2016/12/28

『すし通』


“どこそこの穴子は旨いと聞けば、一里も二里も遠しとはしなかった。またあそこの赤貝は素敵だといえば、いま飯を食ったばかりであってもすぐ飛んでいってしまった。こんな間に見たり、聞いたり、読んだりしたことを書きあつめたのが、この一書である。
-永瀬牙之輔(“あとがき”より)

永瀬牙之輔(ながせがのすけ)による『すし通』が土曜文庫で復刻されました。
表紙にも刻まれている通り、昭和5年の名著とのこと。手元に届くまで、ボクはこの本をまったく知らなかったのですが、ページをめくって軽くびっくり。写真と挿絵をつかった構成が目に楽しい。たとえば、神楽坂の屋台鮨「都」の写真には「人通りが多くても元気の書生さんたちは色気よりも食気といった形でいつも大繁昌」なんて注が添えられていて、うまく肩の力を抜いてくれます。

土曜文庫の潔さ。カバー無しの文庫で、販売価格は859円(税込)です。

***

煙草屋は娘、魚屋は若い衆、鮨屋はおやじが看板である。

鮨の食べ歩きを始めようとする人にとっては、「お前の口には勿体ないが食わしてやる」といった面構を忍ぶだけの、あるいは味わうだけの忍耐が必要である。江戸の古老健在なりし昭和五年に世に出た、鮨の名著。


“名おそろしきものいにずし、それも名のみならず見るもおそろし”-清少納言『枕草子』

“私は鮨について他人に語ろうなんて努力したことは今まで少しもなかった。また衒学的な気持など微塵もなかった。まして通人たらんとも、鮨通たらんとも思ったことは少しもなかった。ただ美味を美味をと追求したのである”-永瀬牙之輔(本書著者)



もくじ
すし
鮓、鮨、寿司
やすけ、すもじ
すしの誇り
鮨礼讃
鮨の由来
古来有名なりし鮨
鮨の種類
魚の鮨
握鮨
巻鮨
稲荷鮨
五目と散し
箱鮨
熟れ鮨
特種の鮨
諸国の鮨
握り方、盛り方、食べ方 
等々...

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