1月6日、月曜日。街の動きが戻りつつある。通りすがる建築現場や工事現場も再開していて、バスや電車は平日運行。郵便局も開いていた。年末年始も開いてるコンビニやスーパー、ドラッグストアがあって助かった。各種配送を請け負っている個人事業主の人たちも大変だ。自分が休んでいる間、別の誰かが働いていて、賃金が発生してる。何ができるわけでもないのだが、そのことはどこかで意識しておきたい。
今日も通常営業。オンライン・ストア〈平凡〉にも動きあり。
1月6日、月曜日。街の動きが戻りつつある。通りすがる建築現場や工事現場も再開していて、バスや電車は平日運行。郵便局も開いていた。年末年始も開いてるコンビニやスーパー、ドラッグストアがあって助かった。各種配送を請け負っている個人事業主の人たちも大変だ。自分が休んでいる間、別の誰かが働いていて、賃金が発生してる。何ができるわけでもないのだが、そのことはどこかで意識しておきたい。
今日も通常営業。オンライン・ストア〈平凡〉にも動きあり。
ひとつ良ければすべて良し、というのはいい。
“伝説のイラストレーター”河村要助さんが、79年の夏に『
なんと粋で、エスプリに富んだ言葉だろう。知り合いのDJは「
ほれぼれする。たかだか「音楽を聴く」ということに、
2024年を振りかえってみると、こんな具合に、
*
きっかけは、奥渋谷の人気アフリカ〜クレオール料理&
ダイスケさんと一緒にルンバ・コンゴレーズのDJイベントをやっ
あるとき、バンド結成当時の話を聞かせてもらっていると、「『
これが、べらぼうにおもしろかった。
『ブルータス』の特集「黄金のアフリカ」は圧巻だった。
『マガジン』の81年2月号では、文化人類学者の岡崎彰さんが、
『ブラック・ミュージック・リヴュー』1985年5月号のダイス
*
この時代の、雑誌ならではのおもしろさをあらためて実感する。
それからというもの、1970年代半ばから1980年代半ばあた
いまはだたひたすら記事を読み、
冒頭で触れた河村要助さんのエッセイのタイトルは「
そう、捨て身でつかんでみたいのだ。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
1月5日、日曜日。ザ・バンド『ラスト・ワルツ』のレコードにしみじみと耳を傾ける。有名なテーマ曲で幕を開け、バンドが2曲演奏したところで登場するのはニール・ヤング。「ユー・ノウ・ディス・ガイ?」と紹介されて歌いだす「ヘルプレス」を聴くとイメージが広がる。仲間はいても孤独な男。にぎやかな場を離れて、彼はひとりで歩いていく。鼻に粉をぶっつめたまま……。いやはや、3枚組のレコードに集中するのも大変だ。
元旦から公開してきた「2024年を振り返る」もひと段落。参加してくれた17人に改めてお礼を。なんて書きたいのだけれど、実はもう1人残ってる。18人目の原稿を紹介できるのは15時か、もしかすると17時か。今日中にはアップできるはず。
そう言えば! 年末にとある不届者がトイレのドアノブを持って帰ってしまって(なんでだよ!)、何人かが閉じ込められている。まさか、店にいて電話で助けを求められるとは。
今日明日の営業は13時から19時まで。お暇があればお出かけください。
「もう一人旅はできない」
8月、北海道でそう思った。
これまで、南は吐噶喇列島から北はアイルランドまで、どこでも一人で行ってきたのに。
行きたかった目的地は思っていたよりも遠く、どこにも辿り着けなかった。
さびしくて何にもやることがない。自分の無計画さに途方に暮れて、円山動物園の猿たちを眺めながら予定よりも早く帰ることに決めた。
秋になり、友人Rから長崎に来ないかという連絡が来た。Rは中学と高校の同級生で長崎にある大学の水産学部に通っている。浪人したRも、1年間フラフラしてから大学院に入った私も24歳でまだ学生。地元でたまに顔を合わせる以外は連絡もあまり取っていなかった。誰かに会いに行くことならできるかもしれないと思い、3日後に長崎へ行くと伝えた。
長崎に着いてから私とRは池島へ向かった。
人口約90名、周囲4Kmほどの小さな島だった。
