2018/12/06

『マッチと街』


あの頃」が良かったのかどうかはわからないけど、ちょっと羨ましい。

マッチと街出版委員会『マッチと街』が届きました。
2009年に高知県〈ギャラリー graffiti〉で開催された展覧会「高知遺産 マッチと街」をネタ元に、地元在住のデザイナー竹村直也さんを中心にして編まれた本書。これが、本いっぱいに愛があふれていて、暖かい。何への愛かと言えば、マッチそのものとそれを配ったお店、店主、お客さん、ラベルをつくったデザイナー。そしてそれら、彼ら彼女らが生きた時代。高知。形のないものへの尊敬があるからこそ、この本が生まれたのでしょう。

販売価格は1944円(税込)。デザイン、構成もバツグンなので是非、手にとって頂きたいです。

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激動の昭和、そして平成初期にかけての「あの頃」、高知の街は今よりもずっと元気でした。

東京へはYS11が一日数便しか飛んでいなくて、瀬戸大橋も高速道路もまだまだ遠い未来の話。スマホもネットももちろんなくて、テレビも民放が2局しかなかった時代。

だけどそのぶん、今よりもずっとたくさん、街には人の「居場所」がありました。珈琲を飲みたいと思えば純喫茶や音楽喫茶があり、お酒を飲みたいと思えば居酒屋はもちろんのこと、カクテルバーやジャズバー、スタンド、スナック、ラウンジ、キャバレーと、今ではあまり聞くことのない業種も含めさまざまなスタイルのお店が、お客さんを待っていてくれたのです。

人口30万人たらずのコミュニティの中で、あらゆる用事はこの街の中で済ませることができました。街は、今よりもずっと濃かったのです。もちろん、今でもたくさんのお店が高知の街にはあります。街並みははるかにきれいになりました。だけど、「あの頃」に比べると、街はずいぶん大人しくなってしまったのではないか、とも思うのです。



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