2025/01/04

宮里祐人が2024年を振り返る

こんにちは。東京の京王線・代田橋駅という駅の目の前でバックパックブックスという3畳ほどの本屋をやっている宮里祐人と申します。古本と少しの新刊を扱うお店です。

2021年3月に開店したので、今年は4年目。

今年は、本当にとりあえず続けることができて良かった、ということに尽きる1年でした。

売り上げがグンと伸びたなんてことは全くなく、と言うかなんというか…な状態なのですが、かろうじてだんだん時間の使い方が掴めてきて、本を読むのはもちろん、映画やライブに行ったりする時間が取れるようになってきました。とは言っても、やはりお店に全然人が来ないととんでもない恐怖に襲われます。特にうちは駅前なので、駅から出てくる人が通り過ぎていくのを眺めていると「自分はこの大勢の人たちからは見えない存在なのかもしれない」なんて気がしてきて、本や映画になんて全然集中できなくなってしまいます。そんな不安に苛まれながらもふと思い出すことの多かった2024年に出会った作品などを少しほど。

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・濱口竜介監督『悪は存在しない』

濱口監督と三宅唱監督は『寝ても覚めても』と『きみの鳥はうたえる』の同日公開など、よく比べられると思いますが、今年は二人の新作が劇場公開されて、それだけで幸せな年だった気がします。映画を動かしている力が、濱口監督は理論的な感じがするのに対して、三宅監督の方がなんというか動物的な感じがして、今までどちらかと言えば三宅監督の作品のほうを好んでいたのですが、今年は濱口監督のこの作品を思い出すことが多かったです。この映画はすごかった。観客の眼差しまでを取り込んだ現代のフィルム・ノワールを撮っていると思いました。

・小森はるか監督『空に聞く』

東日本大震災の後、「陸前高田災害FM」のパーソナリティを約3年半務めた阿部裕美さんを追ったドキュメンタリー映画。喋ること自体が持っている力を見せてもらった気がしました。声を聞くこととは。他者の、自分の、死者の、そして未来の。ゆっくり考えながら生きたいと思いました。

・guca owl『Working Class King Tour』10/3,Zepp DiverCity

東大阪出身のラッパーguca owlのワンマンライブ。フリースタイルバトルでもなく、少し前まで流行りに流行っていたトラップにありがちなビートアプローチでもなく、独特な節回しと言葉使いで、なおかつ派手な客演などもせずにのし上ってきたそのスタイルがめちゃくちゃ格好いい。自分より10歳くらい年下なので1人でライブに行くのはなかなか勇気がいるなぁと思っていたけどこれは行けて良かった。大人になっていくことに対するなんとも言えない気持ちが詰まったような時間と空間に、少し大人の側から混ぜてもらったような感覚。誰に感謝すればいいか分からないけど混ぜてもらってありがたかった夜。MCもほぼなし、客演もアンコールもなし、こんな潔いライブはなかなか無い。個人的に今年のハイライトの夜でした。

・北海道と沖縄

土地をめぐる人々の歴史を考えようと思い、2月に北海道へ、6月に沖縄本島へ、それぞれ10日間の旅に出ました。頭で知っていることでも、実際に歩いて、見て、車や原付で移動してみて、そうやって出来るだけ実感に近いところに言葉を落としていけたらと思っています。

・ベトナム戦争についての本

最近は、開高健『輝ける闇』『夏の闇』、石川文洋『戦場カメラマン』などベトナム戦争についての本を読んでいます。ディランなどはもちろん、黒人音楽やアメリカン・ニューシネマなどベトナム反戦運動の影響を強く受けたとされるカルチャーを10代後半ごろから好んで観たり聴いたりしてきた自覚があるのですが、カルチャー面だけを消費している自分の立場とは何ぞやと考えることが多かったからです。それは沖縄に行ったことも大きく関係していると思います。そうしたカルチャー側だけを本土にいて消費できてしまうこと自体を考え直さないとなぁと思っています。ほんとうに今更ですみません…という感じなのだけど…。最近、盛り上がっているアジアの音楽に対してもそうした視点を失わないようにしたい。

・小野和子『あいたくて ききたくて 旅に出る』

50年以上、東北地方の村々を訪ねて昔話や民話を聞いて回っている小野和子さんの1冊。自然の中や人の心や人間関係の中の割り切れない箇所を、昔の人はフシギな話に溶かしていたのかなぁなんて感じるのですが、この本を読んでいるとそれは遠い昔の話ではなくて例えば祖父母の子どもの頃などのごく最近のことだったことが伝わってきます。時代の発展とともにそういうフシギなものがどんどんどんどん綺麗で透明で分かりやすいものと置き換わってるのだと感じる。それってどうなのだろう。昔の方が…という話ではなくて、人の認識の仕方がどう変わっていっているのかに興味があります。小野さんが登場する濱口監督の映画『うたうひと』が近所の下高井戸シネマでやっていたのですが、見逃してしまったのがとても残念。

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冒頭の続けることができて良かった、と言う話の詳細はまた別のところで形にできればと思ってるのですが、少しだけ触れると、店舗となるテナントを借りたのが2020年12月。3年間の契約だったのでちょうど1年前の2023年12月にその契約が終わりました。その際にいろいろな事情があってとりあえず1年の契約更新となりました。つまり今年の12月迄。

今年1年は、なんとかその諸事情をクリアしてこの場所でお店を続けるべく、相談やお願いをして回っていました。そしてなんとか来年もお店を続けられることになった、そんな1年でした。

続けるために大きな決断をして、金銭的な面で言うとこれまでの賃料の3倍以上の額を毎月支払わないといけなくなってしまいました。とりあえず11月と12月は払えた。ということは今までの3年間どこにお金が消えていっていたのだろう、、とフシギになるのですが…。これまでのこともこれからのことも考え過ぎると本当に吐きそうになるので、あまり考えないようにしています。

それに伴って、お店の2階部分の8畳ほどの小部屋を、バックパックブックスの隣のomiyageの店主・ロボ宙さんと一緒に使えるようにしました。これから小さなイベントや上映会など企画していく予定です。もしご興味ある方がいましたらぜひ覗きに来てみてたり、声をかけてもらえたりしたら嬉しいです!

