2024/12/26

12/26 店日誌

12月26日、木曜日。年中行事にはほぼ無縁の当店だけれど、昨日はなぜか出入りが多く、ジャズ録音日調査委員会『日めくりジャズ 365』を買っていく人がちらほら(残り1部)。My Loads Are Lightの靴下は完売。古本、中古レコードをみていく人がいて、なにも買わずに出ていく人もいる。ビールを持ってきたのは別々の友人。何ひとつままならないから、店にいるのは面白い。年末だろうと粛々と営業するのみ。

ぼくは悲しい結末の暗い映画を撮ろうとしてきたが、一方で心から笑えるというわけではなくとも、日々の生活のドラマを見せるような映画を撮りたいと思っていた。一方はモノクロ、他方はカラーで。(アキ・カウリスマキ)

カウリスマキ生活、12日目。劇場で観た唯一の作品『過去のない男』でゼロ地点に立つ。そうだ、冒頭はこんなだった。こういう人もいたか。あれ、まったく忘れてる。序盤の暴漢以外は基本的には穏やかなトーン。やむにやまれぬ銀行強盗、受け渡し後の銃声。モシャモシャ喋る弁護士、朗々と歌うのは救世軍の女性上司。やさしい銀行職員は『浮き雲』のレストラン支配人だ。知った顔も混ざるのが嬉しい反面、マッティ・ペロンパーの不在も大きい(あるシーンで、壁に写真がかかってた)。

今はほんのわずかな希望ももうないので、ハッピーエンドを見たい人がいてもそれはいい。しかしぼくとしては、人生は我々を幸福にしてはくれないのだから、悲しい結末のほうがいいと思っている。

『過去のない男』が公開されてから22年。世界の現状をカウリスマキはどう捉えているのか、それを知るには最新作を観るべきなのだが……。

今日明日は15時開店! オンライン・ストア〈平凡〉にもご注目を。

2024/12/25

12/25 店日誌

12月25日、水曜日。カウリスマキ生活、11日目。『浮き雲』を観る。名前をよく見聞きしていて友人からも薦められた作品。失職、不正、暴漢。恒例といえる展開で中盤までは良いことなし。妻と夫、一匹の犬。つらいシーンが続いても、家庭はどうにか維持されて、街には友人もいる。社会は冷たくとも人にはまだ暖かみが残ってる。カティ・オウティネン演じるイロナを救うのは、かつて築いた信頼を基にした人間関係。彼女たちは過去の力を応用して未来を切り拓く───。

アキは『浮き雲』について「4割がデ・シーカ的世界、3割が自分自身、2割が小津安二郎的世界、1割がフランク・キャプラ的世界」と語っているが「小津」の意味するものは恐らくテクニカルなことではなく、人物の間に通う心の暖かさのようなものではないか。(宮嶋直美)

遠山純夫(編)『アキ・カウリスマキ』をひもといて、『浮き雲』撮影前の1995年7月にマッティ・ペロンパーが44歳で急逝したことを知る。本作に流れる暖かみは、マッティに捧げられているようにも思える。この世も捨てたもんじゃない。無理にでもそう描かなければ、やってられないよ……。

初回入荷分が完売していた、ジョンのサン『カップホルダー』とぽんぽこ山『PONPOKOYAMA Sampler 3』は明日までには再入荷予定。年内中に新譜が届くとしたら、ポットマンになるのかな。はっきりとは言えないのだけど。

今日明日、明後日は15時開店! 店にはたくさんの本、少々のレコードなどがあり。

2024/12/24

12/24 雑記

カウリスマキ生活、10日目にしてデビュー作『罪と罰』にたどり着く。全体にトーンが暗く、笑えるシーンは皆無に近い(職場の友人役、マッティ・ペロンパーのキャラクター造形がややユーモラス)。大古典である原作を未読のため、物語がどう再構成されているかは、掴めないまま。ラヒカイネンによる殺人の動機は確かなようであやふや。唯一の目撃者、エヴァの行動、選択にも明確な理由は見えず。捜査にあたるベテラン刑事にのみ、善悪の線引きが委ねられていると感じた。

1983年制作の本作でも、音楽の用い方は特別。バンドの演奏シーンをはじめ、感情の動きと連動する選曲は見事というほかない。ここから『カラマリ・ユニオン』(1985)、『パラダイスの夕暮れ』(1986)がつづくと思うと、不思議だ。アキ・カウリスマキはどんな人間なのか。よくわからなくなる。