出発前、乗船実習で同級生にもらったという封の開いたラッキーストライクをRがくれた
船では有り難かったけど陸に戻ればハイライトが買えるのでもういらないという。
久しぶりに会ったRはタバコを吸い、海についてよく話すようになっていた。知らない魚を次々挙げながらそれがどんなに美味しいか説明してくれたけれど、名前が思い出せない。
池島には2001年まで炭鉱があり、炭鉱夫やその家族が島に残したせいで増えてしまった猫たちが島中でまどろんでいる。私とRは坑内を歩くことのできる見学ツアーに参加した。
ヘルメットについたキャップランプの灯りを全部消したとき、目の前にかたまりのような真っ暗闇が現れて、じっと眺めた。自分の手さえ見えなかった。
猫好きなRは島で猫を見かけるたびに立ち止まっていたが、一匹の猫が足元に擦りよって来たとき「おまえ、それはだめだよ」といった。見ると、Rの足の親指に血がついていた。猫の血だった。
猫たちは今や人間よりも増えてしまい、当然、体調管理などされているわけでもないので病気や栄養失調で死んでしまい、育たないことが多いのだという。ウェットティッシュを手渡すと、Rは「ありがとう」と言って猫の血を拭った。夕飯を食べる店もない島だったのでサワークリーム味のプリングルスを食べて一晩過ごした。
島から戻った後もRの家でお世話になり、4泊5日を長崎で過ごした。卒業して以来5日間も一緒にいることはなかったから不思議な感じがした。それは小学生の頃、雷のひどい日に、先生が危ないからと言って下校時間が過ぎてもクラスメイトたちと教室で過ごした時のみょうにワクワクした気持ちに似ていた。
長崎駅の改札でRと別れ、今自分の近くにいる人たちにお土産をたくさん持って、
その人たちに何を話そうか考えながら帰路についた。
来年もやっぱりどこかに行きたいと思う。
こんにちは。東京の京王線・代田橋駅という駅の目の前でバックパックブックスという3畳ほどの本屋をやっている宮里祐人と申します。古本と少しの新刊を扱うお店です。
2021年3月に開店したので、今年は4年目。
今年は、本当にとりあえず続けることができて良かった、ということに尽きる1年でした。
売り上げがグンと伸びたなんてことは全くなく、と言うかなんというか…な状態なのですが、かろうじてだんだん時間の使い方が掴めてきて、本を読むのはもちろん、映画やライブに行ったりする時間が取れるようになってきました。とは言っても、やはりお店に全然人が来ないととんでもない恐怖に襲われます。特にうちは駅前なので、駅から出てくる人が通り過ぎていくのを眺めていると「自分はこの大勢の人たちからは見えない存在なのかもしれない」なんて気がしてきて、本や映画になんて全然集中できなくなってしまいます。そんな不安に苛まれながらもふと思い出すことの多かった2024年に出会った作品などを少しほど。
────────
・濱口竜介監督『悪は存在しない』
濱口監督と三宅唱監督は『寝ても覚めても』と『きみの鳥はうたえる』の同日公開など、よく比べられると思いますが、今年は二人の新作が劇場公開されて、それだけで幸せな年だった気がします。映画を動かしている力が、濱口監督は理論的な感じがするのに対して、三宅監督の方がなんというか動物的な感じがして、今までどちらかと言えば三宅監督の作品のほうを好んでいたのですが、今年は濱口監督のこの作品を思い出すことが多かったです。この映画はすごかった。観客の眼差しまでを取り込んだ現代のフィルム・ノワールを撮っていると思いました。
・小森はるか監督『空に聞く』
東日本大震災の後、「陸前高田災害FM」のパーソナリティを約3年半務めた阿部裕美さんを追ったドキュメンタリー映画。喋ること自体が持っている力を見せてもらった気がしました。声を聞くこととは。他者の、自分の、死者の、そして未来の。ゆっくり考えながら生きたいと思いました。
・guca owl『Working Class King Tour』10/3,Zepp DiverCity
