2025/02/28

2/28 店日誌

たしかに、コロナ禍は去ったのかもしれない。今は過去を振り返るより、前を向くべきかもしれない。しかし、あの時期に、何が起きたのか。何が変わり、何が変わらなかったのか。その答えはまだ出ていないだろう。(大竹聡)

2月28日、金曜日。もう何年前だろうか。北浦和でタクトくんと打ち合わせ、早々に終わってさあ飲もう! ……が、街を歩いても店がやってない。やってても酒は出してない。仕方ないから、コンビニで買った缶ビールでとりあえず乾杯。コウヘイくんがきたら公園に行きますか。いいね、それがいい。いざ3人で公園の広場に向かうといるわいるわ、似たような小集団が! 2人、もしくは3~4人で酒を飲んでる。あの光景はなかなか印象深い。

また別の日。タクトくん、カワイさんと阿佐ヶ谷で落ち合い、本を納品。さあ飲むか! となっても、同じ状況。小声でヒソヒソ、ソワソワ、ドウシヨウ。けっきょくカワイさんの運転する車の後部座席で飲み出して、タクトくんの家で仕切り直し。やたらに盛り上がっていろいろ話した。夏の日の記憶。

大竹聡『酒場とコロナ あのとき酒場に何が起きたのか』をぱらぱら読んでいて、数年前のことを思い出す。マスクを付けて、外して、移動して。距離をとって小声で話す。頻繁に消毒。うがい。あの頃のこと、みんな忘れちゃったのか。オレは正直忘れかけてた。

今日も書籍に入荷あり。オンライン・ストア〈平凡〉にも動きあり。

2025/02/27

2/27 店日誌


オクノさんにしか出来ない音楽がある。コーヒーも同じで、同じコーヒー豆でも、淹れる人によって味は違う。そして、オクノさんのライブの時間の流れ方がある。(豊田道倫)

2月27日、木曜日。オクノ修『オクノ修70歳、拾得ライブ』を聴く。針を落として最初に聴こえるギターの音がいい。座って、レコードから流れる音楽に耳を傾けるだけで、満たされるものがある。素朴で特別。ありのままの存在を感じさせてくれるからだろうか、気持ちがじわりと高まる。豊田道倫さんが書く通り、この演奏でしか体感できない時間の流れ方を、しみじみと感じさせる。

本屋と喫茶店。かけ離れた業種のように思えるかもしれないが、同じ小商いには違いない。日々休むことなく黙々と同じ仕事をこなしながら、だれることなく張り詰めた店の空気を保ち続ける姿には背筋を正される思いがする。(堀部篤史)

オクノ修さんは〈六曜社珈琲店〉地下店の店主で、京都のある種の文化を象徴する人でもあり、自立した大人。シブいのにじじむさくなく、軽やかな気配を漂わせる。書いていて、ジャケット写真がもったいない気がする(実物はもっと若々しくてお洒落なのだ)。

さあ、今日も開店。書籍はもちろん、音源にも入荷あり。気が向いたらご来店を。

2025/02/26

2/26 店日誌

2月26日、水曜日。阿佐ヶ谷の〈古書コンコ堂〉で矢吹純個展「PUZZLING」が始まる。今日から3月23日(日)までの会期で、週末ごとに矢吹くんも店にいるかもしれない。その辺りの詳しいことはコンコ堂のインスタグラムかツイッターでご確認を。店主の天野さんによれば、「3回目となる矢吹くんの個展。今回は最近描いているというアクリル画を中心に、ペン画の小品もありという構成。今までの物量で店中を埋め尽くす展示からは一転し、控えめにまとまっています」。

不具合があれば関係終了。各自すみやかに次の仕事、居場所を探すべし。ってのがアメリカ(資本主義)社会の現実だとして、この国の派遣労働の現場も限りなくそれに近い状態になっている気がする。効率第一。心情などは介入させず機械的に働かせるべし。映画『ブルータリスト』を観て、考えたことの一つ。

道端でモドキプロに会って、だらだら喋りながら店に来た。そのときにすれ違った人が今日最初のお客さん。近所を歩いてる人とは知り合いになりやすい。

今日明日、明後日は15時開店。お暇があれば、ご来店を。

2025/02/25

2/25 雑記

思ってたよりずっとヘヴィで、もろくも崩れ落ちていく人間の姿を見ていて、イヤになった。映画として嫌いなわけじゃないのだが、こりゃなかなか……と呟くのが精一杯で、しかと受け止められたとは言い難い。ドラッグ摂取、ジャズ演奏に合わせて踊りまくるシーンに迫力があり、エイドリアン・ブロディの鼻の穴のデカさに驚いた。なにより、建築物の持つ力──権威と欲望、それらへの呪詛を含む──に畏れいる。

信仰が大きなテーマになった映画『ブルータリスト』を監督したのはブラディ・コーベット。1988年生まれの36歳らしい。

2025/02/24

2/24 店日誌

2月24日、月曜日。「マダムギター長見順(vo+guitar+piano) /岡地曙裕(drums) / ワダ マンボ(vo+guitar) /アンドウケンジロウ(clarinet+sax)ブルースやカリブ音楽など、ルーツミュージックの旨味と臭みを知り尽くした4人による、超ライブ・バンド」であるペンペンドンピーのライブを3月23日(日)に開催する! 会場は天久保一丁目〈aNTENA〉。DJにはsoul bonanzaことヒデ・モリモト、ゲスト出店の〈つくば食堂 花〉はこの日だけの特別メニューをつくってくれる。ぜひ、遊びにきてほしい。