最後の2ヶ月ほどはこの1年間の経緯の報告も兼ねて、大阪、つくば、などなどに人を訪ねていました。なんというか、すこしだけボーナスタイムみたいな感覚で、大事な人とくだらない話をしながら酒を飲めて本当に良かったなぁという日々です。来年は、今年遠ざかってしまった登山、ずっとできていなかったラップにきちんと向き合いたいと思います。何ができるか、どこへ行けるか分かりませんが、側から見れば格好の悪くてみっともない踊りを、無様なりに踊れたらなぁと思っています。

今回の機会をいただいて、なんだか自分の中に2024年が定着していく感じがしました。ありがとうございました。読んでくださった方とも植田さんとも2025年どこかでお会いできましたら!


natunatunaが2024年を振り返る

2024年にライブペインティングをしたミュージシャン

これを書いてる今、2025年1月1日。実家に帰る車の中、千代田SA、ホットコーヒーはMサイズ

わたしは絵描きだ。絵だけで生計を立てている。はっきり言ってギリギリ以外の何物でもない。実は今も中々の窮地に立たされている、いや自分でそうした、2024のカレンダーがまだ描き上がらずに2025に降り立ってしまった。窮地に立つどころか、先に自分だけ2025に来てしまった。

そんなところから2024を振り返る。このカレンダー未遂事件は結構2024の象徴みたいな出来事だなと思っている。

実はわたしの手元に2025のカレンダーがすでに三つある。もうすぐもう一つ手に入る。一体この世の中にイラストレーターや絵描きはどのくらいいるんだろう。絵を描き、それを販売する。昔からその仕組みはほとんど変わっていない。ただ、外には出しやすくなった。それ自体はとてもいいことだと思う。

自分もずっと裾野を広げたいな、と思っていた。そういう活動もしてきた。でもある時気づいたら、わたしも裾野の一部分になっていた。ハッとしてあたりを見渡すとそこに山はない。なにを目指せば良いかわからない。2024、その荒野でなにができるか。

隣りをみたら、音楽の界隈も同じことになってる気がした。自分が素晴らしいと思うミュージシャンの音楽がすみずみまで届いていない。これは同じ問題なのではないか。

届ける手段がSNSが主流になった時に、大事な鍵になるのがわかりやすさ。このわかりやすさって物差しの厄介さをどうぶっこわしていくか。このわかりやすさの先には消費と飽和が待ってんぞ。

現場現場、SNSは現場に通じる窓や入り口と捉えたい。そしてその先こそをきちんと耕す。簡単に消費させてたまるもんか。時間かかっても、納得いくものを作ること(カレンダーに通じるのはここ)、そして、それと同時に、素晴らしい表現をしている方々にスポットをあてる場をつくっていくこと。時間は残酷、待ってはくれない。

実家である日母と話した。この先どうするかについて。「とにかく50まで、思い切りやってみる。その後どうにもならんかったらバイトでもなんでもするから!」20年前に一度言ったことのあるセリフをまた言うことになるとは。重みが違う。働くのが嫌いなわけではない。でもわたし、やらにゃならんことが目の前にいっぱいになってしまった。母は安心したと言ってくれた、こんな不安定な宣言に。ごめんねは飲み込んだ。思い出しては泣けてくる。もうやるしかない!

期限付きだと異様にやる気がでる。スタートだかスパートだかわからないけれど、そんなのもうどっちでもいいのだ。

2024年4月6日、NRQつくば公演(会場は〈aNTENA〉)

とにかく企画をたくさんうった。なかでもNRQをつくばに呼んだ4月6日と、ケバブジョンソンとpottmannの10月26日の企画は一生忘れない。つくばの街の中で耕していくことは今年も企み中。

自分の絵の方は、根無草でかまわない。軽自動車に詰め込んであちこちに行く。自分が納得いく表現をしていけばきっと各地に数人くらい、わかりにくいわたしの活動を本気でわかろうとしてくれる人に出会えるはずだ。プライドなんていらない。2024は素晴らしい出会いがたくさんあった。何者でもない自分をこわがらないでその土地その土地に身を投じること。

自分が良いと思えないものは描かないし売らない。そう思いすぎたのかなかなかカレンダーが仕上がらない。みんなが待っているからはやく描かなきゃ、と思っていたけど、今は自分が描きたくて描いてるんだよと心から思えている。それを楽しみにしてくれる方々の存在にはとことん感謝しながら。大事にしたい。

中村友貴が2024年を振り返る

2024年は、外に出ようと思っていた年で、実際に店を飛び出して、全国各地で湯湯の味を届ける機会に恵まれた。宣言もしたし、心の方向を外に向けていたからなのか、各地の人や店が導いてくれた。直方、つくば、埼玉、八女、京都、久留米、島根、鳥取、岡山、広島、小倉。鹿児島でも何ヶ所か。お世話になりました。

店があるのに、それを置いといて、外に出て出店をする必要性とは果たして何なのであろうか。自分の中での最も大きな理由は、「受け入れる側」が仕事でもある店の立場を反転させて、「受け入れてもらう側」を体感してみたかったから。それも、ただの旅ではなく仕事で。そしたら、各地を移動して届ける側への理解も増すだろうし、店側への解像度もより深くなるだろう。そしてそれは、実際にそうだったし、良くも悪くも、色んなことが見えるようになった。

自分を含めて、“ヌルい”とすぐ化けの皮が剥がれてしまうのだ。気付いた時には、ヒヤッとした。だから常に全力を尽くすしかない。とは言えコンディションだって状況だってまちまちだ。でも、どんな場面でも全力出してるなぁ、なんて感じる先人達は、何かを切り捨て犠牲にしてでも、全力にもっていけるように、普段から集中しているのだ。そういう生活をしている。気の多い自分には難しいだろうが、言い訳をしないためにも、少しずつ、手放すことも必要になってくるだろう。そんなことにも気付けた。