2024/12/23

12/23 店日誌

12月23日、月曜日。カウリスマキ生活、9日目は『ロッキーⅥ』。9分の超短篇なのだが、酔ったまま観たから内容はろくすっぽ覚えていない。ヘロヘロ、ヒョロヒョロのボクサーをいかつい男が叩きのめしてたな……くらいの印象。ガイド本をひもとくと「スタローンのボクシング映画が大嫌いだ。あの男はばか野郎だ。復讐することを思いついた。それで『ロッキーⅥ』を撮ったんだ」とある。読むほど、観るほど、アキ・カウリスマキが好きになる。

年末年始の営業予定は以下のとおり。明日24日(火)は定休日。25日(水)26日(木)27日(金)は15時から20時まで、28日(土)29日(日)30日(月)は13時から(閉店時間は未定)。31日(火)の定休日と1月1日(水)2日(木)3日(金)は休み。正月以外はいつも通りにやってます。

てなわけで、今日もオープン! 気が向いたらご来店を〜!

2024/12/22

12/22 店日誌

12月22日、日曜日。オンライン・ストア〈平凡〉への反応が増えている。古山フウ『出産レポ漫画ほか』、ジョンのサン『カップホルダー』、ぽんぽこ山『PONPOKOYAMA Sampler 3』を筆頭に古本、定番作や旧譜をチェックする人がいる。お目当てのもの以外にも1点、2点とあわせてくれると、すごく嬉しい。今朝もリトルマガジン『なnD 11』を追加済み。関連作、相田冬二『あなたがいるから』にもご注目を。

久しぶりに「ピープル・ブックストア日報(2023年1月9日〜1月30日)」が到着! 店頭購入もしくは〈平凡〉ご利用の方への特典物。買い物して、軽い読み物が付いたら嬉しいよね〜なんて気分でつくってるから、暇つぶしにぜひどうぞ。天久保一丁目の〈えんすい舎〉での印刷、製作。

カウリスマキ生活、8日目は『ハムレット・ゴーズ・ビジネス』。どうにも眠くてあくびをしながら、集中できず。誰と誰が肉親で、どんな意図で関係しているのか、読み解けない。シェイクスピアの原作をろくに知らないまま観てしまったが、振り落とされずにどうにか観切った。端々の選曲は流石にばつぐん。ライブをしていたネオロカバンドはなんて人たちなのだろう。

つよく、つめたい風! 開催中の展示《MONTH OF MAY》の会期は明日23日まで。

2024/12/21

12/21 店日誌

12月21日、土曜日。カウリスマキ生活、7日目。『ラヴィ・ド・ボエーム』に撃ち抜かれる。ラストでは涙こそ出なかったけど、心はじーんと痺れたまま。これまで観た中では最長の101分、中盤以降はニタニタできず、画面を見つめることしかできなった。パリで出会った作家、画家、作曲家(犬も一匹)。彼らは自由で貧乏、理想ばかりを追いかける。女も共に夢を見る。ボロが出て無理矢理に食いつないでも、限界が迫る───。

ガイド本『アキ・カウリスマキ』によれば、原作はアンリ・ミュルジェールの小説『ボヘミアン生活の情景』。カウリスマキにとっては念願に映画化だったらしい。『コンタクト・キラー』の主演俳優(ジャン=ピエール・レオー)など脇役にも知った顔が何人か。画家はいつものあの人、マッティ・ペロンパー。そろそろ名前を覚えたい。

オンライン・ストア〈平凡〉に入荷した、ジョンのサン『カップホルダー』はあっという間に完売(店頭在庫はちょびっとあり)。古山フウ『出産レポ漫画ほか』もどんどん売れていく。古本と組み合わせて買う人がいるのも嬉しい。

今日明日、明後日は13時開。些細なことでも、お問い合わせはお気軽に。

2024/12/20

12/20 店日誌

文章は書き出しが命だとおもっています。それと同じように、わたしにとっては映画のファーストシーンが重要なのでしょう。いま、なにかがはじまった。(…)よっぽどのことが起こらない限り、ストップせず、最後まで駆け抜ける。だからこそ、はじまりに立ち会うことは、映画の終わりを看取るより大切だと感じているのかもしれません。(相田冬二)

