毎日毎日、子規は日常と、胸に去来することを忌憚なく「墨汁一滴」に書き続けた。「元老の死にそうで死なぬ不平」もあれば、新聞雑誌の投稿句に剽窃が多いことへの批判もある。六つになる隣の女の子、陸羯南の娘が描いた絵を家の者が持ってきたので筆を加え、合作にして菓子を付けてやったりする。(略)すべての楽しみと自由が奪い去られ残ったのは「飲食の楽と執筆の自由」のみ。(「八石教会 明治34年」)
数日前に読み終えた、森まゆみ『子規の音』の最後半、衰弱した正岡子規を描く「八石教会 明治34年」から。起き上がれず、寝たままの視点でつくる俳句にも味があり、愛嬌も交ざる。正岡子規という人の魅力の一端に触れ、より強く関心を持った。こうした評伝の存在はありがたい。
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