日記を書くということ。ある日の出来事を、その日付のもとに記録すること。そのいいところも、よくないところもあると思う。 一日の出来事のなかには、日記にしか書けない事柄がたくさんある。日記に書かなければ、もう書きとめられることはない事柄を、日記は言葉で留め置くことができる。
一方で、日記には書けない事柄もある。時間が経って、多くの出来事が消え失せたあとで、その日をどうにか取り戻そうと願うように記される言葉は、日記とは別のかたちで出来事を記録する。そして小説は、そういう言葉で書かれるものだと思う。(滝口悠生)
滝口悠生『やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記)』の「あとがき 2019年11月13日(水)」がとても良かった。やがて忘れる過程の途中。記憶の脆さ、時流の儚さをはらんだ秀逸な題名だと思う。
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