2023/01/03

中村友貴が2022年を振り返る

2022年の正月、1月3日に友達の働くコーヒーショップで書き初めをすることになった。こういうシチュエーション、なんと書いたら良いかすぐにいい答えが出てこないから苦手なんだけど、なぜだかその時はすぐに「俺は俺」という言葉が出てきた。「自己中心的なヤツみたいだな」と思いつつ書いた。書き初めにしてでも、自分自身に「俺は俺なんだ」と言い聞かせないと、何か大きな流れに飲み込まれそうになっている自分がいたのだと思う。ことあるごとにこの言葉を思い出しながら過ごした。結果、この言葉はお守りのようにもなってくれたし、肥大した「俺は俺」の持つ自意識に飲まれてしまい、たくさんの人に迷惑を掛ける形で、退職をすることにもなってしまった。それでも日々は進んでいく。


今住んでいるのは鹿児島市。大学進学でつくばに移り住み、地元鹿児島に戻ってきてから丸6年。2022年は、挨拶をするくらいの関係だった人との距離がグッと縮まったり、嬉しい出会いがあった年だった。友人のラッパーのお陰でもある。いい空気の流れるコーヒースタンドが4軒、家の近所から街の中心部にかけての市電沿線上に点在していて、近くに行くと寄り道をするのが日課となった。温泉には相変わらずよく通っている。


行きたかった場所へあちこち行けた年でもあった。今よりもっとピリつく空気の中、3月にはコロナ禍になってから初めてつくばに行った。息を潜めるような滞在の中での嬉しい再会は、人生の中でも印象深いワンシーン。隣県、熊本には相変わらず何度も通った。ヌルくない、この街の人と店とセンスが大好きだ。都城、宮崎市街地も、これからまた新たな出会いのありそうな良い街だった。大牟田から博多へ。店や人と出会い、福岡への心の距離がようやく近くなる。県境をとっぱらった九州が面白い。


鹿児島で出会った広島のカルロスとしんちゃん。2人の型にはまらない、オルタナティブな活動には、大いに刺激を貰った。そんな2人に会いに広島へ遊びに行ったのが今年のピーク。広島の街をカラオケボックスに宿泊しながら満喫した。その流れで訪れた尾道も愉快な人々が暮らす素晴らしい土地。帰りには、小倉から九州の端っこの港町、門司港へ。門司港には、その後すぐに再訪。好きな街だ。


11月には2度目のつくば、久しぶりの益子と笠間。東京でゆっくり過ごしたのも鹿児島に戻ってからは初めて。12月の頭に八代。約束もしていないのに、同じ飲み屋に友人がどんどん集まって、みんなで坂本慎太郎のライブに繰り出したあの夜は劇的で楽しかった。先日、今年最後にエイヤッと電車に飛び乗り久留米とうきはに向かった。帰りに熊本へ。各地の店や人々に力を貰う。


音楽を聴く場にも、思っていたより行くことが出来て良かった。我を忘れるくらい興奮したもの、しみじみと味わったもの、会場に良い空気が流れていたもの、念願叶って観ることが出来たバンド、緊張感のなかグルーヴが生まれる瞬間に心掴まれたあの日。規模の大小、雰囲気の差異はあれど、それぞれが思い出深い。


そんな1年だったが、ついに自営に向けて、自分の店を構えようと日々を進めている。朝から開いている食堂に、器や食品、本や音源などの物販スペースがくっついているような店だ。屋号は〈食堂 湯湯(ゆゆ)〉。月にオープン予定。不動産屋との交渉、連帯保証人問題、融資の審査など、すでに何度も壁が立ちはだかり、精神力を試されているが、なんとか粘っている。「俺は俺」で来てしまったが、誰かの楽しみになるような店が出来たら嬉しい。場を持つこと、雇われずに自ら稼ぐこと、食材を仕入れて料理を提供すること、ものを紹介すること。その実感を、誰かに流されずに、すっ飛ばさずに、積み重ねていけたらいい。忘れられない1年だったよ。

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