ファンキー・ブルース経由~西アフリカ・ギネア行き、インド・カリプソ、甘茶ソウル・インスト、三連リズム&ブルース・バラッドなどなど…聴かなきゃわからない雑食サウンド。

ペンペンドンピーの最新作『9AM』をはじめ旧譜3タイトルを店頭とオンライン・ストア〈平凡〉で販売中。まずはどれから? と聞かれたら『ppdp』か『シブキューフ』、その次に『ジャ、ジャンクション』を、と応えている。

昨日、数年ぶりに来てくれたアメリカ在住の女性と話していてびっくり。息子さんと自分の誕生日が同じ、2月24日だった。そのうちに会えると嬉しいなーと思うけど、その日はくるだろうか。

今日も通常営業! 100円~300円~500円の本をたくさん追加してます。

2025/02/23

2/23 店日誌

2月23日、日曜日。いやー寒い! 朝晩の冷え込みはかなり厳しい。日中の数時間、日向にいればいくらかマシだけど、かなり寒い。冷たい。肌が痛い。そんな時でもお客さんは来てくれる。店周辺でよく顔を合わせる台湾からの留学生、何冊かの会計をしながら質問される。「日本の人にとって沖縄はどんな場所ですか?」……うーん、難しい。行ったことがないのだけど、と前置きして、正直ほとんどが観光目的。暖かくて海がきれい、楽園的なイメージで出かけていく人が多いんじゃないかなあ。

いつ、誰が、どう仕向けたか分からないけど、多くの人は沖縄は楽観的な土地なんだと思ってる(自分も含めて)。でも、本や映画で知る歴史、人から聞く話に触れると、言葉がでない。うまく表現できないから、なかなか近づけなくなる。それじゃいけないんだけど。モヤモヤしたまま返事をして、いっそう混乱させてしまった。

学生のような若者2人、ひとりはカセットコンロスのLPを、もうひとりはスペクテイターを何冊か。均一価格の文庫、単行本と組み合わせて買っていく。イベント/パフォーマンス的な動き、見せ方はできずとも、気にかけてくれる人はいる。地道にやっていくしかない。

今日は短縮営業になる予定。18時まで開けられたらいいのだけど。

2025/02/22

2/22 店日誌

2月22日、土曜日。あれ、暖かいの? 午前中に散歩がてらスーパーまで歩いていくと、ほとんど寒さを感じなかった。冬仕様の重ね着をしているとはいえ、陽の光にあたっていると公園でゴロンと横になりたくなる。ピーチクパーチク、鳥の声も春っぽい。梅の花も箇所によっては咲きはじめてる。数日間の強風が収まって、一気に季節が進んだのかな。と言って油断してると朝晩の冷え込みに体調を崩しかねない。まだまだ、しばらくは用心が必要だ。

二人がユニーク過ぎたのか、時代が未成熟だったのか。常に未成熟なのが時代というものであり、その未成熟さの故に、時代は一人の人間を一方では挫折させ、他方では、余人によってなし得られない力量を発揮せしめるのか、……結論を急ぐのはひかえよう。(山口昌男)

山口昌男『挫折の昭和史(上)』で見つけた上記の箇所でウームと唸った。常に未成熟なのが時代というもの、それがズバリ的確だと思えるのは何故なのか。年を重ねながら考えていくべき事柄じゃなかろうか。

今日明日は13時開店! オンライン・ストア〈平凡〉にも動きあり。

2025/02/21

2/21 店日誌

どこに出かけるにしてもそこそこ空いてる所が好きな自分としては、今のインターネットソーシャル空間は大混雑観光地みたいな居づらさで、もともと好きだったけどもういいかなと思う瞬間が増えた。(東郷清丸)

2月21日、金曜日。オンライン・ストア〈平凡〉内の読書日記にも書いたのだけど、主に生活者でたまにミュージシャンの東郷清丸さんが月一回発行している『かいほう』が面白い。SNSが辛い……なんて声はよく耳にしても、自分なりのメディアを作って、他者の思惑にできるだけ捉われず発信する人は多くない。機械的に速く、広く伝わらなくても、少数にはしっかり伝えられる。アナログだからいいってわけじゃなく、東郷清丸にはこの方法が合っている。

河野友花さんが発行するペラ、〈山の湯〉田口さんの定期便、いま届くのを楽しみにしている読み物は、どことなく似た雰囲気を持っている。焦らず、ごまかさず、言葉が選ばれるから安心して読めるのだ。

「ランダム・ミュージック」とは、音高が書かれた36枚のカードと音符の長さが書かれた16枚のカードをあらかじめ用意し、文字通りランダム(行き当たりばったり)に引き抜いたカードの組み合わせで作曲・演奏するという実験作品。

惹句にそそられて注文してみたロバート・コックスのカセットテープ3種が入荷。再生して、カセットやCD-Rは実験のメディアだと納得する。各作少数入荷なので、気になる方はお早めに。

今日は15時、明日明後日は13時開店。お暇があればお出かけください。

2025/02/20

2/20 店日誌

歴史のダイナミズムの中では無意味に圧殺されてゆくものたちのエピソードが、どこかの時代にむけてごくまれに、そのかすかな声をとどけて来たりする。語れない言葉や、うたえなかった唄のように。(石牟礼道子)