12月20日、金曜日。開店直後に、ジャズ録音日調査委員会(編)『日めくりジャズ 365(2025年版)』相田冬二『あなたがいるから』が同時に届く。開封検品して商品写真を撮影、オンライン・ストア〈平凡〉に上げる準備を整える。ツイッターで紹介すると後者の著者、相田冬二さんがさっそく反応してくれメールを交えてのやり取り。自費出版、インディーだからってわけじゃなく確かな温度を感じさせてくれる。こういうものを扱えるから、本屋は楽しい。

ほとんど間を置かずに、ジョンのサン『カップホルダー』オオヤミノル『珈琲の建設』『喫茶店のディスクール』も到着。縁あって仕入れたジョンのサンの新譜、これが面白い! 総勢14人からなるバンド? グループ? 得体が知れない。バラバラのようで一貫した姿勢を感じさせる16曲。オオヤミノルの2作は当店の定番。今までに何冊売ってきたのか、把握できてない。

昨日も暇ではあったけど、いろんなものが届いて落ち着く暇なし。閉店間際に植草甚一『ぼくの読書法』をぱらぱら読んで、一息ついた。

*

帰宅後に再生したのは『いとしのタチアナ』。カウリスマキ生活6日目にぴったりの尺、69分。コーヒー中毒と切れ間なく酒をのむ男ふたりが目的地なく車を走らせる。途中で拾った女性ふたりと、ろくな会話もせず移動を続ける。ホテルに泊まるも勝手に寝るだけ。ダンスもせず、座ってるだけ。……だけれど、心は動いてる。低速の恋。じわりと伝わるものがある。

開催中の数美亮平展《MONTH OF MAY》の会期は23日(月)まで。始まると、あっという間に日が経っていく。次の土日(21日・22日)どちらかで数美くんが在廊するかも。当店では、作品集やカセットテープを販売中。

今日は15時、明日明後日は13時開店。お暇があればご来店を。

2024/12/19

12/19 店日誌

12月19日、木曜日。夜風が冷たく人通りもほとんどない。昨日は20時前にさっさと閉店、帰宅後すぐにカップラーメン。ビールとポテトチップスを準備して『コンタクト・キラー』を再生した。カウリスマキ生活、5日目にしてロンドンに舞台が移る。ニーナ・シモン? いやビリー・ホリデイ。冒頭から音楽がいい。英国水道局に勤める主人公はなかなか口を開かず、上司から解雇を宣告される場面で最低限の声を出す。いきなり失職。カウリスマキ作品の定番と言える展開だ。

自暴自棄になる主人公の名前はアンリ・ブーランジェ、堅物のフランス人。みずから命を絶とうとするが、方法がおかしい。大真面目な人物が酒とタバコを覚えて、女と出会う。あっという間にチェンジ・マインド。どうにか生きようとジタバタもがくアンリを追う冷たい眼をした男はゴホゴホと咳をする。

簡素なバーで歌うジョー・ストラマーが若い、といっても30代後半か。リーゼントがよく似合う。カリプソが街の雰囲気に馴染んでて、“London is the place for me”なんてコンピレーションのタイトルが頭に浮かぶ。ホテルのフロント、郊外のダイナーの店主、脇役のオヤジたちが実にシブい(ガイド本によれば後者はセルジュ・レジアニ、「フランス映画史上伝説の俳優」とのこと)。

寒くて暇だと時間の流れが遅くなる。侘しい気持ちにもなるのだが、本を読むか、こうして映画でも観ていれば過度に落ち込むことはない。ウハウハな気分じゃないから、カウリスマキの映画を観たくなるのかな。

今日も通常営業! オンライン・ストア〈平凡〉もチェックよろしく。

2024/12/18

12/18 店日誌

12月18日、水曜日。昨日は『カラマリ・ユニオン』を観た。カウリスマキ生活、4日目にして困惑。出てくるのはカッコいい人ばかりで好きなシーンも多いし、音楽もいい。だけど、みんな同じ名前(フランク、フランク、フランク……)でバタバタ死ぬし、いきなり生き返ってたりして話の筋がつかめなかった。そもそも、あらすじを書くこと自体が無粋なわけで、こんな話だった! なんてわからなくていいのである。これから観ていく作品に繋がる部分があれば嬉しいし、なきゃないで構わない。

音楽、文学、映画からの引用に満ち、アキがこの時期ゴダールの影響を強く受けていたことが伺える。(宮嶋直美)

いつもの『アキ・カウリスマキ』(遠山純夫・編)をひもとき、なんとなく納得。答え合わせをしたいわけじゃなくても、少しスッキリ。ゴダール作品もろくに観ていない自分には、分かることは多くないのだが。

