2024/10/16

10/16 店日誌

山川方夫の作品は短篇が多いこともあって静かな印象のものが多い。日のかげりのなかでは劇的な出来事も起るがそれは再び日が射し込むと同時に薄っすらと消えていく。ひとはかげりを意識しながらもそれに耐えて静かに生きていく。(川本三郎)

10月16日、木曜日。山川方夫『夏の葬列』を読んでしずかな衝撃を受ける。ショート・ショートといわれる10ページほどの短篇と70~80ページくらいの話が入った文庫本。まず読んだのは山崎行太郎の「解説──陽気な絶望者」、その後で頭から順に読んでいった。冒頭3篇「夏の葬列」「待っている女」「お守り」でぐっと掴まれ、速度をかえつつ一気に読み終える。再度の「解説」、川本三郎「鑑賞」を通過すると、ああ何とも。言葉にしがたい芳醇な体験をした気分になる。最後に付された「年譜」も充実していて、無駄のない構成に関心しながら本を手放した。

彼より、アタマの回転が早い人、リコウな人、話の面白い人は、まだいるだろう。しかし、彼のように暖かい心と柔軟な理解力をもち、都会的神経と野暮なまでの生真面目さを両立させた親しい友人に出会うことは、私の生涯に、もう、あるまい。(小林信彦)

思い出して、小林信彦『東京のロビンソン・クルーソー』所収の「山川方夫のこと」を読み返す。少なくとも2度は読んでいるはずなのだが、まったく印象が異なる。こんなことが書かれていたのか……と驚き、山川方夫の別作品にも触れたくなった。

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