2月20日、木曜日。熊本の文芸誌『アルテリ』十九号が到着。暮しの手帖社の書籍のような表紙画を手がけたのは坂口恭平。飾り気なく、ここにいて、生きている。そんな在り方を雑誌として実践できているのは驚異的。「エッセイにようにはじまる小説があれば、小学校の頃の記憶をたどる人、自らが当事者である裁判の過程を記す人もいる。テーマに大小はあれ、切実な生の軌跡、痕跡が刻まれているとは〈平凡〉に書いた解説文から。

入荷後にすぐ品切れた、松野泉『あそぼ』(LP)が再入荷。同時に注文した作者不明の日記『創作』、オクノ修『胸いっぱいの夜』にもご注目を。地味ながら存在感のある本、音源をつくっているのは〈円盤〉の田口史人さん(円盤〜黒猫を経て、現在は山の湯が拠点)。

今週末の3連休も通常営業! と書いたけど、23日(日)は早仕舞いの予定。はやくて17時、おそくて18時までの営業になると思います。確定次第、あらためてお知らせするので、ちょいとお待ちを。

今日明日は15時開店! 上記以外にも音源、書籍に入荷あり。

2025/02/19

2/19 店日誌

2月19日、水曜日。定休日にオンライン・ストア〈平凡〉やメール通販の注文があると嬉しい。チラシなどを封入して梱包したのち郵便局に持っていき、発送。店で購入されるのと、通販で遠方の見知らぬ方に買ってもらうのは手ごたえが異なる。埼玉、北海道、大阪、鹿児島、東京、秋田……。いろんなところで〈平凡〉を見てる人がいるってのが不思議だし、ありがたい。見るだけ、読むだけも大歓迎。暇つぶしにつかってほしい。

今読んでいるのは、山口昌男『「挫折」の昭和史(上)』、石川佳郎『妻の温泉』は買ったまま読めてない。書店で見つけた平岡正明『昭和ジャズ喫茶伝説』は遠からず買うだろう。梅崎春生/荻原魚雷(編)『ウスバカ談義』ってのも面白そう。

3月8日(土)、23日(日)に関わる催事の準備が進行中! 主となる人との対話を重ね、徐々に熱を上げていく。遠目で眺めるだけじゃなく、ぜひ現場にきてほしい! って言うならオレも行かなくちゃ。

今日明日、明後日は15時開店! 週末の3連休まで通常営業です。

2025/02/18

2/18 雑記

……ひたすら、眠かった。クリスティ・ホール監督作品『ドライブ・イン・マンハッタン』、なじみの〈シネプレックスつくば〉での上映は12時から。昼食後の11時過ぎに家を出て、店を経由して劇場到着。シアター4の前より真ん中。足をぽーんと投げ出して予告を見るうち本編開始。ダコタ・ジョンソン、ショーン・ペンの顔は好きなのだが、演技にイマイチ乗り切れない。とにかく眠い。タクシー車内の二人芝居はいいけど、深みが感じられないのは睡魔ゆえか。

寝そうになるのをこらえてるうち目が覚めて、映画は終わった。誰にも感想は伝えなくていい。すぐに忘れちゃって構わない。自転車を走らせてるうち、なぜか心が軽くなってた。

ドライブ・イン・マンハッタン。原題はDaddio、日本語にすればオジさんとのこと。

2025/02/17

2/17 店日誌

2月17日、月曜日。春みたいな気候に戸惑う。先週みたいな肌着、上着の重ね方をしているとじわっと暑くて歩きづらい。ラジオによれば今夜から急に冷え込んで、明日以降は日中の最高気温は1桁、真冬並みに戻るらしい。うーん困った。どうすりゃいいのだ。気候に振り回されてるうちに春がくるのか。汗をかいたり冷やしたり、身体もなかなか大変だ。風邪をひかぬよう慎重に、しばらくが静かにしていたい。

円盤からのレコード、2タイトルに加えて鹿児島の〈Coffee Innovate〉と地元DJ(REJAS×M.KBZN)が組んでつくったカセットテープ『PHENOMENON』も到着。春以降にも重宝しそうな軽やかなミックス。ぜひ、聴いてほしい。

今日も通常営業! 本の買取、在庫確認などのお問い合わせはお気軽に。

2025/02/16

2/16 店日誌

2月16日、日曜日。いやあ、嬉しい。4日ぶりに店を開けてすぐ、常連Yさんが本を売りにきて、数冊の本を買っていく。ほぼ同時にきたタイセイくんは山梨に縁のあるラッパーだと話してくれた。買う人、買わない人といろいろだけれど、店に人が来てくれることがありがたい。誰がどう良くて、どう悪いかなんて二の次だ。淡路の〈タラウマラ〉の土井さんのようにやわらかく振る舞えたらいいなあ、と考えつつ、お客さんを迎えいれた。店が忘れられてないってのがこんなにも嬉しいとは。

街をさ迷っていると、その迷路のような道すじで、ある時突然、まさに路上の賢者といえそうな人(物)に出会い、彼らの手招きによって、気がつくと、自分の目指していた以上の場所にいる。自分の直感を信じてアクションを起こさないとストリートワイズは生まれない。地図やマニュアルは、アクションを起こすきっかけにはなっても、それだけでは路上に賢者には出会えない。(坪内祐三)

先週の「奈良〜京都滞在記」を読んだ知人が「旅の工程が無軌道というか運任せ」と印象を伝えてくれて、喜んだ。好きこのんで迷ったり、時間を浪費したいわけじゃないのだが、自分は効率優先では動けない。坪内祐三の書く「ストリートワイズ」は真実だと思うし、迷わなければ出会えないものがあると信じている。

オクノ修『オクノ修70歳、拾得ライブ』、松野泉『あそぼ』のLP2作が同時入荷! 少数だけれど、どちらもオンライン・ストア〈平凡〉にも入荷済み。

今日明日は13時開店! いろいろ入荷してるので、ぜひご来店を!