東大阪出身のラッパーguca owlのワンマンライブ。フリースタイルバトルでもなく、少し前まで流行りに流行っていたトラップにありがちなビートアプローチでもなく、独特な節回しと言葉使いで、なおかつ派手な客演などもせずにのし上ってきたそのスタイルがめちゃくちゃ格好いい。自分より10歳くらい年下なので1人でライブに行くのはなかなか勇気がいるなぁと思っていたけどこれは行けて良かった。大人になっていくことに対するなんとも言えない気持ちが詰まったような時間と空間に、少し大人の側から混ぜてもらったような感覚。誰に感謝すればいいか分からないけど混ぜてもらってありがたかった夜。MCもほぼなし、客演もアンコールもなし、こんな潔いライブはなかなか無い。個人的に今年のハイライトの夜でした。
・北海道と沖縄
土地をめぐる人々の歴史を考えようと思い、2月に北海道へ、6月に沖縄本島へ、それぞれ10日間の旅に出ました。頭で知っていることでも、実際に歩いて、見て、車や原付で移動してみて、そうやって出来るだけ実感に近いところに言葉を落としていけたらと思っています。
・ベトナム戦争についての本
最近は、開高健『輝ける闇』『夏の闇』、石川文洋『戦場カメラマン』などベトナム戦争についての本を読んでいます。ディランなどはもちろん、黒人音楽やアメリカン・ニューシネマなどベトナム反戦運動の影響を強く受けたとされるカルチャーを10代後半ごろから好んで観たり聴いたりしてきた自覚があるのですが、カルチャー面だけを消費している自分の立場とは何ぞやと考えることが多かったからです。それは沖縄に行ったことも大きく関係していると思います。そうしたカルチャー側だけを本土にいて消費できてしまうこと自体を考え直さないとなぁと思っています。ほんとうに今更ですみません…という感じなのだけど…。最近、盛り上がっているアジアの音楽に対してもそうした視点を失わないようにしたい。
・小野和子『あいたくて ききたくて 旅に出る』
50年以上、東北地方の村々を訪ねて昔話や民話を聞いて回っている小野和子さんの1冊。自然の中や人の心や人間関係の中の割り切れない箇所を、昔の人はフシギな話に溶かしていたのかなぁなんて感じるのですが、この本を読んでいるとそれは遠い昔の話ではなくて例えば祖父母の子どもの頃などのごく最近のことだったことが伝わってきます。時代の発展とともにそういうフシギなものがどんどんどんどん綺麗で透明で分かりやすいものと置き換わってるのだと感じる。それってどうなのだろう。昔の方が…という話ではなくて、人の認識の仕方がどう変わっていっているのかに興味があります。小野さんが登場する濱口監督の映画『うたうひと』が近所の下高井戸シネマでやっていたのですが、見逃してしまったのがとても残念。
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冒頭の続けることができて良かった、と言う話の詳細はまた別のところで形にできればと思ってるのですが、少しだけ触れると、店舗となるテナントを借りたのが2020年12月。3年間の契約だったのでちょうど1年前の2023年12月にその契約が終わりました。その際にいろいろな事情があってとりあえず1年の契約更新となりました。つまり今年の12月迄。
今年1年は、なんとかその諸事情をクリアしてこの場所でお店を続けるべく、相談やお願いをして回っていました。そしてなんとか来年もお店を続けられることになった、そんな1年でした。
続けるために大きな決断をして、金銭的な面で言うとこれまでの賃料の3倍以上の額を毎月支払わないといけなくなってしまいました。とりあえず11月と12月は払えた。ということは今までの3年間どこにお金が消えていっていたのだろう、、とフシギになるのですが…。これまでのこともこれからのことも考え過ぎると本当に吐きそうになるので、あまり考えないようにしています。
それに伴って、お店の2階部分の8畳ほどの小部屋を、バックパックブックスの隣のomiyageの店主・ロボ宙さんと一緒に使えるようにしました。これから小さなイベントや上映会など企画していく予定です。もしご興味ある方がいましたらぜひ覗きに来てみてたり、声をかけてもらえたりしたら嬉しいです!
