吉田健一、かく語りき。
それもこれも、何でも皆で一緒にやりましようという、やはり戦後の奇妙な精神、―一部のものによれば、民主主義の精神(!)から来ているものらしい。皆で一緒に、他人の意見を尊重しましよう、正しいと信じる自説は貫きましよう、余りいい気になるのは止めましようという風な申し合わせを実践するのなら解る。しかし皆で一緒に絶対出来ない芸術や文学までが、この皆で一緒にの風潮に乗つたのだからこつけいである。あるいは、悲惨である。こういう民主主義が続く限り、必ず来るに決つている独裁主義の時代に備えて、もう少し骨がある人間を養成する必要がありはしないだろうか。
-吉田健一 (『作法不作法 / 宝文館版』)
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