2025/02/15

2/15 店日誌

2月15日、土曜日。数日前に強風が吹いたらしい。つくばエクスプレスが止まってると聞いて、なんとなく知った気でいたのだが、帰ってきて驚いた。筑波大のなかは折れた枝だらけ。かなり大ぶりのものも歩道に散らばっていて、歩くのに難儀する。いざ帰宅すると、玄関はもちろん風呂場、洗面所が砂だらけ。濡れ縁にだしていた植物がふっと飛んでいて、器が割れている。とてもじゃないが掃ききれないし、水で流しても、よほど注意しないと砂が残る。風が吹いたのは一昨日? その日はどんな状況だったのだろうか。

たいていの人はプロスポーツが好きだがおれは全然興味ない。日々自分と戦ってるおれには人の戦いを応援してる余裕がないのだ。/ちなみに自分との戦いは連敗記録更新中。いま、この瞬間もおれは負けてる。(キングジョー)

今はキングジョーのテキストが救いである。上手くいってることなんか多くない。それどころか、小さな失敗を積み上げるばかりの日々にあって、ジョーさんの言葉から漏れでている何かが、オレの魂を震わせる。

キングジョー/松本亀吉『Peace Piece』は当店にも近日中に入荷予定。刊行されたのは去年だけど、今だからこそ読んでほしい、おすすめしたいZINEである(松本亀吉サイドもめちゃ素晴らしい!)。

今日は通常営業! 13時から20時まで開けているので、お暇があればお出かけを。

2025/02/14

奈良〜京都滞在記⑤

2月14日。7時台に外に出て、興福寺周辺まで歩いて気がつく。普段ならば池周辺でどーんと目に入る五重塔が改修中で、素屋根(布? 幕? のようなもの)で覆われている。眼か脳のスケールがくるうようで、街の雰囲気がだいぶ異なる。

9時過ぎに奈良を出発、11時10分発の新幹線に乗り換えて、東京に向かう。ブログを書いたりメール、DMの返信をするうち名古屋、浜松、三嶋と過ぎていく。やはり、こだまの速度がちょうどいい。少し寝ると新横浜。あっという間に東京着。外の暖気、人混みに戸惑うも、どうにかすり抜け秋葉原駅を目指すべく歩き出した……はず、だったのだが。

世界はもっと豊かでもっと自由なはず、そう思いたい。探しに行こう、待ち合わせよう。魂を売り渡すなら、ブルースが欲しいなら。…岸里交差点で待ってるからよ、毎晩! (キングジョー)

唐突だけれどキングジョーさんの言葉を借りて、無理矢理に締める。奈良〜京都滞在記はこれにて閉幕! ありがとうございました!

奈良〜京都滞在記④

2月13日。軽い朝食を摂って、外に出る。7時台の空気がパリッとして気持ちがいい。通勤、通学の人といっしょに歩いて、ならまち商店街を抜けていく。スターバックスなんかのある観光地を過ぎると人が減る。すいすい歩いていくと、鹿。鹿。鹿。通勤の車も彼らのペースに合わせて、信号がなくても停車する。あちこちに糞が散らばる。奈良公園にもたくさんの鹿。荘厳な空気が流れる社内を歩くのが気持ちいい。大木、古い社、植物園。進んでいくほどに色合が深くなる。若草山をこえると三月堂、二月堂。オフシーズンかつ朝だからか、どこも人が少なくて快適だ。ちょこちょこ歩いて新薬師寺、旧志賀直哉邸周辺のあたりから駅方面に歩き出す。

近年屈指の大ハズレの昼食にぶつかり意気消沈。ホテルの部屋で「とにかく疲れた」「もう帰りたい」なんて呟いてベッドに沈みかけるも「待て! 行ってないところがあるだろ!」と心の声が響いて、ガバリと起きて部屋を飛び出す。奈良駅まで小走りで5分弱、ちょうど来ていた電車に乗車、乗り換え駅の久宝寺までの車窓風景をみてるだけでドキドキ、ワクワク。果たして今日はやってるのか、定休日じゃないけど早仕舞もあり得るぞ。いやいやきっと大丈夫。気持ちが早って本を手に取る余裕もない。

おおさか東線に乗って、目指すは淡路(途中に「放出」と書いて「はなてん」と読む駅があった!)。JR淡路駅で降車、駅前の地図をみて歩き出すも、なんか違う。ちかくにあった交番で方角を正され、ざっくりした道ゆきを教えてもらう。淡路4丁目18-13を探してウロウロしてると、あった! あれが〈タラウマラ〉だ! 入店してすぐ「植田さんでしょ!」と店主土井さんが気づいてくれて、店内にいた先客2人に紹介される。ちょうど今、ジョーさんとシノさんとレコード聴いてたとこで……え、ジョーさん! もしかして、キングジョーさんですか。そうです。これにはびっくり。上気したまま棚をみて古本を数冊、キングジョー/松本亀吉『Peace Piece』、何枚かの音盤を購入。

