2023/02/28

2/28 店日誌

2月28日、火曜日。朝、手近にあった永井荷風(磯田光一・編)『摘録・断腸亭日乗』上巻を手に取って、ぱらぱらとめくった。1917年(大正6年)から1936年(昭和11年)までの約20年分の、荷風の日記。2~3年前までは読むべきと感じなかった本が急に気になり、身近なものに思えてきた。厳密に言えば、まだ読み出してはいない。手に取り、開いたページに記載されている日記を拾っているところ。

年齢のことを抜きにしても、そろそろ身体のことを考えねばいけない。これまでのように飲み、食べ、遊べないのは間違いない。それでも、友人たちと楽しい場を共にするための工夫は続けたい。長く、楽しみ続けるための意識改革。そろそろ始めてみようかな。

今日も書籍、音源に入荷あり。お暇があれば、お出かけください。

2023/02/27

2/27 雑記②

20代前半の頃、よく通っていた書店の方から通販の注文をもらった。懐かしい。10年前くらいか、久しぶりに行ったときに、なぜか物足らない気持ちを覚えて帰ってきた。その後、理由を自分なりに確認することもないまま、時間が経った。機会をつくって、また行きたい。あの店のにおいが好きだった。

店に、23歳前後の若者が何人か通ってくれている。音楽が好きで、本も好き。写真にも興味があったり。彼らは何を求めて、店に来るのだろう。行けば、何かを見つけられると思っているのか。なんとなく好きな場所、という感じだったりするのかな。改めて、店にいる自分を不思議に思う。

2/27 雑記

開店してすぐ来た人が、小林信彦『極東セレナーデ』と田口史人『あんころごはん』を買っていく。入れ替わるように来た友人がCDとレコードを、久々に顔を見せた知人が『アルテリ』と『と豆腐軒の想い出』を。どのやり取りも自然で心地よかった。ああ、店を開けていて、良かった。そう感じ入ったのも束の間、また知人夫妻。はじめての家族。たまに顔を見せてくれる、お母さんとお祖母さん。

お客さんとのやり取りを終え、ひと息。本でも読むかと思うと、友人が来る。話をして、会計を済まして送り出す。この繰り返しで日が過ぎる。いい日曜日だった。

2023/02/26

2/26 店日誌

売り上げはとんとんだけどだれも見たことがない唯一無二の特別な空間を作って、これまで聴いてきた好きな音楽をかけて、引き続きただ生きていく、そのことの自由さ、その自由の重さ暗さ。−吉本ばなな(「あの空気」)

2月26日、日曜日。昨日の朝、思い立って2022年度の確定申告の作業をはじめた。まずは1月。レシートを振り分けて、部門ごとの支出を打ち込んでいく。あの街、あの店、あの人。遠くなっていた記憶がよみがえる。数字を見ていて、気持ちが萎える。どうにか1月分だけを打ち込み店に行き、隣の店に挨拶する。「植田さんはいつも元気ですねー」と言われてハッとする。そうだ、俺は落ち込んでいない。

通帳に印字された数字だけを見ていると、見失うものがある。感覚だけでは、続けられないこともある。一昨日、40歳になり、店はそろそろ丸10年。もうちょいバランスどりが上手くなりたいなーと思っている。

引き続き、均一価格の古本に追加あり。お暇があれば、遊びにきてほしい。

2023/02/25

2/25 店日誌

2月25日、土曜日。友人のムーちゃんがつくってくれた『妄想 Paradise Garage』を気に入って、よく聴いている。ニューヨーク、80年代の伝説的ディスコ・クラブ〈Paradise Garage〉のレジデントDJ、ラリー・レヴァンが好んでプレイした曲(ガラージュ・クラシックと呼ぶらしい)に加えて、「ラリーはこんなのもかけていたのでは……」とムーちゃんの妄想的選曲が混ざったミックス。とにかく、楽しい。こころ良い。

見ての通りの手書きの盤面。この前につくっていたYMO MIXにも同じように手書きでロゴが書かれていて、好きだった。店で流していると、これは誰かとよく聞かれるので、けっこう嬉しい。

今日明日は13時開店! 書籍の入荷多数。店外の均一箱にも追加、入替あり。

2023/02/24

数見亮平個展「INSTRUMENTAL READINGS」

2019年頃から最近の作品の中から、ペインティング、ドローイング、立体作品など展示します。もちろんオリジナルグッズも制作しました。

数見亮平個展「INSTRUMENTAL READINGS」
会期 2月26日(日)~3月23日(木) ※3月17日(金)展示替えあり※3月18日(土)イベントあり
会場 代官山 蔦屋書店2号館1階デザインフロア(東京都渋谷区猿楽町17–5代官山T–SITE)

『WINTER POINCIANA』(CD-R)

HAPPFAT『WINTER POINCIANA』が届きました。
真夏のミックス『MELT』や秋がテーマの『borrado』、『FAR』などが当店でも人気のDJ、HAPPFATの最新作。冬がテーマの選曲はいつも以上に低空飛行。底の方からじわーっと暖める床下暖房のような感覚で、安心感がある。ブラジル、ジャズ、ヒップホップを中心に編まれたメロウ・ミックス。こりゃあ、何度でも聴けちゃいます。

販売価格は1200円(税込)。次に控えるミックスは『MELT』新作とのこと! お楽しみに。

「Sergio Verdinelli Japan Tour 2023」

2018年ブエノスアイレスで3度の共演で親交を深め、2019年には15箇所の日本ツアーを共に敢行したSergio Verdinelli(Drums)、YOSHITAKE EXPE(Space Guitar)の4年ぶりの再会デュオツアー。

「Sergio Verdinelli Japan Tour 2023」
日時 3月15日(水) 19時開場/20時開演
料金 2500円
出演    LIVE:Sergio Verdinelli × Yoshitake EXPE duo DJ:Kei MINAMI,Tatsuro Suzuki
会場 仁連宿(茨城県古河市中根1936)

