2016/07/19

『移動図書館ひまわり号』


“その過程は一貫して今の日本の常識に逆行していた。活動よりも施設が先行し、しかもそれが極端な中央重視に偏しているという現在の公共図書館のほとんどが定型化したパターンの中にあって、日野のとってきた過程は、常に活動から施設へ、周辺から中央へという姿勢に貫かれていた。一台の移動図書館から出発したその活動は、その一台の移動図書館に、乏しい予算と人員のすべてを投入して精力的に進められた。”
-鬼頭梓(“新しい飛躍”『移動図書館ひまわり号』より)

夏葉社の新刊『移動図書館ひまわり号』が入荷しました。著者は前川恒雄さん。
東京日野市で移動図書館、分館、中央図書館をつくりその運営に従事した図書館員と仲間達の運動の記録です。上司や部下、多くの利用者たちとの血の通ったやりとり、何よりも本を活かすためならばあらゆる妥協を排そうとするその姿勢に胸打たれます。読みはじめは想像していた以上に専門的だな・・・と思いましたが、ページを繰っていくうちに感情移入していました。ここで語られる「図書館」、「本」を別のものに置き換えて読めてしまう力のある内容です。

「街はいったい誰のものなのか? もしかりに誰かさんのものであるとしたら、どうして誰かさんのものだけにしておいて、わたしたちのものとしないのだろうか?」(※)。かつて、そう読者に投げかけたのは、数日前に紹介した『街から』を手がける本間健彦さん。この問いかけは『移動図書館ひまわり号』に流れるメロディと響きあうのでは、とボクは感じています。いま、この時機だからこそ読んでほしい。出会ってほしい本があります。「本と市民」という言葉を帯に巻く『移動図書館ひまわり号』の販売価格は2160円(税込)。パワー・トゥ・ザ・ピープル。

(※)『街を創る夢商人たち』本間健彦(三一書房)

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『移動図書館ひまわり号』
著者:前川恒雄
デザイン :櫻井久
価格:2000円+税
版型:四六判上製
頁数:264頁

約2000冊の本を積んだ、あたらしい移動図書館は、

市民が求めるならどこへでも行き、人々と対話を重ね、

彼らの需要に積極的に応えることによって、日野市に

本の木を植えていきます。

それは、とても感動的な記録です。


彼らの活動は、全国の図書館に大きな影響を与え、

図書館界を劇的に変えていきます。

読むと、ものすごく元気が出る一冊です。

引用したい箇所が、山ほどあります。

本の可能性。

「本と町」の可能性。

名著です。

お近くの本屋さん、または図書館でぜひ。

http://natsuhasha.com/

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