ジョーさんの選曲はタイ産7インチ等々のワールドミュージック中心(というか、この日の集まりは定例の「ワールドミュージックを聴く会」だったらしい)。ちょうど聴かせてもらった2枚のB面はダブになってて、これが最高。音数がしぼられて奇妙なのに神秘的。その間も店には自転車修理を頼みにくるおばあさん、近所のカレー店で働く人などがきて、土井さんがフラットに対応している。うーん、やはり特別だ。こんな自転車屋は他に知らない。

ジョーさんにサインをもらって、挨拶を済ませて店を出る。淡路の商店街は喫茶店、たこ焼き屋、立ち飲み屋なんかが連なっていて、いちいち足が止まりそうになるのだが、振り切って駅を目指す。首尾よく目当ての電車に乗れて一安心。買ったばかりの『Peace Piece』を読みだすと、めちゃ面白くて止まらない。タラウマラに来れただけでも充分なのに、キングジョーさんにも会えるとは。じーんとした高揚に包まれたまま、奈良駅に到着。

地元に人以外まず行かないであろう〈ジャンたこ〉で一服、その後に覗いた〈蔵〉は「臨時営業」(!)。入店するとちょうどいい具合の客入り。無理ない量の酒と飯をとり、しっぽりとした時間に浸る。

2025/02/13

奈良〜京都滞在記③

ホテルで一休み、体勢を整えて再出発。電車に乗って京都に向かう。JR奈良線で東福寺、京阪に乗り換えて神宮丸太町。地上に上がって鴨川にかかる橋を渡って少し歩くと〈誠光社〉が見えてくる。文庫本を1冊買って〈アイタルガボン〉のソファ席でパニーニ、サラダ(とビール)でひと息。カッコつけ過ぎず、反骨心を感じさせるいいお店。食事も美味しい。しばらくゆっくりしたのち街へ出ると小雨が降ってくる。傘はなくても平気だが、歩道をビュンビュン走る自転車が怖い。傘差し運転はやめてほしい。

20分ほど歩いて目的地の〈拾得〉に到着。今回の大目的! オクノ修さんのライブには、開場前から人がちらほら。拾得の若いスタッフが丁寧に案内してくれ整理番号順に入場、座敷席を確保してビールを注文。隣の男性、女性の顔を見たことがある気がするが、声はかけず。数杯の酒を飲む。すぐ近くに座るオクノさんにサインをもらったり、トイレに行ったりするうちに田口史人さんの顔を見つけて、ご挨拶。あれ、なんで! 彦根にも寄ったらいいのに! なんて話してるときに、Hand Saw Pressの小田さんもきて、会釈をする。

客の平均年齢は高いけど、自立した大人がしっかり来てる。自分と同世代か、若い人、なにがしかの店を営んでいるような人もいる。拾得やオクノ修が象徴する、京都の街が育んできた文化への敬意が感じられて、頼もしい。どこか、少しだけうらやましい。

19時ちょうどに開演。72歳のオクノさんが歌い出すと、20代か30代、いやいや40代か? 明確な数字にこだわるのは野暮だけれど、明らかに実年齢より若くなる。ステージでの話には諧謔の気があり、やんわりと下ネタ気味。指がつってしまうか歌詞を忘れたら、途中で止めますと最初に言ったけど90分間歌い切った姿は自然で、ほのかな色気も漂う。アンコールはなくても、端々でオクノ修の美意識が感じられた。こんな洒脱な大人がいるなら、歳をかさねるのも悪くない。

終演後すぐ会場を出て、神宮丸太町の駅まで歩く。21時20分過ぎの京阪に乗り、東福寺で乗り換えて、奈良駅へ。すでに眠いが、重たい身体をひきずって、どうにかホテル着。風呂に入ってからブログを書いたり、メールの返信などするうちに0時半。ベッドに倒れこんで即就寝。

奈良〜京都滞在記②

2月12日。朝イチでホテル自慢の温泉に入ってみるも、ああやっぱり! 浴槽にただよう塩素の匂い。これは雰囲気ありげな大浴場で温泉じゃない。不平を言っても仕方ないのでしばらく浸かる。途中からほぼ貸切り状態。6時半前には部屋に戻り、簡単な朝食を摂る。さっさと着替えて7時台の電車に乗って法隆寺を目指す。

JR法隆寺駅に着いて、気分で道を選びつつ歩いていくと8時過ぎに到着。拝観料を払って寺院に入るとシーン………としてる。砂利を整える作業音、朝の挨拶が耳に入るくらいでガヤガヤした声は皆無。絶好の機会とばかりに、西院伽藍~大宝蔵院〜夢殿と順路を丹念にたどる。途中何度か係員(学芸員っぽく立っている)に疑問をぶつけると、柔らかく応じてくれて、なるほど〜なんて話してまた興味がふくらむ。その後、中宮寺の如意輪観世音菩薩に対面、静かな時間を過ごす。