2/24 店日誌

2月24日、金曜日。今月頭に入荷した、オオヤミノル『喫茶店のディスクール』が面白い。言葉選びが難解で挑発的と感じる人もいるかもしれないけれど、自分は、まっとうな現状認識だと感じる。数値化できる要素でしか、店や人を判断しないから、無駄も余白も生まれない。善意の集積のようなクラウド・ファウンディングにも返礼の義務があり、賛同者のご機嫌をとらなきゃいけないわけで、観察していてアホらしくなる(胴元にも金を持っていかれるし)。

やっぱり重要なのは、自ら思考し実践すること。何が面白い? 好き? 嫌い? なんてことは他者に委ねちゃいけない。いいね! いいね! と囃し立てられる意思表明は、エモいとされて、共有しやすい感情がうすーく延ばされているだけじゃないか。

店も客も、その手の情動に警戒しなきゃいけない。すぐに注目されなくても、自分なりの実践を重ねていくことには意味がある。失敗しても、修正すればいい。途中で方法を変えてもいい。堅牢な計画よりも、柔軟な発想。実践しながら修正していく、心構え」とかつて自分でも書いていた。

話がズレた(自分語りを失礼!)。オオヤミノル『喫茶店のディスクール』、『珈琲の建設(新装版)』は、〈PEOPLE BOOKSTORE〉とオンライン・ストア〈平凡〉で購入可能。ぜひ手に取ってみてほしい。

今日も書籍、音源に入荷あり! 店の見どころが増えてきた気がする、ここ最近。

2023/02/23

『世の人』

ここはスカッと地獄や、たくさんのチャンスが脱ぎ捨てられたその後や、チャンスの残骸ばっかりある、引いても押しても地獄ならとことん逃げて、でもこんなところに辿り着かなくていいやんなあ。(「中」)

マリヲ『世の人』が届きました。
昨年まで阪急淡路駅近くの自転車店〈タラウマラ〉のスタッフだったラッパー・マリヲの初著作。同店の機関誌『Face Time』vol.1~3に寄稿したテキストに書き下ろしを加えた12の短文からなる単行本。「ダルク体験記」にはじまり、刑務所での日々、自転車店で出会った人、近隣の住人とのやり取りなどを独特のテンポで綴っていて、ふにゃりとした手応えあり。ときにドキリとする描写もあり。

販売価格は1870円(税込)。オンライン・ストア〈平凡〉でも販売します。

2/23 店日誌

2月23日、木曜日。墨田区の書店〈YATO〉の佐々木さんが来てくれて、書店主同士の情報交換(ワルい話はしてない)。初めてお会いしたのだけれど、話題に事欠かず、あれこれ喋りまくってしまった。同姓同名の松本哉の由来を聞いて、驚く。その後は昨夏の展示でお世話になった〈代官山 蔦屋書店〉のFさんなど。つくばエクスプレスはレール破断で運休になっていたらしい。

曇りの平日にしては動きがあった昨日。今日は急な祝日らしい。3人組とかでワイワイ話しながら入ってくる人たちが多いと嫌だな。静かでいいので、その人なりの眼で店を見てくれたらいい。多くは望んでいないのだ。

今日も通常営業。オンライン・ストア〈平凡〉もどうぞよろしく。

2023/02/22

『アルテリ』十五号

熊本には石牟礼道子、伊藤比呂美、坂口恭平という生命にみちた言葉の発信者がいる。このささやかな雑誌には、そういう人たちが喚起する世界をひとつの伝統として受け継いでゆくことになろう。−渡辺京二「激励」

『アルテリ』十五号が届きました。
毎年2月と8月に定期刊行されている熊本の文芸誌。まず、巻頭の渡辺京二さんの写真がいい。その後に再掲される2016年2月のアルテリ創刊時に寄せられた激励文が、すごく、いい。表紙の紙の手触り、坂口恭平さんの作品の質感も好き。2023年の現在から1973年、1967年、もっともっと前の熊本の空気までを孕んでいるのが、この雑誌の特別さ。あわてずじっくり、読んでくれたら嬉しいです。

販売価格は1320円(税込)。四号から十四号までのバックナンバーも揃っています。

2/22 店日誌

2月22日、水曜日。一昨日、昨日と訳あって家にいる時間が長かった。レコードを聴いたり、本を読むにはうってつけ。耳を傾け、目で追いかけ、自分なりに受け止めていく。すべてにしっくりくるわけではない。でも、投げ出さずに付き合ってみると、意外な発見がある。何も感じられないこともある。

時間を費やさないと得られないものがあると気がつくだけでも、意味がある。そう簡単には本質には近づけないことを知る。身勝手な自分が恥ずかしく、嫌になったら外に出る。歩く。約一日、そんな風に過ごして、あらためる。

バーニー・ケッセル、アーサー・ライマン、チコ・ハミルトン。この数日で耳にして、いいなあと思ったレコード。杉浦日奈子、阿部昭の本を読み、しばしうなった。

今日明日、明後日は15時開店。今月はすべて通常営業。

2023/02/21

連休

2月20日(月)、21日(火)は休みます。

2/21 雑記

言葉というものは、残念ながら、「なんらかの形で自分を表現したい」と思っているような人には向いていないし、同様に「何かよくわからないあるもの」などを表現するのにも不向きなものである。私はそんなことを狙ったことがなかったし、今後ともそうである。(「書くということ」)

阿部昭『新編 散文の基本』を今朝、起きてすぐ読み始めて、冒頭の「書くということ」に打ち抜かれた。とっ散らかった脳内をサーッと箒ではかれた気分。この文章を前にして、何も言うことはない。ただ静かに読むのみ。

