2022/06/05

6/5 店日誌

6月5日、日曜日。約6年ぶりに通読した、嵐山光三郎『漂流怪人・きだみのる』に序盤から惹き込まれた。散らかり放題の部屋で腹這いになって執筆中のきだみのる、その写真を見て本書に書かれることに嘘はないと実感する。浅尾ハルミンによる装丁、イラストの配置もいい。本全体に適度な工夫が効いていて、読み手を巧みにいざなっていく。

「甘粕は俺がモロッコを旅したことを知っていたさ。大杉栄を憎んでいることも知っていたよ。驚くべき情報網で、こちらの人間関係はつつぬけだった。」(「きだドンはアナキストか」)

今回もっとも興奮したのは、4つめのパート「きだドンはアナキストか」。辻潤を信奉し、ともに酒も交わしたきだみのるが見た大杉栄、伊藤野枝。さらには甘粕正彦。宮島資夫、和田久太郎などの名前も出てくる。きだ個人の眼を通して語られ、描かれるアナキストたちは生々しく人間的だ。この章を的確にまとめた著者・嵐山光三郎の腕に感服する。

ああ、やはり。知らないことばかりなのだ。何が正しく、そうでないかは時間をかけて、自分なりに考えていくしかない。多くの人に影響を与えた言葉、行動はもちろん、知られざるところにも興味深い出来事がある。

本書をはじめ、古本に入荷あり。中古音源の動きもお見逃しなく。

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