入荷した新譜レコード、買い取った本の紹介をするのは骨が折れる。せめて写真と簡単な内容だけでも……と思うと、ツイッターかインスタグラムのストーリーズに頼ることになる。仕入れたものをぞんざいには扱いたくないし、かと言って時間は限られてるしで、なかなか悩ましい。

今日明日、明後日は15時開店。年内営業は30日(月)まで、年始は4日(土)から営業します。

2024/12/17

12/17 店日誌

12月17日、火曜日。カウリスマキ生活、3日目。『マッチ工場の少女』を観る。冒頭、マッチ工場の機械を捉えたシーン。ガチャコン、ガチャコン、ザザーッと木片が加工されていく過程は社会科の授業みたい。ながい沈黙をやぶったのは誰だったか。登場人物ではなく、天安門事件を伝えるテレビのニュースだった気もする。無表情の母と父、タバコを吸うだけでほとんど声を発さない。暖かいはずのスープも冷たくみえる。少女は家に閉じ込められている。ダンスパーティーでも置いてけぼり。

給料日にドレスを衝動買いして、話が転がりだす。酷薄な裏切りが重なって、女の眼が変わる。許せない。アイツだけは。……ラストシーンの潔い背中を見送り、無音のエンドロールを眺めて「…ァァ」と声にならない、声が漏れる。

「ラストは暗いわけではない。イリスは社会から追放されて運が良かったんだ。何故ならそこはこれまで彼女が送ってきた人生よりマシだからだ」とアキは言う。(宮嶋直美)

最初に観た『パラダイスの夕暮れ』ではすっぱなレジ打ちを演じていた女性(カティ・オウティネン)が、見事に少女になっていた。役者だから、と言われても簡単には飲み込めない。それほどの変貌。音楽が流れ出すタイミングが絶妙で、端々でうなる。

定休日だけど、臨時短縮営業! 日本随一のカリプソバンド、カセットコンロス13年ぶりの新作『Calypso EXPRESS』(CD/LP)と、驚きの再発! 富岡多恵子『物語のようにふるさとは遠い』(LP)が本日発売。

てなわけで、13時から16時まで開けてます。お暇があればお出かけください。

2024/12/16

12/16 店日誌

12月16日、月曜日。カウリスマキ生活、2日目。ガイド本に導かれて「敗者3部作」の2作目とされる『真夜中の虹』を観た。真冬に炭鉱が閉山し、主人公に愛車──幌のつかないオープンカー──を譲った目上の友人は自裁する。南へ向かう移動のさなか、暴漢に襲われて大金を失うも、見ぐるみは剥がされず車も残る。なんだかんだあって流れ着いた女の家には子供がひとり。安息もつかのま、理不尽な出来事で刑務所入り。同室の男は……『パラダイスの夕暮れ』の主役の人だ! やっぱりいい顔してるんだ。

同室2人はほどなく脱獄、ブルース・ブラザーズみたいな格好で女と結婚。偽パスポートをつくるもトラブルのはずみで相方が刺される。瀕死の男が車の幌を作動させるシーンがとてもいい。なんだ屋根つくんじゃん!  とか言ってるうちに亡命用の船の前。ボートで向かっていくうち夜が明ける────。

劇中で流れるブルースのハマり方よ! 誰の何て曲かもわからないけど、どこかニール・ヤングに似た主人公が独歩する場面でのエレクトリック・ブルースが忘れられない。カウリスマキはDJのようでもある。

ただいま数美亮平展《MONTH OF MAY》開催中。数美くんが来ていた昨日は友人たちが来てワイワイしてるうち、あっという間に時間が過ぎた。会期中、もう一度くらいは数美くんが来てくれるはず(来られなくなる場合もあり)。

本の査定をしながら営業中! 些細なことでも、お問い合わせはお気軽に。

2024/12/15

12/15 店日誌

12月15日、日曜日。夕食後、なんとなく選んだのが、アキ・カウリスマキ監督作品『パラダイスの夕暮れ』。80分未満の短い尺に惹かれて見始めると、これが大正解。ウイリアム・エグルストン、スティーブン・ショアらのニューカラー派のような色彩と構図。ピアノ・ジャズ、ブルース、ペナペナした音のロックバラードを主にした選曲。役者の顔、街並み、乾いた空気。ぜんぶ好きだった。居間で、大きめのiPadで観るのにちょうどいい。