2023/02/20

2/20 雑記

毎日毎日、子規は日常と、胸に去来することを忌憚なく「墨汁一滴」に書き続けた。「元老の死にそうで死なぬ不平」もあれば、新聞雑誌の投稿句に剽窃が多いことへの批判もある。六つになる隣の女の子、陸羯南の娘が描いた絵を家の者が持ってきたので筆を加え、合作にして菓子を付けてやったりする。(略)すべての楽しみと自由が奪い去られ残ったのは「飲食の楽と執筆の自由」のみ。(「八石教会 明治34年」)

数日前に読み終えた、森まゆみ『子規の音』の最後半、衰弱した正岡子規を描く「八石教会 明治34年」から。起き上がれず、寝たままの視点でつくる俳句にも味があり、愛嬌も交ざる。正岡子規という人の魅力の一端に触れ、より強く関心を持った。こうした評伝の存在はありがたい。

2023/02/19

『極東セレナーデ』

小説は、決して〈上品な〉ジャンルではない。美術工芸品でも重要文化財でもない。二十世紀になって、小説がむずかしくなったのは、それなりの理由があるが、もはや〈難解さ〉を尊ぶ時代ではない。(「あとがきに代えて」)

小林信彦『極東セレナーデ』が届きました。
「朝日新聞」に1986年1月20日~1987年1月17日の約一年間掲載された、著者初の新聞小説。これが、まあ面白い! 主人公は短大卒の20歳、失業中の朝倉利奈。東京から一気にニューヨークに飛ぶ序盤、中盤以降は帰国後の日本、主に東京を舞台にした成長物語。これは小説、書籍のかたちを最大限に活かしたエンターテイメント。巻末に収録された主人公・朝倉利奈による小林信彦への「著者インタビュー」、斎藤美奈子の解説「バブルとバブル後を先取りした物語」まで、しっかりと読ませます。

販売価格は1870円(税込)。本書を加えた3冊の「小林信彦コレクション」を販売中。

2/18 店日誌

2月18日、土曜日。ツイッター、インスタグラムにはまり込みすぎると、時間が取られる。エネルギーも吸い取られる。やはり、道具は道具。適度に距離を置いて付き合っていかねばと思う。さいわいにも自分には店がある。足を向けてくれれば、大体会えるし、話せる。直にやり取りができるのがいちばんいい。このブログも含めて、いつもなんだかんだと書いているけど、やはり顔を合わせて声を交わしたい。

昨夜、開店したての古着屋〈wear crab〉に顔を出した。カナちゃん、アキくん、二人ともいい顔をしていて安心した。始まったばかりの店。現状にああだこうだと意見はせず、長い目で見て、変化を感じながら付き合っていきたい。

今日も、なにかしらの入荷あり。明日、明後日(2月20日・21日)は連休です。

2023/02/18

『GOOSEBUMPS PER MINUTE VOL.1』

僕の片手にはいまも感覚のない指があるんだ。指でコントロールできないから、叩きかたが特殊で、どうしてもバックビートになってしまう。いまではそのことに感謝してるけどね。僕みたいに叩ける人は、たぶん、ほかにはいないから。(MOCKY Fanbook『MOCKUMENT』より)

先月リリースされた、MOCKY『GOOSEBUMPS PER MINUTE VOL.1』(以下、『GOOSE〜』)を気に入ってよく聴いている。針を落として、まず思い出したのが、上記の言葉を含むインタビュー「モッキー自身が語るモッキー」(聞き手は松永良平)。そして、数年前の来日公演で見た、ドラムを叩くときのモッキーの顔である。笑顔でステージ上のメンバー、フロアの聴衆を見渡しながら刻むビートはファンキーでリズミカル。その場で生まれる音を浴びるのがライブの醍醐味だとしたら、その欲求をしっかりと満たしてくれる、個性的な演奏だった。

自分は『GOOSE〜』をなぜ、こんな風に好むのか。そのために近作『A DAY AT UNITED』(2018)から『OVERTONES FOR THE OMNIVERSE』(2021)と順番に針を落としてみた。なるほど、改めて聴いてみると面白い。特に前者は、いわゆるモッキー節とは異なる音像を感じさせて、今更ながら感心した。後者もまた良くできた作品なのだけど、代表作『SASKAMODIE』もしくは『KEY CHANGE』に入っていても不思議でない佳曲が多いのかなーという印象だった。どちらもアナログ盤、45回転。なんの表記もない『OVERTONES〜』はきっと、33回転で聴いてしまう人も多いだろう(ここに、何らかの狙いがありそうな気もする)。

さて、肝心のレコードに針を落とすと、頭抜けてファンキー! ブラック・ミュージックを思わせる、ドラムとベース。コーラス。過去2作をラウンジ仕様とするならば、本作はダンスフロアへの気配りも効いている。聴いているうち、だんだん身体が動き出す。この感覚は何だっけ……と記憶を巡らせると、あ! そうだ! ライブでのモッキーだ。だから、自分は喜ばしく微笑ましい気分になるのか。

ここに刻まれているのはソウルとファンクを基にした、ラウンジ・ダンス・ミュージック。太い低音と軽やかな音色とが調合された、モッキー博士の発明品。流せば、きっと部屋の空気は軽くなる。音楽に合わせて踊ってしまえば、心も弾む。気軽に聴いてみてほしい。

(*)『月刊つくづく』2023年1月号「音楽コラム」より転載

2/18 店日誌

2月18日、土曜日。河野友花さんが『respelatrol』34号に付けてくれたメモを見て、小林信彦が『キネマ旬報』最新号に載っていると知り、図書館まで読みに行く。やはり歳はとられたが、インタビューはしっかり面白い。もっと小林さんの本が読みたいなーと近所の古本屋に自転車を走らせると、店先で娘さんが「小林信彦の本が入りましたよー」と伝えてくれる。グッドタイミング! 親父さんが出してくれたのは、対談集『映画につれてって』。田村隆一の本と一緒に購入する。