気がつけばたっぷり2時間、法隆寺に浸っていた。休憩所でちょっと休んだのち法隆寺駅に引き返す。車通りの少ない道をのんびり選んでいくと、駅近くに〈クッパの店 一平ちゃん〉を発見。飲み屋がつらなるコンテナ? 箱のようなテナントに小さなカウンター、店主と思わしき男性が1人で準備中。開店前に通り過ぎ、用を済ませて戻ってみるとグッドタイミング! 並ばずに入店できた。省スペース、クッパ定食のみのメニュー、無駄のない接客に感心&安心してビールを1本。ここでもジワリと喜びを感じる。旅先で調べもせずにいい店に出会えると、めちゃくちゃ嬉しい。

電車に乗って再び奈良駅。なじみの喫茶店〈音楽と珈琲〉に顔を出して、店主とかるく話し出すと次々に来客。外国人観光客も少なくない。程よい音量で流れるジャズにコーヒー、小さなドーナツを食して退店。あんまり話せなかったけど、いい店になってるな〜と、反芻しながらホテルに帰る。

2025/02/12

奈良~京都滞在記①

2月11日。いつも通りの時間に起きて、準備をする。9時出発。歩いて15分ほどのバス停からつくば駅、始発の快速に乗って秋葉原駅に10時35分着。神田須田町、神保町、大手町をつなぐように東京駅まで歩いていく。集団ではしる人たち、〈まつや〉の行列を横目に歩を進めると、街がゴミゴミしてくる。東京駅周辺、構内は外国人観光客の姿が目立つ。改札をぬけ、混雑するホームで何本か電車を見送って、11時57分発のこだまに乗車。ビジネス車両はガラガラ。座席を倒して、発車と同時にビールを開ける。

その頃、私は小田原へ永住の覚悟で引き揚げてきていた。これまでのように東京を喰い詰めた為ではなかった。プロレタリア文学もようやく退潮し、既成作家達が息を吹き返して書き出すにつれ、私も久しく捨てて顧みなかったペンをとり、(…)再び一ツ覚えの「私小説」をつくり初め、文芸誌あたりからたまには作品を依頼されるはこびともなった。(川崎長太郎)*

川崎長太郎『淡雪』を読み、寝て、起きると小田原。また寝て、起きると新富士。窓から富士山が大きく見える。各駅停車がちょうどいい。車内の雰囲気ものんびりしていて居心地がいい。京都の手前、米原あたりはかなり雪が残っている。遠目にみえる山も真っ白。京都に雪はなく、建物ばかり。チャンチャンと乗り換えて、JR奈良線に乗ったのは15時半過ぎ。観光客にまざって奈良に向かう(ここで田中小実昌エッセイ・コレクション『旅』に読み替える)。

奈良駅到着。はじめて西口に出て、すぐ近くのホテルにチェックイン。16時半過ぎの街は人が少ない。大袈裟でなくつくば駅周辺の方が人が多いかも……と感じるが、まあ歩きやすくて気分がいい。お目当ての酒場〈蔵〉までは徒歩15分。最短距離でたどり着き、引き戸を開けるとちょうど席が空いたところ。ちょうどよかったですわ〜と迎えられ、ジワリと心暖まる。蔵の接客は絶妙という他ない。

酒は飲むべし、飲まれるべからず、と言うけれども、ぼくは酔っぱらうまで飲む。そこがこまったことなのだろう。酒が好きで飲むだけではない、酔っぱらわないと、おちつかない。酔っぱらうと、おちつかない人もいるのに……。(田中小実昌)*

*「亡友」p.140/『淡雪』より *「ヨーヨーをもった少年」p.18/『田中小実昌エッセイ・コレクション2』より

2025/02/11

連休

2月11日(火)、12日(水)、13日(木)、14日(金)は休みます。

2025/02/10

2/10 店日誌

2月10日、月曜日。ああ寒い、風が冷たい! これじゃ、お客さんが減るのも当然だ。隣のカフェ、近くの古着屋、遠く大阪の自転車屋の店主と「いや〜暇ですな」と挨拶のように声を交わす。ボヤボヤしてるのも馬鹿らしい。本棚で眠りっぱなしの本の写真を撮り、解説をつけて、オンライン・ストア〈平凡〉に並べてみる。ものによってはツイッター、インスタグラムでも紹介する。いいね! の数が少なくても、1人でも興味を持ってくれればいい。結果、購入につながれば万々歳だ。

一昨日、昨日の店売りは正直なかなか厳しい状況。オンライン・ストアへの反応、売上があり、どうにかバランスは取れているのだが、この先どうなっちゃうのか。やや不安の割合が増している(なんて感じで書いてると、心配してくれる人もいるのだけど大丈夫。元気だし店は楽しい)。

3月23日(日)にライブ開催! ペンペンドンピー『ジャ、ジャンクション』と『ppdp』、『シブキューフ』が同時入荷。最新作『9AM』と合わせてご注目を。初版が完売していた相田冬二『あなたがいるから』の2刷も到着。150部限定、ナンバリングとサイン入り。

