2021/02/10

2/10 店日誌

2月10日、水曜日。富士正晴いわく、明治人間が昭和の初期に書いた手紙、それらの文章から流れ出て来る時間は、現代の時間よりゆるやかで、澄んでいる。「まだそこには人間が足で歩いて行くことによる時間があった」。対して、この文章が書かれた1970年、大阪万博に沸く日本社会には「人間の歩くということの自由がここにはない」。もう50年も前から、現代につながる高速度化は始まっていた。だから思う。自分たちは、もっと歩かねば。もう少し速度をゆるめて、ゆっくり考えよう。

つい最近読んだ、山田稔『富士さんとわたし–手紙を読む』(編集工房ノア)には手紙でのやり取り、文通でしか生まれない時間が封入されていた(上記の引用も同書から)。いくつか図版として掲載されている富士正晴さんの字、絵の魅力的なことと言ったら! いつか実物を見てみたい。

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