最後の2ヶ月ほどはこの1年間の経緯の報告も兼ねて、大阪、つくば、などなどに人を訪ねていました。なんというか、すこしだけボーナスタイムみたいな感覚で、大事な人とくだらない話をしながら酒を飲めて本当に良かったなぁという日々です。来年は、今年遠ざかってしまった登山、ずっとできていなかったラップにきちんと向き合いたいと思います。何ができるか、どこへ行けるか分かりませんが、側から見れば格好の悪くてみっともない踊りを、無様なりに踊れたらなぁと思っています。
今回の機会をいただいて、なんだか自分の中に2024年が定着していく感じがしました。ありがとうございました。読んでくださった方とも植田さんとも2025年どこかでお会いできましたら!
2024年は、外に出ようと思っていた年で、
店があるのに、それを置いといて、
自分を含めて、“ヌルい”とすぐ化けの皮が剥がれてしまうのだ。
そして、店の外に出ると「無名である」
そう、結局のところは商売なのだ。飽きない商いを、
メディアやSNSが拾えない、各地の店の空気を知ったことや、
最後に、
1月4日、土曜日。サブスクリプションの無料期間が終わる間際に、ケリー・ライカート監督作品『オールド・ジョイ』を観た。マークとカートの2人が車で走る。ながれる景色、ただよう煙、車内の会話。現実世界とは切り離された時間。生活に捕らわれず、定式化された幸福像への疑念を隠さないカートの危うさが際だつ。戸惑いながらも突き放せないマーク。ときにゾッさせるが、大きな出来事はなく、時間が進んでいく。
ボニー・プリンス・ビリーことウィル・オールダム演じるカートが助手席でマリファナを一服するところで音楽スーッとはいってくる。ヨ・ラ・テンゴによる演奏は、まさしく劇伴。劇に伴いながら走る音。来月発売のサウンド・トラック盤を買うべきか……迷っている。
ラストシーンで街を彷徨するカートの姿が目に焼きつく。生々しさのあるカメラワークが、同じように街をさまよう主人公をとらえる『荒野にて』を思い出させた(エンディングで流れるのはボニー・プリンス・ビリーの「The World’s Greatest」)。
今日も「2024年を振り返る」の公開が続くため、変則的な店日誌。9時公開にしてるけど、店の営業は13時から19時まで。今日から3日間はその時間で、定休日の7日(火)以降は通常営業。2025年もピープル・ブックストアをどうぞよろしく。
ではでは、13時からご来店を待ってます! 本の買取も大歓迎です!
千葉県最南端の南房総市に住んでいる前田浩彦と申します。
PEOPLE BOOKSTOREと同じ天久保地区でgalleryYという
2024年を私が振り返るには、ちょっとだけ2022年から振り
少しの間、お付き合いいただけたら幸いです。
・・・・・・・・・・・・・・・
2022年の冬になる頃、病気が見つかりました。
展示が続く時期だったので、体調の変化は疲れからかな?