今日の営業は13時から19時まで! 明日11日(火)から14日(金)までは連休です。

2025/02/09

2/9 店日誌

2月9日、日曜日。西荻窪の喫茶店〈JUHA〉のインスタグラムで知った、アレン・ギンズバーグのレコードをアップル・ミュージックで聴いてみた(どうも矛盾しているような……)。ピアノソロだと思い込んで再生すると、すぐに歌いはじめて驚く。上手いわけじゃない。でも、味はある。太めの声にシンプルな伴奏、英語も聞き取りやすい。「4A.M. BLUES/New York Blues/New York Youth Call Annunciation(medley)」は約10分、こんな曲が流れる喫茶店は近隣にはないなあ、と書いていて大坪さんを思い出す。

きのうはめちゃくちゃ暇だったのだが、お客さんはゼロじゃない。運動着の男性2人がシブい本を買ってくれたり、スペクテイター編集部の青野さんが納品にきたり、ヨシオが顔を出したりと嬉しいこともあり。

今日明日は13時開店! 明後日11日(火)から14日(金)まで連休です。

2025/02/08

2/8 店日誌

2月8日、土曜日。店にくる途中にぐるっと回り道をして、筑波大学一の矢生活センターで開催されている「筑波 circulation 計画」を覗いてきた。なによりまず、立地がいい! あの場所を選んで合同展示を企画しただけで、高得点。大学内を歩いていて、どこよりも興味がわいて、惹きつけられた場所だったから。展示作品もよく練られていて「へー!」と感心しながら見てまわった。誘ってくれたつくばネットワークのネガレイブは体験できなかったのだが……。明日また行くか、どうするか。

中央図書館併設の美術館では筑波大学芸術専攻学群の卒業制作展、すぐ近くの市民ギャラリーでは好きだ!! 展も行われている。今週末ですべてまわってみるつもり。肝になるのは明日の午前中、うまく時間を使わなくては。

オンライン・ストア〈平凡〉をとおして古本がよく売れていく。出してすぐ買われることあり、存在を忘れかけているものが売れていくこともあり、嬉しくも小さく慌てている。日々、何かしらを追加しているので、気が向いたら覗いてみてほしい。

今日明日、明後日は13時開店。11日(火)〜14日(金)は連休です

2025/02/07

2/7 店日誌

“明治という時代は、今日ほどには整備されていなかった。そのために、こまごました抜け道や袋小路や、忘れられた空地や、雑草の原の古井戸などが、そのままになっていて、こんな人たちが、どこかの片すみで生きていられた時代でもあった。”(金子光晴)

2月7日、金曜日。坪内祐三『シブい本』を読んでいて見つけた、金子光晴の『絶望の精神史』からの孫引きなのだが、ここで書かれる昭和から見る明治はそのまま令和から見る平成、平成から見る昭和と置き換えられる。それどころか「こまごました抜け道」「忘れられた空地」なんかは今や絶滅寸前だ(少なくともつくば市天久保周辺にあっては)。今後も意味を見出されず、減っていく一方だと思われる。街から空白が無くなっていく……。

と言って暗くなるわけでもなく、見方や速度を変えれば、抜け道はまだ残ってるし、見つけられる。車で通りすぎるだけだった道を歩いてみれば、発見がある。いいものとは限らなくても「あれ?」と不思議に感じることはあるはずだ。1時間歩くだけでも、小さな冒険。身体がつかれる位がちょうどいい。

店にちょこちょこ顔を出すマスヤマくんが関わる『音楽星人』創刊号が再入荷。好きなものを好き! ということ、やみくもなエネルギーを放出するって大事だし、共感もできる。整理されないまま表示される意思、主張をつづけてくれたらいい(って書くのも偉そうだナ)。

今日は15時、明日明後日と明々後日は13時開店。11日(火)〜14日(金)は連休です

2025/02/06

2/6 店日誌

2月6日、木曜日。いやあ、寒い。風が冷たい。露出している箇所が痛い。とくに、店を閉めてから帰るときがキツい。自転車を漕ぎながら「ふー!」「あー!」とか声が出る。手袋と靴下は2枚重ね。ズボン下もはき、上半身も肌着を何枚か。マフラーもつけていても、風がつよく吹くとさすがに堪える。バス停で並んで待ってる人たちも寒そうで、バスがくるのが見えて、全体がほっとするのを感じた。

繰り返しのお知らせだけど、改めて。来週11日(火)・12日(水)・13日(木)・14日(金)は連休。オンライン・ストア〈平凡〉の発送もお休み(10日(月)19時までの注文分は翌日中の発送です)。

今日も通常営業。本の買取、在庫確認など、お問い合わせはお気軽に。

2025/02/05

2/5 店日誌

2月5日、水曜日。仕入れたばかりの、川崎大助『教養としてのロック名盤100』が読ませる。めちゃくちゃ面白い。「「究極の100枚」これからご紹介しよう。(…)あなたがほんのすこしでもロックに興味があるならば、最初に聴いてみるべき1枚は、間違いなくこの「100枚」のなかにある」と書き出される「はじめに」でたじろぐ人がいるかもしれないし、そもそも「教養」ってのが気に入らない! なんて声も聞こえてきそうだ。だけど、まあまあ落ち着いて。読み出せば、きっと引き込まれる。

ブルース、リズム&ブルース、ソウル(それからジャズも)の「先にあった」ものがファンクであり、発見されたばかりの「新しいやりかた」が世に出たとき特有の輝きが、70年代ファンクには充満している。