その後、すぐ近くの〈香色茶房〉でカレー弁当を買って(ここ、お手頃で美味い!)、少し走ると今日開店! 古着屋〈wear crab〉の開店準備をするカナちゃん&アキくんが目に入る。また後でー! と声をかけてから〈えんすい舎〉の前を通り過ぎて、店に戻る。週末の庭でカレーを食べて、少し昼寝。うん、天久保界隈はなかなかいい感じだぞ。

そう言えば、朝、開店直後の〈千年一日珈琲焙煎所〉でコーヒー豆を買うときに、店主の大坪さんにYMO周辺の面白味を教えてもらった。ニア・バイ・タウン。ロボ宙さんの曲を思い出す。

今日明日は13時開店! 色々入荷しているので、覗きに来てほしい!

2023/02/17

夏葉社の本


夏葉社刊行の書籍、何冊かを常に在庫しています。
ここに写真を上げたのは現状の最新刊、佐藤友則/島田潤一郎『本屋で待つ』(2022年12月刊行)と同社最初の刊行書籍、バーナード・マラマッド/訳=小島信夫・浜本武雄・井上謙治『レンブラントの帽子』(2010年刊行)。店頭に無いものでお探しのものがあれば、店頭でお声がけください。版元在庫があれば、注文も受け付けます(その際、少しお時間を頂きます)。

夏葉社謹製「本の手帖」も、少しだけ残っています。

2/17 店日誌

2月17日、金曜日。散歩は好きだが、ウォーキングは好きじゃない。歩くときは、歩数、距離、エネルギー消費量など数値化できるものとは距離を置きたい。携帯便利端末に干渉されず、自分なりのペースで思考したい。ゆく道には車や自転車、歩行者がいて、信号なんかもあるから、歩行中の自分も社会的な存在である。そのことを意識するか、しないかはけっこう大きなことじゃないだろうか。

日々、店内には動きあり! 新刊、新譜をはじめ古本、中古音源にも入荷あり。店外の均一価格の文庫、単行本の回転も早くなってきた。お暇があって気が向いたら、店まで足を運んでほしい。

通信販売、在庫確認等々のお問い合わせはお気軽に。本の買取は常時受付中。

2023/02/16

『KamishakuG NostalG(上石神井ノスタルジー)』

まだまだ続くであろう音楽の話。ひとまず、ここまでのところはこの二枚の円盤にまとめた。さてさて、この続きは針先の行方に、尋ねてみることにしましょうか。−樋口拓郎(道程店主)

『KamishakuG NostalG(上石神井ノスタルジー)』が届きました。
八王子のレコード店〈道程〉発の7インチ・レコード、2枚組。参加しているのは、Hegira Moya,H.Takahashi,YAMAAN,Aguariumの4者。すべてアンビエント〜エレクトロニックな趣ではあれ、曲(面)によってニューエイジ、サウンドスケープ、ダブの気配を漂わせていて、じっくり耳を傾け、読み解く楽しみもあり。音量、環境によって感じるものが異なると思われるので、爆音で鳴らすのもおすすめです。

販売価格は3300円(税込)。シルクスクリーン印刷のジャケットにも要注目。300部限定生産。

2/16 店日誌

2月16日、木曜日。いつも通りの時間に店を開けて、友人に頼まれていた本を梱包して発送準備。メールの返信をいくつかして、小林信彦『テレビの黄金時代』を読みはじめるとご来店。店をはじめた頃から来てくれているHさん! 久しぶりなので嬉しい。本をたくさん買ってくれる。近隣の本屋のこと、おすすめの喫茶店ことなど教えてもらう。その後も、古く付き合いのある方、ちょこちょこ顔を出す方など、やって来る。

18時前、外に出ると遠い空はまだ明るい。キラリとつよく光る星。季節の変わり目を感じる。店は少しずつ変わっていく。しみじみ、そう思った昨日のこと。

今日も書籍、音源に入荷あり! オンライン・ストア〈平凡〉もどうぞよろしく。

2023/02/15

2/15 店日誌

2月15日、水曜日。昨日、今日はけっこう寒い。昨夜中の風が空気の芯を冷やしたようで、手袋なしでは自転車に乗れない。露出した顔、耳が特に痛い。先週末までの暖かさに油断して重ね着を一枚減らして後悔している。寒かったり暖かかったり。なかなか気候に付いていけない。厚着し過ぎて暑くなるのは嫌なんだよなあ。

昨日は音盤がいろいろ到着。EM RecordsCompumaRoland P. Youngをはじめ、八王子〈道程〉発のアンビエント盤がすごい仕上がりで、驚いた。音響的で文学的。こちらは明日発売。ご予約可能。

今日明日、明後日は15時開店。お暇があればお出かけください。

2023/02/14

『Spontaneous Bounce』(LP)

『Spontaneous Bounce』では13 曲の新作を収録し、音楽と人生への魅力的で楽しい祝賀の数々をお届けします。ぜひ、この祝祭にご参加ください。

Roland P. Young『Spontaneous Bounce』が届きました。
ソロ・デビュー作『Isophonic  Boogie Woogie』が好評だった、ローランド・P・ヤングの80歳のニュー・アルバム。瞑想的なエレクトロニック・サウンドに乗る生音楽器の旋律には哀愁があり、浮遊感もある。ディープなダンス・ミュージックでありダブのような響きもある。ローランドが40年以上に渡って取り組んできた「アイソフォニック・ミュージック」のコンセプトが結晶化したレコード。