休廊該当期間にご予約頂いていた作家さんたちに私の状況と延期も
申し訳なさでいっぱいの気持ちでした。
目まぐるしく変化していく日常において、
そして、未来についての具体的な約束ができない中でも「
この場所を通して出会うことができた人たちが、
ありがとうございました。
そして、2024年。
ゆっくりですが、
何度か展示してくださっている作家さんを筆頭に初めてご利用くだ
作家さんたちのあの日の続きや初めて展示される作家さんのスター
「そうそう、これ!これ!この感じ!!」
病気をして良かったなんて1ミリも思っていませんが、
それだけは良かったのかなと思っています。
2024年はギャラリーの大きな窓から外の景色を眺めることがで
季節の移ろい、そこに反射して映る展示された作品たち。2023年には見ることが叶わなかったこの窓からの景色を存分に
ゆっくりのんびりでも良いからこれからもこの場所を続けていきた
粛々と誠実に。
そして心からの感謝を込めて。
・・おまけ・・
ここまで書いておきながら、なんだか内容が暗い・・・
なので、今年の私のご機嫌な出来事を3つだけ挙げておきます。
1.ほろ酔いの帰り道、歩道のラインがスタートラインに見えて「
2. 相変わらず酒場が好きです。飲酒というよりは、
飲み過ぎは良くないので、「今は泣く泣く4杯までと決めている」
3.耳鳴りがするので、
色々振り返りましたが、結局のところ、
皆様が笑顔あふれる1年でありますように!!
2024年を振り返る
京都在住。魅惑のオンラインショップ「パライソレコード」の野田晋平といいます。
今年は戦争、災害、政治、スポーツの祭典、芸能人・アーティストの訃報など、世の中は喜怒哀楽激動に流れて、その勢いに飲まれるように、日々立ち止まれる事なくあっという間に終わってしまった1年だった。さて2024年を振り返ってというお話をいただいたものの、一個人としては正直あまり思い出せることがない。「記録より記憶を」なんて思っていて、普段あまり写真を撮らないので、携帯に残された写真は8日分の出来事のみだった。肝心要の記憶力に足を引っ張られてしまっている。
流行り病への警戒も薄れて、元の生活に戻り始めたのがここ1、2年。私の店にも少し変化が訪れた。2016年からオンラインショップを立ち上げ、闇雲にやってきた初期を経た時にコロナ禍に突入。ステイホームが後押しとなったのか、この時期から売り上げが伸びていったが、今年はついにそれが止まってしまった。レコードや送料の値上げ、お客さんが実店舗へ戻っていったなど、色んな外的要因を考えていたけれど、つい最近「近年、パライソ色とは異なる空気、雰囲気も増していると感じています。」という貴重な意見を頂き、自覚はあったが、そこもそうだよなと、真摯に受け止め、また一から改めてやるしかないと思っている2024年年の瀬です。
とまあ、カタい話になってしまったので、本当にどうでもいいユルい話を。日々時間がない生活を送っているので、ご飯を食べる時にだけ、映画やドラマをアマゾンプライムで観るという映画ファンからしたら確実に非難されるバチ当たりなやり方で、今更ながら「ツイン・ピークス」を数ヶ月かけて観た。内容の感想はさて置いておき、ノーマ役のペギー・リプトンのメガトン級の色気たるや!彼女が1968年にリリースした唯一のレア盤アルバム「PEGGY LIPTON」が改めて、心のウォントリスト上位に急上昇したのです。そんな中、元夫であったクインシー・ジョーンズの訃報が。クインシーなしでは「キング・オブ・ポップ」マイケル・ジャクソンの誕生もなかったかもしれません。本当にお疲れさまでした。
そして今、ヴィム・ヴェンダース監督「PERFECT DAYS」を、相変わらずバチ当たりな方式で観はじめている。何かトラブルが起きそう。この人が思わぬストーリーへと展開させるのかなど、気を張って観ていたが、半分くらいまで観たところ、只々おじさん(役所広司)の日々の丁寧なルーティーンが美しいカット割と音楽で映し出されているだけで、自分の妙な勘繰りがことごとく、そして気持ちよく裏切られて続けている。もういっそこのまま何事も起こらず、穏やかに終わって欲しいという期待さえ芽生えてきた。今年はもう続きを観るのはやめようと思う。
※冒頭の写真は2024年1月8日大阪の高津神社で久々に復活した「とんど祭り」での木村充揮さんのライブ。