そして、店の外に出ると「無名である」という当たり前のことにも気付かされた。無名である自分が、全く知らない土地で、ムードと喋りと匂いと味で、その場限りかもしれないが、小さな経済圏を生まねばならぬ。自分さえ良ければ、ではなく、出店させてもらった店やイベントにも還元出来る何かがないといけない。義理、を越えた何かが欲しい。何度もそんな場面を体感して、店をやるスタンスや商売に対するマインドは大いに更新されたような気がする。そしてそれは料理や味にもダイレクトに出てくるはず。ここでも先人達の背中をたくさん見せてもらった。

そう、結局のところは商売なのだ。飽きない商いを、続けていきたい。仕事の旅もそれ以外の小さな旅もたくさんして、お金が無くなった2024年でもあった。払いたい場面で払えず、入ってきてほしいところでお金が入ってこず、もどかしい思いもたくさんした笑 30も過ぎていまだにこんな状況なのが笑えるが、そんな状況を察してなのか、とあるギャラリーオーナーから「男は40なるまでお金はついてこないから!」とバシッと言われたことを御守りに、来年こそはもっと実直に商売をしていきたいですね。していかねばならぬ。お客さんが減ったわけではなく、むしろ増えているんだけどね。

メディアやSNSが拾えない、各地の店の空気を知ったことや、店で展示をしてくれた作家によって、まだまだ湯湯で出来ることがたくさんあることにも気付いたので、来年は、自分で可能性を閉ざさず、もっと店のなかの細かいことに時間と愛情を注ぎたいと思います!ああ、〈たぬき庵〉のことや植田さんが鹿児島に来てくれたことも書きたかったけど、長くなり過ぎるので諦めます。

最後に、店を通してたまたま出会ったウエダシズカのアルバムから1曲。2023年のリリースだけど、2024年に出会った、最も興奮した今年を象徴する音源でした!


食堂 湯湯 / 中村友貴
〒892-0821
住所:鹿児島県鹿児島市名山町10-4 M104ビル
電話:080-1543-9083

1/4 店日誌

1月4日、土曜日。サブスクリプションの無料期間が終わる間際に、ケリー・ライカート監督作品『オールド・ジョイ』を観た。マークとカートの2人が車で走る。ながれる景色、ただよう煙、車内の会話。現実世界とは切り離された時間。生活に捕らわれず、定式化された幸福像への疑念を隠さないカートの危うさが際だつ。戸惑いながらも突き放せないマーク。ときにゾッさせるが、大きな出来事はなく、時間が進んでいく。

ボニー・プリンス・ビリーことウィル・オールダム演じるカートが助手席でマリファナを一服するところで音楽スーッとはいってくる。ヨ・ラ・テンゴによる演奏は、まさしく劇伴。劇に伴いながら走る音。来月発売のサウンド・トラック盤を買うべきか……迷っている。

ラストシーンで街を彷徨するカートの姿が目に焼きつく。生々しさのあるカメラワークが、同じように街をさまよう主人公をとらえる『荒野にて』を思い出させた(エンディングで流れるのはボニー・プリンス・ビリーの「The World’s Greatest」)。

今日も「2024年を振り返る」の公開が続くため、変則的な店日誌。9時公開にしてるけど、店の営業は13時から19時まで。今日から3日間はその時間で、定休日の7日(火)以降は通常営業。2025年もピープル・ブックストアをどうぞよろしく。

ではでは、13時からご来店を待ってます! 本の買取も大歓迎です!

2025/01/03

前田浩彦が2024年を振り返る

「第8回あわぶっく市(2024/11/10)」撮影=andH&M

千葉県最南端の南房総市に住んでいる前田浩彦と申します。ピープルの通販利用者のひとりです。今回このような機会をいただき、恐縮しております。南房総市は房総半島の先端で、周囲は海に囲まれ、内陸部では田んぼや畑ばかりの、のんびりとした地方都市です。そんなレイドバックした田舎モンが、今年を振り返ってみました。

「1,188冊」
田舎ゆえに本屋も少なく、だったら本と出会う場を作ろうということで、毎年秋に「あわぶっく市」というブックマーケットを、市内の道の駅・ローズマリー公園で企画しています。8回目の今年は30店の本屋とフード9店が出店、例年以上の来場者で開催できました。当日は朝から雲でどんよりとしたはっきりしない天気。途中雨に降られて屋外にいた出店者を屋内に移すなどハプニングもありましが、逆に悪天候ゆえ来場者が雨宿りをかねてじっくり本を見て選んだようで、1日で総数1,188冊の本が旅立っていきました。

「ヘイヘイホー」
隣の鴨川市にある「カフェ・カルトーラ」というお店で、仲間と「夜の音楽鑑賞会」という集まりを隔月で開催しています。毎回お題を決めて、参加者がそれぞれ2曲を選曲し皆で聴くという会です。年齢層も30代~70代、ジャンルもバラバラなので、毎回聴かず嫌いだった音楽との出会いがあります。今年は「1」、「魚」、「祭り」、「地名」、「人名」というお題でした。なかでも再発見したのが北島三郎の「与作」(「人名」の回)。爆音で聴く「与作」は、エコーのかけ方やカウベルのクワ~ンという飛び道具な音の使い方など、ダブの名盤BLACK UHURUの『The Dub Factor』に通じる気持ちよさがありました。音質も、さすが昭和歌謡曲のプロダクションで、声、楽器の全てが粒立ちしていてゴージャスな1曲です。

「100回目」
9年前から毎月「非資本主義の可能性をさぐる」というテーマで読書会をしています。課題本を事前に読んで感想を述べあう会です。今年は『言語の本質』(著=今井むつみ・秋田喜美)、『整体読本 ある』(聞き手:鶴崎いづみ・話し手:川崎智子)、『怯えの時代』(著=内山節)他を読み、11月で100回目となりました。100回もやって、非資本主義の可能性がさぐれたのかぁ? なんではありますが、人が直にあってウダウダと話すこと、この非効率さこそがコスパ重視とは対極な非資本主義的であると確信しています。

