2015/08/25

これが、“PEOPLE'S TALKSHOW” だ!(5)-自分なりの基準を持とうじゃないか!-

ー質疑応答ー 

:じゃあ、質疑応答コーナーです。聞きたいことのある方!

客1:筑波大生です。今日はありがとうございました。あまりトーク・イベントとか行ったことが無かったんで、フラっと来てみたら良かったです。ちょっと質問なんですけど、みなさんインディーでやられていて、どこまで発信の枠っていうのを考えてらっしゃるのか、さっき海外の話とかも出たんですけど、自分がどこまで広げるっていうか、広げることを目指しているのか、それとも枠の意識ってどういう感じにみなさん考えているのかな? みたいなことを聞けたらと思います。 

:パッと思いついたことから言って良いですか。まず、枠で国内、海外っていうと、日本が英語圏じゃないっていうところもあるので、自分のDJだったり興味はあるんですけど、現実の想定としてはあんまりやっぱり外国は考えれてないというか、まあ、チャレンジ出来てないってことは現実的に、枠の意味ではそうですね。で、一応理念ってことで言うと、楽しく続けていくのが一番だと思いつつ、仕事なので生活していけないのは困るんです。やっぱり作ったら作ったものとして多くの人に聴いてもらいたいなあって気持ちは当然あるんです が、順番としては、最初がそれっていうのは個人的には無いんですけど、まあ、 楽しく、作りつつ、それをどこまで広く届けるか、それで届けるための途中経過としてあんまり自分が嫌な気持ちになることはやだなあというか無理のない範囲でっていうのは甘いんでしょうけど、そういう意味では楽しく続けてくのを第一として広げられるだけ広げたらいいという感じで僕は思っております。 

V:僕もそうです。特にどういう範囲にむけて作るかというのは作る段階ではできるだけ考えず、出来上がったものに対して、これはどのような形で発表するのがその作品にとってベストかってことを考えて発表方法を選んだりって感じですよね。これはたくさんの人に聴かせたいと思ったら、ちゃんと流通を通したり多くの人に聴いてもらえるための方法を考えるし、別にそういう風にたくさんの人に聴かせようと思って作ってる訳ではない場合や、これはもっとプライベートなものだなと思ったらプライベートに扱うし、知り合いの店にだけしか置かないとか、そういう感じですね、僕は。 

b:ほぼ同じですね、スミマセン。だからこそ、それで予期せぬ出会いとかはあったら、受け入れるか受け入れないか判断しながら進んでいく、みたいな感じですね。 

:今回はインディーってテーマにしたし、自分は一応、もう結構大人なんで、 頭で考えたこととして、インディー的なもの作りをしている人のことは好きだなって意識はあるんですけど、自分のやってる音楽や活動がインディーなのかって言われたら、そういう意識は別にないっていうか。普通にただやってるだけっていうか、別になんかYUKIさんとかそういうメジャーのリミックスの仕事とかもしてるし、あんまり自分の行動として、これはインディーかインディーじゃないかとか、そんなことをその都度考えてないですけどね。基本的にはね。 あとビデオ君が言っていたことで僕が思ったのは、数の論理というか、広がるってこととか、例えば他の企業とかでも一緒かもしれないけど、数が大きいってこととかをすごい大事なこととして、第一前提にするってことに対する恐怖心や抵抗感がやっぱりすごくあるんだよね。物事の一番のゴール地点や大切なことをそこに設定すると、どうしても絶対に抜け落ちるものや、なんか危ないんじゃないかって皮膚感覚があります。 