年末年始はなぜかカウリスマキの映画が見たくなる。2024年のメモをひらくと、1月2日に黄金町のジャック&ベティで『枯れ葉』を見ていたようだ。「夜のあとに朝がくる、というような当たり前のことが描かれているのだけれど、それだけでなぐさめられた」とある。何もうまくいかなくても、ただ明日がくるという生きている人間の現実が映画になっている。
その少し前には『浮き雲』の感想メモ。「暗転が多い、短いシーンのぶつ切りをつなぎ合わせて物語をつくる。悲しいシーンなのに笑える、犬が出てくる、基本的には無表情で棒読み。タバコを吸いまくる、酒を飲みまくる、哀愁と悲壮感と不運とユーモア、そして少しの希望。たたみかけるような不運、落ちて落ちて落ちて少し上がり、浮き雲を見上げて終わる」。
いい映画を見てもすぐに忘れてしまうが、メモを読むとなんとなくシーンが浮かんでくる。
お正月は『キノ・ライカ』をまたジャック&ベティに見に行こうかな。
今年は何ができただろうか。そうだ、雑誌『Sb Skateboard Journal』で新しい連載をはじめた。晶文社の『就職しないで生きるには』を自分なりに考えてみようと思って、編集長の小澤さんに相談すると、やってみようと言ってくれた。自力で商いをはじめ、知恵を絞って暮らしている人びとに、働くことの実情を聞くインタビューシリーズで、タイトルは「WORK!」。
初回に中野活版印刷店の中野さん、5月発売号ではPEOPLE BOOKSTOREの植田さん、11月発売号では古書コンコ堂の天野さんに取材をして記事にさせてもらった。一万字と格闘する楽しい時間だった。思い出す言葉がいくつもある。
同時に写真家を取材する不定期連載「PHOTO!」もはじまり、ウクライナのスケーターを撮影している児玉浩宜さんに話を聞くことができた。戦争のなかで生活をすることの現実は、直接見て聞いた人にしかわからない。
当たり前なのだけれど、就職しないで生きている人は自分自身の感覚をみがいて、日々さまざまなことを自分で決めている。そうすることでしか体得できない働き方というものがあって、それが良いとか悪いとかではなく、何かよくわからない組織や集団の都合に左右されない生き方が存在していることに安心する。こういうやり方もあるんだと思えるだけでいい。拾い物の言葉をこねくり回したようなつまらない記事があふれている今だから、実践した人間だけが語れることを聞いていきたい。
面白いなと思うのは、今年ライターとして依頼を受けた仕事のなかに、大きな企業につとめている人たちへの取材も多かったこと。就職しないで生きる人の話を聞きながら、同時に就職して生きる人の話もたくさん聞いた一年だった。サラリーマンだからこそ、自分の思う通りにはいかないという予定不調和を楽しみながら、置かれた場所で全力を尽くすという働き方。委ねるところは委ねて自分の仕事はしっかりやりますよというサッパリした人が多かった。働くことについての考え方を、こうして天秤のように両極から探っていくことは自分にとっても面白い経験になっている。
季節は一年を色分けして見えやすくしてくれる。わたしの場合、春は精神的に不安定になりやすい。花粉もひどいし、なんとなく嫌なことが続くような気がする。5年ぶりくらいに会った友だちに、「まだZINEとか作ってるの? それって趣味みたいな感じ?」と何気なく言われたことをいつまでも思い出してしまったり、かつて仕事を受けていた制作会社の編集者が社内でハラスメントめいたことをしていると耳にしたり、取引のある企業が人権を損なうような行動をしていたり。自分が正義ともまったく思っていないし、正義なんていちばん疑わしいものでもあるのはわかっているが、ただ気持ちがしぼんでいく。
落ち込みが発生したときに助けてもらったのは、筋トレと有酸素運動(リングフィットとフィットボクシングで5キロ痩せて肩こりが改善)、ラジオ(霜降り明星のオールナイトニッポン)、会話(夫や友だち)、料理(焼き菓子にはまった)、それから寝ること(一日平均8時間)。
夏を好きになったのはここ数年だと思う。生きのびるだけでも大変な季節になってしまったけど、雨が降り終わったらプールに行って、夏の果物と野菜を食べて、花火の音を聞いて、できるだけ夏を味わうようにしていたらだんだん好きになっていた。秋と冬はもともと好きなので苦手なのは春だけ。でもべつに好きにならなくていい。
