2025/01/04

中村友貴が2024年を振り返る

2024年は、外に出ようと思っていた年で、実際に店を飛び出して、全国各地で湯湯の味を届ける機会に恵まれた。宣言もしたし、心の方向を外に向けていたからなのか、各地の人や店が導いてくれた。直方、つくば、埼玉、八女、京都、久留米、島根、鳥取、岡山、広島、小倉。鹿児島でも何ヶ所か。お世話になりました。

店があるのに、それを置いといて、外に出て出店をする必要性とは果たして何なのであろうか。自分の中での最も大きな理由は、「受け入れる側」が仕事でもある店の立場を反転させて、「受け入れてもらう側」を体感してみたかったから。それも、ただの旅ではなく仕事で。そしたら、各地を移動して届ける側への理解も増すだろうし、店側への解像度もより深くなるだろう。そしてそれは、実際にそうだったし、良くも悪くも、色んなことが見えるようになった。

自分を含めて、“ヌルい”とすぐ化けの皮が剥がれてしまうのだ。気付いた時には、ヒヤッとした。だから常に全力を尽くすしかない。とは言えコンディションだって状況だってまちまちだ。でも、どんな場面でも全力出してるなぁ、なんて感じる先人達は、何かを切り捨て犠牲にしてでも、全力にもっていけるように、普段から集中しているのだ。そういう生活をしている。気の多い自分には難しいだろうが、言い訳をしないためにも、少しずつ、手放すことも必要になってくるだろう。そんなことにも気付けた。

そして、店の外に出ると「無名である」という当たり前のことにも気付かされた。無名である自分が、全く知らない土地で、ムードと喋りと匂いと味で、その場限りかもしれないが、小さな経済圏を生まねばならぬ。自分さえ良ければ、ではなく、出店させてもらった店やイベントにも還元出来る何かがないといけない。義理、を越えた何かが欲しい。何度もそんな場面を体感して、店をやるスタンスや商売に対するマインドは大いに更新されたような気がする。そしてそれは料理や味にもダイレクトに出てくるはず。ここでも先人達の背中をたくさん見せてもらった。

そう、結局のところは商売なのだ。飽きない商いを、続けていきたい。仕事の旅もそれ以外の小さな旅もたくさんして、お金が無くなった2024年でもあった。払いたい場面で払えず、入ってきてほしいところでお金が入ってこず、もどかしい思いもたくさんした笑 30も過ぎていまだにこんな状況なのが笑えるが、そんな状況を察してなのか、とあるギャラリーオーナーから「男は40なるまでお金はついてこないから!」とバシッと言われたことを御守りに、来年こそはもっと実直に商売をしていきたいですね。していかねばならぬ。お客さんが減ったわけではなく、むしろ増えているんだけどね。

メディアやSNSが拾えない、各地の店の空気を知ったことや、店で展示をしてくれた作家によって、まだまだ湯湯で出来ることがたくさんあることにも気付いたので、来年は、自分で可能性を閉ざさず、もっと店のなかの細かいことに時間と愛情を注ぎたいと思います!ああ、〈たぬき庵〉のことや植田さんが鹿児島に来てくれたことも書きたかったけど、長くなり過ぎるので諦めます。

最後に、店を通してたまたま出会ったウエダシズカのアルバムから1曲。2023年のリリースだけど、2024年に出会った、最も興奮した今年を象徴する音源でした!


食堂 湯湯 / 中村友貴
〒892-0821
住所:鹿児島県鹿児島市名山町10-4 M104ビル
電話:080-1543-9083

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