2021/10/03

10/3 店日誌

ただ、あの時代だけは別だ。つまり、おれが本気で愛して、没入した時代ってことだな。(略)いってみりゃ、戦後の貧しさが一段落して、日本人が浮かれ出した時期だな。(「終章 1964秋」)

10月3日、日曜日。昨夜の閉店とほぼ同時に、小林信彦『夢の砦』を読み終えた。60年代初期の東京における出版業、勃興まもないテレビ業界、危機感のつのる映画界、広告代理店と芸能事務所のしたたかさ。それらの激流に呑み込まれ、翻弄されきった主人公が、1964年の東京五輪が招く狂騒から逃れようとするところで話は終わる。

書きつづけるうちに、小説のヘソともいうべき自分の過去へのこだわり・怨みからだけではなく、六〇年代初期の〈空間感覚〉を丸ごと捉えたい気持が強くなり、小説が予想より(非常識なまでに)ふくらみ始めた。(「あとがき」)

ひとつの小説、一冊の本の容れ物としての豊かさに感じ入って、本をおいた。こうして、読むべき本が次々にあらわれる時期を逃しちゃいけない。

今日も快晴。13時から20時まで開けています。

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