販売価格は2750円(税込)。『Isophonic  Boogie Woogie』も再入荷。

『唐獅子株式会社』

いってみれば、喜劇的想像力をどこまでエスカレートさせ得るかという試みとして、最初の一篇が書かれ、それが話題になったので、あとの暴走が始まったと言えるだろう。(「あとがき」)

小林信彦『唐獅子株式会社』が届きました。
『別冊文藝春秋』1977年3月号に掲載された表題作「唐獅子株式会社」が話題になり、始まった連作コメディの新装版。上記の通り、小林信彦の喜劇的想像力が全篇に炸裂していて、読みながら笑うことは避けられない! 主人公の哲、ダーク荒巻、原田、大親分・須磨義輝、学然和尚……等々が繰り広げる「ギャグとナンセンスとパロディの一大狂宴」。

『唐獅子株式会社』と『唐獅子源氏物語』を併録した2段組、540ページに加えて巻末解説(筒井康隆・田辺聖子)も読み応えあり。

販売価格は2200円(税込)。本書を加えた3冊の「小林信彦コレクション」を販売中。

2/14 店日誌

2月14日、火曜日。しばらく会っていない知人が何人かいる。数ヶ月会わず話も聞かずにいると、顔が急に頭に浮かぶことがある。そんな時はすぐ電話もしくはメール、SNSのメッセージかなにかで連絡をしてみる。身のある話じゃなくていい。なんとなく気になったから、という感じで声を聞ければいい。メールの文面から、何となくでも状況が伝わればいい。

しばらく行けてない店、場所があると、そのことが長く引っかかったまま過ごすことになる。遠くないから行けばいい。でも、気持ちが乗らない。まったくどうしたものだろう。

今週も通常営業。本の買取依頼は常時受付中、お声がけはお気軽に。

2023/02/13

2/13 雑記

昨夜は久々に痛飲。エスプラくんと彼の店の近所の焼き鳥屋に行った。生ビール、瓶ビール。なんやかんや。久々にじっくり話して、お互いの近況を交換できた。彼は来月、鹿児島に行くらしい。身近な友人も熊本に行くと又聞きした。ここ最近、九州界隈の話をよく聞くがする。

4月23日(日)に当店の周年宴、PEOPLE’S PARKを開催する。昨日はその話をするため、エスプラくんに会いにいったのだ。

2023/02/12

河合浩個展「In The Making」

河合浩個展「In The Making」
会期 2023年2月3日(金)〜26日(日) ※本と商い、ある日 
       3月4日(土)〜16日(木) ※SUNNY BOY BOOKS
会場 本と商い、ある日(沖縄県うるま市勝連比嘉20−1)
    SUNNY BOY BOOKS(東京都目黒区鷹番2-14-15)

2/12 店日誌

2月12日、日曜日。暖かい日が続くと、なんとなく気がゆるむ。人の動きも軽くなってきたのか、店の出入りも増えている。夏葉社の本を探しながら、古本も多く選んでいく人。久々に来た友人家族、たまに現れる東京在住の若い人、長いことお世話になっているギタリスト御一行。昨日は知り合いたちが入れ替わりで現れて、息つく間もなく日が暮れた。

先に書いた若い人、Nくんがビールを持ってきれくれたので、久しぶりに早めの時間(17時前)に飲み始める。そのまま、彼なりの感覚、問題意識を聞かせてもらいながら、ゆっくり飲む。その間もちょこちょこ人が来て、気にせず本を選んでいったのも嬉しかった。

今日も通常営業。今、改めてレゲエを聞くのが面白い。カッコ良さを感じる点が多いのである。

2023/02/11

『いつの日かダブトランぺッターと呼ばれるようになった』

具体的な経歴みたいなものより、自分の中で矛盾した、ギクシャクした好みみたいなものを取りまとめて、今やっている表現、ライブとか自分が作る曲とかに出てくるもんじゃん?(「分かりにくい自分」)

『いつの日かダブトランペッターと呼ばれるようになった』が届きました。
MUTE BEAT,KODAMA AND THE DUB STATION BAND等で活動するトランペット奏者・こだま和文の2014年発表の自伝的著作。エンドウソウメイを聞き手にした語りおろしは、1972年の福井時代、翌年の上京を起点にして1982年のMUTE BEAT結成まで。若き日々、邂逅した人々、住んだ街々のことなど語りながら、こだま和文流の美学を感じさせる、貴重な記録。

販売価格は1650円(税込)。2014年以来、9年弱ぶりの再入荷。

2/11 店日誌

2月11日、土曜日。午前中の雪は早々に雨に変わり、つめた〜い空気だけが残された昨日、やはり店は暇だった。Wi-Fi環境も不安定なので、小林信彦『唐獅子株式会社』を読み耽り、ニタニタしていたら新刊到着。約9年ぶりに注文した、こだま和文『いつの日かダブトランペッターと呼ばれるようになった』と、客注の本。その開封作業が落ち着いたところで、高松〈古本YOMS〉の齊藤夫妻、広島のレコード店〈MIZO〉店主の方々などがほぼ同時に、別々にやって来る。

それらの方々を見送り、入れ替わりで現れた河合浩さんとの立ち話を終え、また本を読む。19時半前に顔を出した〈古着屋may〉の細矢さんの車に乗せてもらい、帰宅。雨がけっこう強く降っていた。

今日明日は13時開店。本の買取、査定の依頼は常時受付中。お声がけはお気軽に。

2023/02/10

2/10 店日誌

2月10日、金曜日。最近、本を探しにくる人が増えた。本屋だから当たり前なのだけど、これまでとは雰囲気が異なる。それっぽく今っぽい本じゃなく、多少地味でも手応えのある本を求める人が増えてきている。個人的な興味や好奇心に沿って本を選び、購入していく場に立ち会えるのは、とても嬉しい。