「ファンク ! ダブ!! パンク!!!」
最後に今年印象に残ったライヴを。

<ファンク!> 8月、横浜寿町フリーコンサートのTEIYU CONNECTIONS。
寿町の職安前広場もきれいになり、あの街独特の「ムッとした」匂いがなくなっていてびっくり。少し寂しかったですが、缶ビールを片手にあの場所で聴くJAGATARA・江戸アケミの詞はやはり格別。特にノブ(ジャングルズ)のヴォーカルが詞を際立たせていて、ズシっときました。名曲「タンゴ」を聴きながら、ドヤ街のビルの隙間から見る夏の青空が最高でした。

<ダブ!!> 9月、渋谷O-EASTのクリエイション・レベル。
E・シャーウッドのダブミックスも凄かった(低音で鼻がゆれて、かゆくなった)ですが、ドラマーが芸達者で、スネアのふちで刻むリズムが最高。レゲエの奥深さをあらためて知ったライヴでした。友部正人の「銀座線を探して」ではないですが、降り立った渋谷駅の変貌ぶりに唖然…。あの構造は、人を迷わせるために作られた嫌がらせとしか思えないです。

「松本佳奈ホールコンサート(2024/12/1)」撮影=なぼ作

<パンク!!!> 12月、かずさアカデミアホールの松本佳奈。
松本佳奈は木更津を中心に活動するシンガーソングライターです。ピアノの弾き語りを主に、カフェやライヴハウスでライヴを行なっている彼女。今回は地域最大級の700名キャパの会場で、ソロコンサートに挑戦。そのチャレンジ精神と大きな会場を揺らした歌に、「自己規制するな、まずはDiY」のパンク・スピリットを感じました。

細田百合子が2024年を振り返る


PEOPLE  BOOKSTOREと同じ天久保地区でgalleryYというレンタルギャラリーを運営している細田百合子と申します。植田さんからこのお話を頂いてとても恐縮しています。と同時に、この一年を振り返る機会を与えてくださったことに感謝しています

2024年を私が振り返るには、ちょっとだけ2022年から振り返らなくてはいけないようです。

少しの間、お付き合いいただけたら幸いです。

 

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2022年の冬になる頃、病気が見つかりました。

展示が続く時期だったので、体調の変化は疲れからかな?くらいの軽い気持ちで受診した病院。今まで健康だけが取り柄だった私は、まさかそこから少し長めにギャラリーを休廊することになるとは思いもよりませんでした。

 休廊該当期間にご予約頂いていた作家さんたちに私の状況と延期もしくはキャンセルのご連絡をするのは本当に辛かったです。この場所に何かを感じて展示をやろうと決めてくださり、会期に向けてご自身の作品と向き合い続けた時間を私が奪ってしまう。

申し訳なさでいっぱいの気持ちでした。

 

目まぐるしく変化していく日常において、とにかく目の前のタスクを一つずつこなしていくような日々が続きました。心も身体もかなり不安定な状態だった私を救ってくれたのは、私の周りの大切な人たち。手厚いサポートとやさしくのんびり声をかけてくれました。

そして、未来についての具体的な約束ができない中でも「ここでやりたいので待ちます!」と言ってくださった作家さんや「このギャラリーが好き!」と言ってくださったお客様の存在はとても大きなものでした。

この場所を通して出会うことができた人たちが、たくさんの愛情を私自身に注いでくださったこと。本当に感謝してもしきれない毎日でした。復活するためのたくさんの力をたくさんの人たちから頂きました。

ありがとうございました。

 

そして、2024年。

ゆっくりですが、少しずつ展示を再開できたことが何よりもの喜びでした。

何度か展示してくださっている作家さんを筆頭に初めてご利用くださる作家さんとの新しい出会いもありました。

作家さんたちのあの日の続きや初めて展示される作家さんのスタート地点をこの目で確認できたこと。白い壁が作品で彩られることが嬉しくて。作品を介して作家さんやお客様との交流が楽しくて。

「そうそう、これ!これ!この感じ!!」と久しぶりの感覚を味わい尽くした1年でした。

病気をして良かったなんて1ミリも思っていませんが、何気ない日常という世界から生まれる繊細な感情(プラスなこともマイナスなことも)により深く耳を傾けながら生きてみたいと思えたことは、日々の出来事に慣れすぎてこぼれ落ちていった感覚を再度救い上げるような行為であり、自己と他者を考える上でもとても大切なことだと思えました。

それだけは良かったのかなと思っています。

 

2024年はギャラリーの大きな窓から外の景色を眺めることができました。

季節の移ろい、そこに反射して映る展示された作品たち。2023年には見ることが叶わなかったこの窓からの景色を存分に味わえたこと。嬉しかったな。

ゆっくりのんびりでも良いからこれからもこの場所を続けていきたいなぁと改めて思えた2024年です。小さなギャラリーのささやかな日常をこれからも大切にしていきたいと思っています。

粛々と誠実に。

そして心からの感謝を込めて。

 

・・おまけ・・


ここまで書いておきながら、なんだか内容が暗い・・・と焦っています。

なので、今年の私のご機嫌な出来事を3つだけ挙げておきます。

1.ほろ酔いの帰り道、歩道のラインがスタートラインに見えて「よーい、どん!」と急に走り出したらわずか2歩で盛大にコケて幼少期以来の擦り傷。擦り傷って地味に痛いということを思い出しました・・・。足の指に肉芽が出来てしまい皮膚科にて液体窒素で焼いてもらう羽目に。二度と走るまいと反省した夏の夜でした。

2. 相変わらず酒場が好きです。飲酒というよりは、あの雰囲気が好きなのです。PEOPLE  BOOKSTOREで購入する本もほぼ酒場本です。

飲み過ぎは良くないので、「今は泣く泣く4杯までと決めている」と言っていたら、最近はビール警察が出動してくれるようになりました。しかし、周囲の勘違いにより7杯飲んだことにされていたことも!! 任意の取調べの末、めでたく無実を勝ち取りました。

3.耳鳴りがするので、突発性難聴の疑いがあると言われ慌てて耳鼻科を受診し聴覚検査をしたら、「20代の聴覚です!」と医師に言われ治療なしで帰されました。帰り道、鼻歌を唄いながらちょっとだけ無敵になれた気分でした。

色々振り返りましたが、結局のところ、自分のことを笑えるって大事だなぁと思ったので、2025年も自分に呆れながら笑っていたいなぁと思った次第です。

皆様が笑顔あふれる1年でありますように!!