それまでの映画のスクリーンではなかなか見ることのできなかった人々といえるかもしれない。ヒーローやスターのいない映画。「敗者達も愛を必要としていること、そして人間性、尊厳、プライドについての映画」とアキは説明している。(宮嶋直美)

遠山純夫(編)『アキ・カウリスマキ』を引っ張り出して、納得。主役を演じる役者が『パターソン』のアダム・ドライバーに見えてくる理由もわかった。宮嶋直美さんの解説によれば「ジム・ジャームッシュは本作を「最も美しい映画の一本」と絶賛」とある。なるほど。着る服や歩き方なんかを参考にしたのかな。『パラダイスの夕暮れ』では、主人公の孤独を伴いながらの暮らしぶり、街や他者との距離感がうまく描かれていた。

1日1本か、それに近いペースで少しずつ観ていければいい。なんとなく劇場から遠ざかってしまった今、映画との付き合い方を見つけられた気がする。ひとまずカウリスマキ作品を追っていく。

某所から届いた3箱(これが超強力!)、他にもポツポツと本の持ち込みがあり古本の動きが活発になってきた。会計後に「よいお年を〜」と言われることも増えてきて、年末が近づいてきているのを実感する(ハァ、なにかとめんどくさい季節だな……)。

今日明日の営業は13時から19時まで。オンライン・ストア〈平凡〉にも入荷あり。

2024/12/14

12/14 店日誌

12月14日、土曜日。小林信彦、黒柳徹子、谷川俊太郎とうちのばあちゃんが同世代(ほぼ同い年)。たかが数字の話なのだが、この並びには深みがある。憧れの作家、ブラウン管ごしの有名人、国民詩人、伊豆に住むおばあちゃん。同時代の人たちと片付けてしまえばそれまでだけど、それぞれの年表をつくったらものすごく厚みがあるだろうなあ。戦争経験。復興と教育、仕事などなど、書き出したら何ページになるんだろうか。人生。この言葉をどう取り扱うべきか、今がいちばんわからない。

今朝も『ディスカバー・アメリカ』B面を聴いたのち、トロージャンズ『スピリット・オブ・アドベンチャー』。やっぱりいい。ギャズ・メイオールのセンスが好き。半被を着てリンゴ追分を歌いまくる姿を見たのが初見、あれ誰? としか思えなかった感覚が懐かしい。いつだかのフジロックの前夜祭。

本展が普段意識されない無意識的なイメージの連鎖や重なり、夢想と現実の境界を意識させる機会となるかもしれません。(松﨑章馬)

つくば駅近くの〈つくば市民ギャラリー〉での松﨑章馬さんの写真展《Imaginary Debris》(会期は明日まで!)を覗いたあと〈ブックセンターキャンパス〉に行く(読みたい本ばかり!)。そういえば、〈gallery Y〉での写真展は今日からだ。

今日明日、明後日も通常営業。お散歩がてらお出かけください。

2024/12/13

12/13 店日誌

12月13日、金曜日。ライオネル・ハンプトン、ポール・サイモン、ライアン・アダムスと針を落として、たどり着いたのがヴァン・ダイク・パークス。ながいこと店に放置していた『ディスカバー・アメリカ』を持ってきたのだが、このレコードめちゃくちゃいいじゃん! 15年以上前にどこかで買って、それなりに愛聴していたつもりもあったのだけど。ウーン、オレはまともに聴いてなかったのか。B面序盤の低空飛行がちょうどいい。

わが家の革命的出来事は、炬燵と座椅子の導入だ。炬燵だけでも嬉しいのに、座椅子が組み合わさると効果増大。完璧すぎる組み合わせ。座ってしまえば、ほぼ確実に動きたくなくなるゆえ経済効果は望めない。でも、効率はどうでもよくなり、頭もぼんやりしてくるから平和利用が望めるのでは。戯言はともかく、炬燵と座椅子は、日本の偉大なる発明だ。

一昨日の夜、突然あらわれたのは代田橋〈バックパックブックス〉の宮里佑人。差し入れのビールをやりつつ聞かせてくれた話はどれも面白かった。バックパックブックス、オミヤゲ、ウチアゲ(行ったことなし)が並ぶあの一角は、東京で好きな場所のひとつ。

今日も通常営業! 古山フウさんの自主制作本が、サイン入りで再入荷しています。

2024/12/12

12/12 店日誌

お祝いに久しぶりの『カフーツ』を。リヴォン、リック、リチャード三人の歌声とガースの天才に空腹を忘れてひたすらさめざめと涙を流す。雨は降り続けるが、降るがままにしておけ。人生はカーニバルなんだぜ。(青山真治)