:そのことで言うとね、なにかものを作って世に問う人だけじゃなくて、それを受け取る側や、それに対してリアクションを返す側にとってもすごく重要なことなんだけど、例えばツイッターのフォロワーの数で(その人の力を)判断しちゃうみたいな話がありましたけども、ネット社会になって、いろんなもの、 例えば売上とかが一個単位で明るみにされちゃうような時代になって、そうすると本当に数字だけが物差しにされちゃう時代に今はなってると思うんですよね。で、それに振り回されて、作り手も一喜一憂するみたいになっちゃって、 まさにやけ君が言ったような状況に今あると思うんですよ。だけど、自分の基準さえあれば、それは審美眼といってもいいんだけど、気まぐれな世間に迎合しないでいられるはずなんです。自分が好きだなと感じるものが、いくつか共通するなにかで繋がってることがあるじゃないですか。同じ人がプロデュースしていたり、同じミュージシャンが参加していたり。そういう時に、自分の好みってものがだんだん見えてきたら、それをさらに追究してみるってことが大事なんですよ。それはお皿でも時計でもなんでもいいんです。そのうち自分の中でなにかしらの独自の基準というものが出来てくるので、それがちゃんとあれば売上の数とかフォロワーの数とか、そんなものにあんまり左右されなくなってくるんですよ。自分の基準を持つことが、これからの時代で一番重要なことかなと。ジム・オルーク(※22さんっていうミュージシャンの『シンプル・ソングズ』っていうニューアルバムが出て、いくつかのインタビューに答えているなかで、彼はこう言ってるんです。今は基準のない世界になってしまった。そしてエンドゲームが始まっていると。そのエンドゲームってどういうことかというと、チェスの用語で「終局」、つまり最終局面。資本主義のエンドゲーム に差し掛かっていると。で、彼がもう一つ言ったことは、自分というものが誰かの「鏡」としてしか認められない、なにをやっていても誰かに見られているというか、他人の承認がないと、自分が存在しないかのような気持ちにさせられちゃう。で、もうそれは「戦い」であると。なんで戦わなきゃいけないのか。 今まではオルタナティヴってものがあったけど、今そういうものが見付けられ なくなっちゃって、争いたくないから別の道を探したのに、なにもかもが戦いみたいになっちゃった。ジムさんはそういう風に慨嘆していた。なぜ基準を持たないのかって、ジムさんが言うわけですよ。最初は他人の基準を自分の基準にするところから始まるかもしれないけど、それを追究していくことによって だんだん磨かれて自分の基準になっていくから。それは読書でもなんでもいいんですよ、ほんとに。生活態度でもなんでもいいから。 それを、みんな一人一人好きなようにやっていこうよ、と。確かにこう資本主義のエンドゲームがどれくらい続くかわかんないんだけど、もうすぐジ・エンドだと思うとみんな元気無くなっちゃうじゃないですか。だからやっぱり元気を得るためにも、自分の基準を持つことで、多分、インディビジュアルになれるはずなんですよ。だったら、別に会社員でもインディペンデントな生き方は出来るんじゃないのかっていう。強引にまとめると、そういう感じですね。 

:もちろんです。それはそう思います。さっきもベーパナ君が言ってたように、用語やジャンルとしてのインディーよりもマインドとしての独立独歩の気持ちがあれば別に会社員だろうがなんだろうが。だって逆に音楽の話で言うと、インディー・レーベルなのに○○が流行っているから○○やりましょうとかみんなで企画して、何十匹目かのドジョウ狙ってるような。インディー・レーベル のくせに。そんなんどこでもいっぱいありますからね。結局そういうインディー/メジャーとか表面的なもの、記号で判断してもなにも意味はないので。 

:90年代、いや、80年代の頃からありましたよ。そういうのは「腐れインディー」って呼んでました。まあ、だから腐れインディーは己のスタンダードが無いわけです。 

:世界を測る物差しっていうと大げさですけど、それを結局、他所から借りてきたメジャーで測るしかないとみんな思っちゃっているんですよ。すぐに自分の物差しは獲得出来るわけじゃないけど、継続していくなかで、自ずとだんだん伸びてくる物差しみたいなものがあって、気付けばいろんなことを自分の目で測れるようになってきて、面白いものを見付けられたり、人と出会えたりするのかな、なんて思っています。

:音楽に関していうと、インディーとメジャーの違いって、メジャーだとケース・バイ・ケースだと思うんですけど、何年契約でアルバム何枚とかね。そうすると発売日が設定されて、それまでに絶対出さなきゃいけない。で、それに関わる人とか、それで食べてる人がいっぱいいるから、そういうプレッシャー がすごいんだろうなと思うんですよ。インディーズの良いところは、レーベルの人がアーティストに対して、そんなにきついプレッシャーかけないように見守っていてくれたりする。メジャーでやってるアーティストはやっぱりそうい うプレッシャーのなかで戦ってて、そういう状況でも良いものを作っている人 っていうのは確かに常人じゃない、超人的な能力があると思います。だけど、納期があって、それに向けて、大変だけど、働いている人がたくさんいらっしゃると思うので、そういう時にどこまで自分の基準を守れるかっていうことは、個人個人のやり方によると思うんですけど、出来るだけその基準は守った方がいいかと思います。 

:一応最後の質疑応答です。なにか気になることとか、言いたいことがある方がいたら挙手をお願いします。 

客2:今日はすごく楽しかったです。ありがとうございました。ちょっと正直どうまとめていいのかわからないですが、自分でも音楽を作っていて、 それをネットに上げたりしても、全然聴かれないというか。インディペンデントってテーマで今日一番最初に思い付いたのが、インターネットで発表するってことだったんですよね。それで今の現状、玉石混淆感がすごいというか。この状況についてなにか語ってもらえればなというか、これについてどう考えているのかなあ、みたいな感じがちょっと気になっていたので......。 

:つまり、もっと聴かれるにはどうしたらいいか、みたいなところも、本当は教えてほしい感じですか? 