野田晋平が2024年を振り返る


2024年を振り返る 

京都在住。魅惑のオンラインショップ「パライソレコード」野田晋平といいます。

 

今年は戦争、災害、政治、スポーツの祭典、芸能人・アーティストの訃報など、世の中は喜怒哀楽激動に流れて、その勢いに飲まれるように日々立ち止まれる事なくあっという間に終わってしまった1年だった。さて2024年を振り返ってというお話をいただいたものの一個人としては正直あまり思い出せることがない「記録より記憶を」なんて思っていて、普段あまり写真を撮らないで、携帯に残された写真は8日分の出来事のみだった。肝心要の記憶力足を引っ張られてしまっている

 

流行り病への警戒薄れて、元の生活に戻り始めたのがここ1、2年。私の店にも少し変化が訪れた。2016年からオンラインショップを立ち上げ、闇雲にやってきた初期を経た時にコロナ禍に突入。ステイホームが後押しとなったのかこの時期から売り上げが伸びていったが、今年はついにそれが止まってしまった。レコードや送料の値上げ、お客さん実店舗へ戻っていったなど、色んな外的要因を考えていたけれど、つい最近近年、パライソ色とは異なる空気、雰囲気も増していると感じています。」という貴重な意見頂き、自覚はあったが、そこもそうだなと、真摯に受け止め、また一から改めてやるしかないと思っている2024年年の瀬です。



とまあ、カタになってしまったので、本当にどうでもいいユル話を。日々時間がない生活を送っているので、ご飯を食べるにだけ、映画やドラマをアマゾンプライムで観るという映画ファンからしたら確実に非難されるバチ当たりやり方で、今更ながら「ツインピークス」を数ヶ月かけて観た。内容の感想はさて置いておき、ノーマ役のペギーリプトンのメガトン級の色気たるや!彼女1968年にリリースした唯一のレア盤アルバム「PEGGY LIPTON」が改めて、心のウォントリスト上位急上昇したのです。そんな中、元夫であったクインシー・ジョーンズの訃報。クインシーなしでは「キング・オブ・ポップ」マイケル・ジャクソンの誕生もなかっかもしれません。本当にお疲れさました

 

そして今、ヴィムヴェンダース監督PERFECT DAYS相変わらずバチ当たり方式で観はじめている。何かトラブルが起きそうこの人が思わぬストーリーへと展開させるのか、気を張って観ていたが、半分くらいまで観たところ、只々おじさん(役所広司の日々の丁寧なルーティーンが美しいカット割と音楽で映し出されているだけで、自分の妙な勘繰りがことごとくそして気持ちよく裏切られて続けているもういっそこのまま起こらず、穏やかに終わって欲しいという期待さえ芽生えてきた今年はもう続きを観るのはやめようと思う。

 

※冒頭の写真は2024年1月8日大阪の高津神社で久々に復活した「とん祭り」での木村充揮さんのライブ。


坂崎麻結が2024年を振り返る

年末年始はなぜかカウリスマキの映画が見たくなる。2024年のメモをひらくと、1月2日に黄金町のジャック&ベティで『枯れ葉』を見ていたようだ。「夜のあとに朝がくる、というような当たり前のことが描かれているのだけれど、それだけでなぐさめられた」とある。何もうまくいかなくても、ただ明日がくるという生きている人間の現実が映画になっている。

その少し前には『浮き雲』の感想メモ。「暗転が多い、短いシーンのぶつ切りをつなぎ合わせて物語をつくる。悲しいシーンなのに笑える、犬が出てくる、基本的には無表情で棒読み。タバコを吸いまくる、酒を飲みまくる、哀愁と悲壮感と不運とユーモア、そして少しの希望。たたみかけるような不運、落ちて落ちて落ちて少し上がり、浮き雲を見上げて終わる」。

いい映画を見てもすぐに忘れてしまうが、メモを読むとなんとなくシーンが浮かんでくる。

お正月は『キノ・ライカ』をまたジャック&ベティに見に行こうかな。


今年は何ができただろうか。そうだ、雑誌『Sb Skateboard Journal』で新しい連載をはじめた。晶文社の『就職しないで生きるには』を自分なりに考えてみようと思って、編集長の小澤さんに相談すると、やってみようと言ってくれた。自力で商いをはじめ、知恵を絞って暮らしている人びとに、働くことの実情を聞くインタビューシリーズで、タイトルは「WORK!」。

初回に中野活版印刷店の中野さん、5月発売号ではPEOPLE BOOKSTOREの植田さん、11月発売号では古書コンコ堂の天野さんに取材をして記事にさせてもらった。一万字と格闘する楽しい時間だった。思い出す言葉がいくつもある。

同時に写真家を取材する不定期連載「PHOTO!」もはじまり、ウクライナのスケーターを撮影している児玉浩宜さんに話を聞くことができた。戦争のなかで生活をすることの現実は、直接見て聞いた人にしかわからない。


当たり前なのだけれど、就職しないで生きている人は自分自身の感覚をみがいて、日々さまざまなことを自分で決めている。そうすることでしか体得できない働き方というものがあって、それが良いとか悪いとかではなく、何かよくわからない組織や集団の都合に左右されない生き方が存在していることに安心する。こういうやり方もあるんだと思えるだけでいい。拾い物の言葉をこねくり回したようなつまらない記事があふれている今だから、実践した人間だけが語れることを聞いていきたい。

面白いなと思うのは、今年ライターとして依頼を受けた仕事のなかに、大きな企業につとめている人たちへの取材も多かったこと。就職しないで生きる人の話を聞きながら、同時に就職して生きる人の話もたくさん聞いた一年だった。サラリーマンだからこそ、自分の思う通りにはいかないという予定不調和を楽しみながら、置かれた場所で全力を尽くすという働き方。委ねるところは委ねて自分の仕事はしっかりやりますよというサッパリした人が多かった。働くことについての考え方を、こうして天秤のように両極から探っていくことは自分にとっても面白い経験になっている。


