長い映画でびっくりしたけれど、前半はとにかく耐え。耐える耐える、耐えるとその先に爆笑ポイントがいくつか現れて、「よかった〜、みるか〜」って気持ちになれる。セーフって感じ。喧嘩が完全におもちゃになる。
10月1日『Cloud』
上映時間がけっこう遅かったので、18時半に店を閉めて床で仮眠を取ってから向かった。起きてピープルを覗くと先生(映画好き)がいたからあ〜しゃべりたいな〜と思っていたけど、意志を強く持ち自転車でムーヴィックスへ、その意志を運ぶ。
素晴らしかった。とにかく怖いしとにかく笑える。縛られた恋人(今すぐにでも撃ち殺されるかもしれない)を前にして、「ちょっと待っててね後で助けるから」とか、え〜〜〜〜って声に出して言ってしまった。そしてとにかく銃の音が気持ちいい。この音を聴くためだけに観に行ったんだと思う。これがきっかけでpottmannの「銃撃戦」という曲(?)は生まれた。
最後のシーンは『熱海の捜査官』。
10月6日『HAPPYEND』
『ナミビアの砂漠』の予告で見て気になっていたので観ることができた。
どうしても監視カメラみたいなショットというか、二人の人を斜め上から撮るやつが気になって戸惑った。近未来社会感ということ? 車立ててくれるのとかは有難いな〜と思った。あの女の子髪かきあげまくるのも本当に不思議だった。かきあげまくるんだもの。
久しぶりにムーヴィックスのひと部屋を独占できたので、楽器屋のシーンでは立って踊り、腹を抱えて笑わせてもらいました。あのおばちゃん、ね?
ラストシーンはどうしても間違っていると思ったけど、こっちが勝手にラストだと思った(みんなも思った)あそこのあの瞬間で号泣もできました。その後涙がひいた。
11月某日『ビートルジュース ビートルジュース』
観れなかった、、、。
11月14日『リトル・ワンダーズ』
黙って『ビートルジュース ビートルジュース』観に行けば良かった、、、。
11月某日『トラップ』
観れなかった。お父さんの新作。
11月27日『ルート29』
この映画を観られたことで今年も映画観たなという気持ちになれた。これは本当に難しいことだけどこの一本を観るだけで良い。
何度か他の映画の予告で流れていたけれど全く興味を惹かれず、当日まで観る気は全くなかった。信頼できる人のツイートを見て、サービスデイでもなんでもない日に映画館へ向かい二千円近く出して座席についたとき、あー失敗したと思った。なんだかなあというあの気持ち。
だけど映画が始まった瞬間から最後までずっと幸福だった。
人間の顔面の面積の何十倍ものデカさでみる綾瀬はるかの顔、国道29号線には突然ひっくり返った車が出現し、アキカウリスマキの食堂に現れた婆さんは返事だけが一丁前で店主の注意を無視、主人公の女の子が木の枝でおじいちゃんゾンビ(元村八分のドラマー)のケツの穴を突き刺し、ゾンビはカヌーに乗って黄泉の国へ、朝ご飯はたい焼きとサラダ、黄色い魚が地面を泳ぐ。あの黄色い鱗のリアルさに涙が止まらなかった。
カモンカモンとアンナの出会いも。
とにかく宣伝がひどいのでだれがこの映画観るんだろうという感じだけど、本当に素晴らしい映画を観られて幸せです。パンフ買ったので貸します。パンフは良かった。ピンクの清掃用の作業着とか綾瀬はるか一人が着ててももはや私服に見えてなんの魅力もないけど、この服着たおばちゃん4人が並ぶと最高に面白いから並ばせた方がいいです。
11月29日『ドリーム・シナリオ』
途中まで全然面白くなかった。
けれど突然爆笑させられたりして、あーなんかこの突然どうにかなる怖さ意図的に作る人いるよなーと思ってたらその人が制作にいた。ニコラスケイジが普通の顔をして体育館の入り口から一歩ずつゆっくり近寄ってくると、人は恐怖で逃げるらしい。
12月24日『浮き雲』
観れなかったです。
12月25日『春をかさねて』『あなたの瞳に話せたら』
主人公は学校の優等生なんだけど、模試の返却のとき机に突っ伏して眠っている。眠ると見るのは亡くなった妹の夢。
素晴らしい映画だった。必見。
また来年もできるだけ映画を観たいと思います。劇場以外では、コロナに罹ることで観れたツインピークスシーズン3がまじで最高でした。何かいい映画あったらピープルおとなり千年一日珈琲焙煎所CAFEまでご一報ください。
それではまた、年始にスーパーで。
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