98位のファンカデリック『ワン・ネーション・アンダー・ア・グルーヴ』を紹介するなかの一節なのだが、この解説と先週放送された「ジャズ・トゥナイト」(特集:マイルス・デイヴィス「アガルタ&パンゲアから半世紀」)を組み合わせれば、ブラック・ミュージックの聴こえ方が変わる気もする。

オンライン・ストア〈平凡〉を通して売れていった新刊、自主制作の小冊子をぼちぼち補充している。今日明日中には再入荷するものもあるので、ご注目を。古本には日々、入荷あり。

今日明日、明後日は15時開店! 来週10日(火)〜14日(金)は休みます。

2025/02/04

2/4 雑記

映画に気が向いている。自分には周期があるのか、いそいそと映画館に足をはこぶ時期があれば、数ヶ月なにも観ないときもある。昨日は吉田大八監督作品『敵』をえらんだ。いつものシネコンのシアター1、いちばん大きな劇場のかなり前よりに席をとる。作品の性質なのか、客の年齢は高め。本編がはじまってから入ってくる人、出ていく人、どうしてか落ち着かない。すぐ後ろにも人がきて、ガサガサポリポリ音を出す。

ふーむ、こんなの観にくるんじゃなかったなあ。序盤は退屈のきわみ。ひとりの女性が出てきて空気が変わる。前日にちらと耳にしていたのはこの人か。後ろや斜め、少し離れたところから人の声なんかが聞こえてくる。徐々に話が転がりだす。好き放題、めちゃくちゃに振り回される。

さも文学的な雰囲気(静謐、禁欲、情緒……)をまとった作品が評価されている風潮に対しての強烈な皮肉だと受け取った。文学は自由。あり得ないことを書けるし、設定できる。細部の描写に手を抜かず、丁寧に積み重ね、組み合わせれば受け手をとおくまで飛ばせるのだ。小さな現実からの大ジャンプ! と思ったら、チョンと足が浮いただけ。そんな感じの映画だった。面白かった。

さて次は何を観ようか。楽しみな作品がいくつもある。

2025/02/03

2/3 店日誌

2月3日、月曜日。ボビー・チャールズ『スモール・タウン・トーク』とジャッキー・ミットゥー『マッカ・ファット』を続けて聴くと、ふくらみが増す。どちらも全体的にはのどかな雰囲気、早いテンポの曲がない。目立って変なわけではないけど、簡単には言語化できない個性がある。ボビー・チャールズの表題曲「スモール・タウン・トーク」の不思議な鍵盤の鳴り方(誰が弾いてるんだろ)と、ジャッキー・ミットゥーのアルバム全体に漂う空気には近いものがあると感じる。

後者に「ロック・ステディ名盤!」とは別の冠をつけたいのだが、それもなかなか難しい。誰か、ジャッキー・ミットゥーの奏法、作品に関しての研究をした人はいないのだろうか。レゲエといえばコレ! くらいのレコードなのに、奇妙な厚み、音の響きに対して興味を持つ人が少ないってことなのか(……と、ロクに調べず書いてます)。

入荷したての、HAPPFAT『HOME ALONE −Color of Jazz−』への反応が鮮やかで、嬉しい。オンライン・ストア〈平凡〉入荷分は完売。店頭在庫もあとわずか。昨日は〈古着屋may〉でも流れてて会話がはずんだ。

今日は通常営業! 特殊なZINEが届いているので、のちほど紹介するつもり。

2025/02/02

2/2 店日誌

2月2日、日曜日。ビル・ポーラッド監督作品『ドリーミング・ワイルド 名もなき家族のうた』を観た。題材、設定だけで泣ける。いくつかのシーンで涙がポロポロこぼれたが(中盤は泣きっぱなしだったが……)、作品として好きかどうかは別の話。夢をはみれるが必ずさめる。現実をどう受け止めるのか。映画の実話=事実との距離の取り方に関しては、賛否があるはず。主演のケーシー・アフレックは終始うかない顔で、とてもいい。あの複雑な表情を見られるだけで嬉しい。

それにしても、普段以上に映画館が人が多かった。なぜだ? なにが観られてる? と考えてみると昨日は1日、映画がやすく観られるファースト・デイ。土曜日だし。と、理解はできるのだが、みんな何を観てるのか。ドリーミング・ワイルドには10人くらいの人がいた。

若者たちがつくる『音楽星人』創刊号にさっそく反応あり。文学フリマとかに出される冊子とは異なり、業界的な目配せなく、いびつなまま、まとまらないまま印刷されている。10号までは続けてほしい。

空模様もあり、今日の営業時間を再変更。11時から18時まで開けてます。

2025/02/01

2/1 店日誌

2月1日、土曜日。昨日は不思議な日だった。客足は多くないのだが、友人、知人が入れ替わるように来て、それぞれの話をしていく。その間には年若の友人からの着信。バイクの免許が取れたらしい。年相応に不安定、あれもしたいこれもしたい、エネルギーが有り余ってるから心配にもなるが、元気そうでよかった。店をつくるべく苦心中の友、仲間たちとつくった冊子を納品しにきた若者。前向きな言葉を聞かせてくれた。

ミュージック・フォー・ゴンゴン。朝のラジオの1曲目はオシビサというバンド。聴いてると自然と身体が動きだす。朝は陽がさして健やかな気になったのだけど、これから降雪? はたまた降雨か。明日の予定を組み直すか思案している。

今日も通常営業! オンライン・ストア〈平凡〉にもご注目を。