2022/01/03

1/3 雑記

 1月3日。『ビッグ・リボウスキ』の発想源になっていると知り、ロバート・アルトマン『ロング・グッドバイ』を見た。なるほど。確かに話の構造、設定に近いものがある。随所に似たシーンもある。突然、事件に巻き込まれる主人公。複数の人物の思惑がからみ合い、本線の謎が浮かび上がらないまま進んでいく物語。コーエン兄弟は『ロング・グッドバイ』を徹底的に分析して解きほぐし、整理した上で再構成したのだと感じさせた。

「小島さん、『ロング・グッドバイ』(73年・米/ロバート・アルトマン監督)を観ていない人間とは口もききたくない、っていうぐらいの感じで、堤(一朗)は大船の映画館まで観に行かされた(笑)。私も観ました。」-神尾幸一(北沢夏音『Get back,SUB! あるリトル・マガジンの魂』所収「放浪」より)

これでようやく、自分も小島さんに口を聞いてもらえる立場になったのか……。

2022/01/02

1/2 雑記

1月2日。昨夜の雑記をかいたあとに見た、『ビッグ・リボウスキ』に驚かされた。端々で爆笑。いくつもの謎は転がったまま、おかしな奴らがボーリングに興じて酒をのんだり、突然車を燃やされたり。ああいう人たち、実際にいるもんなのかな(なんと、モデルがいるらしい!)。選曲も絶妙。気になる曲がいくつもあった。コーエン兄弟ってすごいなァ。

事柄としては詰らぬ些細なことでも、そこから案外に深い感慨が汲まれるということが世の中にはままあるものだが、この場合が正にそうであった。(高見順「草のいのちを」)

朝、読んだのは荒川洋治・編『昭和の名短編』の冒頭2篇。志賀直哉「灰色の月」と高見順「草のいのちを」。どちらも昭和二十年頃、敗戦直後の社会が舞台になっている。時代をおおう闇を描くことで、わずかに灯った小さな光を見いだす。小さくも意思のある試みだと感じた。長編や中編、詩作や随筆でもなく短編小説でしか表現し得ないことがあるのだろう。

夕方以降は出先で買ってきた古本をてきとうに拾い読む。缶ビールをのみながら。今夜は何を観ようかなあとぼんやりと考えている。

2022/01/01

吉良幸子が2021年を振り返る

2021年は引っ越しもあいまって色んな本屋に行けた。その引っ越しの前には平野甲賀さんの本棚整理をお手伝いした。人の本を整理するというのは、持ち主の興味や関心をそのまま手に取るようで発見が多かった。甲賀さんの本も合わせると色んな本に出会えた年のように思う。5冊に絞れなかったけれど、特に読み返している本を挙げてみる。


①イワト No.1

神楽坂にあった小劇場シワターイワトの広報誌。中でも第1号が好きで、八巻美恵さん、桂吉坊さん、あとがきのはなしがお気に入り。


②STEINBERG THE LABYRINTH

甲賀さんの蔵書。ボロボロだけど中身は何度見ても楽しい本。いつも手元に置いてある1冊。


③淋しいおさかな 別役実童話集

この本を装丁した小島武の展示に関わったこともあり、思わず手に取った本。読んでみたら別役さんってこんな面白いの?と夢中になって読んだ。挿絵は小島武自らが『さよならシリーズ』と題した線画で、どことなく淋しいイラストが文章にぴったりだった。


④パレスチナの ちいさな いとなみ 働いている、生きている

古書ほうろうさんで出会った1冊。パレスチナの人びとの仕事が綴られているのだが、彼らの働く姿やそこにある気遣いに心を打たれた。


⑤柚木沙弥郎のことば

気持ちが行き詰まっていた時にふと読んだ本。「まずは持続して、そして自信をつけること。」ということばに背中を押された。柚木さんのことばは心に響くものが多く、何度も読み返してしまう。


⑥風まかせ どこに行っても地球は我が家

甲賀さんの装丁から本を手に取ることが多い私だが、本の中で繰り広げられるひとつひとつの旅の話が面白かった1冊。造本が素朴で好きな本でもある。


⑦キネマ旬報 No.282(1927年12月中旬號)

古本屋のおじさんとあれこれ話をして教えてもらった雑誌。この辺りの年代のデザイン・印刷・描き文字はどれも感動する。どのページを開いてもびっくりする。この雑誌を先生にしてただいま勉強中。


おまけ

DVD うたのエリア1 時々自動

衝撃を受けた舞台。うまく説明できないけれど、とにかくかっこいいし面白い。時々自動を追っかけるきっかけになったDVD。出演している今井次郎さんの映画は2回も観にいってしまった。2022年に下北沢でも上映予定。


これに加えて、horo booksからは『聞かせてください、あなたの仕事』という本を出した。自分がデザインしたものが本のかたちになるのはとても感慨深かった。できあがった本をすぐにお届けしたくて、本屋ルヌガンガさんへ走ってもっていったのはいい思い出だ。