12月12日、木曜日。青山真治『宝ヶ池の沈まぬ亀 ある映画作家の日記 2016-2020』に刺激されて、ザ・バンドのレコードを引っ張り出した。唯一所持している『Cahoots(カフーツ)』。「LIFE IS CARNIVAL」「WHEN I PAINT MY MASTERPIECE」から始まるA面の流れが好きだ。傑作をかく時、と邦題のつく後者のイントロ、遠くで鳴るアコーディオンの音がだんだん大きくなって……歌がはじまる! ここが最高! 曲は王道のディラン節と言っていいのか、なんとなく「FOREVER YOUNG」っぽい。

と、ここまで書いてボヤッとしてて更新するのを忘れてた! なにか他にも紹介したいものがあったはずだけど失念。今は15時01分。とりあえずギリギリセーフということで。

今日明日は15時開店。オンライン・ストア〈平凡〉にも入荷あり。

2024/12/11

12/11 店日誌


こんな状況なのになぜ雑誌を作り続けるのか。カルチャーに貢献していきたい、数字の大きさが正義になるクソな社会に少しでも抗っていきたい、アーカイブとしての特性はネットより優れている。どれも日頃から思っていることだけど、結局のところは雑誌が好きで仕方ないから。それに尽きる。(二宮慶介)

12月11日、水曜日。インディペンデント・ストリートカルチャー誌『DAWN』が手がけた『R.I.P. MAGAZINE』が到着、今日から販売開始。雑誌と、それをとりまく文化に最も勢いのあった1990年代後半から2010年代に刊行されていたファッション誌、音楽誌、アート誌、文芸誌───サブ・カルチュアとくくられる89誌をアルファベット順(後半は五十音順)に並べたZINE。もちろん抜け落ちているものもある。それを承知の上で編まれた、カタログ的でありながらスピリットを感じさせる、厚みのある内容だ。

あの頃は良かった、なんて昔を懐かしんで悦に浸ってるようなヤツには絶対なりたくないけど、過去を知り現在に捉え直すことは未来への鍵だ。

定期刊行はされていなくても、形さえ残っていれば手に取れる。物体の持つ力を改めて感じさせる小冊子。本誌はオンライン・ストア〈平凡〉では扱わず、店頭販売のみ。ぜひ、現物を手にしてほしい。

ピープル・ブックストアの年内営業は12月30日(月)まで。新年は1月4日(土)から営業予定。正月恒例の「2024年を振り返る」も年明けから順々にアップしていくつもり。初参加の方が多くて、これまで以上に幅も広がった感あり。どうぞお楽しみに。

今週も催事、出店の予定なく全日通常営業。ご都合あえばご来店を。

2024/12/10

12/10 雑記

10時前に家を出発。滑方の大銀杏を見て、水戸の中華屋でチャーハンとギョウザを食したのち宝くじを買って、老舗の古書店の棚をながめて数冊購入。16時前に帰宅。とくべつなことはなし。

2024/12/09

12/9 店日誌

12月9日、月曜日。驚いた。『オクノ修』は特別なレコードだった。なんなら2000年代にリイシューされたCDは持っていて、普通に聴いてもいたのだが、はっぴいえんどみたいなことやってたんだな〜って印象しか受けていなかった。それが、だ。今回、アナログ盤で同時にリイシューされた『唄う人』(2003年)、『帰ろう』(2001年)、『オクノ修』(1972年)と遡って聴いていって、はじめて分かった。これは、めちゃくちゃ特別なレコードだ。

声が独特。バンドでロックしながらも、歌い手は孤独だ。暗い、明るいで片付けられるムードがあるわけでなく、その両方、もしくはどちらでもない温度を行き来する。つっけんどんなようでいて、さみしさを漂わせたり、なんにも知らない顔で歩き出したり。ちょっと変わった青年がありのまま、レコードの中にいる。

友部正人『銀座線を探して』にも、くり返し聴いてようやくひろえたものがある。泣かせず、笑わせるわけでもなく、言葉がただそこにある。聴き手を拘束せず、一方向に導かない。歌い手のつよい意志を感じる。

とかなんとか考えながら、営業中! 今日も書籍、音源に入荷あり!

