2025/02/12

奈良~京都滞在記①

2月11日。いつも通りの時間に起きて、準備をする。9時出発。歩いて15分ほどのバス停からつくば駅、始発の快速に乗って秋葉原駅に10時35分着。神田須田町、神保町、大手町をつなぐように東京駅まで歩いていく。集団ではしる人たち、〈まつや〉の行列を横目に歩を進めると、街がゴミゴミしてくる。東京駅周辺、構内は外国人観光客の姿が目立つ。改札をぬけ、混雑するホームで何本か電車を見送って、11時57分発のこだまに乗車。ビジネス車両はガラガラ。座席を倒して、発車と同時にビールを開ける。

その頃、私は小田原へ永住の覚悟で引き揚げてきていた。これまでのように東京を喰い詰めた為ではなかった。プロレタリア文学もようやく退潮し、既成作家達が息を吹き返して書き出すにつれ、私も久しく捨てて顧みなかったペンをとり、(…)再び一ツ覚えの「私小説」をつくり初め、文芸誌あたりからたまには作品を依頼されるはこびともなった。(川崎長太郎)*

川崎長太郎『淡雪』を読み、寝て、起きると小田原。また寝て、起きると新富士。窓から富士山が大きく見える。各駅停車がちょうどいい。車内の雰囲気ものんびりしていて居心地がいい。京都の手前、米原あたりはかなり雪が残っている。遠目にみえる山も真っ白。京都に雪はなく、建物ばかり。チャンチャンと乗り換えて、JR奈良線に乗ったのは15時半過ぎ。観光客にまざって奈良に向かう(ここで田中小実昌エッセイ・コレクション『旅』に読み替える)。

奈良駅到着。はじめて西口に出て、すぐ近くのホテルにチェックイン。16時半過ぎの街は人が少ない。大袈裟でなくつくば駅周辺の方が人が多いかも……と感じるが、まあ歩きやすくて気分がいい。お目当ての酒場〈蔵〉までは徒歩15分。最短距離でたどり着き、引き戸を開けるとちょうど席が空いたところ。ちょうどよかったですわ〜と迎えられ、ジワリと心暖まる。蔵の接客は絶妙という他ない。

酒は飲むべし、飲まれるべからず、と言うけれども、ぼくは酔っぱらうまで飲む。そこがこまったことなのだろう。酒が好きで飲むだけではない、酔っぱらわないと、おちつかない。酔っぱらうと、おちつかない人もいるのに……。(田中小実昌)*

*「亡友」p.140/『淡雪』より *「ヨーヨーをもった少年」p.18/『田中小実昌エッセイ・コレクション2』より

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