季節は一年を色分けして見えやすくしてくれる。わたしの場合、春は精神的に不安定になりやすい。花粉もひどいし、なんとなく嫌なことが続くような気がする。5年ぶりくらいに会った友だちに、「まだZINEとか作ってるの? それって趣味みたいな感じ?」と何気なく言われたことをいつまでも思い出してしまったり、かつて仕事を受けていた制作会社の編集者が社内でハラスメントめいたことをしていると耳にしたり、取引のある企業が人権を損なうような行動をしていたり。自分が正義ともまったく思っていないし、正義なんていちばん疑わしいものでもあるのはわかっているが、ただ気持ちがしぼんでいく。

落ち込みが発生したときに助けてもらったのは、筋トレと有酸素運動(リングフィットとフィットボクシングで5キロ痩せて肩こりが改善)、ラジオ(霜降り明星のオールナイトニッポン)、会話(夫や友だち)、料理(焼き菓子にはまった)、それから寝ること(一日平均8時間)。


夏を好きになったのはここ数年だと思う。生きのびるだけでも大変な季節になってしまったけど、雨が降り終わったらプールに行って、夏の果物と野菜を食べて、花火の音を聞いて、できるだけ夏を味わうようにしていたらだんだん好きになっていた。秋と冬はもともと好きなので苦手なのは春だけ。でもべつに好きにならなくていい。

プールに行くようになって泳ぐことと書くことが似ていることに気づいた。書くことはとても苦しく、疲れるものでもあり、進んでいる方向も、そのやり方も、すぐにわからなくなる。けれど、なぜかまた水に入っていく自分がいる。はやく進めなくても、きれいに泳げなくても、そこでは大きな力に縛られず、自由に動くことができるから。

5月は『writing swimming』というZINEを10冊だけ手刷りして文学フリマで500円で売った。2025年はここ10年で書いてきた雑文を一冊にまとめるつもりでいるけど、これもまた長く苦しい作業になりそうだ。


韓国のアーティストのイ・ランは自分が描く小説のなかで「明日がなかったら、今この瞬間に出来ること」をやるのだという。「小説の中でなら、相手にコップの水をぶちまけることが出来るから。そうやって、自分の話をすることで自分になれるんです」。インタビュアーはこう返していた。「小説の中で、自分になるんですね」。みんな自分になるために書いている。


読んだ本についても書きたいけれど、いつもあっちこっち読んでは途中でやめ、読みきらないうちにまたべつの本を読んで、そうこうしているうちにまた本を買い、なんていうことをくり返しているので一冊の本についてしっかりと語ることができない。本はそれぞれが単体に存在しながらも、その内容はゆるやかにつながって境界線は曖昧になり、わたしは自分の本棚という大きな一冊の本を読んでいるのかという気分になる。何かに悩んでいるとき、いつも自分に必要な言葉はその本のなかにある。

まだ読んでいない本について考えるのも好きだ。

今、本棚には『黒人文学全集』(全13巻)と『女たちの同時代 北米黒人女性作家選』(全7巻)と『ラングストン・ヒューズ自伝』(全3巻)などがそろっている。現代の黒人作家の小説も、まだ読んでいないタイトルがいくつもある。これから少しずつ読み、自分が惹かれてきた黒人文学について感じたことを書いていこうと思っている。

坂崎麻結(ライター)https://mayusakazaki.com/

1/3 雑記

正月2日目も、よく歩いた。はじめての街で、相性のいい喫茶店に出会えると、心が満たされる。ローカル線でウトウトしてたら目的地。夢見心地で電車を降りる時の幸福感は……なかなかのもの。

2025/01/02

土田元気が2024年を振り返る

テンチョー土田 映画記録2024

2024年は劇場で27本しか映画を観ていない。
あまりに少ない鑑賞は、何が人に映画を観ようという気持ちにさせるのか考えるきっかけになる。予告もチラシも誰かのツイートも人との会話も、きっかけは色々ある。
身体が一つで全部の映画を観ることはできないので、今年劇場で観た輝ける27本全てを思い返したい。そのためにまずは2023年に観た、たしかに『Komorebi』というタイトルだった映画のことから書く。


2023年12月26日『PERFECT DAYS』
この映画が全ての始まりで、この映画を観た次の年の初め、僕は近所にある普段使わない方のスーパーで古本屋を営む一人の男に肩を叩かれる。僕は野菜コーナーにいた。
「あの『PERFECT DAYS』って映画どうだった?あれひどいよな?」
お互い店舗も隣同士で住む場所も近い。彼が酔っ払った時には無事家に辿り着けるように一緒に帰路につく。初めて出会ってからおよそ10年が経つ。年の差十何歳、の人間への年始ひと言め。恐ろしいったらありゃしない。僕は「まあ、、、」とかなんとか。あの映画のことなんてとっくに忘れていた。このご時世に何がパーフェクトデイだとかなんとか思ったくらい。
おかげで植田さん、あなたが今年の暮れに激ハマりしているアキカウリスマキ。
新作の感想全部忘れました。あの時僕『枯れ葉』観た帰りだったのに。
野菜も買い忘れたし。

2024年1月3日『枯れ葉』
面白かったような気がする。

1月24日『ファースト・カウ』
ずっと観れていなくて、やっと観れたという感じだった。
画面が真っ暗でほとんど何も見えない映画だった。その中でビカーっと光るスコーンが現れたとき、なんだかめちゃめちゃ笑えたなー。僕がこの映画を観る頃には同じ監督の『ショーイング・アップ』も公開されていたけれど、僕は観ることができなかった。悔しかったけれどそれくらいのファンということなのかも。アメリカの夜のこととか、犬目線のこととか、商売のこととかすごく頭を使った。チラシのデザインに反して牛については何も考えなかったな。というかタイトルも牛のことか。いったい僕は何に頭を使ったのだろうか。

2月7日『サンセバスチャンへ、ようこそ』 
この監督の新作はまだ楽しみに追っかけていて、そのことを焙煎所の店長に話したら笑われた。ほとんど内容も、観たことすら覚えていなかったけれど、今になって思い出すのは、この後観ることになる黒沢清『蛇の道』リメークの病院のシーンだと思っていたのはこの映画の病院のシーンで、バフティヤル・フドイナザーロフ『ルナ・パパ』の浮気だと思っていた箇所はこの映画のものだったということ。
退屈な映画だった。

