CDをプレイヤーにセットする。
ギターの音が鳴る。西村卓也さんが歌いだす。
だれも知らない道を通って
だれも知らない野原にくれば
太陽だけがおれの友だち
そうだおれにはおれしかいない
おれはすてきなひとりぼっち
谷川俊太郎の「ひとりぼっち」に、西村さんが曲をつけて、歌ってる。
なぜだかもう。胸がすくような気持ちになる。そうだそうだ、おれもひとりぼっちだな、なんて思えてくる。
一つ一つの言葉がよく聞こえる。ギターの弦がはじけて、音が鳴ってる。
それだけだ。それだけだからか、すいすいと吸い込める。
そのあとにも、石原吉郎、草野心平、犬塚昭夫、金子光晴、山之口獏なんか(*)の詩がならぶ。
そしてさりげなく、ひかえめに西村さんの詩も交じる。その曲がまた良い。
「夜風」に吹かれて、呑みたくなる。
月を見ていたら
おれが
いなくなっちまったよ。
そこにあるのは、
金色のウイスキーと
銀色の月
だけ。
ああ、忘れちゃいけない。
五曲目の「愛情」がすこぶる格好良いんだ。ベースがうなる。スイングしてる。
たまらない。そこに乗る言葉も鋭い。これは金子光晴の詩。
俺は、逃げたがってるのだよ。
つながりのあるなにもかもから。
血のつながりから、友情から。
手廻りの品、詩や、説法から。
てまわりのしな、しや、せっぽうから。
ここを声に出すとすごく気持ちが良い。
詩歌をいくつも紹介したくなってくる。
ここを声に出すとすごく気持ちが良い。
詩歌をいくつも紹介したくなってくる。
ここにある詩はどれも良い。西村さんが選ぶ言葉はどこかさびしい。ひとりぼっち。
愛嬌がある。だれかを求めるけれど、なかなか素直にもなれず。今日もひとりで杯をかさねる。
なんてイメージも浮かんでくる。すこし悲しいけれど、笑えるのも良い。
いやいや、笑えるから、だいぶ良い。
***
16編の詩が、上質な函本に収まって。
最後のページに音源が付いている。
西村卓也さんの『鰯』は、とても贅沢で我儘な、何処にもなかった代物です。
ボクの書いたことなど気にせずに、出会ってもらえると嬉しいなあと思います。
赤い疑惑のアクセル長尾さんのレビューもぜひ読んでみてください。本当に素晴らしいお仕事なので。
オレは『鰯』を古書店として扱えて、幸せだなあ。
ああ、店をはじめて良かったなあ。
そんな風に、思っています。
(*)それ以外には、中桐雅夫、淵上毛銭の詩も。「なんか」とは失礼しました。
(*)それ以外には、中桐雅夫、淵上毛銭の詩も。「なんか」とは失礼しました。
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