2013/11/28

雪がふっている



『夜の木』タムラ堂からあたらしい絵本が届きました。
そのタイトルは『雪がふっている』。白いページだけ、だけれど味わい甲斐のある、不思議な一冊です。
本当にどこを開いても白、白、真っ白。ページの下に少しの呼びかけ。
手触りの良い紙にうつくしい活字が踊ります。

そとは 粉雪が舞い いちめんの銀世界 その さむいことといったら!

こんな言葉に導かれて、記憶に身を委ねてみます。
いつか見た、あの日の雪景色がぼーっと浮かんでくる。あれ、真っ白じゃないな、なんて思ったり。
雪の日の冷たさ。底にみえる灰色のコンクリートと白に交じる茶色の土、泥。枯れた葉っぱ。
どこにも行けずに、家にこもる。ストーブの暖かさ。コーヒーの香り。
そんな風景がみえたような、みえないような。

わずか数分。
この絵本の持つ、不思議な力がはたらく時間。
しんとした静けさをじっくりと味わってみてください。

『雪がふっている』。
本日よりPEOPLEでも販売しています。

***


『雪がふっている』

レミー・シャーリップ 作
青木恵都 訳
装丁・デザイン セキユリヲ

11cm×14cm  並製 24ページ
活版(亜鉛凸版)印刷
縫い合わせ製本
スリーブ・ケース入り
定価(1,000円+税)
発行 タムラ堂

この小さな本を開くと、何もない真っ白なページ。
最初のページの下の方にこんな一行が。

   みてごらん 雪がふっている

目をこらすと、白いページの中に、雪の降りしきる風景が…、
そしてページを繰っていくと、北国の暮らしが見えてくるはずです。
絵はありません。白いページだけです。
それにしても、これが絵本? そうです絵本です。空想する絵本。
手のひらに収まる小さな白いページの中で、
心がどこまでもどんどん広がっていく、
そんな喜びを感じさせてくれる特別な「絵本」。
静かな幸福感に満ちた不思議な読書体験です。

作者のレミー・シャーリップ(1929~2012)は、
ニューヨーク生まれのアーティストで、
絵本作家としてもたくさんの魅力的な絵本を残しています。
本書は、作者と親交のあった音楽家、ジョン・ケージに捧げられました。

さまざまな映像や音が氾濫している現代生活において、
あたかも<沈黙>を聴くかのように、
<白いページ>を見つめることの大切さと素晴らしさを
気づかせてくれる画期的な絵本です。

活版(亜鉛凸版)印刷。柔らかい手触りの本文紙。
手縫い製本。半透明のスリーブ・ケース入り。
真っ白な雪の世界と呼応する繊細で美しい造本です。 


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