2月13日『夜明けのすべて』
監督のファンで、観に行った。観る前はチラシのビジュアルの酷さに複雑な思いを抱えていたけれど、観終わった後は宣伝に対してより複雑な思いを抱いた。とにかく多くの人が観ておきたい映画ではあるけれど、僕の場合にはチラシの印象は強く残ることがあるので、もっと工夫してもらえたら観に行く気持ちもより強くなるなという感じ。
映画は素晴らしく、あんな強烈な光を恒星からではなく画面から浴びることができて、眩しいし素晴らしいしで感涙。何よりエンドロールの映像が凄くて目が離せなかった。おそらく16mmのフィルムで撮られたこの作品の小ささがすごく好き。
一方ケリーライカイトの映画はたぶんデジタルのカメラで撮ってますか?ものすごく考えて。
店の厨房内、カウンターを挟んでお客さんも含めみんなと賛否入り混じり話せた映画だった。楽しかったな。

2月20日『瞳をとじて』
こういう映画をたまに観られる幸せを噛み締める。
つくば市のシネコンにそれなりに人が入っていてよかったと思った。年配の方が多かったかな。

4月3日『ルナ・パパ』
シネマブルースタジオ大好き。真っ暗になります。

5月21日『クイーン・オブ・ダイヤモンド』
ただ木が燃える映像を十数分観られる幸せ。眼が炎になる感覚を味わえます。

5月22日『悪は存在しない』
公開当初限られた少数の映画館(つくば市には来ない)でのみ上映すると聞いていたので観るのは諦めていたが、都内にいた時にたまたま時間ができたのと、周りに観た人が多く僕もみんなと喋りたいと思ったので観た。開始後すぐに木漏れ日(すぐに『Komorebi』を想起)。前半少し寝かせてもらった。
最後までいまいちのることができなかったのは、タイトルの印象が強く映像に集中できなかったのと、おそらくとても難解なこの映画に脳みそがついていけなかったから(少し寝たので)。
鹿が綺麗だなとかそういう感じだった。2回笑わせてもらった。
さらに集中できなかったのは、上映中にかつて公開された同監督の映画を観た時のことを思い出していたから。当時公開後すぐに映画館に観に行って、ああ素晴らしいなと感じたのを覚えている。それから1年くらいのロングラン上映だったような。もっとかな。
僕はこの映画を観たあとに2本のさらに素晴らしい映画を観た。
『三度目の、正直』『スザンヌ、16歳』
2本とも劇場はがらがらだった。それが不思議だったな。
素晴らしいと思う映画に幸運にもたまに出会うことがあるけれど、ほとんどの映画は見逃す。
観ることのできなかった映画に思いを馳せながら、観ることのできた映画をきちんと思う。
『悪は存在しない』はのちにつくばでもかかった。最初からやってくれればと思う。
渋谷で観たので終わった後、老舗の台湾料理屋故宮へ行った。美味しくて満足。
(写真は故宮の素晴らしい裏口です)

6月13日『違国日記』
漫画原作ものということを知ったのは観終わってから。これは信頼できる人のツイートを見て観に行ってみた。途中から最後のシーンがどうなるかわかって観ているのに、きちんと号泣。出てくる俳優たちがとても魅力的に映る映画だった(特に女の子たち)。家のなかで引き戸をただ開けたり閉めたりするのを見て、こんなの観ながら140分過ごせるのなら最高だなとか思っていた主人公のうちの一人の女の子が高校で軽音部に入りバンドを組むのだけれど、その部室での練習風景、奥で椅子か何かをばちで叩いている人の、そのドラミングが上手すぎてびっくりした。まじで。

6月19日『蛇の道』
自身の旧作のリメークらしい。元の方は観ていないけれど観に行ってみた。
ものすごくよくできた映画で、観ているうちにこの先どうなるのかわかってしまうくらい綺麗だった。けれどこの一本ではこの人の映画の良さまで辿り着けない気がしてなんとなく消化不良を感じた。愛すべき小さな作品という感じか。
メインビジュアルで引き摺っているあれはぜったいコントラバス。

6月某日『胴鳴り』
観れなかった。

6月28日『左手に気をつけろ』『だれかが歌っている』
御用だ御用だ!!
タイトルがアレなのとチラシのデザインが素敵すぎるので、観るかどうか迷っていたけれど、観たかった映画を観れなかった悔しさをバネに観に行くことができた。誰かの脳内で流れている音楽が自分の脳内でも流れることはよくあることだけれど、改めてやはりよくあることなのかと思った。あちらの世界では爆音でドラムの音が聴こえている。よね?
助監督の方と横浜の展示でご一緒したときにしゃべることができて幸せだったという思い出付き。

7月8日『ザ・ウォッチャーズ』
観始めるまでお父さんの撮った映画かと思っていた。娘だった。
めちゃめちゃつまらなくて笑えた。居酒屋の主人と画家と一緒に観に行けたのはいい思い出。帰り道、ひとりはご立腹、ひとりはなだめ役。

7月14日『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』
シネプレックスつくば二本立てのうちの一本。
たくさん笑ったなー。上映時間30分くらいで料金が安いのも良かった。
2025年の2月にはこの人の特集がユリイカで組まれるらしい。楽しみだ。

7月14日『メイ・ディセンバー ゆれる真実』
シネプレックスつくば二本立てのうちの一本。
けっこう重厚な作りで(二本立ての一本目と比べるとだけど)、足を組んで難しい顔をして観た。けっこう面白かった。いろんな映画からの引用とかあるんだろうけど、とにかく気にしないように観てみた。けど難しかったな。僕は幼虫とか苦手なので少し困った。まあ蛾の羽とかも左右対称だったりするしなー。『キャロル』より断然良い。
まさかのピープル植田さんが観ていて盛り上がった。植田さんは僕よりさらに困惑してたみたいだ。植田さんとシネプレックスムーヴィートークできるの嬉しい。