客2:それはありますけど、正直、ちょっと自分のなかでブレてしまってどうしたらいいものかと。 

:SoundCloudとかインターネットの話はさっき結構いろいろさせてもらったので、そういうことに関しては、さっき言った通りって感じなんですけど。例えば、いっぱい聴いてもらうってことで...、ごめんなさい、これが偉そうな立場からの発言に聞こえたら申し訳ないんですけど、一応多分年上だと思うんで、 そういう言い方じゃないと話が進まないので...、僕が思うには、例えば、 SoundCloudが今みんなやってることだったら、逆に違うことをするとか。僕だったらそう考えるかなあとか思いますけどね。なんていうか、みんながやっていることじゃない...、ズルですけど、みんながやっていることじゃないことをする方が目立つというか。まあ、SoundCloudの中でもアプローチとか何かしら とっかかりとして違う見せ方をするってのはありなんじゃないかなあ。 

b:でも結局ネットにアップするってのはやり方の一つというか。 

:やり方の一つだし、今、みんなが一番やることだから。 

b:だからやっぱり、人にこういう場所でとにかく全員に配るとか。僕がやってたことはそうですね。 

:でも競技人口の話ってのは知り合いのMC.sirafu(※23さんっていう東京のミュージシャンがいて、色々なバンドをやっている人なんですけど、sirafuさんはトランペット、スティールパン、ターンテーブル、シンセサイザー、とかマルチ奏者なんですけど。それでsirafuさんと話している時に、僕は競技人口が少ない楽器しかやんないですよって言ってて。だからやっぱりSoundCloudって10億分の1かわかんないけど、すごい数から単純に、ズルだけど150分の1くらいになるジャンルを目指すとか。 

b:でも常に結構みんな意識している感じですよね。それが好きだからって言って、じゃあ、それが本当に好きだったらそれで満足してアップして作ってってことをやるけど、届けたいって意志があったら、ちょっと言い方が変ですけど、 戦略っていうか、やっぱり、ちょっと隙間をぬわないと難しいかな。 

V:ほんとに今日言った話に通じますけど、やっぱ、色んな選択肢を考えてみるっていうのは絶対に良いと思うんですよね。発表の方法にしろ。SoundCloudだけではなく。 

:ラジカセでずっと流しながら歩くってのは(笑)? 通勤とかのときずっと自分の音楽を鳴らしてるとか。ちょっと勇気いりますけどね。 

:例えば勇気の度合い......、弾き語りとかってネットにアップするより遥かに勇気いるじゃないですか。けど、ネットより広がるかっていうとそうでもな い。 けど、ある一人には伝わるのかも、とか色んなことを思いますけどね......。 

V:僕も円盤ってお店に、ただ一人の店主に直接持って行って聴いてもらったことで、お店に置かれて広がったんで。 

b:なんかトイレットペーパーも出してなかった?

V:出しましたね。トイレットペーパー型の、型に入っている Tシャツと CDRのセット。

:それはある種、戦略って言葉は嫌いだけど、一個のアイデアだよね。だから まあ、物販としてさ、T シャツとかみんな作るけど、トイレットペーパーにCDが入っているとかだと、これも言い方が雑だけど、目を引くというか。ということで、なんか偉そうな物言いに聞こえたらすみません。とりあえず、僕たちが思うのはそういうことです。別の方法を模索するのがおすすめなんじゃないかっていう。はい、というわけで最後までこんなお喋りに付き合っていただきありがとうございました!

(ありがとうございました!)

(※22
「ジム・オルーク」 1969年アメリカ生まれ、東京在住のミュージシャン。作曲家やプロデューサー、 エンジニアも務め、彼の手掛ける音楽はアヴァンギャルド・ジャズやノイズ・ミュージック、ポストロック、映画音楽など多岐に渡る。現在は様々なミュージシャンとセッションに加え、カフカ鼾、石橋英子ともう死んだ人たち、前野健太とソープランダーズなどのプロジェクトに参加。2015年5月にアルバム 『Simple Songs』をリリース。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%AF_(%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%B3)

(※23
「MC.sirafu」 「片想い」「ザ・なつやすみバンド」「うつくしきひかり」の3つのバンドを 軸に「cero」や「oonoyuuki」など様々なバンドやプロジェクトに参加している ミュージシャン。スティールパンやトランペットを中心に様々な楽器を演奏す るプレイヤーでもある。2015 年 8 月 11 日に、今回のトークショーにも出演した VIDEOTAPEMUSIC 氏も参加している 4 人組ラップグループ「チークタイム温度」 のメンバーとして 7 インチ『7DAYS / 真っ青に染まれ』をリリース。「レーベルというより、漠然とした“集団”」と自身が表する「とんちれこーど」の主宰メンバー。http://ototoy.jp/feature/index.php/20120818

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