なんて奇妙ななりゆきだろうと、私は歩きながら思う。いつの間にか、東京と半島が反転している。ここが主で東京は従へと転落しつつあるのだ。そんなことはついぞなかったことだ。私がこれまで生活のために闘ってきた場所は東京であり、あの都市以外はなにもなかったはずだ。それがどうだ。ろくに仕事もせずにうろつき回っているこの半島が、いまは生き延びる幻想につながる場所になるなんて。(稲葉真弓)
10月11日、金曜日。数日前に立ち寄った新刊書店でみつけたのが、稲葉真弓『半島へ』(講談社文芸文庫)。別の本を探して目を走らせていた文庫コーナーで青い表紙が浮き上がって見えて手に取って、これを買おうと決めた。本屋をはじめてすぐ、吾妻で焼き芋屋を営んでいたナカハチさんがくれたのが『少し湿った場所』。稲葉真弓の絶筆となったエッセイ集。人間味がありテキストから溢れでる何かに引きつけられた。いっぺんに好きになった。
店の出入り口を開けたままにしていると、いつの間にか人がいる。そーっと入ったのか、静かに棚に見入る人。きょろきょろ店内を観察する人。それぞれの反応をちらりと観察しながら、本に目を落とす。何冊か本を選んで会計しにくる気配を感じると、身体の芯あたりの熱がぐっと高まる。
ここ最近、常連になった男女の2人組。たまたま来た、絵描きのナツナさんとわーっとなにかを話してる。ここが知り合いだったのかーとかなんとなく考えながら、本を読む。昨日は野中花『昭和・奇人、変人、面白人 酒の肴100人たち』を読んでいた。愉快な話がおおくて著者の語りに引き込まれるうち読み終えていた。
今日はなんていい天気! ロックステディ日和でとても嬉しい。
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