2024/12/08

12/8 店日誌

12月8日、日曜日。風がびゅうびゅう、枯葉がカラカラ飛んでいく。この時期らしい空気感。普通にしてたら寒いけど歩けば身体は暖まる。筑波大を抜けてみると、さすがに外に人は少ない。ぐいぐい歩いて〈古着屋may〉に差し掛かるとシャッターは閉まったまま(11時57分)、隣の〈千年一日珈琲焙煎所〉はいつも通りに開いている。いつもの風景。メイが定時より遅く開くことに何か言いたいわけじゃなく、ほとんど休まず営業してることがすごいなーと思ってる。

今日明日は、13時から19時までの営業。おでかけついでにご来店あれ。

2024/12/07

12/7 店日誌

12月7日、土曜日。日が暮れたころ4タイトルのレコードが同時に届く。ひとつは京都から送られてきた、レイク(lake)というバンドの『last summer』と題された12インチ・シングル。メンバーの長久保さんから制作に携わった黒肘さんを経由して、レーベルの小田さんが発送してくれた(小田さんは先ごろ、京都に〈suiro〉というスペースを作ったばかり)。敬愛する先輩たちの手を伝わってきた作品。大事に売っていく。

もうひとつはオクノ修さんの『唄う人』『帰ろう』『オクノ修』の3枚。数年ぶり(数十年ぶり?)でレコードでリイシューされると知って、飛びついた。前2作はやや遅い入荷でも気にしない。パッパと売っていくレコードではないと思ってる。たくさんの仕入はできなくても、店に置いておくことが重要なのだ。

昨日は新譜レコードの日。じゃあ、今日は? おそらく古本の日になるんじゃないか。東京在住の方から本が送られてくる予定があるのと、誰かしらが本を売りにくる気がするから。漠然と期待しながら待っている。

今日明日、明後日は13時開店。些細なことでもお問合せはお気軽に。

2024/12/06

12/6 店日誌

12月6日、金曜日。リュックいっぱいの買取の本、音源を持って現れたのは常連イケちゃん。手にはビールがたくさん入ったビニール袋。「今日は忘年会ですから」と宣言して、展示を見に隣の店に消えていく。入れちがうように、古本フウこと古山菜摘さんが自作の冊子を納品しに来る。買い取った3種の本にサインを入れてもらいながら、イケちゃんの本を査定して、金額を伝えると即承諾。写真集、漫画、ディスクガイドなどを交えた本、アンビエント、フィールド・レコーディングを主にしたCDを買い取った。

古山さんが持ってきてくれたのは、新作『出産レポ漫画ほか』(描き下ろしの7ページが泣ける……)と7名の作家が参加した合同誌『もぐらホリデ〜』、メグマイルランドとの共作『夜明け前』。すべてに丁寧にサインを入れてくれているので、ご注目を。

諸々の作業が落ち着いた頃合いで、ビールを飲み始める。そのうちに隣の土田店長も合流、ワイワイやってるうちに久しぶりのエスプラくんも登場して並びの居酒屋〈わかたろう〉にながれる(イケちゃんとはここでお別れ)。突発的忘年会というノリでひと盛り上がり。たまにはこういう日があってもいい。

というわけで、たくさんの本の入荷あり! お暇があれば、ご来店ください。

2024/12/05

12/5 店日誌

12月5日、木曜日。昨日一昨日に比べるとちょっと寒い。いや、ブログを書いている今(14時22分)は暖かくないと書く方が正確だ。上着を羽織らずカットソーとジーパンで歩くのがちょうどいい(タイツ上下も着用しつつ)。街路樹の葉っぱもだいぶ落ちてきて、冬が近づいてる気配あり。明日からは気温もぐっと下がるらしい。暑くもなく寒くもない秋みたいな気候がつづくのは嬉しいし、歩くには一番なのだけど、そろそろ冬っぽくなってもいい頃だ。

今日明日は15時開店。土曜日曜、月曜は13時から開いてます。

2024/12/04

12/4 店日誌

12月4日、水曜日。ジュニア・マーヴィン『ポリス&シーブス』のレコードを買える値段でやっと見つけた。ジャマイカ盤はおそらくプレスが少なく、売っていても高価なのだが、昨日見つけたアメリカ盤はその半額。トニー・ライトのイラストレーションはレコードサイズでこそ映える! 奇妙な顔のポリスとコソ泥が微妙に版ズレしていて、薄いエフェクトがかかってるように見えるのも面白い。レゲエのレコードにはこんなエラーがよく似合う(印刷された曲順が違ってることも当たり前)。

まだまだ暖かい。去年は年末前に出かけた波佐見で冬の到来を感じたのだった。関東は今日みたいな気温だったのに、九州に着いた翌朝の寒いこと! ぱらぱらと粉雪が舞い出したのにも目を見張った。

今週も全日通常営業! 本の買取にかんするご相談はお気軽に〜!