今日も新刊入荷がある予定!古本、中古音源にも日々なにかしらの動きがあるので、気が向いたら店に足を運んでほしい。オンライン・ストア〈平凡〉に並べているのは、ごくごく一部。店はもっと乱雑で、見応えがある(……と、言っちゃおう)。

さて、天気はどうなりますか。今のところ通常通りの営業予定。

2023/02/09

『喫茶店のディスクール』


SNSとグルメサイト、クラウドファウンディングとポイントカードに骨抜きにされた消費者万能の暗黒時代に模索する「いい店」の条件。

オオヤミノル『喫茶店のディスクール』が届きました。
まず、タイトルにある「ディスクール」の意味をひもとくと「言語による表現。特に思想や文学の分野で使われる言葉」とある。そのまま受け止めて意訳すれば「喫茶店の哲学」。なぜ、人が店を開いて珈琲を淹れ、他者に提供しているのか。どういう理由で、その行為に貨幣が支払われるのか。どうして、その交換が成り立つのか。そんな問いに対して、オオヤミノル流に応答した本。

帯の惹句にある「自身の迷走を振り返りつつ、犬の目線で語る、経済、仕事、メディアにコミュニティ」の部分に照応するコラムが6つ。まず、そこから読むのもよし。6つの論考を順番に読み込んでいくのも、あり。ひと息に吸い込まず、ゆっくり、書かれた文字を追ってほしい。

販売価格は1870円(税込)。前著『珈琲の建設』の新装版も同時入荷。

2/9 店日誌

2月9日、木曜日。傘下ってよく出来た言葉だ。傘の下に入れて、懐柔する。面倒は見るから黙っとけ。悪いようにはしないから。そんな風にイメージしていくと、やっぱり他人の傘には入りたくない。自分の準備不足、不運を受け入れて、ずぶ濡れて歩きたい(フラれて元気!)。なぜか今朝、そう思った。

去年の夏、旅先の山梨で突然の豪雨。あちゃー参った。口に出したわけじゃない。そのとき、たまたま横にいた若者が入りますか? と聞いてくれた。おお、嬉しい。でも、大丈夫。そのままダーっと走ってコンビニで傘を買った。あっという間に雨が止んで、ビニール傘は邪魔になった。あのときちょっとだけでも、傘に入れてもらった方が良かったかな。

今日明日は15時開店。本の買取、査定の依頼は常時受付中。お声がけはお気軽に。

2023/02/08

『些末事研究』第八号

『些末事研究』第八号が届きました。
香川県高松市で福田賢治さん(昨年末、会えた!)が編むリトル・マガジン、最新号の特集は「行き詰まった時」。まず、この切り口と言葉選びに一本取られた。気になる人、多いんじゃないかと思います(実際、入荷後すぐに手に取って読んでいく人を数人確認)。11人の寄稿とひとつの座談で80ページ。しっかり読めます。おすすめです。

販売価格は700円(税込)。「場所と私」特集の第七号も在庫しています。

『小林信彦コレクション』


そう。小林信彦は本当に昔っからイケてるんである。そしてまさに今こそ再び読まれるべき作家なのである。–江口寿史「小林信彦さんにもらったもの」

『小林信彦コレクション』(フリースタイル)が届きました。
現在刊行されている3冊を刊行順に並べると、『極東セレナーデ』『唐獅子株式会社』『大統領の密使/大統領の晩餐』。すべての装画は江口寿史、装丁は大原大次郎。ポケット・ミステリーサイズのお手軽さ、洗練された佇まいで、いわゆるジャケ買いしたくなる方もいるんじゃないかと思います。小林信彦の批評眼、喜劇的想像力(もっと、多要素ありますが……今書けるのは、これだけ)を存分に味わえる本ばかり。気軽に手に取って、紐解いてほしい。ピンときたなら、お試しあれ。

販売価格は順に1870円、2200円、1980円(すべて税込)。オンライン・ストア〈平凡〉でも販売します。

2/8 店日誌

2月8日、水曜日。あれ、今日はボブ・マーリーの誕生日かなと思って調べたら、一昨日の6日がそうだった(2年前にそのことを書いていた)。自分を含め2月は友人、知人をはじめ縁のある人の誕生日が多い。それぞれに個性的。その人なりの尺度を持って仕事をしていて、世界と相対しているように思える。みんな、元気にしているだろうか。

昨日入荷した『小林信彦コレクション』(フリースタイル)をはじめ、『ひとりのときに』『水牛のように』(horo books)など小出版社の書籍の元気がいい。今週中には京都の書店〈誠光社〉が刊行するオオヤミノル『喫茶店のディスクール』も届くはず。

今日も通常営業。本の買取、査定のご依頼、お問い合わせはお気軽に。

2023/02/07

『ひとりのときに』

わずか九十八字の中に小さなドラマがぎゅっと凝縮されていて、さまざまにトーンの異なる短編小説を読んでいるよう。–佐久間文子(「読後感想文」)

高橋茅香子『ひとりのときに』が届きました。
「発行部数は100部から700部、売り切れても増刷はしない」を社是とする超スモールプレス、horo booksの最新刊は、翻訳家・高橋茅香子さんのエッセイ集。2001年に始まったのち中断、2012年に再開した「98字日記」の2021年365日分に加えて、ひとり遊びに関するエッセイを5つ収録した手触りの柔らかな一冊。巻末にある著者略歴に触れて驚き! 高橋さんは現在84歳とのこと。文体の爽やかさに年齢は関係ないのだな。

販売価格は1980円(税込)。八巻美恵『水牛のように』など、horo booksの書籍をいくつか在庫しています。

2/7 店日誌

2月7日、火曜日。先週末に届いてあっという間に売り切れてしまった、八巻美恵『水牛のように』は今日、再入荷予定。その他、小林信彦コレクションと題された単行本が3冊、フリースタイルから届くはず。山名昇『寝ぼけ眼のアルファルファ』はいったん品切れ。今週中には補充分が届くので、少しだけ待っていてほしい。