1/1 雑記

1月1日。6時に目が覚める。昨夜は21時頃に寝てしまったので、約9時間睡眠。たっぷり寝た。年またぎの大袈裟な余興に縁はなく、SNSから聞こえてくる声も煩わしい。だからさっさと寝てしまう。起きてしまえばいつも通りの朝。ラジオ体操をして、コーヒーを淹れる。レコードを聴いて本を読む。

「自身の発意で何をかの悦び・充足を求めるというのはなく、周囲との背丈くらべ、テイサイづくり、ミエ。かくてどの家でも、月賦に追われてトッピンシャン、となる。これを〈しあわせ〉と思いこんでいるのだったら、それはそれで御自由と申すほかない。」(添田知道『ノンキ節ものがたり』)

読んでいるのは、〈ブックセンター・キャンパス〉でなんとなく手にした、添田知道『ノンキ節ものがたり』。テンポが良くてスイスイ進む。今の心もちにぴったりと寄り添う節もある。

市内の実家に顔を出して昼食。テレビに映っていたのは『孤独のグルメ』。たくさんの小さな工夫が雰囲気をつくっていて、この番組が年末年始に長時間放映される意味がわかった気がした。帰宅後、年末に借りてきたDVD、ケン・ローチ『ケス』を見る。

見終わって、近所の神社まで歩いていく。夕暮れ空に見惚れる。家にもどると、いくつかメールが届いている。年末に思い立ってはじめた企画「2021年を振り返る」への参加を呼びかけた方、誰もが快く応じてくれて、ありがたい。返事をもらう度に元気になる。年明けもいくつかの記事をあげる予定。

今日は酒はのまない。年末にじゅうぶん過ぎるほど、のんだから。

2022年の営業予定

1月4日(火) 13:00-18:00
1月5日(水) 13:00-18:00
1月6日(木) 13:00-19:00
1月7日(金) 15:00-20:00
1月8日(土) 13:00-20:00
1月9日(日) 13:00-19:00
1月10日(月) 13:00-19:00

当店の年始営業は1月4日(火)、13時から。お隣〈千年一日珈琲焙煎所・カフェ〉は1月6日(木)から営業再開。開催中の河合浩個展「TURN,TURN,TURN」は若干の展示替え予定とのこと。

2021/12/31

金井タオルが2021年を振り返る

植田さんから「2021年の振り返り企画、書いてみませんか?」とメールをもらって「いいですね。ぜひぜひ。書くなら『つくづく』ネタ以外がいいですよね?」と自ら言ってみたものの、今年を振り返ってみれば、ほぼ『つくづく』に繋がってしまう。というか、それ以外になにをしていたのか、ほとんど覚えていない。『つくづく』とは、ぼくは個人で出している雑誌のタイトルで『BRUTUS』版元ドットコムで説明文を書いたので、ご興味あればそちらを。


で、2021年の振り返り。寄せては返す波のように、ふざけた号を出しては引き、出しては引きを繰り返していたら、12月31日になっていた。大方の人がそうであるように、世間の波に翻弄されながら、どうにかこうにか大晦日という岸にたどり着いた感じ。

今年も沢山の本を買い、そのまま積み上げている。先日、ピープル ブックストアで通販したこだま和文のレコードは、聴く前から行方不明。カバンのなかには劇場で渡される大量のチラシが入りっぱなし。それを整理しながら、「ああ、そうだ。『アナザーラウンド』はよかったなぁ」ということを思い出した。勧められなかったら観ない類の映画で、しかし冒頭からラストのカットまで、役者からなにからすべてが最高で、だからこそ事あるごとにひとに勧めている。

マッツ演じる冴えない高校教師とその同僚3人は、ノルウェー人哲学者の理論を証明するため、仕事中にある一定量の酒を飲み、常に酔った状態を保つというとんでもない実験に取り組む。すると、これまで惰性でやり過ごしていた授業も活気に満ち、生徒たちとの関係性も良好になっていく。同僚たちもゆっくりと確実に人生が良い方向に向かっていくのだが、実験が進むにつれだんだんと制御不能になり…。(オフィシャルサイトより)


つまり「友だちと互助会」がテーマで「自由研究」の話でもあり、「なんだか『つくづく』みたいじゃないか」と、やはり自分の雑誌に繋げてしまう。そんな思考状態ゆえに沈思黙考は程遠く、思いついたアイデアを片っ端から発表しないと気が済まない。でも、それではいけない。積読は積読でしかなく、やはり本は読まないとはじまらない。思いつきは思いつきでしかなく、練り上げたアイデアには敵わない。そんな当たり前のことに気がついた年だった。だから2022年は“ヴォリュームに気をつけ”ながら、“まとも”な雑誌をつくろうと思っている。

12/31 店日誌

12月31日、金曜日。昨日、取り置きの本を買いに来てくれた高校生、カンパニー社の新刊を毎度手にしてくれるお客さん、お二人の顔を見られて、言葉を交わせただけで店を開けていて良かった。こういう時でしか来られない人もいる。静かではあれ、自分は年の瀬に店にいるのが好きなのだ。

今日は13時から18時まで開けています。