2024/12/03

12/3 雑記

好天。早い時間の電車に乗って秋葉原に出る。まずは久しぶりのブックオフ。すごーーーく久しぶりに行ったのだけど、この秋葉原店は店員同士のお話が賑やか。「文庫コーナーの品出し、10分でどう?」「うーん、やれます!」「×××ちゃん、頼りになるなー」「ハハハ!」「いらっしゃいませー! こんにちは!」「(みんなで)こんにちはー!」っておい、客は置いてけぼりだよ。なんであなた方がキラキラしちゃってるのさ。でもまあ、記憶のどこかが刺激されて懐かしがってる自分もいるのだが。

神田須田町を通り抜けてお茶の水への坂を上がる。穂高で一服したのちディスクユニオン。こちらは一転、強烈な塩接客(使い方合ってますかね……)。「チッ」と舌打ちこそされなかったが何度も「スミマセン……」と謝りたくなった。会計時にやや面倒をかけて、ジワっと汗をかいて退店。通りにでて、フーッと大きく息をついて、脱力する。ずっと好きな店なのだが、内部でなにかあったのかな……とか余計なことを考える。今日は巡り合わせが悪かった。

13時頃の街には学生がいっぱい。昼休憩の勤め人ともたくさんすれ違う。意識的にのんびり足を運んで神保町、アットワンダーJGの棚を吟味する。このお店に影響を受けて、自分の店でも315円みたいな細かい値付けをするようになった。ちょうどいい本がたくさんあって回遊するのが楽しい。出入りする人の年齢層が幅広いのがここの特徴かなーと思う。

ハー疲れた! ランチョンの生ビールとポテトサラダで小休止。昼過ぎだけど混んでる。外国からの観光客もちらほら。サッと片付けて地下鉄に乗り、北千住経由でつくば着。想定していたより少し早く帰ってこられた。

2024/12/02

12/2 店日誌

12月2日、月曜日。午前中、歩き出してすぐに出勤前のチヨリさんとバッタリ遭遇。「歩いてるの?」と聞かれて「そう、趣味なんです」と応えて気がつく。ぼくも散歩と雑学が好き。他には少々のビール、コーヒーとレコードがあればいい。いやいや、たまには映画も観に行きたいし、自転車で走るのも気持ちいい。天気のいい日に公園でゴロンと寝そべるのも大好きだ。カレーと蕎麦をよく食べる。こうやって書き出して、それなりに欲張りな自分を知る。

当店ブログの正月恒例「2024年(前年)を振り返る」。昨日からボチボチ声をかけはじめていて、みんなが気持ちよく了承してくれている。自分も書きたい! なんて人がいれば、気軽に声をかけてほしい(参考までに昨年一昨年の記事のリンクを添付しておきます)。

今日は13時から19時までの営業。オンライン・ストア〈平凡〉もどうぞよろしく。

2024/12/01

12/1 店日誌

12月1日、日曜日。薄着せず、厚着もせずに外に出る。天気がいい。ぐんぐん歩いて15分で身体が暖まる。筑波大はフィリピンかベトナムの若者たちでいっぱい! カジュアルにオシャレをしてて楽しそう。写真を撮ったり座りこんだりワイワイしてる。ちかくに停まった観光バスからもゾロゾロ降りてきてびっくり。何かしらの行事があるのかな。ちょうどいい気候でよかったねーと思いつつ、通り過ぎる。

郵便局、薬局で用事を済ませて、途中の小さな公園でゴロリ。空は真っ青、紅葉は真っ赤。帰り道も大学を抜けていく。右側のコートでアメフト部が本格的な練習をしていて、左側ではラグビー部、サッカー部が試合をしている。これってかなり特殊な状況だよなあ。ローソンを過ぎたあたりで〈古着屋may〉のホソヤさんと道端でいきあい、立ち話。ワハワハ笑って「じゃ!」と別れて店に来た。

93歳の祖母がつくる和紙の栞がどっさり到着! ピープル・ブックストア店頭で何かしらを買ってくれた人にお付けします(通販ご利用で、栞ご希望の方はお声がけを)。着物を着た少女がモチーフになっていて、どんどん上手になってるなーと感心。

という感じで、今日も通常営業。お散歩がてらお出かけください。