1月末から新刊書籍の入荷が増えて、店内が賑やかになってきた。もちろん古本にも動きあり。100円の文庫本、100~300~500円均一で並べている単行本を手に取る人が増えていて、なんとなく嬉しい。

通信販売、在庫確認などお問い合わせはお気軽に。オンライン・ストア〈平凡〉もどうぞよろしく。

2023/02/06

2/6 雑記

天候に恵まれた週末、いつも以上の来客があった。嬉しいのは、文学的な文庫を数冊買っていく人がいたこと(会計時に微笑みながら「後味のわるい話が好きなんです」と話してくれた)。店外の100円の文庫本、500円以下の単行本を組み合わせて買ったいく若者が何人かいて、話ができた。彼らは中古盤CDやレコードにも興味を示す。スマートフォンを使って検索などせず、気になったものを手に取っていく。安価ではあれ、いい買い物に立ち合えて、喜びを感じた。

昨日は開店直後の10数分でものすごいエネルギーを使ってしまった。大いに慌てた。自分の小ささを感じるのみ。

※読書メモ。読んでいたのは、小林信彦『回想の江戸川乱歩』(文春文庫)。巻末の坪内祐三の解説まで、整えられた構成で一気に読んだ。最近の中公文庫は本書をネタ元にしているのかな、と思った(中上健次『路上のジャズ』、古山高麗雄『編集者冥利の生活』あたり)。

2023/02/05

「続・セタガヤママ展 小さなメディアの40年」

本展は、「セタガヤママ」を中心に、子育て中の女性たちが試みた“生活の実験”をご紹介する初の機会となります。1979年に平野公子が自宅マンションを開放した文庫「子どもザウルス」、そこで出会った主婦たちが公園や友人宅で展開した「あめの会」、その活動や日々のことを綴った「あめの会通信」。ここでガリ切りを担当した田上正子は、現在も「あめつうしん」というミニコミをガリ版で発行しています。

「続・セタガヤママ展 小さなメディアの40年」
会期 2023年1月31日(火) −4月23日(日) 9:00~21:00 ※月曜休館
会場 生活工房ギャラリー(東京都世田谷区太子堂4–1–1 キャロットタワー3F)

『水牛のように』

興味があるのはなんといってもお酒と怠けることだ。ふたつとも人類の歴史にずっと併走していて、お酒を飲む話は禁酒の話よりもおもしろいし、勤勉より怠惰のほうが魅力的だと思うのだ。(「急ぐことはない」)

八巻美恵『水牛のように』が届きました。
うん。これはいい本。判型、紙質と内容が響きあっていて、手にするだけで、まず嬉しい。書かれていることも、素敵だ。都心の駅の長いエスカレーターを上がって、見えた夕方の空。好きなお酒。友人とのかかわり。たくさんの本も紹介される。綴られた言葉、ひとつひとつ、ゆっくり味わってほしい。

販売価格は1980円(税込)。刊行元「horo books」の仕事に拍手。長くしっかり売っていきます。

2/5 店日誌

2月5日、日曜日。来客と入荷が多かった昨日、夕方前からバタバタして落ち着かなかった。最中に届いた、八巻美恵『水牛のように』を今朝手に取って、はーっと息が出た。なんと味のある本だろうか。刊行元「horo books」のお二人の顔が浮かぶ。仕入れるのが遅くなって、すみません。この本は、ながく大事に扱っていきたい。同時に『小島武イラストブック』も再入荷したので、ご注目を。

君方は新時代の作家になるつもりでしょう。僕もそのつもりであなた方の将来を見ています。どうぞ偉くなって下さい、然し無暗に焦ってはいけません。ただ牛のように図々しく進んでいくのが大事です。(「千駄木以降の漱石」)

読み終えたばかりの、森まゆみ『千駄木の漱石』で印象的だったのが、弟子にやさしい夏目漱石。「憂鬱な若者たちを励ます漱石」の章で紹介される沢山の手紙、励ましの言葉にふくまれたユーモアに心がゆるんだ。上記は芥川龍之介への手紙から。

さて、今日はどんな日になるだろうか。19時頃まで開けています。

『The Reconstruction of “Na Mele A Ka Haku” 』(EP)

60年代の電子音楽が太平洋のハワイに渡った軌道と、80年代米エレクトロが大西洋ヨーロッパを越え極東に行き着いた軌道が都内の同氏宅でドッキングした、戦後日米摩擦の因縁のもとでしか生まれ得なかった作品といえましょう。

Compuma meets HAKU『The Reconstruction of “Na Mele A Ka Haku” 』が届きました。
2015年のリリース時から約8年ぶりの再入荷。70年代ハワイアン・ニューエイジの怪盤とされる『ハクの音楽』をコンピューマが再構成したもの(「限りなくコンピューマ・オリジナルになった行き場のない逸品」って惹句、最高)。五木田智央×鈴木聖によるアートワークを含めて、創造性に富んだレコードです。

販売価格は2200円(税込)。2021年リプレス、価格改訂盤。

『エコロジカル・プラントロン』(CD/LP)


「植物からみた生きものたちのインターフェイス」。植物の視点から我々の身体を包み込む生態系の連鎖を音によって体感させるインスタレーション、『エコロジカル・プラントロン』(1994年)を再検証復刻。

銅金裕司/藤枝守『エコロジカル・プラントロン』が届きました。
植物学者の銅金裕司が1987年から研究開発した装置・プラントロンは「植物が話し、植物から話しかけてくる」ような効果を目的にしてつくられたもの。公式解説によれば「植物から電位変化を取り出して人間の知覚できる音や映像にかえるこの装置は、ソフト面でもハード面でもかつて遭遇したことのない世界を提出する」。本作は作曲家・藤枝守のサポートで構築したインスタレーションを記録している。