プールに行くようになって泳ぐことと書くことが似ていることに気づいた。書くことはとても苦しく、疲れるものでもあり、進んでいる方向も、そのやり方も、すぐにわからなくなる。けれど、なぜかまた水に入っていく自分がいる。はやく進めなくても、きれいに泳げなくても、そこでは大きな力に縛られず、自由に動くことができるから。
5月は『writing swimming』というZINEを10冊だけ手刷りして文学フリマで500円で売った。2025年はここ10年で書いてきた雑文を一冊にまとめるつもりでいるけど、これもまた長く苦しい作業になりそうだ。
韓国のアーティストのイ・ランは自分が描く小説のなかで「明日がなかったら、今この瞬間に出来ること」をやるのだという。「小説の中でなら、相手にコップの水をぶちまけることが出来るから。そうやって、自分の話をすることで自分になれるんです」。インタビュアーはこう返していた。「小説の中で、自分になるんですね」。みんな自分になるために書いている。
読んだ本についても書きたいけれど、いつもあっちこっち読んでは途中でやめ、読みきらないうちにまたべつの本を読んで、そうこうしているうちにまた本を買い、なんていうことをくり返しているので一冊の本についてしっかりと語ることができない。本はそれぞれが単体に存在しながらも、その内容はゆるやかにつながって境界線は曖昧になり、わたしは自分の本棚という大きな一冊の本を読んでいるのかという気分になる。何かに悩んでいるとき、いつも自分に必要な言葉はその本のなかにある。
まだ読んでいない本について考えるのも好きだ。
今、本棚には『黒人文学全集』(全13巻)と『女たちの同時代 北米黒人女性作家選』(全7巻)と『ラングストン・ヒューズ自伝』(全3巻)などがそろっている。現代の黒人作家の小説も、まだ読んでいないタイトルがいくつもある。これから少しずつ読み、自分が惹かれてきた黒人文学について感じたことを書いていこうと思っている。
坂崎麻結(ライター)https://mayusakazaki.com/
テンチョー土田 映画記録2024
2024年は劇場で27本しか映画を観ていない。
あまりに少ない鑑賞は、
身体が一つで全部の映画を観ることはできないので、
2023年12月26日『PERFECT DAYS』
この映画が全ての始まりで、この映画を観た次の年の初め、
「あの『PERFECT DAYS』って映画どうだった?あれひどいよな?」
お互い店舗も隣同士で住む場所も近い。
おかげで植田さん、
新作の感想全部忘れました。あの時僕『枯れ葉』
野菜も買い忘れたし。
2024年1月3日『枯れ葉』
面白かったような気がする。
1月24日『ファースト・カウ』
ずっと観れていなくて、やっと観れたという感じだった。
画面が真っ暗でほとんど何も見えない映画だった。
2月7日『サンセバスチャンへ、ようこそ』
この監督の新作はまだ楽しみに追っかけていて、
退屈な映画だった。
2月13日『夜明けのすべて』
監督のファンで、観に行った。
映画は素晴らしく、
一方ケリーライカイトの映画はたぶんデジタルのカメラで撮ってま
店の厨房内、
2月20日『瞳をとじて』
こういう映画をたまに観られる幸せを噛み締める。
つくば市のシネコンにそれなりに人が入っていてよかったと思った
4月3日『ルナ・パパ』
シネマブルースタジオ大好き。真っ暗になります。
5月21日『クイーン・オブ・ダイヤモンド』
ただ木が燃える映像を十数分観られる幸せ。
5月22日『悪は存在しない』
公開当初限られた少数の映画館(つくば市には来ない)
最後までいまいちのることができなかったのは、
鹿が綺麗だなとかそういう感じだった。2回笑わせてもらった。
さらに集中できなかったのは、
僕はこの映画を観たあとに2本のさらに素晴らしい映画を観た。
『三度目の、正直』『スザンヌ、16歳』
2本とも劇場はがらがらだった。それが不思議だったな。
素晴らしいと思う映画に幸運にもたまに出会うことがあるけれど、
観ることのできなかった映画に思いを馳せながら、
『悪は存在しない』はのちにつくばでもかかった。
渋谷で観たので終わった後、老舗の台湾料理屋故宮へ行った。
(写真は故宮の素晴らしい裏口です)
6月13日『違国日記』
漫画原作ものということを知ったのは観終わってから。
6月19日『蛇の道』
自身の旧作のリメークらしい。
ものすごくよくできた映画で、
メインビジュアルで引き摺っているあれはぜったいコントラバス。
6月某日『胴鳴り』
観れなかった。
6月28日『左手に気をつけろ』『だれかが歌っている』
御用だ御用だ!!