7月17日『フェラーリ』
勝手にシネプレックスつくば二本立て第二弾一本目
この映画を観る前に、ネットフリックスで『フォードvsフェラーリ』を観た。面白かったなー『フォードvsフェラーリ』。終始ドキドキしっぱなし。主人公の奥さんが整備場に現れる時なんかもう眩しくて時間が止まってたな。
『フェラーリ』観るときも完全に引きずられてアダムドライバーの奥さんばっかり見てたけど、全体的にはまあまあだった。難しすぎて。アダムドライバーは見るだけで笑える。怪物。

7月17日『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』
手にプレックスvol.2 二本目
近くのお蕎麦屋さんで昼餉後に観た。
まじで最高。言うことなし。大人が一生懸命あの温度感の画面を作ることにときめく。終映ギリギリまでこの映画の存在に気づいていなかったので、勝手にだれも観ていないと思っていたが、植田さんが観てた。「あれは観るだろ」って。

8月2日『ヨーヨー』
シネマブルースタジオ大好き。前半長かったな、、、。

8月28日『墓泥棒と失われた女神』
もうずーっと夢。画面のふちとかぼやけてて、ダウジングで墓掘りやって金稼ぐ。
夢みたいな話。自分好きそうだなーと思って一生懸命観たけど、なぜかグッとこなかった。なんなんだろう。夢だからかな。

9月14日『ナミビアの砂漠』
やっぱりあのピンク色のチラシ、頭から離れないし、「みろ〜」ってあの俳優が迫ってくる感じする。けっこう長い映画でびっくりしたけれど、前半はとにかく耐え。耐える耐える、耐えるとその先に爆笑ポイントがいくつか現れて、「よかった〜、みるか〜」って気持ちになれる。セーフって感じ。喧嘩が完全におもちゃになる。

10月1日『Cloud』
上映時間がけっこう遅かったので、18時半に店を閉めて床で仮眠を取ってから向かった。起きてピープルを覗くと先生(映画好き)がいたからあ〜しゃべりたいな〜と思っていたけど、意志を強く持ち自転車でムーヴィックスへ、その意志を運ぶ。
素晴らしかった。とにかく怖いしとにかく笑える。縛られた恋人(今すぐにでも撃ち殺されるかもしれない)を前にして、「ちょっと待っててね後で助けるから」とか、え〜〜〜〜って声に出して言ってしまった。そしてとにかく銃の音が気持ちいい。この音を聴くためだけに観に行ったんだと思う。これがきっかけでpottmannの「銃撃戦」という曲(?)は生まれた。
最後のシーンは『熱海の捜査官』。

10月6日『HAPPYEND』
『ナミビアの砂漠』の予告で見て気になっていたので観ることができた。
どうしても監視カメラみたいなショットというか、二人の人を斜め上から撮るやつが気になって戸惑った。近未来社会感ということ? 車立ててくれるのとかは有難いな〜と思った。あの女の子髪かきあげまくるのも本当に不思議だった。かきあげまくるんだもの。
久しぶりにムーヴィックスのひと部屋を独占できたので、楽器屋のシーンでは立って踊り、腹を抱えて笑わせてもらいました。あのおばちゃん、ね?
ラストシーンはどうしても間違っていると思ったけど、こっちが勝手にラストだと思った(みんなも思った)あそこのあの瞬間で号泣もできました。その後涙がひいた。

11月某日『ビートルジュース ビートルジュース』
観れなかった、、、。

11月14日『リトル・ワンダーズ』
黙って『ビートルジュース ビートルジュース』観に行けば良かった、、、。

11月某日『トラップ』
観れなかった。お父さんの新作。

11月27日『ルート29』
この映画を観られたことで今年も映画観たなという気持ちになれた。これは本当に難しいことだけどこの一本を観るだけで良い。
何度か他の映画の予告で流れていたけれど全く興味を惹かれず、当日まで観る気は全くなかった。信頼できる人のツイートを見て、サービスデイでもなんでもない日に映画館へ向かい二千円近く出して座席についたとき、あー失敗したと思った。なんだかなあというあの気持ち。
だけど映画が始まった瞬間から最後までずっと幸福だった。
人間の顔面の面積の何十倍ものデカさでみる綾瀬はるかの顔、国道29号線には突然ひっくり返った車が出現し、アキカウリスマキの食堂に現れた婆さんは返事だけが一丁前で店主の注意を無視、主人公の女の子が木の枝でおじいちゃんゾンビ(元村八分のドラマー)のケツの穴を突き刺し、ゾンビはカヌーに乗って黄泉の国へ、朝ご飯はたい焼きとサラダ、黄色い魚が地面を泳ぐ。あの黄色い鱗のリアルさに涙が止まらなかった。
カモンカモンとアンナの出会いも。
とにかく宣伝がひどいのでだれがこの映画観るんだろうという感じだけど、本当に素晴らしい映画を観られて幸せです。パンフ買ったので貸します。パンフは良かった。ピンクの清掃用の作業着とか綾瀬はるか一人が着ててももはや私服に見えてなんの魅力もないけど、この服着たおばちゃん4人が並ぶと最高に面白いから並ばせた方がいいです。

11月29日『ドリーム・シナリオ』
途中まで全然面白くなかった。
けれど突然爆笑させられたりして、あーなんかこの突然どうにかなる怖さ意図的に作る人いるよなーと思ってたらその人が制作にいた。ニコラスケイジが普通の顔をして体育館の入り口から一歩ずつゆっくり近寄ってくると、人は恐怖で逃げるらしい。

12月24日『浮き雲』
観れなかったです。

12月25日『春をかさねて』『あなたの瞳に話せたら』
主人公は学校の優等生なんだけど、模試の返却のとき机に突っ伏して眠っている。眠ると見るのは亡くなった妹の夢。
素晴らしい映画だった。必見。


また来年もできるだけ映画を観たいと思います。劇場以外では、コロナに罹ることで観れたツインピークスシーズン3がまじで最高でした。何かいい映画あったらピープルおとなり千年一日珈琲焙煎所CAFEまでご一報ください。

それではまた、年始にスーパーで。