販売価格は3520円(2CD)、2860円(LP)。ともに税込価格。

『天使と昆虫』(CD)


デヴィッド・ダンのCDデビュー作『天使と昆虫』(1992)は、超自然的な天界の天使の名前と、自然界の水中に棲む昆虫という、二つの極端な世界とのコミュニケーションに焦点を当てた驚くべき包括的なアルバムである。

デヴィッド・ダン『天使と昆虫』(CD)が届きました。
本作の作曲・制作・録音を手がけたデヴィッド・ダンはポスト・ジョン・ケージ世代のアメリカの作曲家/サウンド・アーティストで音響生態学、生物音響学の第一人者とのこと(ほぼ公式解説のまま)。ともに1991年制作の「49の善き天使の表」(28分28秒)、「混沌と池の創発的な精神」(24分31秒)の2作を収録。

販売価格は2970円(税込)。デヴィッド自身による解説を収めた24ページのブックレット付き。

2/4 店日誌

この本はエッセイであるが、文学である。その一点がわからなくては、色川武大は浮かばれない。−小林信彦(「命をかけたサブ・カルチャーエッセイ」より)

2月4日、土曜日。ちょっと前に読み終えた、小林信彦『日本人は笑わない』所収「命をかけたサブ・カルチャーエッセイ」内での一節に触れて、色川武大『唄えば天国 ジャズソング』を手に取った。昨年末に買ったまま、読むきっかけがなかった本。読み始めたら止まらず、夜になる頃に読み終えた(その文庫巻末の解説として、小林信彦のテキストが収録されている)。

私にとって愛しい曲というのは、普段着で居る、というか、その普段着が一張羅で、着たきり雀でいるような曲だ。野に咲く花なのだけれど、やっぱり独特のいいものを持っていて、普段着でもなんだか目立ってしまうような。(「コケット」)

上記のような感慨をはじめ「ジャズメンはいい。楽器を持ってきて騒いで送れるから。小説書きの葬式に、同業が集まっても、沈痛なるだけでなんにもできない」(「アム・アイ・ブルー?」)なんて呟きが、とてもいい。その後、店の棚から手に取ったのは、田村隆一『半七捕物帳を歩く ぼくの東京遊覧』。ページを開くと、いきなり永井荷風の言葉が引かれていて、驚く。

家に帰って読み始めたのは、森まゆみ『千駄木の漱石』。小林信彦『うらなり』から流れていくのに、ちょうど良い。読むべき本はひとつひとつ繋がっている。てなわけで、ここ数日の読書メモとして記しておく。

今日明日は13時開店! オンライン・ストア〈平凡〉もどうぞよろしく。

2023/02/03

2/3 店日誌

2月3日、金曜日。数ヶ月ぶりに店に来た、同世代の建築士・Sさんが本をしっかり買っていく。数少ない、言葉がしっかり伝わる人。話ができて嬉しい。小林信彦『コラムは誘う』を終えて、同著者の『うらなり』を棚から取り出し読み始める。夏目漱石の名作『坊っちゃん』を、脇役のうらなりを主役に据えて書き直した、創作小説。あっという間に引き込まれて、一気読み。

かなり前に読んだ『坊っちゃん』は古典らしからぬ、軽い手触り。そんな印象だけが残っていた話が地味な男、古賀の眼線で語られると、かつての主人公、坊ちゃんこと五分刈りの異物感が際立つ。これは、年末に観た映画『SLUM DUNK』と同じ作用だと気が付いたのは、本編読後の「創作ノート」を読んでいるとき。文学って面白い。

今日は15時、明日明後日は13時開店。お暇なときにご来店あれ。

2023/02/02

2/2 店日誌

2月2日、木曜日。外気はやや暖かめでも、店にいると、どうにも寒い。とくに足先が冷えてじっとしていられない。昨日はレジ周辺とストーブの前を行ったり来たり、佐田稲子『私の東京地図』はやっぱり読み出せず、店にあった小林信彦『コラムは誘う』を手に取る。ぐいぐい読むうち、外は暗くなる。気がつけば、序盤に来てくれた大学生Uさん以降、誰も来てない。これは大丈夫か。

と、まあ後半は諦め調子で本を読んでいたら、まず友人の太郎くん。その後に若い男女。馴染みの大学院生。急に、来客が増えて落ち着かないが、太郎くんと話し続けて誤魔化した。結果3組中2組が購入。ギリギリ・セーフ。ここ最近また、薄氷を踏むような展開が続いている。

(会計時に太郎くんから、目黒考二さんの訃報を伝えられ、動揺する。月曜日には渡辺京二さんが逝去されたと知り、驚いたのだった……。)

オンライン・ストア〈平凡〉が面白くなってきた。気が向いたら覗いてほしい。

2023/02/01

『ロックのしっぽを引きずって』

“私はこの、ひとりごとで形成された本を、銃とギムレットが出てこないハードボイルド小説として読んだ。”−安田謙一(ロック漫筆)

いしあいひでひこ『ロックのしっぽを引きずって』が届きました。
2021年8月刊行『トラべシア』vol.6で特集された、埼玉県在住の一般人・いしあいひでひこ、初の単著は上記の安田謙一氏のコメントにある通り、ひとりごと。いしあい氏の音楽的述懐で構成された全4章に植村正美の巻末特別寄稿「イメージの本」を加えた90ページ超。先入観なく紐解けば、語りに引き込まれていくはず。

公式解説を引用すれば「1970 年代からのロッキング・オン誌読者であった著者が、ポピュラー音楽にまつわる半世紀弱の記憶と体験を、古き良き「ロック文芸」のスタイルで綴る体験的長篇エッセイ」。

販売価格は1100円(税込)。オンライン・ストア〈平凡〉でも販売します。