タイトルがアレなのとチラシのデザインが素敵すぎるので、
助監督の方と横浜の展示でご一緒したときにしゃべることができて
7月8日『ザ・ウォッチャーズ』
観始めるまでお父さんの撮った映画かと思っていた。娘だった。
めちゃめちゃつまらなくて笑えた。居酒屋の主人と画家と一緒に観に行けたのはいい思い出。帰り道、
7月14日『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』
シネプレックスつくば二本立てのうちの一本。
たくさん笑ったなー。
2025年の2月にはこの人の特集がユリイカで組まれるらしい。
7月14日『メイ・ディセンバー ゆれる真実』
シネプレックスつくば二本立てのうちの一本。
けっこう重厚な作りで(二本立ての一本目と比べるとだけど)、
まさかのピープル植田さんが観ていて盛り上がった。
7月17日『フェラーリ』
勝手にシネプレックスつくば二本立て第二弾一本目
この映画を観る前に、ネットフリックスで『
『フェラーリ』
7月17日『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』
手にプレックスvol.2 二本目
近くのお蕎麦屋さんで昼餉後に観た。
まじで最高。言うことなし。
8月2日『ヨーヨー』
シネマブルースタジオ大好き。前半長かったな、、、。
8月28日『墓泥棒と失われた女神』
もうずーっと夢。画面のふちとかぼやけてて、
夢みたいな話。自分好きそうだなーと思って一生懸命観たけど、
9月14日『ナミビアの砂漠』
やっぱりあのピンク色のチラシ、頭から離れないし、「みろ〜」
10月1日『Cloud』
上映時間がけっこう遅かったので、
素晴らしかった。とにかく怖いしとにかく笑える。縛られた恋人(
最後のシーンは『熱海の捜査官』。
10月6日『HAPPYEND』
『ナミビアの砂漠』
どうしても監視カメラみたいなショットというか、
久しぶりにムーヴィックスのひと部屋を独占できたので、
ラストシーンはどうしても間違っていると思ったけど、
11月某日『ビートルジュース ビートルジュース』
観れなかった、、、。
11月14日『リトル・ワンダーズ』
黙って『ビートルジュース ビートルジュース』観に行けば良かった、、、。
11月某日『トラップ』
観れなかった。お父さんの新作。
11月27日『ルート29』
この映画を観られたことで今年も映画観たなという気持ちになれた
何度か他の映画の予告で流れていたけれど全く興味を惹かれず、
だけど映画が始まった瞬間から最後までずっと幸福だった。
人間の顔面の面積の何十倍ものデカさでみる綾瀬はるかの顔、
カモンカモンとアンナの出会いも。
とにかく宣伝がひどいのでだれがこの映画観るんだろうという感じ
11月29日『ドリーム・シナリオ』
途中まで全然面白くなかった。
けれど突然爆笑させられたりして、
12月24日『浮き雲』
観れなかったです。
12月25日『春をかさねて』『あなたの瞳に話せたら』
主人公は学校の優等生なんだけど、
素晴らしい映画だった。必見。
また来年もできるだけ映画を観たいと思います。劇場以外では、
それではまた、年始にスーパーで。